Choco assort つれづれ日記

日記というよりは、管理人のつれづれなボヤキの数々。

カテゴリ: 小説

双子の花 ―Twin Flower―




ついに王宮は囲まれて
家臣たちも逃げ出した
可愛く可憐な王女様
ついに捕らえられた

「この 無礼者!」

悪の華 可憐に咲く
悲しげな彩りで
彼女のための楽園は
嗚呼 もろくもはかなく崩れてく

(赤の国に伝わる、滅亡した国を差した流行歌)



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双子の花 ―Twin Flower―




そうだ、彼はついに勝ち取ったのだ。
人を愛し、音楽を愛し、自由を愛した彼は、
自分の愛した全てを勝ち取ったのだ。

我らは決して忘れぬだろう。
赤い髪と赤い瞳を持ち、赤い鎧に身を包んだ英雄を。
ラッセルの赤の戦士のことを。

(赤の戦士伝説)



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双子の花 ―Twin Flower―





隣の国へ出かけたときに
街で見かけた緑のあの娘
その優しげな声と笑顔に
一目で僕は恋に落ちました

だけど王女があの娘のこと
消してほしいと願うなら
僕はそれに応えよう

どうして?涙が止まらない

君は王女 僕は召使
運命分かつ 狂おしき双子
「今日のおやつはブリオッシュだよ」
君は笑う 無邪気に笑う

(ある老婆の遺品にあった日記の中の一節)




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双子の花 ―Twin Flower―






暴君王女が恋するは
海の向こうの青い人
だけども彼は隣国の
緑の女にひとめぼれ

嫉妬に狂った王女様
ある日大臣を呼び出して
静かな声で言いました
「緑の国を滅ぼしなさい」

(赤の国に伝わる、滅亡した国を差した流行歌)



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双子の花 ―Twin Flower―




この国じゃあ、あいつを知らない奴はいねぇよ。
え? そりゃあ王子だから知らないわけがないって?
わかってねーな、そーゆー意味じゃねえんだよ。
どういう意味だか知りたいか? それじゃあ適当な席であと1時間くらいグリュークリーク飲んでな。

ああ、ちゃんと代金は払うんだぞ?

(青の国のある酒場の店主の話)
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双子の花 ―Twin Flower―






こんな国に来るべきでは無かった。

国中で浮浪者があふれ、飢えや脱水症状、疫病で毎日何十何百と死体が増えていく。
孤児も多く、しかもろくな国家宗教の無いこの国には孤児を保護できる宗教施設も無いため、年端も行かぬ子どもが盗みや売春などのおぞましい行為に手を染めている。
そもそも宗教が発達していないため、大人ですら倫理も知性もあったものではなく、まともな話ができない。
貴族の慈善活動が根付かないのも当然である。他者を思いやる心が無いのだから。
また、贋金も横行し、金貨もほとんどはメッキを塗っただけのただの鉄である。

『黄金の国』など全くの偽りであった。
身分や爵位に関わらず、実力者が認められるなど嘘であった。
それ以前の問題だ。

この国では人間としての尊厳が認められない。
人間としてのプライドが無い。
人間が住む国では無い。

(黄の国に移り住んだある若者からの手紙)
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