2001年に販売が全面解禁した医療保険は、大手生保、外資系入り乱れ、まさに戦国時代の様相を呈している。各社、「がっちり安心」、「生涯安心」「一生いっしょ」など不安な気持ちをナイスキャッチするようなコピーで様々な広告をうち、日夜、販売競争を繰り広げている。

まあ、そういう保険会社の売り文句は、おいておくとして、果たして、医療保険には入る価値があるのかないのかを考えてみたいと思う。

※以下、文中の「保険」は医療保険をさします。

■医療費と貯蓄の比較

現在、預金金利は安い。ネット定期などでもせいぜい、1%程度である。
しかし、定期預金であれば、元本割れはない。確実に増える。例をあげてみると
○月々25,000円 20年 1% だった場合

 30万円×22.019(20年複利の年金終価係数)=660万(元本600万)

○月々5000円  20年 1% だった場合

 6万円×22.019(20年複利の年金終価係数)=132万(元本120万)

保険では、掛け捨ての場合は全額戻ってこないし、解約返戻があったとしても支払った金額分は確実に戻ってこない。

■保険の心理的優位点

病気をしたときに、自分の貯金を使っていると、心理的に自分の資産を目減りさせてしまっているという恐怖がつきまとう。
しかし、保険の場合は、直接、自分の財布から出していないので、ご褒美をもらったような錯覚にとらわれる。
そもそも保険料は掛け捨てと言う言葉に象徴されるように「捨てたお金」と潜在的に思っているからだ。
そして、まさに、この時に、保険にはいっていてよかったな〜と思ってしまうのである。

■医療費は思っているほどかからない。

医療費は1日いくらかかる!と宣伝され、そのように思い込まされているが、実際には、公的保障は意外に手厚く私たちを守っている。例をあげてみると

 ●公的医療保障

  ○公的医療保険
   
   ・医療費負担は3割!
   ・医療費負担には上限がある!(高額療養費制度)
    窓口で支払った3割の自己負担金がある一定額を超えると超過分の一部が払い戻しされる。
    例えば、1月に100万円の医療費で、30万円を窓口で支払った場合、21万弱が返還されるので、結果、支払う金額は9万円弱となる。
    (所得、年齢にある一定額は変わります)

  ○国や自治体の公的医療負担

   ・乳幼児、未熟児、難病などの医療費助成
   ・労災保険(業務中のケガや病気、業務を起因とする病気を補償)

 ●会社員の保障

  ○健康保険からの保障

    ・傷病手当金が最長1年6ヶ月支給(標準報酬日額の6割。平成19年4月より、標準報酬日額の3分の2相当額)

  ○組合や企業の付加制度
    
    所属する保険の組合によっては、傷病手当金の上乗せや延長があったり、高額療養費の自己負担額の上限が低かったりなど独自の追加給付がある。
    また、企業には、有給休暇制度の利用、見舞金の支給がある場合もある。

 いかがだろうか。自営の人は収入が途絶えてしまうなどのリスクはあるが、会社員であれば、とんでもないローンや借金をしていたり、シャワー付の個室でないと嫌だとかの要望がなければ、不足分は貯金でなんとか賄えてしまうのではないだろうか。

■保険は売る側が損しないようにできている

 そもそも保険会社のCM費用や代理店費用などかかる費用及び利益は、全て、保険料に盛り込まれている。商売なのだから、当たり前だ。だから、リアル店舗などを持たずに通販で保険を売るような会社はその費用の上乗せがない分、保険料が安い。
 そして、給付が払いすぎにならないように、様々な門前払いや防衛をしている。

 ○門前払いの例

 ・力士プロレスラーなどの危険な職業の人は加入できない
 ・がんなどに既になってしまっているような初めから、健康に問題のある人は加入できない。

 ○防衛の例

 ・泥酔状態、犯罪当事者の場合は給付金は支払われない。
 ・むち打ち症など他覚症状がない場合は給付金は支払われない。
 ・入院給付の日数には上限がある。
 ・入院をしない通院だけの場合は給付金は支払われない。

つまり、保険が役立つ可能性の高い人ははいれないし、入院が長引いたというような、まさに保険にはいっていてよかったと実感できるような時には役にたってくれないのである。
リスクの高い人を加入させると健康な人から見れば、不公平になるといえば聞こえはいいが、裏を返せば、払いすぎがおきないように、リスクを回避しているわけである。

そして、公的な医療保険では、全ての人に公平にしているから、どこも慢性的な赤字を抱えてしまっている。それこそ、「助け合い精神」だ。
その公的医療保険を支えるために、私たちは、強制的に、毎月、大金を保険料として支払っているわけだ。
しかし、この公的な医療保険が任意であった場合には、是非、加入を薦める。確かに保険料は高いが、保険料は所得に見合った保険料になっているし、医療費は3割だ。これが10割というのは、金銭的な負担はかなり大きい。そして、例え、どんな病気になっても門前払いされることはないのである。

■保険のデメリット

また、保険には、元本割れの可能性があるということ以外にもいくつかのデメリットがある。

 ・保険はあくまでも契約だから、終わりがある。
 40年間、保険料を払い続けてきて、病気ひとつしなかったとしても、契約期間がすぎたらびた一文支払ってはくれない。

 ・給付金は医療費控除の費用から差し引かねばばらない。
 確定申告の医療費控除では、保険からの給付金を費用から引かなくてはならない。

 ・インフレに対応しない。
 入院1万円では入院費の足しにもならないということになったからといって給付金がふえるわけじゃない。

保険の唯一のメリットといえることは、心理的に安心できるというその一点だけではないかと思う。入院したら、びっくりするほどお金が帰ってきたという話も聞くが、入院日数に上限がある以上、それまでに払ったお金、そして、その後から払うはずのお金を合計した以上にもらえる可能性は非常に低い。

 また、加入時から、高額な保障を得られるというメリットは確かにあるが、そんなうまい具合に病気になる可能性はどの程度だろうか。


以上、結論としては、公的医療保険並みの保障が用意されるのでない限り、医療保険に入るより、自由に使える自分のお金をプールしていく方がメリットは大きい。自分のお金であれば、保険の契約期間のような終わりもないし、どんな手術費用にも使用できる。そして、病気にならないための健康管理費用にだって使うことができる。

自分で将来の医療費を貯めるということができないという人は、医療費用の口座を作って、保険料と同額を天引きしてもらうようにしたらどうだろう。
そして、どうしても保険にはいっていないと落ち着かないという症状を呈してしまっている場合は、仕方ないので、数千円程度の保険料の安い保険にはいりましょう。
 
間違っても「誰でもはいれます保険」などという自分の既に持っている病気には使えない!なんていう意味のない保険に割高の保険料を払うなんてことのないように。保険貧乏が高じて、健康なのに老後が貧乏なんて、本末転倒なことになってしまいます。