2019年03月01日

2019年02月に読んだ本

印象に残ったのは.../服部玲治「西麻布にて」で熱く語られるとんかつ愛/その日、買ってきた商品名しか書かない人いるなじゃい?本やCDのタイトルだけ/あれで自分のアイデンティティを他者に訴えかけているつもりなんでしょう?(三田格)/中村としまる「八兆劇場で語られる千歳船橋駅近くの「八兆」という立ち食いそば屋で繰り広げられる日常の描写の淡々としたおかしみ/ギャングスタばかりくるサンフランシスコのメキシコ人街のデリの主人が悩んで、店の前に、25セント入れたら動くパンダの乗り物を置いたんですよ。そしたまんまとギャングスタがそのパンダを受け入れて、その日から25セント入れて乗りまくったんですよ、てエピソード(宇川)/吉田アミブログの「確認するために見るのじゃなくって、発見するために出会いたいのに、どうしてこんなつまらない状況がまかりとおるのか。」「動かない人は楽しいことが減るよ〜。というのはどうやら本当です。やる前から文句ばっかりつけてかっこ悪いことしないで世界に不平不満や文句ばかり言いながら自分以外を排除して生きているとつまらないし、それこそ人生の浪費。どこの貴族ですか。」/特に佐々木敦ブログ、吉田アミブログは、13年前の空気感を一年間分、濃厚に伝えてくれて、ああ読み終えたくない、もうこれしか読めない、と思いながら読んだパート。出色。


「nu」vol.3の吉田アミブログの再録に、「できる人ができない人にできるハズって言うのは、マズイんじゃないですか」て芹生のセリフが出てきて、一気に読み返したくなり、買い直し、再読/パワーは有り余ってるんだけど、あまりに自己中で周りに迷惑かけ、空回りしつつも、前に進もうとはしている唐須弥恵。テニスで大きな挫折を抱えたあと、ふらりと写真部に入ってきた芹生ヒロタカ。厳しいこともまっすぐ伝える芹生に、最初は弥恵がほれこんでしまい…と。紆余曲折あって、芹生の気持ちをかき乱し、まっすぐな言葉さえ捻じ曲げて受け止めて、芹生が離れていきそうなのを感じ、振るのも振られるのも嫌だよ、と飛び込むところまで。今読み返してみると、学生の時ってあったよねえ、加減もせずに厳しい言葉ぶつけたり、剥き出しの感情ぶつけたり、みたいなことを思い起こした。



「ほめてもらうためとかしかってもらうためじゃなくてあなたのやりたいことちゃんと考えてよ考えられるよ」と言う芹生の厳しい言葉がきっかけで別れてしまった二人。しばらくして再会した時の、「いいことをいいって言っちゃってやり始めるしかないです」て芹生の言葉も届かず、しばらくのちに弥恵は自殺してしまう。そこから力が入らず、自分も後を...とまで自分を追い詰めてしまった芹生を救ったのは、いとこの澄緒だった。最初は澄緒の方が助けを求めていたのに、芹生の方が沈みそうな船だと気付いた時、必死にしがみついてかきくどいてなんとか現世に踏みとどまらせたのは、澄緒の力も大きかったのでは、と思う。最後の方の「あんた死にたいんじゃなくて願う姿で生きたかたったんだろ 願いって かなわなかったらダメなのか?」て芹生の独白に、吹っ切れたものを、前を向こうという意志が感じられるのが救い。


練りに練った文章と違い、雑駁というか快活というか、三島由紀夫の肉声に触れられた感があって、収穫。/筋や論理をなあなあで済まそうという当時の日本に瀰漫していた風潮への苦々しい思い。安心してる人間が嫌い。相手が意思を封鎖され、主体的に動けない状況が一番ワイセツでエロティウムを感じる。抱きたいといえば俺ならたいていの女は承知するよ、という自信。天皇への思い。論理でいえばそうだけど、もうここまできたら意地、君らとは共闘しないという回答。/ぼくは日本人であって、日本人として生れ、日本人として死んで、それでいいのだ。その限界を全然ぼくは抜けたいと思わない。という思い。/「会場入り口にゴリラの漫画に仕立てられた私の肖像画が描かれ「近代ゴリラ」と大きな字が描かれて、その飼育料が百円と謳ってあり、「葉隠入門」その他の私の著書からの引用文が風刺的につぎはぎしてあった。私がそれを見て思わず笑っていると、私の後ろをすでに大勢の学生が十重二十重と取り囲んで、自分の漫画を見て笑っている私を見て笑っていた。...少なくとも人は笑いながら闘うことができない。」といったシーンで描かれるチャーミングさ。などなど。/あまり全共闘側の観念に走りすぎた論は読む気がおこらず。


もう何度目かの再読。折に触れて再読したくなる。アドルフ・カウフマンの今まで人生をかけてきたものが全て徒労に終わったと感じたときの、俺みたいなやつがたくさんいるから、国は正義というものを安心して振り回せるという慨嘆、そして、この物語の語り手で主要アクターの峠草平の、これを書き残すことで、正義なんてもののおかしさ、あやしさに少しでも後世に気づいて欲しいという思いがずっしりと残る。解説の関川夏央の、ここで描かれる恋愛は全て一目惚れで始まる、て私的にはなるほど、と。


がさつで距離が近くて人の領分に踏み込んでくるようでいて、ちゃんと見てくれていて、優しい、みたいな印象。/バレエの先生と、そこに通う小さな女の子とその母親、先生の母親と母親の友人の関係、が一番印象に残る。


レオナルド・ダ・ヴィンチ、ルター、ヴォルテール、ガリレオ、ジョン・ロック、ダーウィン、ゲーテ、レーニンなどなど、それぞれの時代を象徴する人物を軸に、その時代背景が「科学と宗教」を軸に語られるヨーロッパ近代史。ヨーロッパと一口で言っても、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストリア、ロシアでは全然毛色が違うことを改めて実感。そして、18、19世紀に関して言えば、いやあ、こんなんされたらオスマン帝国かないまへんわというのが率直な感想。神から人へ、宗教的不寛容から寛容へ、ラテン語からフランス語、英語へ、商業の興隆の背景にプロテスタント思想の後押し、僭主には、「抵抗権」あるいは「革命権」を行使できるというロック、ナポレオン戦争の勝敗を左右した莫大な軍資金、市民階級の興隆など、興味深いテーマが尽きない。個々にはそれぞれ掘り下げてみたい。


表題作の、フィリピン旅行記がなかなか現地の空気感が伝わってきて面白かった。10ヶ国語できるガイドと行けるなんていいなあ。ただ、panpanyaさんの作品なので、グヤバノって架空の果物かと思ったら、調べたらちゃんとあって少しびっくり。久々にあった友人と変わらないね、て言い合うだけの短編の背景に隠された企み、何か見られてる気がするだけの短編に、背景がまるで語りかけるような看板になっている企みなど、言われなければ気がつけなかったものもあり。あと、週刊「家を建てる」創刊号は呼び鈴がついて190円、には大笑いしてしまった。そして、さらってきたヨウムに、実家の農業の会計作業にぜひこの機械を譲ってください、てつぶらな瞳で見つめられるコマが印象に。


睡眠・電話・音楽つながりで、手に取ったけど、ちょっとファンタジーすぎて個人的には肌合いが合わなかった。あくまで個人的には。


シュトックハウゼン、ブーレーズ、ノーノ、クセナキス、フランソワ・ベイル、テリー・ライリー、スティーブ・ライヒにオノ・ヨーコと豪華メンバー揃い踏み。どの人にも聞いているのは、専用のスタジオやホールは必要か、とまだ実現していないプロジェクトはあるか。シュトックハウゼン、クセナキス、ノーノあたりの大掛かりなプロジェクトにはそれ用の建築が必要なようだけど、ライヒの全く必要ない、どんな形式でも音楽として機能することが理想、というのも一つの見識なのだろうなあ、と。オノ・ヨーコのは示唆的。...作品を「インストラクション化」 最終結果を人にゆだねたのです 資金的理由や技術的困難からアイデアの全てを実現することはできず でもここではインストラクションを書きさえすれば言い 解放されました インストラクションのほうも、もっともっとコンセプチュアルになっていきました コンセプチュアルな世界ではアイデアが物理的にどう実現されるかを、考える必要がなくなります。...といった考えは刺激的で、示唆に富む。ベイルの「デュシャンを考えてみてください。芸術家の沈黙は創造であり、行為なのです。」、アシュリーの「私が言いたいのは、ある意味、私の作品は演奏されなくてもよいということです。どうして私の作品が未来で演奏されるのでしょうか?この300年間のヨーロッパの音楽は、地球温暖化のようなものになってしまっています。つまり、たくさんあり過ぎるのです。」あたりが印象に。


やはり本がありすぎて崩れたことのある人の話と言われると、個人的には食指が伸びてしまい、たまらない。そのことにまつわるこだわり、うんちく、事件などなど、堪能しました。/崩れた本で風呂場に閉じ込められ、まずやったことが風呂にお湯をためること、そしてやっぱり本を読むこと。まあ落ち着こう、そのうち良い思案が浮かぶと。悪戦苦闘なんとか出られるわけだけど、その後も、本の積み方の職人芸や積んだ本から抜く哲学などなど、可笑しみと共感を抑えきれない。旅に出ても時計を持たないから、田舎のバス停で、バス停の周りをしばし散策してバス停、しばし散策、バス停、という落ち着かないながらも味のある一刻。なんでこんな重いリュック背負ってるんだ、旅に出て読みもしない本をいっぱいに詰め込むから、てのには激しく頷く。「死蔵しているわけでない。このまま仕事をするかぎり、増えてつづける。どうする気だ、お前」という自問。/"本を抜くのは仕事に役立てるため、利用したということで決してけなすべき行為ではない。本の崩壊をおそれ、抜くのをあきらめてしまうのが、最も悪徳である。"/"一生、本も読まずに生きていられる人たちにとって、「本」は、いつだってゴミに見えているに違いない。すこしだけだが、うらやましい。このゴミなしに生きられない私は、その支配もままならぬ、なさけなきゴミの大王である"/地震で崩壊した本を積み直すのに20日。けど積み直しは「知的作業」なので人に頼むわけにもいかない/本というものは、たえず気をつかっていないと、物も言わずにしのびよってくる獣のようなところがあり、気がついた時は、すでに遅かりしで、人間の居場所などは、知らずに狭められてしまっている/あと、李賀「詠懐/二首」の、「鏡中聊か自ら笑う」、気になった全編、本が崩れた話かと思いきやそれは半分くらいで、あとは、少年時代の野球や喫煙にまつわる話で、個人的にはあまりそそられず。


兵士や刑事だったロボットの末路は悲しく描かれ。子育てロボットや、子供代わりのロボットの話は、最後は温かい気持ちに。体はお前らのものだが、心は神様のものだから、と信念を持って死刑囚を逃し続けた神父の一言がぐっとくる。総じて、ロボットも、人間らしい感情を持つ、あるいは最初はそうでなくても感情や理想や信念が芽生えるように描かれているように感じた。


突然の復学と退学。突然のバイトと、バイト先の青年やマスターと揉めつつも、小説執筆を勧めたり、いろんな人に進路の話を聞かせてもらい参考にしたり。花井にも大きな話が。しかし。その条件は…と。最後のリョータの芝居はなかなか真に迫り。さて、響の進路と花井の進路はどうなるのか。


君塚直隆「ヨーロッパ近代史」つながり。いわゆる「大航海時代」のヨーロッパの対外進出から説き起こされ、ヨーロッパの工業化、聖俗双方の普遍的権威の後退と相まった主権国家体制の確立、政治的な自由と平等という西欧型の民主主義の理念、自然科学や社会科学を問わず、近代学問の整備につながっていくような論理的な発想が生まれ、19cの帝国主義的な覇権につながり、第一次大戦により凋落し、アメリカが台頭するところまでが語られる。


空海の書は直接阿頼耶識に届く。その描写が、人にねばりつくように立ち上がる書の描写がたまらなくよい。最澄の推薦もあってか、ついに京都に帰還した空海。嵯峨天皇に強い印象を残し、取り立てられ、仏教界の頂点へとかけのぼる。一緒にやらないか、という最澄への誘いは最澄に断られるが。一方、最澄は、ようやく出した分限者を南都仏教にとられるなど、苦境にあった。最後の、もう涙を流すのをやめるという言葉が前進をうながすのか。また、のちの最澄は経典にこだわり、空海は実践をおもんじる、といった対立の萌芽も描かれていた。/坂上田村麻呂の、正義が振りかざされた時、人が死ぬ、善悪などない、正義などない、二分は常に対立を生む、犠牲を出す、どちらにつくかではない。と言う叫び/カタツムリのツノほどの小さな場所で何を争うのか...口を開けて笑わないのは愚か者である 白居易/憧れの地は海の向こうにはありません 海の向こうを目指す人は自らの内側にたどり着く それだけです/尊敬は距離を生む、腹を割って話せなくなる


母の結婚で4歳にしてカメルーンから日本へと移住した著者。幼少のころは、だまっていても目立つ風貌から悩んだこともあったけど、それらも含めてコミカルに描かれ、ほっこりする。ステレオタイプな見方に気付かされたり、それを笑いにかえて気付かされたり、さまざまな文化がまじりあって触れ合うところに生まれる笑いがいいなあ、と思った。


最果タヒ「百人一首という感情」つながりで。/我々にとって至極当たり前に思える季節の推移も、当時の人にとっては、天皇の徳政を表すおめでたい風景だったのだ。という指摘は興味深く。百人一首に限らず、取り上げられていた中から気になった歌を。特に、玉ぞ散りける、の歌が印象に残る。/天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも 阿倍仲麻呂/つひに行く道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを 在原業平(古今和歌集)/わびぬれば今は同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ 元良親王/人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香に匂ひける 紀貫之/白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける 文屋朝秀/逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり 藤原敦忠/世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし 在原業平(古今和歌集)/瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ 崇徳上皇/ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき 藤原清輔/願はくは花の下にて春死なむその二月の望月のころ 西行(山家集)/


「map 丸紅アパートメントプレス08 団地のあゆみ」と合わせて読むとより味わいが増します。こちらはイラストにタイトル、制作年、personal workか、CDジャケットや雑誌の表紙、挿絵などなどの来歴が付されている。団地や魔法使い、海などよく出てくるモチーフについても作者が語っていたのを読めたのもよかった。


川口松太郎、直木三十五、小山内薫を軸に語られる物語。三人の人生を大きく回転させたのは関東大震災だった。その影響もあって、大阪に拠点を構え新雑誌を作ろうと画策した小山内と戦力として呼ばれた川口、直木。新雑誌には売れる原稿をと原稿集めに奔走する二人。ただし、それぞれのやり方でと。書かずにはいられない、書くこと、すなわち生きること、という面々を描き、それにしたって先立つものは必要という現実を描き。最後は、三人の何年か後、死ぬまでの道行きが語られ、全1巻のような終わり方。これで2巻はどう展開するのか。一番鮮烈だったのは、岡本かの子。「うつし世を夢幻と思えども百合あかあかと咲きにけるかも」その子の岡本太郎の少年時代もあざやかに描かれる。


