映画『ラッカは静かに虐殺されている』を見てきました。すごい作品。
http://www.uplink.co.jp/raqqa/
渋谷アップリンクや中野で上映中、他にもミニシアター数カ所で順次上映予定とのこと。

「イスラム国」に支配されたシリアの都市、ラッカの惨状をスマホを使って命がけで世界に伝える市民ジャーナリスト集団を追った、究極のドキュメンタリー。
内容があまりにつらすぎるからか、上映後にざっと見たところ、観客が誰も泣いていないような気がした。あまりにいろいろなことを考えさせられて、泣くことまで頭や気持ちに余裕がないのかもしれない。
タイトルが物騒な感じもするが、これは市民ジャーナリスト集団の名称を和訳したもの(RBSS = Raqqa is Being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)なので、誇張でもあおりでもない。

注意書きとして「*本作は損傷の激しい遺体、残虐な処刑のシーンがありますので、あらかじめ了承の上ご覧ください。また、16歳未満の年少者は保護者指導の元による鑑賞をお願いします。」とある。妥当な判断だと思う。とはいえシリア現地では、赤ちゃんだってこの光景を目の当たりにしているどころか犠牲者になったりもしているわけで。実弾が飛んでくるわけでもない安全な場所で現地の悲惨な映像を眺めている私は何なんだろう、悲劇の消費者か??と自問自答したくなったほど。

でもこの市民ジャーナリスト集団の願いは世界に惨状を知らしめることで、そのために「イスラム国」からの脅迫にも屈せず、身を危険にさらしているとのこと。しっかりと拝見させていただいた。仲間数名がすでに殺され、レポートをやめないと父と弟を殺害するぞと脅されても(そして大変残念ながらお二人とも殉教されても)、トルコに逃げても追っ手が潜伏先までやってきたり、ドイツへの亡命後も脅迫が続いても、自分が2年後にはこの世にいないかもしれないと思っても、「世界に伝える」「カメラは武器より強い」旨の気持ちは揺るがない。そして、世界に向けてさらに顔と名前をさらして、積極的にメッセージを発信することを決めたそうだ。そのほうが一層伝わりやすくなるからとのこと。命を狙われる危険が増すのも覚悟なのだろう。

こういった背景もあってか、彼らの映像が持つインパクトの強さは言うまでもない。街中にいたら銃撃(砲撃?)が始まったので、スマホのカメラを回しながら走って逃げる。映像は体の動きに合わせて大揺れだし、コンクリートの破片などが飛び散って瞬時に視界も悪くなる。弾が発射される音や何かに当たる鈍い音にもぞっとさせられる。

かと思えば、「イスラム国」支配前の時期に、一般市民が平和的なデモを行っている映像も流れる。「アサド(大統領)はやめろ」「ウソをつくな」とのコールは、今の日本の国会前デモと同じだ。

ちなみに市民ジャーナリストメンバーたちは、活動当初は大学生。スマホとノートPCを使いこなし、友人とおしゃべりを楽しんでいる様子は、日本の若者と変わらない。インタビューで「活動資金はどうされているのですか」と問われ、「僕たちは中産階級なので、最初の9カ月は自分たちで捻出していました。その後、支援団体がつきました」とのこと。人が良さそうな、普通の若者たちだ。映像を見ていると自分も彼らの仲間になったような気持ちにあり、内戦がなければ…と心から思うようになる。

オチもないし明るい未来も描けないけれど、彼らが絶対に負けない、諦めないだろうことは確かな気がする。この映画を見れば、きっとそう感じると思う。