ちょっと前のことですが、会社でボーナス制度を導入することになりました。まず、社員一人ひとりの仕事ぶりを評価するため、私たちは日本の親会社で使われている評価項目や評価基準をもとに、ロシア用の資料を作成しました。言うまでもなく、ロシアの状況に合うように中身を部分的に変えましたが、5段階評価を使うという点はそのままにしました。というのは5段階評価はロシア人も小学校の頃からよく馴染んでいるからです。これで問題なく点数を付けられるはずでしたが、案外スムーズには行きませんでした。

 現場の評価者は日本人二人とロシア人一人でした。しかし、いざこの3人が付けた点数を比べてみると、日本人の点数はお互い近かったのに、ロシア人監督者による点数は明らかに高めで「4」と「5」ばかりでした。ロシア人の点数を見て日本人たちはびっくりして「それはないだろう」と笑いました。

 しかし、ロシア人の私にしてみれば、ロシア人が付けた点数は決して意外ではありませんでした。その場になって初めて気づいたのですが、実は同じ5段階評価でも日本人とロシア人との間では点数の捉え方が大きく違います。みなさんにとっても参考になるかもしれませんので、今日はロシア流の5段階評価の中身を簡単にまとめようと思います。

 さて、ロシアでは小学校のときから5段階評価が使われています。しかし、呼び方が「5段階評価」でも、事実上「4段階評価」と言ってもいいと私は思います。

 なぜならば、点数「1」と点数「2」との間で違うのは先生の「怒りの度合い」だけだからです。学生の無知にあきれ返っているのであれば「1」をつけるし、単純に「不合格」だったら「2」をつけます。しかし、「1」も「2」も「不合格」には変わりはないので先生の気持ちさえ除けばまったく同じ意味です。

 しかも、この「2」はテストの点数としてなら「登場」可能ですが、1年の勉強の結果をまとめた通信簿には載せられません。というのは「不合格」を意味しているので、1年を通して一つの科目でも「2」が通信簿に出そうになったら「試験の受け直し」、そして最悪の場合は「留年」になってしまうからです。

 となると、ロシア人の通信簿に載る点数の中で最も低いのは「3」ということになります。(つまり、5段階評価と言っておきながら、ロシアで使われているのは3段階評価と言えるかもしれません)

 そして、ロシアの「3」という点数は日本で言う「普通」ではなく、「「2」よりはまし」という意味だと思います。ロシア人の直感を言葉にすると「なんとか「不可」にならずに済んだ」、「ぎりぎりセーブ」というふうに言い換えてもいいと思います。もちろん、限りなく「4(good)」に近い「3」もありますけれども、高校の卒業証書の中に「3」があまり多く入っていると、大学への進学は無理というぐらいにできが悪いとされています。

 そういえば、最近、息子ゆうき(7才)と一緒に小学校を題材にしたロシア語の本を色々読んでいますけれども、その中に登場するтроечник (通信簿で3が多い子)は、決まって無知で不良っぽい子ばかりです。宿題をしてこなかったり、テストの日にずる休みをしたり・・・。本の中ではこういう子に限って色々と不思議な出来事に遭遇しますが、成績に関して言えばロシアでは「3をとる子」は「落ちこぼれる寸前」というイメージです

 さて、話をボーナスに戻します。日本の評価基準をロシア語に翻訳して評価者たちに渡しましたが、説明の効果はあまりありませんでした。ロシア人の責任者はその説明通りではなく、小学校のときから自分の頭の中にあるイメージに従い点数を付けてしまいました。結果的に、今すぐにでも首にしたい社員は「2」で、その次に首にしたい社員は「3」で、残りの社員の評価は「4」と「5」になってしまいました。

 ちなみに圧倒的に多かったのは「4」と「5」なので、そういう意味ではうちの現場は「落ちこぼれ」が少なくいい人材が集まっていると自慢できると思います。しかし、言うまでもなくこの評価は日本人たちが期待していた評価とは全然違います。

 そして、こういうふうに色々書いておきながらもタチアナもやはりロシア人です。息子のゆうきがいずれ日本の小学校に転入することになりますけれども、通信簿を見る前に私も各点数の意味を再確認する必要がありそうです。「オール5」をとってくれれば話は簡単なのですが、どうもそういう子でもなさそうです(笑)。

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