ブラックすぎる職場で体を壊して、リフォーム専門の設計会社へ転職してきたクラカナ。/ざっくりいうと、リフォームの「美味しんぼ」のような。絶対離婚しない家にしてほしい、子供が怖がらない家にしたい、けど祖父母の思い出も残したい、あき地利用でシャッター商店街を活性化したいなどなど、時に前のめりになりつつ、先輩と二人で取り組んでいくお仕事マンガ/「自己犠牲」と「仕事」は違う。どんなにやりがいを感じても、そんなやり方は長く続かないよ、という先輩の言葉が重く響く。


8歳児ともなるとお母さんもお父さんもたじたじな場面も。新幹線で見かけた赤ちゃんも、ビールも、つまみも、孫子も諦めてないお父さん、鮮やかな印象。/あと、親抜きで娘含む三人でディズニーランド行った時に、最寄駅で18時から待機して、居酒屋-立ち飲み-バー-カラオケとはしごしてべろんべろんになった頃に、娘駅に到着の一幕が一番おかしかった。/これ、大きくなってあーこちゃんが読んだら全部バレるのでは...いいのかしらという描写がありつつ、それも含めて大きくなったら読んでくれていいということなのかなあ、と。親が楽しようと無理やり入れた英語スクールの顛末など若干苦し。


■■ヶ丘団地50年のあゆみと言う冊子を作るために、団地の住民にインタビューしていったものをまとめるお姉さんと年配の上司といった体裁で、丸紅さんのイラスト一枚一枚に物語がつけられていくような感じで。ちょっとありそうな青春の一ページ的なものから、突飛で奇想天外なものまで取り揃えられていて、読んでて楽しかった。もっと美麗なイラストは、「ILLUSTRATION MAKING & VISUAL BOOK 丸紅 茜」で見られるので、合わせて読むとすごくいいと思った。


パンとトマトのほのぼのマンガ。キャラ紹介の、パンの、防水仕様、にウッ(笑)となりつつも。基本世話好き活発なトマトさんに、料理を美味しそうに食べたり、ゲームを楽しそうにしたりのパンさん。和みます。


苦い思いをさせられた相手とばったりあった時、許したり流されたりするのではなく、思いあぐねたけれど、きっぱり振り切って前へ進もうと思った二編が印象に。後は、ライターの佐藤さん。クリスマスの大ドジから、見た目いかついけど親切なアフロのお兄さんと知り合って...てストーリーにほっこり。フィンランドから流れ流れてきたものがきっかけで親しくなり、素直に人に頼ることができたエピソードに。


自ら密教の秘儀を行ない、悪女阿野廉子や妖僧文観にそそのかされ、側近の貴族を贔屓する悪性を敷き、あっというまに新政が瓦解、という従来のイメージを一新。当時の流行の宋学に影響され、天皇を頂点とした中央集権制を志し、武士たちの所領もすべて流動化、公家も門閥や先例にとらわれず抜擢。しかし、宋にはあった、新たな政治主体として台頭する士大夫層、彼らを官僚として登用する科挙制度などの基盤がなかったため、周囲の中位・下位の公家以外からは総反発をくらい…というもまた自明だったように思う。明治の王政復古に影響をあたえ、そこから今の日本をも呪縛している、という今日性については興味深く読んだ。


文章のリズムがいいのかスイスイと読めた。本文中にもあったけど、まるで音楽から文章のリズムを学んだかのように。面白かったのが、いろいろライブやレコードで聴き比べて論理的に突き詰めて考える村上春樹と、音楽をすっと自然に自分の中に取り込んでいるので、しばし村上春樹の言葉に沈思黙考する小澤征爾の対比。黙考したあとは、味わいのある言葉が帰ってくるのもまたいいなあ、と。そこまで深く音楽を聴きわけ、感じる喜びを得られない身には、別の誰かがそう感じたことを読むのは一種の喜び。バーンスタインのエピソードや、ストラヴィンスキー「春の祭典」改訂をめぐる一幕、カズオ・イシグロの小説と大西順子の関係などなど興味深かった。ぶっ飛んだ映画だというケン・ラッセル「マーラー」、大西順子トリオと小澤征爾指揮サイトウキネンオーケストラのラプソディ・イン・ブルー、ヒナステラの「エスタンシア」は触れてみたいと思った。


なかなかに60年間の写真てカラーでは残っていないのでは。日本に、鉄道に、惚れ込んだアメリカ人著者の残した記録。紙幅を一番さいている東京が特に見応えがあった。著者は首都高速のない風景をことさら好んでいるように思えた。確かにスカイラインは全然違う。また銀座の都市らしい賑わいに、当時のアメリカと比べて全然違う、と印象深かった様子も。新宿駅は寂しい様子も伺えた。大きな台風の翌日に、人々が線路沿いに畳などを干す風景。網走市の北浜駅の混雑。徒歩、電車の後に、舗装され、自動車という移動手段の変遷。今とは全く違う素朴な那覇の牧志公設市場と国際通り。これはアメリカ西部劇みたいと思ってしまった当時のコザ。などが印象に残る。


著者 : 馬定延
アルテスパブリッシング
発売日 : 2014-12-20
siafのイベントでの小町谷圭さん、ジェドシェツカさん、馬定延三さんのディレクターズトークで、特に馬さんの紹介したメディアアート作品に心惹かれ、この本を手に取る。/メディアアートというと最先端の取り組みのイメージがあったけど、意外と古くからあって、技術の進展である意味横並びになったり、新鮮さが失われて頭うちの時期もあったりして、今に至ったのだなあ、という流れがあったこと。また、技術を使うという点から、産官共同の事業や、企業からの支援が大きな意味をもったり、アーティスト自身が独自技術を開発できないゆえ、既製のデバイスを使わざるを得ない点などが、特徴としてあげられる、と。/あとがきの、「画像掲載の必要性に関する一部指導教官の的確な指摘に対して、筆者は「Googleで検索してください」と生意気な答えをした。その理由は、まず、自分が結局はインターネット上の情報に依存するしかなかったからである」というエピソードが好き。/ダムタイプ「LOVERS」は見てみたい。/幻想的な幻燈のような作品をつくるクワクボリョウタ氏が明和電機出身だったとは。/ARTLABやICCの活動の紹介は非常に興味深かった。


著者 :
株式会社ゲンロン
発売日 : 2016-07-29
馬定延さんのsiafのイベントでのアーティスト・トークで、三原聡一郎さんの「土の日記」という作品に触れられ、そこから、リアルDMZプロジェクトに興味を持ち、キム・ソンジョンさんの「博物館から庭へ-リアルDMZプロジェクトの哲学」「国際性と地域性の並行関係ーリアルDMZプロジェクト」にたどり着き、読了。DMZに着目したイベント、というのが異色で着眼点が鋭く、興味が惹かれた。自然環境をどうやってプロジェクトの中に生かしていくか。様々な場所から植物を引き抜いて並べる、歴史的な「庭」ではなく、新しい「庭」の概念を提示したい。DMZの「過去性」を強調するとモニュメントの制作に陥り忘却に寄与する。「現在性」を強調すると北朝鮮の脅威を煽る政府のイデオロギーに近づく、という罠を乗り越える必要。日本の美術会は、東日本大震災以前は、総じて内面的な美意識の追求が強いように思ったが、以後は政治的社会的な問題に関心を持ち、考える作家が増えたといった指摘。ナム・ジュン・パイクが提示したネットワーク作りの重要性、韓国の美術家を世界に繋げる機会を提供したこと。地域ごとのビエンナーレは、潤沢な予算を得て展覧会をするよりは、特定のテーマを扱い、長期的に調査と制作を行うことが良いのでは、という提案。プロジェクトは、武装された「非武装地帯」と言う皮肉に向けられたもので、DMZの現実の非武装化や平和に関する議論を促し、韓国と北朝鮮の交流推進を模索している、という思想。といったあたりが興味深かった。


ハンス・ウルリッヒ・オブリスト「ミュージック」つながりで手にとったので、音楽的に読んだ。コンセプチュアル・アートの可能性、視点の広がりを感じさせる。ジョン・レノン「イマジン」の誕生にインスピレーションを与えた書、とのこと。/想像しなさい 千の太陽が いっぺんに空にあるところを。/空はピュアなブルーでなければならない/絵を描きなさい。 一日のきまった時間の きまった光のもとでしか現れない色をつかって/道を開けなさい。 風のために/Draw a line. Erase a line/と言ったあたりのフレーズが印象に残る。


25巻から33巻途中まで再読。ちょうど、合従軍が秦に攻め込み、奮戦の末、秦が勝つまで。(25)合従軍との戦い ひょう公の突撃 (26) 騰が楚の大将を撃つ (27) 趙の万極を討ち取りその後は15日の凡戦。総攻撃が始まるが
キングダム28蒙武の意外な高等戦術の突撃。騰による王賁と蒙恬の抜擢。恒騎と張唐の奇襲による韓将の斬首。オルド軍に押されたとみた王翦の一手 (29)蒙武が汗明を討ち取り光明が差したかに思えたが楚の媧燐の別働隊は函谷関の裏に回り、と。(30) 函谷関は死守 しかし南道から迫る李牧 李牧本陣に迫った鑣公将軍も討ち死にし ついに嬴政自ら出陣 (31) 最の戦いは2日目へ (32) 7日持ち堪え、楊端和の援軍がついに (33) 合従軍の退却 秦の勝利 信の三千将への昇進


「スタア」のみ読了。おそらく一度だけ俳優として主演した映画撮影での経験が元になっているのだろうか、という推測。皮肉屋で年上の付き人と実は付き合っている若手スター俳優。自分は他の人々とは違うという優越と孤独、その内実が語られているように思った。/僕の帰るという期待も御馳走の一部なら、僕の不在そのものも御馳走の一部なのだから。...スタアというのは、いつもその場にいないほうがいいのだ/正に「見られる」という僕らの特質が、僕らを世間から弾き出し、世外の人にしてしまう原因だからだ。/あの万引き男は二十年後の僕なのだ!/幸福がつかのまだという哲学は、不幸な人間も幸福な人間もどちらも好い気持ちにさせる力を持っている。/


結局は当時のイングランドってブリテン島半分の小国だったんだよな、と思いつつ。/引き伸ばし、そらとぼけ、ぐずつきは、外交戦術としては高等かもしれないが…。/スペインとの決戦は、直接対決を避ける努力を続けたものの決裂。経験豊かな海将にまかせたエリザベスと、海戦未経験の将軍に事細かに指示をあたえたフェリペ二世の鮮やかな対比。/廷臣たちの活躍は、手堅いセシル、ウォルシンガム、ローリー…らと、才気煥発だが最後は破滅したエセックス伯の対比が興味深い。シェイクスピアもエセックス伯がバックにいて活動していたとは。


これからどうしようかというところの凪に差し伸べられた、スナックで働かないか、という誘い。ママと先輩キャスト二人にかわいがられ、愛され、ようやく居心地を得た思いに。凪のうちに押しかけの女子会も自分をつくろわず、受け入れてくれて。そして隣家のうららとうらら母とのドライブ。凪に、会うと今度はゴンさんのほうが緊張しちゃうというゴンさん。そしてスナックの常連客のもとにやってきたのは、まさかまさかの凪にとっては凶悪な元カレ。けど、人間関係のアドバイスくれたりしたり。と、いったところ。/想像してみてください 選択肢が増えると 万能感で胸が沸きませんか ぶわっと/自分には難なくできることが自分以外には難ありかもしれないことに気づいていないのね/語彙もないまままっすぐに突っ込んでいける三下ザコキャラになれたらいいのにって/


肝も入ったさざえのなめろう、エビ味噌だけをしそでくるんだ天ぷら、鶏皮餃子に特に心惹かれた巻でした。おれ、もう、持ってるで自分を納得させられる紺野さんに、自足、て言葉を思い出す。


周囲も認める業績を上げバリバリ働く誰もが振り返る美女紅川メイ。夜は、チェーン店でちょい飲みするのを愛し、そこで、緊張がほぐれると、頭身が縮んでしまい、なまらうみゃー、という心の声を漏らしてしまうという特異体質。チェーン店の名前が隠されているようで、たたずまいや商品からバレバレなのはご愛嬌。どれも美味しそうでちょい飲みしたくなること請け合いです。「天丼や」が個人的に心惹かれました。


裏アドルフに告ぐ的な、というつぶやきを見かけ、手に取るが、宇宙人の兄妹が主要キャラクターてので興を削がれる。ポーランド人音楽家と総統付きのピアニストとその妹のストーリーに絡めて語られる第二次世界大戦。史実部分は簡潔にまとまっていた。


著者を含め、多数の人が手首につけたウェアラブルセンサーから取得したデータをもとに語られる。データが多くなれば多くなるほど、傾向というのはランダムになるのかと思っていたが、多数回のやりとりのあとは、確たる原因がなくとも、特徴的な偏りが生まれる、というのは非常に興味深い。「一日に使えるエネルギーの総量とその配分の仕方は法則により制限されていて、そのせいで意思のままに時間を使うことはできない」「自分が積極的に行動を起こしたかによって、人は幸福感を得る。人間関係、お金、健康、などの環境要因は幸福感にあまり影響しない」「自分の身体のことは自分で決めてると考えがちだが、周りの強い影響を受けており、同時に周りにも影響を与えている」「休憩中の会話が活発だと生産性は向上するというケーススタディー」などなどの視点は興味深い。/まずは業績(アウトカム)を決める、実現手段は状況に合わせて柔軟に変える。人間が仮説を立てない、大量のデータを学習したコンピュータに仮説を立てさせる取り組みは面白く感じた。


15年ぶりぐらいの再読。ハンス・ウルリッヒ・オブリスト「ミュージック」を読んで再び読んでみたくなる。/ジョンは、自分がしたいのに勇気がなくてできないことを平気でやってる女、というので、私に惹かれたのだと思う、という言葉にあるように、一読、アバンギャルドなアートも音楽もうウーマンリブ運動も、誰と生き、何を発言するか、自分のやりたいことを我慢せずにやってきた女性、という印象。今よりもはるかに女性が抑圧されていた世界にあって、ジョンとのことで世界中から誹謗中傷を受け、傷つかないわけはないけれど、それでもまっすぐ立っているといった感。世界にバカヤローと言ってやりたい気持ちを秘めながらも。嵐の中を歩いた足跡のようなもの、と本人は語るけれども、もっとオノ・ヨーコのアートに触れてみたいと思った。


ブルーピリオド:受験前々日なのに、鮎川の突発的な海への小旅行に付き合った八虎。何があったか語り合い、お互い剥き出しの自分を絵に描き。別れ際の、落ちたら俺のせい、受かったら俺のおかげという八虎に、逃げるべき場所と戦うべき場所を間違えてたのか、君は正面からずっと戦ってきた、という鮎川の独白が印象に。/大神さんだだ漏れです:柳沼くんの、誰とでもわかりあえるとは言えないが、こうしてゆずり合うことはできると思うよ、と歩道橋の上で語りかけるのが印象に/フラジャイル:中熊先生に、行動展示ですか?動物園の、と問い、ダイエットだっつうの、てやりとりがツボ。/スキップとローファー:向いてないってわかってる方法に執着するのって時間の浪費、というのに志摩くん冷た正論、と返すも深く納得してしまうみつみ/ワンダンス:エド・シーラン/Don't、Shape of you 聞いてみたくなる。


