2018年01月13日

嘘つきは恋愛の始まり 12


それから数日後の大安の日に
俺達は役場へパートナーシップの申請書
を提出した。

これで事実上、俺と二宮は同性婚を
認められたという形になった。

形だけでは有るけれど、
ここに至るまで、およそ3週間という
脅威のスピードだった。
それは、二宮が前以て計画していた
という事もあるけど、
思ってた以上にお互いの身内が
すんなりそれを認めてくれた事が
一番大きかったともいえる。

二宮は、貯まってた有給を消化する為に
今日を最後に会社を退職する。
婚姻成立のお祝いと、退職のお祝いを兼ねて
今夜は二人で飯に行こうという話になった。

俺達は会社の傍の焼肉屋に来ていた。

O「それじゃ、お疲れ様でした。乾杯。」

N「うん。有難う、かんぱーい」

グラスを傾けて乾杯する俺達の左手の薬指には
お揃いのシルバーリングが光ってる。

O「何か、妙な感じだよな。」

N「え?何がですか?」

O「俺達だよ…一ヶ月前までは、お互いに
 口をきいたこともなかったんだよ?
 それが、今じゃこんなだもの。」

N「ウフフッ。本当ですよね。
 ねえ、大野さん?」

O「ん?何だ?」

N「俺の事、本当は怒ってる?」

O「ええっ?んふふっ…最初はね…
 なんて強引なヤツだって思ってた。」

N「ははは…やっぱりか…
 でも、今は?印象変わりましたか?」

O「うん。正直言うとね、
 例えどんな理由が有ったにせよ
 相手がニノじゃなかったら
 ここまでならなかったって思う。」

N「え…?」

O「おいら、こんなんだし…
 友達とかも簡単に作れる人間じゃ
 ないんだよね。でも、なんでか
 分かんないけど、ニノとは
 昔から友達だったみたいに
 話せるし…この前実家でうちの
 母ちゃんにも言ったけど
 ニノとはずっとうまくやっていける
 気がするっていうの?
 んふふ…ホント、何なんだろうね?
 不思議なんだよね。」

N「俺も…俺も同じですよ。
 相手が大野さんで良かったですよ。」

二宮はちょっと照れたように
顔を赤らめてグラスの中身を飲み干した。
…ん?これって、どういう意味だろう。
俺達、お互いがお互いで良かったと
思ってるってことは、つまり…

O「あ、あのさ…」

N「あ、あのね…」

O「な、何?そっちからどうぞ。」

N「い、いいよ。大野さんから言ってよ。」

O「い、いや…ひ、引越しの準備
 進んでるかと思って。」

N「す、進んでますよ。そっちは?」

O「うん、今度の休みにほぼ完了するかな。」

N「そ、そう…」

俺が言い掛けた事は
本当はそんな事じゃなかったんだ。
でも、それはやっぱり、
今の段階では口に出来なかった。

O「え?ニノは?何か言いたかったんじゃ
 ないの?」

N「えっ?あ…ううん。べつに
 大した事じゃないですから…
 ほら、お肉焦げちゃいますよ。」

俺の顔を見ない様に
そう言いながら、目の前の
焼肉を頬張った。

N「俺、大野さんよりひと足先に
 新居に入りますよ。」

O「え?そうなの?」

N「明日からどうせ俺暇だし
 新居にカーテンとかソファーとか
 大型の家具を発注してるんで
 あっちに居ないと、受け取りとか
 出来ないんで。」

O「そ、そうか。」

N「大野さんは次の大安の日で
 大丈夫なんで。」

O「悪いな。色々任せちゃって。」

N「あ、そうだ。旅行だけど、
 どうします?1週間貰えるんですよね、
 有給休暇。何処か行きたい所とか
 有りますか?」

O「うーん…何処でもいいよ。
 ニノの親父さんが旅費を
 負担してくれるんだろう?
 ニノが行きたい所にすれば?」

N「了解。それじゃ、それも全部
 俺に任せてくれる?」

O「うん。任せるよ。」

N「どうしようかなぁ。どうせなら
 行ったこと無い所がいいですよね。
 こんな時じゃないと旅行なんて
 しないから、凄く楽しみだよね?」

O「う、うん。」

この前まで、冗談だろって
あまり実感が湧かなかったから
何とも思わなかったけど
目の前で嬉しそうにしてる
二宮を見ていると
やっぱりどうしても
これが偽装なんかじゃなくて
本当の結婚なんじゃないかって
錯覚を起こしそうになる。
だって…
この俺と二人っきりの、
どうでもイイ奴との旅行に
そんなテンション高めに
ワクワクなんかするか?
それとも、これは完全に
俺の思い上がりなんだろうか?
二宮はただ単に
親の懐で旅行に行ける事を
喜んでいるだけなのだろうか?

N「大野さん?さっきから
 人の顔ばかり見て、全然食ってないじゃん。」

O「え…あ…食うよ、食います。」

N「ウフフフッ…」


俺、こんなんで、
偽装を貫いて、二宮と
普通に暮らしていけるんだろうか?
段々自信が無くなってきた。
だって、最近の俺は
頭の中、二宮のことしか
考えてないんだもの。





つづく





 
 





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chobisuke777 at 23:00│Comments(0)嘘つきは恋愛の始まり 

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