続*イチオクノホシ 番外編10

2018年09月09日

続*イチオクノホシ 番外編11

side kazunomiya



智の奥さんの墓参りを済ませて、墓地を後にした俺達は
近くの河原に来ていた。
何でもそこは、智の思い出の場所らしい。

頼智「しまったな。釣竿を持って来れば良かった。
   次に来るときは釣竿持参で来るとしよう。」

和「釣り好きなの?」

頼智「うん・・・昔は良くここで釣りをした。」

和「本当にあなた、庶民じゃないんだね。釣竿なんて無くても
  釣りは出来るでしょ。ほら、このくらいの枝先に餌を垂らして
  水面に投げれば魚くらい簡単に釣れるよ。」

頼智「なるほど・・・」

和「でも、俺は無理。」

頼智「魚が嫌いなのか?」

和「そうじゃないよ。餌の事を言ってるの。
  先ずは餌になるミミズを土の中から探さないとダメでしょ。
  俺、虫とか触れないんで・・・」

頼智「えっ?そうなのか?」

和「気持ち悪いもの。」

頼智「んふふふ。本当に似ているよの。」

和「えっ?あっ・・・ゴメンなさい。いちいち思い出させる様な事
  俺、言ってますよね?」

頼智「いや、こっちこそすまぬ。和殿は和殿・・・
   そんなことは分かり切っておる事なのに。」

智はしょんぼりと草むらに腰を下ろした。
俺も隣に並んで同じように腰を下ろした。

和「はぁーっ、お天気も良くて気持ちいいですね。」

頼智「真、風も心地良いの。」

智はグンッと背伸びをして、その場に子供みたいに寝転がった。

和「フフフッ。汚れちゃいますよ。そんなところに寝ころんだら。」

頼智「和殿も寝転んではどうだ?気持ち良いぞ。」

和「ええっ?ホントにぃ?」

俺もそう言いながら、智の横に寝転んだ。
二人で大の字になって、空を見上げて深呼吸したら、
今までやって来た卑劣な事とか、邪念みたいなのが消えて
心が浄化されてくみたいな気分になった。

智って、まるで菩薩様みたいな人だな・・・

ゆっくりと首だけを智の方に向けてその顔を見つめたら
智もそれに気が付いて、俺の方を見てニッコリと微笑んだ。
ドキッ・・・また鼓動が高鳴って、顔が真っ赤になるのが分かった。
俺は誤魔化そうと慌てて顔を背けた。

ガサガサッ・・・
和「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

俺の耳元で何かが動く気配がして、ビックリした俺は
咄嗟に智の身体に抱き着いた。

頼智「如何致した?」

和「何か、居た!蛇?蛙?虫じゃないよ。大きかった・・・」

頼智「はははっ・・・大丈夫だ。多分あれではないか?」

和「えっ・・・」

顔を上げて智が指差す方向を見たら、鴨が水辺を目指して歩いてた。

頼智「んふふっ・・・和殿?その、そろそろ離れて貰っても良いかな?
   さすがに余も、いつまで理性が働くか、自信が持てぬ。」

和「えっ?あっ///ご、ゴメン。」

ガッツリ抱き締めてたから、智も戸惑ったみたいで
俺も我に返り、慌てて彼から離れた。

頼智「そろそろ帰るとするか?日も傾いて来た事だし・・・」

和「う、うん。」

俺達は立ち上がって衣服に着いた草を払うと、再び馬に乗って
屋敷への帰路に着いた。
背中に智の温もりを感じて、何とも言えぬ安心感を覚えた。
和也という人が、羨ましいなって、本気で思ってしまった。
顔は瓜二つというけれど、和也って人も、俺なんかと一緒にされたら
きっと迷惑だよな。
だって、俺と来たら、薄汚れたやさぐれ野郎だもの。
和也って人はきっと清らかで優しい人なんだろう・・・
俺なんかとは比にもならない程だろう。

頼智「ん?和殿、何処かまだ具合でも悪いか?」

和「え・・・」

頼智「さっきから、ずっと何も話さぬゆえ・・・馬に酔ったのかと。」

和「あ、ううん、大丈夫だよ。」

頼智「そうか。それならば良いが・・・」

暫くすると、屋敷が見えてきた。

頼智「誰か客人がお待ちの様だが、知り合いか?」

見覚えのないご婦人がうちの屋敷の前にポツリと立っていた。

和「いやっ、知らない・・・」

ゆっくりと屋敷の前に馬の脚を留め、俺が先に馬から降りたその時だった。

『和之宮とは、其方のことか?』

和「え・・・ああ、そうだけど?」

『おのれっ、この泥棒猫が!』

その婦人は、どうやら宗一郎の奥方だった。
血相を変えて俺に近付き、懐から小刀を取り出して
俺の脇腹を一突きした。
俺はその場に膝から崩れ堕ち、婦人は狂った様に笑いながら走り去る。

その様子を一部始終見ていた智が慌てて俺に駆け寄った。

頼智「か、和殿?しっかりするのだ!和殿っ!」


悲痛な叫び声と、心配そうなその顔がぼんやりと霞んでいく。
俺は智の腕に抱かれたまま意識を失った。






つづく


















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chobisuke777 at 16:00│Comments(0)続*イチオクノホシ 

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