6年越しの読了。なんで買っておいたのかも今となっては覚えてないけれども。名前だけは知っていた一冊。/家出ということで次々と消えていく女子生徒。その裏には...気づいてそれを食い止めようとするもの、すり抜けて己の野望を満たそうとするもの、いり乱れ繰り広げられるストーリー。最後はドンデン返しのドンデン返しのドンデン返しのような。驚かされたような苦いようなあっけないような後味。/もう一つの人格として浮かび上がってくるブギーポップの真摯な眼差しと言葉が印象に残る。/夢が見られない、未来を想えない、そんな世界はそれ自体で間違ってる。でもそのことと戦うのは君たち/ニュルンベルクのマイスタージンガー第一幕前奏曲の口笛/普通というのはそのまま放っておいたらずーっとそのままだということだ。だからそれが嫌ならどこかで普通でなくならなければならない。/優しさがすべてに優先する動機だと駄目なの?/


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2019年02月01日

2019年01月に読んだ本

2巻から8巻まで読了。舞妓になるために、青森から京都へ来た幼馴染のキヨとすみれ。素質がないと見放されたが、一転、キヨは舞妓さん達のまかないになることに。すみれはとことん自分に厳しく精進し、舞妓になり、売れっ子になっていく。その様を横で見つつ、心の底から活躍を喜び、自分に厳しすぎてガス欠気味なときは、そっと料理で癒す、そんな関係が淡々と描かれる。新キャラ理子は物怖じせず、素直。メガネさん姉さんと丁々発止のやり取りを見せるのも見せ場。また、花街のしきたりなどいろいろ描かれ興味深い。


将軍家では、凡庸と見られがちな義詮の地味だが堅実な手腕。専制的君主という印象の義満が初期には御所巻をかけられたり守護たちの統制に苦慮しており、それらの勢力のバランスを取ることで、のちに専制的になったこと。義持政権の安定性。義維・義栄親子のつかの間の栄光と挫折、子孫の平島公方としての貴種性などが印象に。執事・管領・京兆家家督では、細川頼之の失脚させられたのちも河野家を返り討ちにしたりのちに復権したりした粘り腰。義持政権を支えた細川満元。義政の権威を抱かず独自に論功行賞や軍勢催促をした細川勝元。行事の際のみ管領に就任し、管領としてではなく幕府の実力者として君臨した細川政元が印象に残った。


著者 : 古田雄介
社会評論社
発売日 : 2015-12-11
病気や事故などなんらかの理由で運営者が亡くなったことがわかるサイトを集めたもの。更新停止に至るまでの運営者の思い、管理状況や遺されたものの思いまで含めて、読む側に伝わってくる。/個人的には、ここに記載されていないが、鷺沢萠さんの故人サイト、モンゴル史研究者の岩武昭男さんのHPに思いをはせてしまう。/消滅サイトのルーツや変遷は「Internet Archive」で調べることができるというのは有益な情報。早速、岩武さんのサイトを見に行って、頻繁に訪問していた頃のことを懐かしく思い出した。/できるシリーズを生んだ功労者のHPを今も守り続けるインプレス社。「Ken's Home Page」/goodbye world 佐久間正英さんの最後の3000字の記事/「女性編集者二階堂奥歯さんの「八本脚の蝶」/kousukeのページ:遺族が死者と語り合い向き合うかのように更新される。/大学が運営を引き継いだ、菱木スウェーデン法研究所の豊かな中身/などなどのページは、これからゆっくりと自分でも見に行ってみたい。/あとがきの「死はインターネットで学べる。知ることは後ろめたいことではない。大切にするということは腫れ物扱いすることではない。」がぐっとくる。


表題作、電話・睡眠・音楽が読みたくて、手に取る。あるOLの日常を、セリフを極限まで絞って描いた一編。ただ、電話し、入浴し、出かけ、クラブで酒を飲み、音楽を聴き、語り、帰るだけなんだけど、なんだろうこの味わい深さは、と。正直、初期の絵柄はちょっと昔すぎて受け付けづらいところもあったけど、那智の滝に修行に行く友人の話がそんなオチで、という繋がりとか、昔国語の教科書に出てきた梅崎春生のカロの話が読めてよかったり、赤塚不二夫の満州からの引き上げ話とかいろいろ楽しめた。解説で強く押している
斎藤潤一郎「死都調布」、また「ユースカ」の「東村山アドマチック天国」「亀有公園前私」、西村ツチカ「花を植えた女」、永美太郎「エコール・ド・プラトーン」(トーチweb)、林静一「鱗粉」も読んでみたくなる。ピチカート・ワン「わたくしの二十世紀」の「かなしいうわさ」も聞いてみたい。


小笠原弘幸「オスマン帝国」に触発されて。興味のある分をつまみ読み。以下、抜粋と雑感。/食材圏の広がり、食材の豊富化は、宮廷の食文化から、一般過程の食卓にも反映。同時代の宮廷の台所の仕入帳の食材の多くが、1600・1640年の公定価格表に現れ、市中でも入手し得たことがわかる、と。/現代のトルコの代表的な料理書のジャンル分けは、トルコ風と西洋風。19世紀末の様式が尾をひく、と。/動物質の香料で強烈な香りのする麝香と竜涎香入りのシェルベット。不可思議かつ強烈な香りを放つ飲み物だったのでは、と。これはぜひ一度試してみたいところ。個人的には。/トルコのラクはブドウから作られる蒸留酒。酒を嗜むムスリムにも、ぶどう酒は神が禁じたが、ラクはムハンマド在世中には存在しなかったからオーケー、と言う人も。どっちもブドウが原料のお酒なのにね、と興味深く思う。/「バクラヴァのかたわらのパイ」というと「はるかに容易なこと」を意味するトルコの決まり文句なのだとか。それだけ手間がかかるから、と。


小笠原弘幸「オスマン帝国」に触発されて。大づかみに言うと、宗教を軸に統治しようとしたオスマン帝国が、支配下の「民族」の「国民国家」による統合の熱望に、対抗し得なかった、ということに。また、多様性を認める社会の困難さのモデルとして、崩壊過程のオスマン帝国がケーススタディーとしてあげられる。


最果タヒ「百人一首という感情」に導かれて。こちらは見開き2ページで均等に1首ずつ解説。作者の経歴やその歌の百人一首中の立ち位置などがわかり有益だった。ざっと見渡す雨と恋の歌と風景の歌とが大半だなあ、と思いつつ。まあただ風景を詠んでいるようで深い含意があったりもするのだけれど。


サーディク・リファト、ミドハト・パシャ、シヤースィ、ナームク・ケマル、アフメド・フェリト、ズィヤー・ギョカルプら政治家や活動家の思想や群像劇が描かれたところがよかった。そうした人々の思想や活動があり、行きつ戻りつしつつも、改革は進んでいったものの、ついには、あとがきにあるように"オスマンは間違いなく「ヨーロッパ」の欠くべからざる一員であったが、まさにその「ヨーロッパ」のシステムの中にいたがゆえに崩壊を余儀なくされたのである。"ということに。その歴史的、地理的要因から、ヨーロッパと関わらざるを得ず、「東方問題」の客体として、西欧を外交的に操縦できた場面もあったが、ヨーロッパの方針が勢力均衡からオスマン領土の簒奪へ向かった時、なすすべがなかった。様々な改革も、後付けで振り返ると、状況に応じて、二転三転しつつも、ヨーロッパにならったり、イスラム側の改革を行っても、結果としては一手、二手、遅れていた感があった、ということか。/1924年共和制最初の憲法の88条「トルコの住民は、宗教、民族のいかんを問わず、同胞という観点からトルコ人と呼ばれる」という節の含意の深さ。


Guaraで店内のスクリーンに流れていたのを眺めていたのをきっかけに、iTunesで映画版をレンタルしてきて、そのクールさとどうしようもなさにヤラれ、原作にも手を伸ばす。映画版より登場人物が多く、さらに多くの雑多なエピソードが細切れに詰め込まれていて、乾いた疾走感。登場人物を絞って、エピソードを削り、別の登場人物に割りあてたりして、組み替えられたのが映画版だということがよくわかった。映画では触れられなかった、トレインスポッティング=列車見物、の由来も、来るはずもない列車を、リースセントラル駅に、レントンとベグビーが見に行き、酔っ払ったベグビーの親父さんに声をかけられたことが由来と知る。


おそらく60年代ニューヨークに行き交う市井の人々の人生の1シーンを哀歓を込めて描いた短編集。確か高倉健さんが亡くなった時に、幸せの黄色いハンカチを見て、それで原作も読んでみたいと思い手にとったのが最初。ずいぶん物語を膨らませたんだな、映画ではと思った。4年越しに読み終わった。さまざな章に顔を出す、ロバート・マロイの一連のストーリーが一番印象に残ったかな。13,14章からして、別れた女房に断られ、いまは人妻の昔付き合った女には断られ...と。/「あんたはな、おれの領分を侵したんだよ。小ざかしい顔をして、おれの世界に土足で踏みこんできたんだ」/「そこへ、あの膨大な書物が目に入ったんだ。いまから読みはじめても、たとえ一生かかったって、全部を読み切れるはずはないと思った。そのとき、女もそうじゃないか、と思ったんだ。一生かかったって、この世の全ての女を征服できるわけじゃない、とね」


第10章第2節より/18c初頭のイブラヒム・ミュテフェリカといえば、オスマン帝国で初の活版印刷を導入、としか思っていなかったが、「統治の書」をものしていたとは。「統治の書」のフォーマットで初めて中東イスラム的モデルに基づく組織ではなく、近代西欧の新しい組織モデルに基づく組織を比較対象として取り上げ、軍事組織においてはオスマンは技術的優位を失い、改革を提言。かつての黄金時代への懐古ではなく、外の世界の新しい組織モデルを目標としている。ハンガリー出身の神学生出身でその後改宗したという出身が影響しているのか。/イルミセキズ・チェレビイの目が、フランスの政治制度ではなく、もっぱら風俗・文化に向けられていたこと、ただ、西欧外交の専門家として顧問的役割を果たしていたことにも触れられていた。


文庫版が出たので、再読。/社交すらも打ち捨てて、本とか漫画をずーっと読んでいる人って、そんなに多くない(略)常に何かを読んでいる私に対して、周囲の誰も何も言わなくなってくる。「え?なんだろう、これでいいのかな?」(略)でも、最近は、もういいかなって。(三浦しをん)という一節に、そこまでは突き詰められてないけれど、そこはかとなく共感を抱き、「諸君、私は今、幸せである。「他者」と「自意識」を手放して、私はようやく定住の地を見つけたのだ。」(中村うさぎ)という文庫版あとがきの一節にぐっとくる。


失踪した父。眠りから醒めない母。「光の帝国」の一編に登場した拝島家が、長編の主人公として再登場。特殊な能力を持つ娘の時子は、母を救おうと、教えられた連絡先へ連絡をとるが...。裏返す、裏返される、洗う、見る、見せる、時系列も歪み、ねじれ、行きつ戻りつし、どこからが本当に見えていて、幻を見ているのか、そもそも本当に見えているとは、というところまで問いかけ、予想を裏切りに裏切り、失疾走していく物語。月並みだけど、すごい物語の生成に立ち会ってしまったな、と。もう全てが溶け合うという方向に行ってしまっている世界、そのことを自覚しなければ、と。/「知覚って、そんなに絶対的なもんじゃないんだよ。もっと流動的で相対的。見える、見えない、と一見絶対的に思えることだって、実は精神的な部分がかなり支配してるんだよな」


価格表や帳簿などの資料を紐解いて、オスマン帝国時代のイスタンブルの食の様子を、貧者から庶民、イェニチェリからスルタンに至るまで描いてくれる。それとともに、統一的な市政がなく、ワクフが都市の建設・維持に重要な役割を果たしていたこと。貴重品ながらも、夏でも、ブルサ近郊のウルダーから氷が運ばれていたこと。イェニチェリたちへの俸給としての大鍋のスープが重要だったこと。租税が太陽暦ベースで年に4回だったのに、俸給は太陰暦ベースで年4回、太陽暦に直すと年5回の年もあって「消え去り年」と呼ばれていたことなどが語られる。筆での料理、食材づくしの様は、目で美味しいと言いたくなるほどの絢爛豪華さ。特に気になったのは下記二つ。/バラ水(ギュッラーブ):バラのエッセンスに、肉桂粉、丁子、ロングペッパー、砂糖を加えた/スルタン風蜂蜜水(マーイ・アセリ・スルタンー):水に蜂蜜、肉桂、丁子、サフラン、ナツメグの皮、印度アロエなどの各種香料、さらに高価な香料の双璧、麝香と竜涎香を加えた複雑微妙な香りの飲み物。


近松の頃の心中物の浄瑠璃から、生國魂神社が心中の場になっており、その地が性や愛と結びついて認識されていたと考えられること。神社周りの施設の跡地に、水茶屋、芸妓屋、席貸しなど、ラブホテル街が形成される下地が十分にあった。そして風営法の改正で、警察の監視下に置かれ、外観や内装の上で強い制限を受けることになったことが描かれる。付属の、生玉の地域ごとに、細かい年代で区切って、ラブホテル名の変遷図が描かれていて、すごいなあ、よく調べたなあと思った。ラブホテル名なども伺えて興味深かった。


古代ギリシア、詩人サッポーのもとに集められた、合唱に励む少女たちの一人、エーリンナ。花嫁修業と割り切るばかりの女子たちの中にあって、詩人になりたい、音楽をやりたいという熱い思いを抱くエーリンナの学園生活の物語。機織りばかりで、結婚相手も生き方も自分で決められなくてつまらないというエーリンナに、サッポーは衣服も詩もどちらも大事でと諭し。女に音楽はできない、と言うリュコスには、音楽に男も女も関係ないわと言い返し。イーリアスとオデュッセイアの引用でやりあう二人のシーンは、和歌でやりあう平安貴族の趣き。女の子も男の子もみんな自由に好きなことをできる世界を願うわ、と言うシーンにぐっとくる。


チベットの医者見習いのカン・シバと、婚約者のラティの初々しい関係。一妻多夫婚という風習。医者だから財産があるのではなくすこし財産があるから医者になったという考え方(治療に見返りを求めないケースも)。落石で仲間も売り物も失った商人が、見返りなしに治療を受け、売り物まで持たされ、のちにお礼にやってくる一幕。そして、あでやかな競馬祭りの様子が描かれて、楽しい。


3,4,6章のみ読了。興味深かったトピックは以下の通り。/帝国の「内」と「外」の分画は多くの不明瞭性。境域に存在する属国、それもムスリムやキリスト教の諸君侯国で実効的コントロールが強く及ぶものから、ラグーザのように内政的に極めて独立性の高いものまで/帝国臣民と外国人ではなく、ズィンミーとムスタミンとして把握。国家への帰属を超える「宗教」への帰属が人間の区分のもっとも基本的なカテゴリー/帝国の支配組織から臣民に対するコミュニケーションは第一にはトルコ語。公用語的な地位。ただ唯一ではない。アラビア語、ギリシア語、アルメニア語なども公的に用いられ。/国家的な対外コミュニケーションは、基本的に不対等の原則に立つもの。/ジャーススcasusと呼ばれるスパイの使用は、すでに少なくとも一五世紀には確認しうる。スパイとしては、帝国臣民のムスリム、非ムスリムに加えて、時には外国在住の非ムスリムまでも利用されたようである。p.108(第3章オスマン帝国と対外的コミュニケーション)/カラマン君侯国においてトルコ語がはじめて公用語として用いられるに至ったと言われる。/非ムスリムが各々の言語と文字を用いて印刷出版活動を行うことは早くから容認。ヘブライ語、1492年、アルメニア語、1567年、ギリシア語、1627年。/様々な言語を母語とする人々のなかから、各々の言語にアイデンティティーの根源を求め、「民族意識」に「目覚める」人々が、現れ始めた。/「文明語」としてのオスマン語を核として成立していたオスマン帝国の多言語帝国体制は、言語が単なるコミュニケーションの手段から、「民族」という、新しい共同体幻想のシンボルと化したとき、崩壊していった(第4章多言語帝国の構造)//不平等の下の共存という古い統合様式を否定し、自由と平等と参加を求めて形成されたはずの中東・バルカンの諸「ネーション・ステイト」の少なからぬ部分は、平等の下の共存という新しい原則に基づく、新しい統合様式と新しい共存様式を、なお十分に確立しえていないように思える。(第6章イスラム的共存の伝統とその変容)


片山さんの音楽エッセイを読んでると、こんな風に音楽から聴き取れて、自分なりの解釈をほどこせたら、どんなにか楽しいだろう、ということ。博学な音楽、歴史、文学などの知識に裏打ちされた。とてもその境地には達せないと知りつつ、その一端にでも触れたくて、紹介されている音盤のうち、興味の湧くものに手をのばす、と。特に、ブーレーズ「シュル・アンシーズ」、アダムズ「エロス・ピアノ」、武満徹「リヴァラン」は収穫。”ブランキスト、ライヒ”の章で示されたブランキからの一節も。/「進歩なんてない。それが真実だ。すべての出来事はいつかどこかであったことの再版にすぎない。違いが起こるとしてもそれはわずかな変奏程度だ。自分が独自な存在であると考えるのもまったく無意味である。この世界には自分と同じような人間がじつは無数にいる。過去が野蛮で未来は幸福だという発想も夢まぼろしである。過去にはすでに野蛮も幸福もあったし、未来もまた同じだ。」


小さなライブハウスで好評を博すダイたちのバンド。さらなるプロモーションにと空港のピアノでブルーノが昔馴染みの売れっ子なクラシックのピアニストと連弾。SNSで話題に。高額オファーがブルーノに殺到するが、マネージャーにだけ明かしたのは「おれはあいつらが好きなんだ」という言葉。その後、ブッキングがなくなったバンドは、オランダの小さな小さなジャズフェスに出ることに。三人だけで運営する初めてのフェス。至らないところもあるけれど熱意だけは感じ。ダイは、来賓の有名ミュージシャンに熱い思いをぶつけるが。次巻、フェス、開幕。hatocoffee で読了。


アイスランドを舞台に、私立探偵を生業に暮らす慧を主人公に。日本の友の帰国。人探しの依頼。救出の過程で感じた既視感。弟、ミチタカの持つまがまがしい能力が明らかとなり。また、ジェンダーに関しては日本よりアイスランドが圧倒的に考え方が進んでいることが示される。ミチタカの能力としてきたことに気づいた時、慧はどう出るのだろうかと思いつつ。


伊達さんの姉二人のかしましさとたくましさ。沼ちゃんの子供時代の思い出。彼氏との約束に一喜一憂する要さん。そのままを見てもらおうと思ったのに少しカッコつけてしまったことまで言わずにいられない要さん。それに対して、恋人だからって、もっと言えば夫婦だからってすべてを見せ会わなくていいんですよ、と高岡さん。実家へ帰ることにした要さんに、新幹線の見送りで、ずっと応援してる、のうちわを持って見送った沼ちゃんのシーンがじーんときました。踏み込み過ぎず、かといって、冷たいわけでもない、ほどよい関係が描かれていて心地よかった。


相変わらずの力強さ、まわりくどさと、疾走感。二人のキスは隕石をも砕き、すべてはキミとの結婚のためだと言い切る金剛寺さん。その思いは60年先のことまで語られ。雨に濡れた世界がかがやいて見えて。いちいち、行動が、思想が、世界に、宇宙にインパクトを与える、金剛寺さんと樺山くんのカップル。好きです。最後には、密かに地球を救う同級生も登場し。また次巻で語られるのだろう、


常識に基づく説明は 、なぜ物事が起こったかを教えているように思えても 、実は何が起こったかしか述べていないのである 。(常識は循環論法に陥りがち。/また、この不確実な世の中では、予測とは、いくつかの可能性が、どれくらいの確率で起こるか、くらいしか見積もれない。/ソニーもアップルもおそらくは正しい判断をくだした。たまたまそも結果があっていたかどうかなのだ、という困難にも現れている。/「予測とコントロ ール 」から 「測定と対応 」への変化/それでもテクノロジ ーは科学の巨大な可能性を示しており 、われわれはそのおかげで歴史上はじめて 、大きな集団やさらには社会全体のリアルタイムの行動をかなり正確に観察できる/といったあたりが印象に残った。


全2巻読了。19世紀、イギリスと中国を舞台に、命を捨て駒のように扱われる労働者階級から抜け出すために、東インド会社の植物採集員に応募したフォーチュン。しかし、背後には、茶の製法や茶樹を盗み出す密命が、そしてさらには捨て駒として殺され、イギリスと中国の開戦の口実になってもらおうという意図もあった。中国で協力者を得つつ、茶工場を見学、本当の使命を秘めたまま、心苦しい思いを抱きつつ、中国の貧しい人々と接し、自らの国での暮らしが思いやられ、今まで知ることのできなかった中国の一面を知る。使命は、表向きは失敗とされたが、密かにとっていた予防策で、貧しい人にも茶は行き渡ることに。みずからの名を誇ることなく。そしてもっと壮大な話になりそうだったのに、全2巻は惜しい。


誰ともかかわらず、誰に聴かすでもなく、ただ自分だけ満足して音楽がやれればよかった清澄。マンションの上の部屋にいて、その音楽に惚れ込んでしまった潮。潮の同級生でレーベルの新人発掘担当の航太郎。伸び悩んでいるインディーズバンドのベーシストで、清澄の高校の先輩の陸。最初は、潮の助けも拒み、路上ライブするも何も変わらず、陸がきてセッションして少しかわり、潮が三人をつなげて「一回ライブしよ!」てとこにこぎつけ、陸の気持ちが、清澄と真剣に音楽やる、てとこまでが2巻。続きが楽しみ。勢いと静かな情熱を感じながら読み進めた。どうして清澄がそこまで人を拒絶するのか、は気になるところ。何度も、音楽なんてタダで聴けるのに、それでメシ食うとかムリていうのも本心の裏返しなのか。


昭和初期、東京にあったという月光社は、人間の代行がお仕事。ある時は毒親に結婚を告げに、ある時は軟禁されている使用人と入れ替わるために。しかし、その背後には当初の依頼とは異なる思惑が含まれており…と。レイ子さんの変装具合が、物理的なものと心因的なもので描かれ。なりきるとは言っても、本人にしかわからない記憶とかは指摘されると厳しいのではと思いつつも。ただ代行するだけでなく、当人だったらどうするか迄入りこんで、演じるのはすごいなあと。四話では須賀とレイ子の出会いと過去が描かれ。


狂斎、のちの河鍋暁斎、弟弟子の後年の月岡芳年。いずれも寡聞にして知らず。狂斎の不遇の空白時代を描く、と。酔うとたまに「見える」からと普段から酔いつぶれ、しかし絵に対する情熱は凄まじく、常に画業のことを考え。行き倒れの死体や袈裟斬りにあった着物などを題材に生々しいまでの絵を描き、圧倒的な速さで他の絵を模写し吸収し、さらに高みに登ろうとする様が描かれる。ほぼ無口設定で、着物の背中に「ない」「図星」など心情が描かれるの可笑しい。


感想は、同じ著者の音楽放浪記 世界版と基本的には同じ。伊福部昭、橋本國彦、黛敏郎、武満徹、細川俊夫、西村朗、川島素晴、入野義朗あたりの作品を聞き返したり、初めて聞いたりといったところ。/三島由紀夫「金閣寺」を原作とした黛敏郎のオペラ。「幕切れで美しいものを焼きはらいに決然と出立する溝口の姿は、自らを滅ぼそうと市ヶ谷に向かう三島その人といやでもダブるのだ。」/團伊玖磨のオペラ「ひかりごけ」について。「それは三島事件の秘教的記憶物。そこにはミシマないしmishimaが偏在している。」/「おそらく、武満の演奏会用作品は、政治ではなく経済と、ひそかに、もしかして本人もじゅうぶんに自覚していないところで関係していた。」あたりが興味深かった。


燃え殻さんオススメで手に取った一冊。ダルダル星人として生まれてきてしまったダルちゃん。周りに合わせることで必死に行きてきたけど、時々自分の本当の気持ち、考えがわからなくなり。ストレートに言ってくれるサトウさんに救われ、友達になり。新任のヒロセさんの優秀なんだけどとっつきにくいところ、要領が悪いところに思わず…と。少なからず自分を抑えて社会で生きるメタファーに満ちていて、読んでて共感するところしきり。


自分の気持ちを素直に話せて、本当の自分の姿を見せても、気持ち悪いと思わない人との出会い。その思いを素直に詩に書き留めずにはいられないダルちゃん。自分の居場所と、自分のやりたいことが見つかり、幸せを感じていたけれど..。自分で自分をあたためることができることは幸せ。悲しみや苦しみは自分を離してくれないかもしれないけれど、その先には希望があると信じられるラストシーンにはぐっときました。そして、お互いがお互いの幸せを深く願い、お互いのことを認め合う、ダルちゃんと佐藤さんの友情がとても読んでいて快かった。サトウさんの旦那さんの、普通の人なんてこの世に一人もいない、存在しないまぼろしを幸福の鍵だなんて思ってはいけないよ、は大きなキーポイントだったと思った。


シティーハンター外伝。北条司公認、えすとえむ作。新宿の喫茶キャッツアイを舞台に繰り広げられる、海坊主と美樹の日常。話の中にだけでも、冴羽獠、香、野上冴子が出てきて往年のファンにも嬉しく。迷い猫探し、中学生の見守り、ホストを懲らしめ、新米警察官のサポート、バブルを出し物にしたい高校生のサポート、最後は子供食堂とてんこもり。シャイでクールだけど曲がったことはきらいで、自分のスタイルはあるけど頼まれると断れず、美樹とは深い思いで繋がっている、伊集院隼人氏。続きも気になります。バズーカ持ち出した時と、薬莢のかわりに煮干し詰めた姿は笑いました。


坂本龍一の筝協奏曲と、三島由紀夫と海上保安官についてのみざっと。坂本龍一ほど有名になれば、ガラクタを積み重ねたような、坂本龍一ならではのものを排したように見える筝協奏曲でも温かく迎えられるのだな、という感慨。三島由紀夫が、文化防衛論や全共闘との対話で見せた、知る権利が守られ、書きたいこと言いたいことの言える、言論の自由のある民主主義社会を維持しよう、という主張が、派手なアジテーション、過激なパフォーマンス、自衛隊に乗り込んで演説してのちに切腹という形では、伝わらなかったのに、海上保安官が、尖閣での一連のビデオをネットにあげたことで、いともたやすく国家を慌てさせたことと対比した、この四十年とは、といったところが気になった。


想い人が来なくなり、逃げ出す同僚もいて、また別の同僚と恋人のような関係になり、醒めて、書くことに自らの道を見出したコレット。それは彼女を助け、彼女の職場の知名度をあげるのにも一役買い、行方知れずだった二人との再会、新たな道への希望を導くものだった、と。参考資料に挙げられていた鹿島茂の本も読んでみたくなった。/わからないから愛するのか、愛するあまりわからなくなるのか、と嘯く男。/待たせてる方はすっかり忘れてるってことは誰よりよく俺が知っている。/地獄みたいな人生で存在そのものが悪だとでも?/自ら選んで檻の中にいるのは 何ひとつうまく行かないのを全て環境のせいにできるから/本当の変態とは名付けることのできない欲望を抱えた人間のこと/才能とはただひたすら継続して書いていくこと 自分を掘り下げ続けても絶望しない能力だと気付いたのだ たとえそこに何もなかったとしても/個人的に、ダルちゃん、鼻下長紳士回顧録と続けざまに読んだのだけど、ダルちゃんは詩、コレットは小説だけど、どちらも、書くことで救われているところが共通していてシンクロニシティを感じた。


ワンダンス:熱い導入。ダンス少女とバスケ少年がダンス部に入り...と。歌手スキャットマン・ジョン。吃音症でも自己表現を諦めなかった人、に懐かしさと意気込みと/フラジャイル:急患への外科医と岸先生の奮闘の裏で、宮崎先生は初の学会が実りあるものに。まだ医学生の布施に、ライバルになってもらえませんか、「私、宮崎先輩が良いんです」に、ガッしと熱い友情が生まれるシーンにぐっとくる/ブルーピリオド:鮎川に、誰かが溺れてても救命胴衣は持ってきてくれるけど、一緒には泳いでくれない、と責められ、そのことが気になり集中できない八虎。受験前々日なのに、それを解消するために、二人の夜の旅路は始まり/波よ聞いてくれ:キレイだよ、佐々木希を2で割ったような顔してるね、何も足さずに割るんじゃねえよのテンポには笑いをこらえきれず。そして、今回、ミナレさんは声だけで、城華さんの行き場のない思いと彷徨と決壊が描かれた回。バチボコ?...確かに中原さんじゃなくても、つぶやきたくなるかも。/来世は他人がいい:吉乃のいとこと霧島のダイアローグが興味深く。ほとんどの人が気づかない、霧島の、吉乃以外の話は聞いてるけど、入ってきてない、吉乃の話にだけ食い気味に前のめりになって、他の人を寄せ付けないようにしてる、という指摘と、火花を散らす関係にピリリと。


アダムを捨て駒にしようとするトラヴィス。上官の非情さに、表面は従うふりをしつつ、アダムとルネを助けようと画策するセスとゾエのコンビ。無事に戻った四人。アダムとルネは死んだと見せかけたところに、犯人から届いたメッセージ。ルネの記憶に鍵があるとみてダイブするが、そこで見た人物は、若き天才科学者だった…と。


世界は、大多数の人が直感で信じている状態よりは、だいぶよい状態だし、よくなってきている。ただ、よくなってるとまだ十分ではないは両立することを忘れずに。/物事をドラマチックにとらえがちな本能や分断本能、直線本能、犯人探し本当などを抑えて、世界の実態を正しく把握していくか。それなくして、的を得た新たな政策、社会運動、ビジネスなどでき得ないだろう、と。世界を誤って認識しがちな10の本能について、例を交えて語られすんなり入ってくる。様々な図表を参照できる https://www.gapminder.org/tools/ と、ダラーストリート https://www.gapminder.org/dollar-street/matrix は見てみようと思う。


栗原康「アナキズム」に導かれて手に取る。いま見ても破天荒。反警察、反国家のアナーキスト。ぶらりと海外に出て手持ちがつきてもなんとかなるさ、メーデーで演説すれば牢屋にぶちこまれ、役所仕事に振り回され、時に逃げ、時に放浪し、最後はかえってくるまでが語られる。躍動感に溢れ、ブレない、魅力的な大杉栄像。/船の中で仲良くなった気のいいロシア人と、目の当たりにするユダヤ人差別。帝政復興や反革命の思想を少しも持ってないのに、反ボルシェヴィキの戦いに加わった兵士たちに、なぜ?と問えば、農民たちへの暴虐に憤慨したあまり、との答えがかえってきたこと。当時のフランスで、避妊は、高価なカプセルやひょうたん型のビデなど、貧乏人には手の届きにくいものであることが語られる。



再読。一旦手放そうと思ったのに、もう一度読み返したくなる吸引力。機械がひらめくからって、人間がひらめいちゃいけないという法はない、というAIに人間が勝てない時代に将棋を指す少年のストーリーが今回は印象に。


再読。将軍義尚の死と父義政の悲しみが描かれた「中世」の原稿。"自殺をする人間が嫌いである"から引かれる「芥川龍之介について」。小説集「スタア」新潮社、文学座のための戯曲「喜びの琴」。タクシーの運転手が、三島由紀夫のことを、当時のミシマトシオという流行歌手と見間違った、てあたりが気になった。


再読。主に、口説いてよい女性の4タイプとどう口説くか、交わるべきか、と言ったあたりがメインか。これで全部かどうかは原典に当たらぬとわからないけど。印象深かったのは「男性が女性を思いやることなく満足に達した時 女性は男性に噛みついたり蹴飛ばしたりして 満足を得られなかった怒りを爆発させる」という一節。



日本の遼代史研究が、高井氏と著者のみでほぼ絶学の時期があったというのは寡聞にして知らず。渤海と藩鎮を手がかりに遼代の地方統治を研究した一書。批評の手はなかなかに鋭く、これは論証しきれてないのでは、というのが何点か。それでも中国の他の代、とりわけ北宋代の研究者には必読と強調。ただ、読んでて無前提に、中国的要素、非中国的要素と評文にあるのは危ういと思った。後者は遊牧民的なことを指しているようだが、前者は都市民ということか、あるいは漢民族ということなのか。


これまでのイスタンブルの16世紀後半の人口の諸説を、過大、根拠なしと切って捨て、戸数の資料を元にした推定も、一戸当りの人数をどう設定するかでどうにでもできてしまう。著者は新出の資料を元に当時の小麦消費量を算出、従来の研究に基づき一人当たりの小麦消費量で割り、通説の4分の1近い、約15-20万人程度だったのではと推定。それでも当時の欧州と比べて大規模な都市だったことには変わりないとしつつも。




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2019年01月04日

2018年12月に読んだ本

金子拓「織田信長 不器用すぎた天下人」のあとがきに導かれて。全巻はボリュームあるので、まずは5巻から。最初に目についてのは、個人的に最近読んでる三島由紀夫の切腹による死について。思想的、文学的なしにとどまるもので、政治的な死として扱うべきではない、と。それ以外では総体として、中国との関係でも、幕末、明治の話でも、よく言えば大づかみで方向性を示す、悪く言えば大きな声で大雑把なことを言ってるように思えた。資料からは厳しいけど、私はこう思いたい、と言われたら、小説としては成り立つけど...と。以下興味を惹かれたトピックス/日本で本当のプロの学者の最初は藤原惺窩/北条時頼が抜擢した青砥藤綱/戯曲「花の館」/日中戦争時の冀東政権/天保の庄屋同盟/広瀬正「ツィス」、自分の空想をどれほど精緻に計数化しうるかということに挑んだ

3巻、4巻読了。普通のカレーに、将棋の対局の時にのみ特別に出される陣屋のカレー、大阪でのまむし、兄弟子が最初に焼いてくれた秋刀魚、ひどい敗戦にへこむなゆたに同期が振舞ってくれた手製のリゾット。男社会の将棋の世界で、女なゆえに絡まれたりカチンと来ることにも毅然とし、棋譜を見て惚れた結婚してくれという王子な棋士に勝ってきっぱりと断り、指導対局のファンたちと交流のひと時を持ち、兄弟子にも立ち直り、立ち向かっていくところまで。対局中のご飯が、流れをかえるキーポイントになってたり、関係性にくさびを打ち込んだり、いいアクセントになってるなあ、と。

松浦弥太郎「最低で最高の本屋」つながりで、手にとる。「根付の国」で語られる、戯画的な日本人像。「声」で、人間は人間の為したことを尊重しろ/自然よりも人工に意味ある事を知れ、と語る一方、「カフェにて」では、人間の心の影のあらゆる隅隅を尊重しよう、卑屈も、獰悪も、惨憺も、勇気も、温良も、湧躍も、それが自然であるかぎり、と語られ/けもののをんなよ、と呼びかけで始まる「けもの」。とりとめもなく言葉が連ねられる「狂者の詩」。/「孤坐」で語られる凄まじい厳しさ、寂しさ。/「つゆの夜ふけに」で語られるミケランジェロ。「冬」で語られる、年の切り替わりの硬質な描写。あなたによって私の生は複雑になり豊富になります、と語られる「智恵子抄」。"トパアズいろの香気が立つ、その数滴の天の者なるレモンの汁はぱつとあなたの意識を正常にした"という描写の鮮烈。「梅酒」で語られる、妻を見送った後の詩人の描写の深い余韻。/

「緑の資本論」:大づかみでいうと、三位一体論の導入で、増殖性、流動性を持ち資本主義を産んだキリスト教。単一の神のみを掲げ、利子の厳禁という経済生活全般の実践的革新を図るイスラーム、という対比。神性を持つイエスという概念と、神と人間の間に厳然たる線を引く考えの対比。三位一体論のくだりは大昔に「宗教入門」で読んだ覚えが。「シュトックハウゼン事件」:発言の一部を切り取られ、3.11はアートの最大の作品、と言ったように報道され世界中から非難を浴びた作曲家シュトックハウゼン。芸術とは両義的なもので、日常を破壊するパワーを秘めている点と、それこそがジャーナリズムが敵視するものであることをあぶり出す。

他愛ないことを他愛ない路地を経て親密に話している印象。水戸泉の婚約者、東京牛パラダイスオーストリアてバンド、街で占い師に呼び止められ、あんた女になった方がいいよと言われたリリーさん。自分が水疱瘡をうつしたせいで修学旅行にいけなかったクラスメイトにずっとそのことを言われ続けたナンシーさん。アンチのはずの椎名林檎が売れたことへの思い。浜省のマネーって曲。郷ひろみのアーバン三部作がしみるというナンシーさん。死の直前まで続けられた対談だったので、最後の方になると、ああ、もう少しで時系列で行くと亡くなってしまうんだ、という思いを止められなかった。

八王子ナポリタンラーメンと、ラーメン懐石。ぜひぜひ食べてみたい!と思った。そして高山に高山ラーメンを食べに来た小泉さん。観光客のおばさま三名に高山ラーメンの事を語る語る...すごく親切かつ結果的には三人に高山ラーメン愛を植えつけていて微笑ましい。

2001年という時代の影響を受けずにいられなかった「 Eclectic」。"90年代後半の小沢健二のヒット曲を聴いてたぐらい"の自分にはなじめずほぼ素通りしてしまったアルバムをもう一度聴きたくなった。語られる著者の説の当否を判断する立場にはないのだけれど、この本のありがたいところは、よっぽどのファンでないと追えなかったようなところも含めて、ここ二十年近くの小沢健二の活動を詳細に追っているところ。小沢健二が関わった、限られた人しか見られなかったドキュメンタリー映画、一般に流通されない雑誌に書かれた「うさぎ!」と言う童話、ある学会誌にのった論文、そっけなさが前面に出たインタビュー、一度は公開されたのにしばらくすると消されてしまったブログ、Ustreamの配信で語られたこと、などなど。「ひふみよ」ツアーで披露され、のちに「我ら、時」に収められた「闇」「想像力」「歌は同じ」「自転車」「笑い」と題されたモノローグを聴いてみたく思った。また小沢健二自身の言葉で印象深かったのは、複雑なことを簡単に言い切っちゃう風潮に反して、複雑なまま受け止めようよ、という姿勢、そして、ジョン・ケージの4分33秒を引き合いに出して、僕の場合は十数年だけど、「僕と音楽の関係は、ピアノを開けて弾かないで座っているピアニストとちょっと似ているのかもしれません」という言葉。ライブしてCD出すだけが音楽家ではなく、もっと大きく世界に影響を与えて、良い方向に導きたいという意思が感じられて。

一生を仮想体験させてくれる枕、皮の代わりに綾が張られた普通では鳴らせない綾の鼓、人が暮らせるくらいの空間を持つタンス、時も見えるものも遡らせる幻影、などなど、不思議な道具立てを使いつつ、語られる戯曲集。個人的には、生きる意味などないと嘯いていた青年が、一生の仮想体験を通じて、不思議にも生きたい、と思って現世に帰ってきた話が一番好きかな。他の話にある複雑さ、妙味、濃厚さにも心惹かれはしたけど。/それでもぼくは生きたいんだ!(邯鄲)/生甲斐?冗談をおいいでないよ。こうして生きているのが、生甲斐じゃないか。(卒塔婆小町)/薬をさきに下さって、傷をあとからお与えになるの。(葵上)/正気のときのあの人の凡庸な夢は、今ではすっかり精錬されて、あなたなんかの及びもつかない貴いふしぎな夢、硬い宝石になっているんですわ(班女)

完結。紆余曲折を経て、やはりそこにおさまったか、と言った感じで。いい雰囲気にはなるけれど、明確には描かず、と。帯コメントの、スピンオフ書けたらな、にうっすら期待。そして、中道先生、すごい存在感だった、要所要所に楔を打ち込み、名言の数々。「仕事とお金は等価交換とかできないんだよ。他人が価値を決めつけちゃいけないの」「東海林くんは改世さんじゃないと無理な気がするのよ」「男だろうが女だろうが放っとかれりゃ心は枯れるのよ 歩み寄りが大事なのよ!」

宮中某大事件は、この作品では、密かに裕仁親王が山県有朋を呼びつけ、サシで会談し、決着をつけたという見立て。そして原敬首相は、殿下はもっと広い世界を見るべきだと外遊を勧め、父たる大正天皇も背中を押したため、世界へ、と。杉浦重剛の倫理は使わなければ意味がない、という姿勢が印象に。

初回限定specialカバー、巻末マンガ、解説、あいみょんからのアンサーソングが追加ということで、つい買ってしまう。もちろん本編も、何度目かわからないくらいの再読。「美味しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることを、ボクは幸せと呼びたい」「この瞬間の気持ちがずっと続けばいいのに。明日も、明後日も、何年先もずっと。それは夢だよと誰かに言われたとしても」。押井守監督、うる星やつら2ビューティフルドリーマー、見返したくなる。そして、間をおかず、cakes版も再読。この人のエピソードまるまる削除されてるとかこの人とこの人の話が関口さんに集約されてるとか、七瀬の来歴が少し変更になっていたりとか。かおりとスーとの出会いの時系列が変わっていたりとか。文庫版解説では、読めば改変の理由がわかるとあったが、綺麗にまとまった以外の点ではわからなかった。さすがに事務所をバットで壊しまくった後にバイトを置いて逃げて、そのバイトが障害を引きずったとか、同僚が取引先を鼻が折れるほど殴りつけたエピソードなんかは、何かまずかったんだろうな、ぐらいには思ったけれど。読み比べるとcakes版の方がまとまってない分、雑多な力のようなものを感じる。けど、両方とも好きです。

cakesの三宅香帆さんの連載で見かけた、本を「しまう」ように読むことのできる登場人物のエピソードに惹かれて、手に取る。常野という東北の架空の地の出身の人々が、類まれな記憶力、飛行能力、予知能力、人を焼死させる能力、尋常ではない長寿、などなどの能力を持ちながら、普段は世間に溶け込み、目立たぬように暮らしている世界。己の能力を自覚しているものも、まだ目覚めぬ者も、自覚はしているが持て余しているものも様々。連作短編集なので、この能力を持ったこの人のエピソードをもっと読みたい、と言う思いを幾度か抱く。シリーズものらしいので、それは続編では満たされるのだろうか。「結局は皆同じ月を眺めている」


メインの四人と後輩二人を軸に、遊園地に琵琶湖にサプライズパーティーと、絆を深めていく様が描かれてすがすがしく。ただこの巻、あの店長さんが出てこなかったのが寂しい。ミドリの家の執事さんが、個人プレーにしか目がなかったミドリがチームプレーを楽しむ様子に、胸が熱くなってる様子が印象に。そして、ミキへの吉岡の思いは伝わるのか。次巻へ。

中沢新一「緑の資本論」つながり。動物たちを乱獲した男を、列車から引きずり出して処刑しようとする熊たち、躍り出て、褒められたことじゃないが、生きるためには仕方ないではないか、と割って入る男、と。全く取らずには生きられないことを語りつつ、相応のバランスはあってしかるべきではないかと。

スレイマンが皇位を継ぐ頃には、ライバルはすべて始末されていたという事実を知り、それとは違う、誰も血を流さずにすむ後宮を作ろうと決意したヒュッレム。ガラタ散策で一緒に売られた幼馴染が困窮しているのを救ったのを契機に、ワクフ財団の創立を試みる。一方スレイマンとイブラヒムはハンガリー遠征で着実に成果を上げ、ブダを陥落。遠征優先でワクフのことは一時棚上げとなったが、そこにはイブラヒムのヒュッレムに対する思惑も絡み、と。

子供ができたり、本屋になることを決意したり、自分のブログがゲストハウス作りに役立って一緒に働くことを誘われたり、独自ブランドを作った後輩にスカウトされとり。みんなの人生が動きだす巻。憎み合ってた知人と和解できたり、大学時代のサークルの友人に心底幻滅したり、一人で個性的な書店を見て回り、結局地元の個人書店を継ぐことにしたきみこさんのストーリーが一番印象に。そして、佐藤さんのこれからの仕事っぷりと一度は諦めたはずの関係についても気になる。シャンパンで天ぷらをいただく天シャン、羽田空港第1ターミナルの朝トマトカレーうどん、気になります。

叱咤する五百旗頭、それを受けて悔しい思いをしつつ、前を向く黒澤。人のせいにするヤツは次の扉を開けない、厳しいけど響いてくる。メインは、有能だけど冷たい印象の安いがウェブ版の漫画雑誌を立ち上げ、そこへ過去に安いに潰された東江が投稿してきたことから始まる黒澤の奔走と、中田伯の連載の悪役キャラが浅いと感じる評から憎んでいた父に会いに行くのに付き添う一幕まで。安井も黒澤も企画を通す際の作戦、考えに考え抜いて鮮やか。

道真の兄と基経のエピソード。血なまぐさいものかと思われたが、一瞬の邂逅で、李白の詩をやり取りいしていた様が描かれ。メインの馬頭鬼のはなしも、渤海、ウイグルとの関わりが描かれ、唐のさらに西へ、北へと道真の興味関心が広がる様子が語られる。次巻から新章とのことだけど、いざ新章という雰囲気もなくながれてゆく。

向こうの都合よくでふられても、仕事の関係、顔を合わさないわけにはいかない。揺れ動く十川さん、九重さんに相談してはズバリと言い当てられ、元カノの同僚によからぬ情報を聞いては、勇み足で心ないことを言ってしまったりのジェットコースター。ああ、でもその素直さが魅力でもあるんだよなあと思いつつ。ふらりと現れた好青年は、実は九重さんの…という展開もありつつ。人はいつでも完璧でいられるわけではない、でも、だこらこそ、…と。

エベレストからの浜田さんの生還、入れ替わるような福田さんの旅立ち、四姉妹はそれぞれの道を。すずも、静岡へ旅立ち、どこへでもいける、そして帰ってくるのはこの街と心に決めながら、と。番外編として後日談もあり。

完結巻。いよいよサトコが帰国する時。すべてが分かり合えるわけじゃないけど、それでもいいのだというスタンス。それでもお互いが好きで仲良くなったサトコとナダ。お互いのことを、お互いの文化のことを、知りたいと思い、語りつつ、共に過ごすことで気づきつつ。何年後かのさらりとした後日談もよめて吉。そして、新書で、サトコとナダから考えるイスラム入門て本も出るとか。気になる。

大艦隊を率いた明の鄭和が主人公と知り買わずにいられなかった一冊。生きたい、と思う人を助けずにはいられぬ性分。それが戦場の同僚だろうと、燕王時代の朱棣だろうと、自分を襲った倭寇の子だろうと、そして国を挙げて追っている建文帝であろうとも、という造形。もちろん、鄭和が建文帝を匿っていたなどという説はないとことわりつつも。方孝孺の、お前さんは皇帝の命令より自分の信念を優先することがあるからハラハラするという言葉はこれからも発揮されるのだろう。まずは出航にあたって、秘密警察に乗り込まれたところまでで幕。続きが楽しみ。

権力を撃ちぬき、支配をひっくり返し、自分の理想すらひっくり返して、人としてできることを増やしていく、「生の拡充」。弱者は死ぬんだよォーーーーッ!、だから戦うんだろうが、というアナキストの叫び。弱者が弱者を取り締まることの不毛さ。エマ・ゴールドマンと伊藤野枝の著作への興味が深まる。今この瞬間に行動しないなら、もう絶対に行動することなどないのです、という言葉に撃たれながら、ページをとじた。

言語や詩や恋愛に対する作者の考え方が語られ、千年後と今で、変わらないこと変わったことを対比させつつ描かれる、百人一首。すらすらと古文を読み解けるわけではない身には、歌のエッセンスを解き明かしてくれる。個人的には、「花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり」がぐっときました。以下抜粋/(言葉は)リズムやメロティこそが核で意味は枠だと思ってます/「わからないけれど、でも、なんかいいなって思った」と言ってもらえる時、私はその詩が書けてよかったな、と思う/ふしぎだ、現実を認識することだけが瞳ではない、完成ではない、と知ったとき、何十年も人が、生きていくその理由が、笑い、泣いて、怒って、生きていくその理由が、少しだけわかった気がした。/

自分がアメリカンジョークだと思ってたものは、この中の「プレイボーイ・パーティジョーク」に拠るものだと再認識。シュールだったりナンセンスだったりするショート・ショートが盛りだくさんで楽しめる。これからどうなるんだろう、と余韻を残すものもいくつか。

端から見れば、偏屈で頑固な、自分を卑屈にする考えから、それでいて他とは違う者と誇り、醸成していった美意識や思想に準じて、金閣に火を放つことにいたった主人公。女性と関係を深めようと思うと、金閣が自分に降りてきて、恍惚と虚無を自分に与える感覚が描かれ。また、父がわりとも思っていた師に対する、何をしても見抜いてくれるはずだという歪んだ思慕の念も痛々しく。自らの不自由な足を自覚して、悪を任じて悪に振る舞う柏木の方がよっぽど存在感というか手応えを感じた。

松蔭神社前、蒲田、千駄ヶ谷、砂町。この巻も双子の不動産屋さんがそれぞれの街の住みたくなるようなディープな一面を教えてくれる。個人的には行ったことのある砂町銀座になつかしさを感じた。そして双子の家のリフォームも完成。近所の人みんな呼んでのパーティーも楽しそう。

前半は、零が大恩人の将棋の師匠と大恩人の元担任を、なんとかあかりさんとくっつけようと画策。けど見抜かれちゃう一幕。あいつムカつくよなあと語られつつ仲良くなる師匠と元担任。しかし零の恋路の先行きも…と。後半は、先生たちの職団戦に駆り出されて、高校最後の文化祭に出られなくなった零。けれど、心だけ間に合った!という独白にいままでの積み重ねを思いホロリと来る。そして、まさかまさかの、ハチクロの登場人物再登場!対戦相手として出てくるだけじゃなくて、後日談までしっかり描かれてて幸せでした。

樺太編は、杉元のチームがアシリパさんのチームに合流するために、サーカス団に入って芸を披露することに。しかし鯉登中尉はどこであれだけの芸を身につけたのか。そして、ウィルタと接触して国境を越えたアシリパさんのチームには不穏な出来事が。

この巻は、こぐまの店長さんが、カッパのきゅうり屋さんて本にはまってきゅうりデザートを考案しようと奮闘するところと、最後の、師匠登場のところがよかった

リカさんと真山の距離感がぐっと縮まったことが語られる一幕と、そのことで落ち込んで全部顔に出る山田の、作品をおく倉庫や釜の悩みを、うちの田舎に家建てればいい、君と僕の、とさらりとかっさらっていく野宮の一幕。3月のライオン14巻の、はぐとリカが山田の作業小屋に入りびたっていることが暗示されるシーンに繋がっていくストーリーが描かれている。ここまでくると、竹本くんはどうなったんだろう、というのも描いて欲しい気に。きっと立派な仏像修復技術者になっているとは思うのだけれど。


羽海野チカ展で見た記憶あり。山田の住む商店街に、野宮がやってきて、山田作のモルタルのような見た目のカレーを、おいしい、と言ってのけ、商店街の男たちの心を軒並み打ち倒してしまう一幕。その中での一番の兄貴格にお見合い話が持ち上がり...と。山田と野宮の幸せな行く末と、商店街を愛する二人の別の明るい未来が暗示されるサイドストーリー。

いつも笑顔で愚痴も弱音も吐かずに、ある日ポキっと折れる人。そういう人は吐いていいんだよ、いや吐かないと、と優しく諭すちひろさん。そして最後は突然の出奔。生きてはいるみたい、連絡はあるけれど、どこへとも知れずぶらりと。このまま終わってしまうのか、続きはあるのか。

1〜2巻まで読了。17歳の女子高生と75歳のおばあちゃんが仲良くなったきっかけは、BL漫画。絵がきれいだからと知らずに買ってはまった雪さんと、書店のバイトでそれを見かけて問われるうちに、学校では自分の趣味が話せなかったのに、雪さんとは盛り上がって話せたうららさん。何かすごい好きなことがあって、けど周りに話せる人がいない時に、話せる人と出会えるとすごいテンション上がっちゃうのわかる!と思いつつ、ほっこりした気持ちになって読み終える。

17世紀オスマン帝国を、スルタンの廃立が繰り返される混乱期から、一つのところに権力が集まりそうになると、イェニチェリ、ウラマー、都市民などさまざまなファクターが均衡を求めて蜂起し、それがスルタンの廃立、大宰相の罷免、政策の変更につながると言った、柔軟で「民主的な」分権的な時代と描いたところが一番印象に残る。また、デヴシルメ、兄弟殺しなど、本来のイスラムでは脱法行為とされることも、柔軟に統治に取り込んでいるところも特徴と再認識。支配を支える層も、トルコ名家層からカプクルへ、分権から集権、また分権へと、またティマール制度から徴税請負制、ティマール騎士からイェニチェリ、そして新兵へと。時代に応じ、状況に応じ制度、支配層が変容していく様を横軸に、各スルタンについて語られることを縦軸に語られている点、読みやすかった。


「雪の断章」がすごい吸引力だったので、姉妹編を手に取るが、今作はそれほど。出だしから設定に無理がありすぎて、入り込めず、王朝じゃないんだから、私企業で、その展開、その設定はと思ってしまって。かけめぐる情念的なものにも。ただ、雪の断章の登場人物がチラチラと見え隠れするのが個人的には吉。

金原みわ「さいはて紀行」で女子刑務所に、懲役中の人が切ってくれる一般の人も切ってもらえる美容室に、髪を切りに行く一編があったのを思い起こして、手に取る。取材で、素敵な美容室があると勧められて、友達との話の中から興味本位で、ヘアモデルを辞める最後の一回で、美容技術の指導教官として、そして美容師の姉として。さまざまな立場で訪れ、気づきを得たり、前を向くきっかけを得たりのストーリーが語られていく連作短編。井の中の蛙、されど空の青さを知る、という言葉は初めて聴いた。あおぞら美容室と名付けられ、内装がまるで空の中にいるように塗られたきっかけとして。わかるかもしれないし、わからないかもしれない。この先迷惑をかけるかもしれないし、かけられるかもしれない。それがわかっただけでも収穫だし、止まることにも一歩踏み出すことの理由にもなる。そんなダイアローグがあったシーンがグッとくる。

特攻隊として、8度も出撃しながら生きて帰ってきた人がいたんだ、体当たりではなく爆弾を落とすことにこだわったパイロットがいたんだ、と。戦地においては荒唐無稽な「精神論」に陥らず、残された戦力を、特攻ではなく、反跳爆撃、あるいは夜間洋上進撃に、と進言した人たちもいたのだ、と。/戦後、自らの責任に口を拭った司令官達から「特攻隊は志願だった」という説が流布された。志願が殺到したなら、上官には責任は生まれない。その志願の内容も、内実は強制だった。しかも、身内をかばい、学生出身や若い下士官が率先して送り込まれていたという卑劣。命令した者、命令された者の区別を行わず、「一億総懺悔」などという事の愚かしさ。だからと言って一般の国民も完全に免罪されるわけではない。マスコミも煽ったが、国民も勇壮で感動的な記事を読みたがった。そこから読み取れる現代への教訓に思いをいたしつつ。/特攻が「戦争継続のため」に有効だった。戦術としてアメリカに対して有効ではなくなっていても、日本国民と日本軍人に対しては有効だったから続けられた、という指摘の重さ。/

ブルーピリオド「色を乗せればいいわけじゃない/選ばないっていう選択をすることも同じくらい大事/考えてみればそれだけのこと」/波よ聞いてくれ:ミズホ まあ「泣こよかひっ飛べという事で(泣いてないで飛んでしまえ)、ミズホ「生きるって事は他人の人生に踏み入っていく事ですよ」
「ラジオDJがまさにそういう仕事じゃないですか」/ヴィンランド・サガは、自分のためには他人を弊履のごとく捨て犠牲にしても構わない祖父に嫌気がさしたバルドルが逃走。/BLACK-BOXは、凌駕とレオンの凄惨な約束の中身が明らかに。

舞妓さんを夢見て上京してきたのに、芸事が覚えられず、帰郷を勧められたキヨ。しかし、まかないのおばさんが倒れたのを機に、舞妓さんたちのまかないを作ることになり…。特別なものが出てくるわけじゃないけど、何気無い一品にホッとするストーリー。お客に里心を抱かせないように、置屋ではカレーを作れないというのは、知らなかったなあ。

"「運命はいくつもある。生きるというのは、死を迎える時にようやく全貌を現すたった一つの未来と出会うために、たくさんのたらればと別れを告げる行為なの。"、"高校に入ったら男の子の友達を作りなさい。信用のおける人で、できれば音楽に詳しい人がいいな"という叔母の言葉に導かれるように高校生活に入った未来。周りが引くくらい昔の洋楽に詳しい塔山くんという探偵役を得て、おばさんが残したメッセージ、文芸部の盗作騒ぎ、軽音部室で早朝に鳴る騒音、校内で続発するボヤ騒ぎ、などの謎を解決していく、と。正直、ザイリーカあたりの手際は鮮やかだったけど、ライトな外観に反して、未来のおっちょこちょいすぎるキャラにちょっと...とか廿日市先輩のありえないくらい歪んだキャラに引いたり、おばさんのメッセージ回りくどすぎないかとか、解決編の後味が悪いケースがあったりで(あくまで個人の感想です)。吐痙唾舐汰伽藍沙箱とか、メタル・マシン・ミュージックはどんなのか聞いてみたい。

鉄の重要性は認識されていたが、鉄と交易に重きを置いて機動性を失ったメルキトは、ジャムカに倒される。ボルテを取り戻したテムジン。オン・ハーンの援軍。オン・ハーンの失脚。自軍によるタイチウトへの勝利。ジャムカとの戦を恐れてるの?と問われ、いつかは通る道、草原にハーンは一人でいいのと諭され。最後は、テムジンでの日本での名前を知る、策謀深き老人の正体はいったい…というところまで。鎌倉幕府のものなのか、平家の残党なのか。そらとも。

泥沼の末の敗北、切り替えてからの、泥沼の末の勝利、留美たちをつれての熱海旅行、そして実力制名人との対戦の予告まで、と。熱海旅行は神宮寺の将棋をしていく上での、支柱の一つとしての留美との関係がさらに深まり。久方ぶりの先輩棋士との対局は、やんちゃなだけの棋士から円熟味を増したことを知らしめ。そして、将棋の普及をしたい思いから演歌歌手デビューした棋士にモデルがいたとは。

一果の二者面談にのぞむ和、一果をライバル視する同級生にリレーのコーチをした和、祖母が一時帰宅して厳しく警策で指導される和、和との馴れ初めからいまの思いへと回想するかのこ。最後のページは和のバンド時代の友人と思われ…と。

ここまで詳細に明らかにできるのは文書状況が良いのだろうか。家督相続時、氏康の弟為昌と幻庵宗哲に、一門衆として、氏康の代わりに軍総司令官の職務を与えていたのに、弟の死で構想が瓦解。福島綱成を婿として迎え、一門衆として扱い、軍総司令官の一端を担わせた、という導入から領土の拡大、縮小、家老や寄親の戦死、病死に応じて柔軟に配置を組み替えていく様がうかがえた。

前の職場でバーンアウトして、ドモホルンリンクルの雫を見守るような仕事を、と言う主人公のオーダーに答えた相談員の正門さんの回答は...、売れない小説家のモニターでの監視、バスの停留所の宣伝文を考える、おかきの袋のちょっとした文を考える、ポスターを張り替える、森の中の小さな小屋での事務、と言うラインナップ。どの仕事にもやりがいや適性みたいなものはあるものだ、と思いつつ。燃え尽きたことがある身の主人公としては、仕事に愛憎を持ちのめり込みそうになると身を引いてしまうところはありつつも。「だいたい何をしていたって、何が起こるかわからないってことについては、短い期間に五つも仕事を転々としてよくわかった」というラストは希望を感じさせるもの。ああ、正門さんに一度面談してもらいたいと思ったり。/「さびしくない人はいないんだ、それをそういうものだと思えるかどうかだ、と。みんながみんなさびしいとして、そのさびしさを誰とどの深さの関わりで埋めるか、もしくは埋めないのかは、本人の自由なのだ」

この巻も、バーガーを通じたいくつかの和解が描かれ。そしてバーガーフェスも盛況のうちに無事閉幕。しかし、中華の達人はすっかりバーガーづくりにのめりこんでしまい、店の方が少しゴタゴタ。神宮寺の出番やありやなしや、と。

さえないベンチャー社長がタイムスリップで大政奉還の頃に飛ばされて、侍をやめて、パンづくりで起業しようという男の家で力になろうというストーリー。一巻はまだまだ男の妻、子供たちの新時代への対応に割かれていて、本格的な起業はまだまだこれからの模様。






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2018年12月31日

個人的に、2018年に読んだ本から10冊。

個人的に、2018年に読んだ本から10冊。

キーワードは、吸引力。
12世紀地中海世界へ連れて行ってくれる、昼も夜も彷徨え。
16,17世紀イスタンブルに連れて行ってくれる、多元性の都市イスタンブル。
2009年の香港に魂持って行かれる、未必のマクベス。
天安門事件前後の中国とソ連に吸い込まれるような、廃墟の中で。
2010-14年の東京にぐっと入り込むような、喰寝。

あとは、認識をガラッと変えてくれるような「動的平衡」「具体と抽象」。
オスマン帝国の通史としてすぐれていて読んでても楽しかった「オスマン帝国」。
何度も何度も何度も読み返したほど楽しかった「うちのクラスの女子がヤバい」。
古本珈琲日曜日さんの導きで三島由紀夫にどっぷりはまった中から一冊、三島由紀夫紀行文集。

他にも、どっぷり惹かれて、年に16冊読んだ、絲山秋子作品や、
小池田マヤさんの女と猫シリーズなどもあったけれど、それはそれとして。

一章一章がそれだけでドラマに成り得る、読み応え。学問に邁進するモーセ、商人となり家族を支えようとする弟ダビデ。厳しいだけかと思われた中に尊敬すべき点を持つ父マイモン。か弱く見えて芯は強いライラ。名家出身で機転のきくサラ。言葉と高い事務処理能力でのし上がるカーディー・アルファーディル。そして、かの有名なサラディン。それぞれの人物像が際立ち、名言を吐き、己の思想にしたがって突き進んでいくところが魅力的。個人的には、背教者と蔑まれる強制改宗者の同胞を、悩みに悩んで、理路整然と、律法を読み解くことで、救い出そうと熱弁を振るうシーン。「私たちが従うべきは 神の律法だけです なぜ異教徒の法によって 同胞を断罪しなければならないのでしょうか」「トーラーを知らずに他者を断罪するは神の御名を汚す行為です 同胞を共同体から絶つことは命を絶つに等しい行為です 知らなかったからでは許されません」 (彼らが死か強制改宗か選ばされた際、それは命惜しさではなく)「命がなければ 神への愛と信仰を 貫き通すことができないからではありませんか 」が一番印象に。/また、公開書簡中で語られる、昼も夜もさまよえ、にも感銘。「たったひとつでも教えに背くことを強要される地には留まるな。家も、故郷も、持ち物もすべて手放して、己の信じるものを守れる場所を見つけるまで、昼も夜も彷徨え。世界は大きくて広いのだから」/肉屋の祖父アモスの諫言も深く染み入る。/そして、終章の言葉も。「でもそれは町から町へ国から国へ 場所を変えることじゃない 生きていることそのものが魂の旅なんだ 何かを知れば知るほど 人間の身では永遠に知り得ないことがあると気づく 言葉を重ねれば重ねるほど 言葉にできない想いがこぼれ落ちてゆく 求めれば求めるほど宇宙の果てが無限に遠ざかっていく 決してたどり着けないと知りながら その果てを目指し続けること それが人生の旅なんだ 」


金子山 / Kumanbachi Books (2014-06-22)
読了日:2018年4月7日
模索舎の店頭で見かけて一目惚れした写真集。2010-14年の東京での人々を撮った写真。ほぼカメラ目線の人がいない...ということは無許可なのかなと思いつつ。まず巻頭からして朝方のラブホの前でふざけて寝っころがりながパンツ脱いだ男の人とそれ見て笑う人。そして、これでもかと街中で路チューしてる人たちいるのか、と、そんな隙間で寝こけている人たちがいるのか、と。虚ろな目で荷物を運ぶ佐川女子。なぜか大股広げて空を見上げるスーツの男性。電話で二人とも寝こけているのにハーモニーを感じる一枚。座り込む人。電話する人。待ち合わせ顔の人。様々な人々が描かれ、猥雑な、東京の空気が伝わってきて、エネルギーを感じる一冊。ほとんどの人がガラケーなのも少し時代を感じる。個人的には宝物になりそうな一冊。



抽象化とは一言で表現すれば、「枝葉を切り捨てて幹を見ること」/具体レベルでしか考えていない人は、かいつまんで話せ、要するに何なのかと言われることが不快でたまらない、ひとつひとつ目に見える自称はそれぞれ皆重要で、切り捨てるのは不謹慎。だから議論が噛み合わない。/自分やその周りが特別という考えが抽象化思考の障害、他人に自分の話を一般化されるのを嫌う傾向。/「抽象化して考える人は場面場面での目的に応じて、「幹」と「枝葉」を見分けることで、要点をつかんで、効率的に情報処理をしているだけなのです。そして、必要に応じて必要な領域についてだけ、徹底的に具体レベルにまで下りていくことができるのです。」(p.94)/結局重要なのは、「抽象化」と「具体化」をセットで考えることです。(p.129)/乏しいサンプルから断定する「短絡的な思考」と対象が複雑であればあるほど、それをいかにシンプルにするかという「抽象的な思考」の違い。/【雑感】/噛み合わない、今は離れていった友人との関係を思い出す、抽象の友人と具体のみの自分で。と今ならわかる。/自分だけは特別というのは、逃れられぬ桎梏と感じる。



ものすごい吸引力。2018年の日本にいるのに、ページを開くたびにあっという間に、2009年の香港へ魂を持って行かれた。そんな稀有な経験。IT企業に勤める中井は、タイでの商談をまとめ、香港の子会社社長としての人事発令を受けるが、その真意は...、そして、マカオの娼婦に「あなたは王として旅に出ることになる」と予言された意味は...、暗号化技術をめぐる暗闘は...、とわくわくさせられるのだが、タイトルに持ってきたからといって、強迫的なまでに「マクベス」の筋にとらわれてしまうというのは、いささか無理筋に思えるところもあったけど、総じて手に汗握る、ちょっとでも頭のフル回転をやめてしまえば振り落とされてしまいそうな緊張感、裏切り、ドンデン返し、なんでもありなようでいてなんでもありでなく、と。以下備忘録的に。/きれいは汚い、汚いはきれい。寛容は不寛容、不寛容は寛容ってことか/「バンコクで仕事を取ってこいって言われて、朝五時のスワンナプームに着いたとき、中井は、何かあてがあったのか?」/あなたが王として旅を続けるんだったら、あなたにできることはすべてしなきゃならない/「光は闇、闇は光なのよ」「明るい場所にいるあなたには、暗闇は暗闇としてしか見えないけれど、暗闇からは、明るい場所がよく見えるっていうこと」/そんなに遠くまで行くなら、私を連れて行けばいいでしょう。/もともと、カジノのテーブルなんて、多かれ少なかれいかさまをしているんだから、それを承知でゲームに参加すればいい。/「旅を続ける力って、何だろう?」「疲れ果てて、たとえ目的地にたどり着けなくても、旅を始めた場所に戻ること」/Bei Xuが、James Brant「You're so beautiful」をカバー、松任谷由実のHappy NewyearをカバーしたCDを聴きたいと思った。


高森純一郎 / 高森純一郎 (2018-05-06)
読了日:2018年7月10日
#文学フリマ札幌 で購入。高森純一郎( @takamori_j )氏の著作。今作の舞台は、天安門事件の直前、1987年から1989年の中国とソビエト連邦。政治に振り回された一家の少女が、北京の大学の政治学科を目指し、そこからソビエト連邦へ留学し、血気にはやるだけではない、したたかな政治運動を目の当たりに。自由な空気と保守的な締め付けの繰り返し、揺り戻し。言葉通りに受け止めると痛い目を見る、裏の裏まで読んでの行動を身につけざるを得ない空気。率直で、社会の不正義に憤る友人たち。ペレストロイカの進められていたソビエトでは、学生たちの自由を求める運動を容認する余地があり、キャンパスでの運動も、最高権力者の介入を図り、落とし所を見つけることができた。しかし帰国した主人公が直面した現実は...と。不正義に憤り、声をあげることは重要だが、血気にはやるだけではなく、対峙するものの背後にまで目を凝らし、立ち上がるのは今か、ここで捨て石の犠牲となって本当に意味があるのか、ということまで冷静に考えて、行動することも必要、という視点が印象に。/「人間は「考えるべきこと」を考えるよりも前に、「考えたいこと」を考えることを優先したがちだ。それは、今のように熱狂的な雰囲気が社会全体を覆えば覆うほど顕著になる。」(セルゲイ・ミクロフ)/「相手と意見が違う時、それを互いに認めあう価値観の中では生きてこなかった。私も含め、ここにいる人たちは、自由というものに対して余りにも不慣れだわ」(イリーナ)。/


思春期の女子が発揮するという無用なちょっとした超能力「無用力」を備えた女子が集められた1年1組。自分でもコントロールできずに、戸惑ったりもするけれど、逆にそのことで距離が縮まったりちょっとしたことがうまくいったり、と。ユーモアと爽やかさとまっすぐな思いが描かれ。なんども読み返してしまう作品。鳩子先生を気遣って、クラス内ラインに授業時にこうしよう、みたいなのを回した犬釘くん、GoodJob!。点子の天真爛漫も、レモの冷笑的かと思えばしっかり見てるところも、沐念の自分の好きなものをしっかりわかっているところも、メカブの自分勝手なようでいて思いに気づいているところも、ウィル子さんの全てを見通しているかのような佇まいの理由も、扇花の嫌なことはきちんと嫌と伝えられるところも、みんなみんな印象に残る。


人間は、統合された、平衡な状態を保とうとする、一瞬一瞬細胞の入れ替わる動的な存在で、だから、人間を、パーツの総体として理解した施策は行き詰まりを見せるのではないか、という大きな見立て。今までの考えをガラッと変えてくれるような、見える景色が変わるような読書体験。/ダイエットの話などやわらかい話から語られる8章の科学エッセイと、新版で追加された、最新の研究成果を盛り込んだ最終章の歯ごたえのギャップがたまらない。


サンフランシスコの味噌汁に怒り、ロサンゼルスのターナーに感嘆し、ニューヨークでオペラとミュージカルをたのしみ。/ギリシャとローマの二週間では、人生でこれまで味わったことのない恍惚を覚え。/リオでの最初は戸惑い、のちに旅慣れる様子を「最初の晩には、海老を待っていると、牛肉が来たものだ。」とユーモラスに描き。/リオでもニューヨークでも夜間一人で歩ける治安の良さ。銀座は若者の街で、渋谷はバラックの目立つ街。どの街も、時代により、描く人により、異なった様相を見せる点を、興味深く思いつつ。以下抜粋。/快楽というものは、欲望をできるだけ純粋に昂揚させ、その欲望の質を純化して、対象との関わりを最小限に止めしめるものでなければならない。/希臘人は外面を信じた。それは偉大な思想である。キリスト教が「精神」を発明するまで、人間は「精神」なんぞを必要としないで、矜らしく生きていたのである。/われわれの生に理由がないのに、死にどうして理由があろうか


17世紀オスマン帝国を、スルタンの廃立が繰り返される混乱期から、一つのところに権力が集まりそうになると、イェニチェリ、ウラマー、都市民などさまざまなファクターが均衡を求めて蜂起し、それがスルタンの廃立、大宰相の罷免、政策の変更につながると言った、柔軟で「民主的な」分権的な時代と描いたところが一番印象に残る。また、デヴシルメ、兄弟殺しなど、本来のイスラムでは脱法行為とされることも、柔軟に統治に取り込んでいるところも特徴と再認識。支配を支える層も、トルコ名家層からカプクルへ、分権から集権、また分権へと、またティマール制度から徴税請負制、ティマール騎士からイェニチェリ、そして新兵へと。時代に応じ、状況に応じ制度、支配層が変容していく様を横軸に、各スルタンについて語られることを縦軸に語られている点、読みやすかった。


贅沢で豊穣な時間旅行を味わう。読んでる間は、16,17世紀のイスタンブルに迷い込みたゆたうような感覚、読み終わり深い余韻が残る。建築物や街並み、宮廷が描かれ、高官、詩人、庶民、外国人の目から見たイスタンブルが描かれる一冊。


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2018年12月01日

2018年11月に読んだ本

史上あまりパッとしたイメージのない将軍家茂だが、大奥では、澄んだ心で寛大さを示す仁君として描かれる。幕府の懇願により降嫁した和宮が実は女性だったという設定。身代わりの和宮が弟にばかり注がれた母親の愛情を独占したかったという背景も描かれ。家茂と和宮の関係も、当初は家茂のやさしさと気づかいによってのみ保たれていたが、徐々に、和宮が軟化していき。幕府の勢威の低下は否めず、薩摩藩の上洛にも小手先の対応しかできず、慶喜を後見とすることに。勝手に京への上洛を決められるが、史実ではそれは転落への道のりであった...。家茂と天璋院が庭をながめつつ、見たこともない時代を生きることになりそうな感慨を持つシーンと、勝海舟が天璋院に坂本龍馬の話をしたシーンが特に印象に残る。

経済・技術の発展のめざましい広州の片隅のネットカフェにふきだまるネトゲ廃人たち。支配部族が実験を握るナイジェリアからそれ以外の部族が稼ぐ手段としての中国渡航。カンボジアのフン・セン政権の腐敗が大々的に中国資本を呼び込み、現地住民の感情がついていっていないシーン。ハコモノ推進制作のなれのはてのオルドスのゴーストタウン。慰安婦の親族へのインタビューから浮かび上がる当事者をおきざりにした政治の意向。突如発表された新首都候補の混乱。カナダ系中国人の反日運動、などなど。さまざまな地域とテーマから浮かび上がる現代中国像が興味深かった。/

サンフランシスコの味噌汁に怒り、ロサンゼルスのターナーに感嘆し、ニューヨークでオペラとミュージカルをたのしみ。/ギリシャとローマの二週間では、人生でこれまで味わったことのない恍惚を覚え。/リオでの最初は戸惑い、のちに旅慣れる様子を「最初の晩には、海老を待っていると、牛肉が来たものだ。」とユーモラスに描き。/リオでもニューヨークでも夜間一人で歩ける治安の良さ。銀座は若者の街で、渋谷はバラックの目立つ街。どの街も、時代により、描く人により、異なった様相を見せる点を、興味深く思いつつ。以下抜粋。/快楽というものは、欲望をできるだけ純粋に昂揚させ、その欲望の質を純化して、対象との関わりを最小限に止めしめるものでなければならない。/希臘人は外面を信じた。それは偉大な思想である。キリスト教が「精神」を発明するまで、人間は「精神」なんぞを必要としないで、矜らしく生きていたのである。/われわれの生に理由がないのに、死にどうして理由があろうか

ビブリア古書堂の事件簿の最新刊の一章が、佐々木丸美「雪の断章」にまつわる話だったので、二十年ぶりに手に取る。人物からストーリー運び、結末まできれいに忘れていて、新鮮な気持ちで楽しめた...楽しめすぎて、24時から朝方までページを繰る手を止められず。ビブリア古書堂でも触れられていた瑕疵...ご都合主義や警察の捜査が実際より甘く感じられることなど、ぶっとばす勢いだった。孤児として本岡家に引き取られた飛鳥は、人を人とも思わない扱いに耐えかね出奔、通りかかった以前助けられた祐也に育てられることに。同年輩の史郎とともに。聡明な順子という友人もでき、成長していく飛鳥だが、心の底に意固地に、孤児ゆえにわかってもらえないという思いが横たわり、時に周囲と軋轢をうむことも。そして全編を暗く貫く事件が起き...最後は...と。その一言を仇に言わなければ全てうまくいったのに、それを言わずにいられないのが飛鳥、ということか。そして祐也の「こわがらないで言ってごらん、どうしてもお前の方から言わなくてはならないのだ」にこめられた思いの深さが印象に。

事務職のOLミノベはあてがわれたたいていのOA機器と折り合いをつけてきたが、プリンタ・コピー・スキャンの複合機アレグリアだけは、怠けて気まぐれで、かと思えばサポートを呼べば治ったり、社長の前では快調だったり、と。「自分が最も受け入れがたいことはいったいなんなのだろうかと。それは結局、たった一人でこの機械はおかしい、と主張し続けることで、それに一切の共感を得られないことだった」/メーカーのサポートの苦衷も描かれ。最後は、今まで穏やかだった先輩も...と。なんだか機械に擬人化した思いを抱くところにユーモアを感じさせるが、これもし複合機じゃなくて...という思いを抱くとホラーだよね、と。併録の地下鉄の叙事詩は、ある日の東京の満員電車の一幕を、四人の視点から描いたものだけど、ひたすら登場人物が憤って憎しみを抱いていて、読んでて辛かった。

押さえつけられることや理不尽に耐えられず、中退してアメリカにわたり、本屋をやったり文章を書いたり。著名な人が欲しそうな洋書を熟考してセレクト、電話をかけて営業するって手法、すごいなあ、と。そこから移動販売車で地方を周り、またノウハウを若者に伝え、自分がいなくなったあとm続く本屋を運営したいという思いから始まったCOW BOOKSの話などを興味深く読む。/著者の柱になったという、高村光太郎詩集、ヘンリー・ミラー「南回帰線」、ケルアック「路上」は手に取ってみたいと思った。以下備忘録。/漠然と自由に憧れて進んできた道の先には、自分勝手な生活しかなかった/誰かのせいにして逃げることはできなくても、自分の気持ちには正直にやっていくことができる。それが「自由」ということなのかもしれないですね。/自分の記憶に残っているということは、やっぱりそこに思い返すべき何かがあったはずでその出来事があったから今の自分が存在している。/どんなことにも「最高」の面だけじゃなくて「最低」の部分があって、両方がバランス良くあることがいちばん正しいことだって何となくわかった/

高校生になった朝。槙生に気持ちを投げかけるも、思った反応が返ってこなくて、いらだち、傷つき。理解はされずとも受け入れてくれるラインで自分を納得させ。槙生も、自分が15のころ、何を考えていたか思い出せず、戸惑い、猛烈にひとりになりたかったり、朝の反応の理由がわからなかったり。好ましく思うがあなたとわたしはべつの人だからという基本スタンスは変わらず。最後のほうの、牡蠣を手土産に遊びにきた元カレと槙生と朝の3人で、ライブビデオを見てるのんびりした空気感がいいなあ、と。

三浦しをん「舟を編む」は、国語辞典の編纂がテーマの小説だったけど、今度はなんと、漢和辞典の編纂がテーマのマンガが登場。辞書愛が深く、ようやくラノベ担当から漢和辞典編集担当になった王子。しかし陣容は、丁寧に教えてくれる超ベテランの嘱託職員と厳しいベテラン契約社員との実質3名。優秀な大学生のバイトが入るも、辞書愛が深くともなかなか実務は効率的にこなせず、二ヶ月でスランプに。見かねた他部署の岸が家に連れていき、鍋を振舞われ、利発な娘さんと接するうちに、漢字に思い入れを感じ始めたころの気持ちに立ち戻って、立ち直るところまで。漢和辞典編集のうんちくも楽しく、空回りしつつも前に進もうともがく様が印象的で、続きに期待。

引き続き苦境の秦軍。そのなか、信の覚醒したような一閃が岳嬰を切り裂く。一方山の民軍は相手の裏をかいたつもりで、舜水樹の策にはまり、趙軍と犬戎軍の挟撃に。必死に脱出を図るも、あわや…と。その隙に練られていた策が発動したところまで。巻頭の人物紹介と戦況図が親切。ともすれば連載だと現在地を見失ってしまうので。

特集:札幌の正解。希少なプレシャスホールのオーナーの対談記事から、狸小路8丁目にアーケードがない謎まで。木工作家辻有希さんが抽象絵画の本とコラボした過去のイベントが気になり、 日本画家葛西由香さんが、「きのこたけのこ戦争」の人だったと知り。行きたいお店もちらほらと。豚丼のまむろ、クラフトジンのkinoole、きしめんのきじや、 餅菓子商 白谷、などなど。プレシャスホールのオーナーが、 デヴィッド・マンキューゾ からもらった30のアドバイスのうちの「お前はまだ、こんな感じとかあんな感じという感覚で音響を組んでいる。やっていることになんの根拠もない。」「地域の人と良い関係を築け」「消火設備をちゃんとしろ」などが興味深いなあと思いつつ。/特集外の、東京にある 関東唯一チベット料理専門店「タシデレ」にも興味をひかれる。

人間は、統合された、平衡な状態を保とうとする、一瞬一瞬細胞の入れ替わる動的な存在で、だから、人間を、パーツの総体として理解した施策は行き詰まりを見せるのではないか、という大きな見立て。今までの考えをガラッと変えてくれるような、見える景色が変わるような読書体験。/ダイエットの話などやわらかい話から語られる8章の科学エッセイと、新版で追加された、最新の研究成果を盛り込んだ最終章の歯ごたえのギャップがたまらない。

ボクシング会場でついにキスしてしまう早乙女さんとさとるくん。そのときの余韻に浸りすぎて、みすぎてしまうさとるに、イーッていいながら電車降りていく早乙女さんにきゅんとくる。ボクシングの方は、大きな壁に。花見籠目と言う警視庁のボクサーが、圧倒的な存在として早乙女さんの前に立ちはだかる。その壁をさとると協力して乗り越えられるのか、と言うところまで。

もし自分の子供がある日事故で蘇生の見込みがないと判断されたら。脳死判定を受けさせなければ、死んではいないとみなされる法の間隙をついて、生かし続けるのは親のエゴなのか。それとも子を持つ親なら誰でも思ってしまうことなのか。フィクションだけれども、日本の脳死判定と臓器移植政策へ鋭い一石を投じる、普段見ないようにしている、根源的な問いを投げかけてきて考えさせる一冊。/

シャッター商店街をよみがえらせようと奔走するまり子。しかし外部からの提案はかたくなにこばみ、変わろうとしない当事者たち。思いあぐねて、商店街を舞台にした自撮りやコスプレ写真をあげてるうちに話題となり、徐々に集まる人が増えるも、肝心の商店街の組合長や地主は反感を持ったまま。事態は打開できるか…というところまで。

知らずに世界の歌姫とピクニックをした小さな子の一幕/街の小さな天文台をめぐる物語/ベランダづたいにやってきたとなりの子。家でも学校でもどこでもない学校が貴重だったのに。/大好きな姉の部屋に見知らぬ男の人が。音楽制作にはげむから内緒にしてと。貴重な一時はすぎたけど...最後は部屋に蓄光シールを貼る手伝いをしつつ。/難攻不落:何年かぶりに小学生時代をすごした商店街にもどってきたのに、昔の友だちはそっけなかったり、怒らせちゃったり。それでももう一度秘密基地に集まり/若い頃の貴重なひとときをすくい取った短編集。

ある日、コスプレみたいな格好の女子高生をベンチでみつけ、声をかけると「制服を盗まれた」と。内部の犯行を疑ったけど、実は外部の…と。そして過去のわだかまりもとけそうで。/近所の蕎麦屋の店員が実は...と。対になる話も併録の「ワニ蕎麦」/街の便利屋さんが呼ばれて行ってみたらヤクザの事務所で、案の定、面倒ごとに巻き込まれるが...。鮮やかな反撃と、ブラックな結末/家賃をソシャゲの課金につぎ込んでバイトに来た天真爛漫すぎるさとるが、ハンドスピナーを回して小さな事件を解決。本人に、美人なヤンキーは存在したんだ!と叫んでしまう無邪気さと無鉄砲さ。先輩の造形がいい。/といった短編集。展開が読めなくてハラハラなところも、サスペンスなところも好み。

突然、留学すると言っていなくなった姉にかわって、家にやってきたのは、子供の姿をしたコノハズク様。友達にも認められ、ユウコの日々の暮らしに、学校生活に溶け込んでいくが、時々不思議な力を発揮し、またカラスの化身の同級生ともぶつかり合い。最後には、帰ってきた姉に、なぜ姉がいなくならなければならなかったか、コノハズク様がこれからどうなるのかが語られ。不思議な触感のお話だった。

北条氏は、小田原の陣以前から、城郭に、いざとなれば武士の家族を匿い、民衆の避難先となり、その分、応分の働きを求める、持ちつ持たれつの関係であり、戦闘においても、武士以外のものを積極的に活用しようとしていた、いや、せざるを得なかった。それは経済的な基盤の弱さから、いかに民衆に善政を敷くかという考えにつながったが、戦闘員が陸続と押し寄せる秀吉軍には対抗する術もなく敗れた、と。ただ、秀吉の北条征伐が真田氏の名胡桃城への攻撃が契機ではなく、自分の権威を無視した上洛の引き伸ばし策にあったと言うのはなるほど、と。それは、上洛費用の工面が難航したからという側面もあった、と。あと、北条氏が、上洛する前から、秀吉が関東を攻める準備をしていたと勘違いした、実際はそれは北条氏が降伏したあとの戦後統治のためだったのに、というのはいささか苦しいのでは。その状況では北条氏の判断が是ではなかったのか、と。


商人イルハン登場、ボルテの拉致、オン・ハーンの登場に、カサルを装うテムジン。オン・ハーンを裏切るものを始末したと恩を売るが、と。


母の力になりたくてやってきたレディ、父の助けもあり、自覚ありのお節介を焼き。その成り行きでベガスへ大金を運び交渉。そして、オールドマンを追う勢力が、また、と。混迷する情勢。二人の行き着く先は。オールドマンの弟は見つかるのか、と。


思春期の女子が発揮するという無用なちょっとした超能力「無用力」を備えた女子が集められた1年1組。自分でもコントロールできずに、戸惑ったりもするけれど、逆にそのことで距離が縮まったりちょっとしたことがうまくいったり、と。ユーモアと爽やかさとまっすぐな思いが描かれ。なんども読み返してしまう作品。鳩子先生を気遣って、クラス内ラインに授業時にこうしよう、みたいなのを回した犬釘くん、GoodJob!。点子の天真爛漫も、レモの冷笑的かと思えばしっかり見てるところも、沐念の自分の好きなものをしっかりわかっているところも、メカブの自分勝手なようでいて思いに気づいているところも、ウィル子さんの全てを見通しているかのような佇まいの理由も、扇花の嫌なことはきちんと嫌と伝えられるところも、みんなみんな印象に残る。


澁澤龍彦「三島由紀夫覚書」、三島由紀夫「三島由紀夫紀行文集」つながりで。やはり"憂国"が一番濃密で鮮烈な印象。ただ、そこに流れるのは、国を憂える心ではなく、徹頭徹尾自分の美意識に殉ずるという心ではなかったか。次は"女方"に流れる濃厚で耽美的な世界。唯一の浅草ものと言われる"百万円煎餅"は、二人の職業は…見世物的な何かだったのだろうか。"海と夕焼け"は、少年十字軍の生き残りが、流れ流れて、蘭渓道隆に連れられて鎌倉時代日本へと言う壮大な見立て。"卵"は、荒唐無稽すぎて…おーい、三島さん、といいたくなった一遍。"新聞紙"の描く、生々しいまでの触感。"牡丹"では、美しい牡丹が、悪を顕正するためのものであったと描かれる。様々な色合いの短編が収められていて楽しめた。


さしものサド侯爵も、侯爵夫人にかかってはかたなしといったところか。/貴族としての矜持、貞淑な妻としての矜持を持ち、夫に対する思いの深さ、まわりの雑音や、母からの"お前のためを思って"と言いつつの、夫婦の意思を無視した仕打ちに耐えつつ、監獄への見舞いや脱獄の手助けなどを実施したサド侯爵夫人ルネ。フランス革命で貴族の世がひっくり返る時、牢内のサド侯爵はその世間的なポジションが相対的にせりあがり、ついには帰ってくるが、夫人の対応は、会わない、というものだった、と。侯爵とはまた違った形で、己の道を思いきわめ、それを貫き通した見事な生き様。/以下抜粋。/サド侯爵はあのとおり、残虐がつまりやさしさで、鞭とボンボンを通してでなくては、心の本当の甘い優しさを表てに出せない方だと思いますの。/良人が悪徳の怪物だったら、こちらも貞淑の怪物にならなければ/幸福というものが、アンヌ、泥の中の砂金のように、地獄の底にも煌めいているものだとわかったんだわ。/何かわからぬものがあの人の中に生れ、悪の中でももっとも澄みやかな、悪の水晶を創り出してしまいました。/この世界の果て、世界の外れに、何があるか見ようともなさらず、鴇いろのカーテンで窓をおふさぎになる。そしてあなたは死ぬのです。自分が蔑んだものにとうとう傷つけられなかったことを、唯一の誇りになさって。


波よ聞いてくれ:芽代の「資格がどうとか言われたら...まァないけどこっち向いてると思ってる男によそ見されるとイラッとする感じ」の破壊力。そしてそれをまんま中原にしてしまうミナレ。/概念ドロボウ:ウロが帰ってくるまでにハルの奮闘で真実に一歩近づき。/ヴィンランド・サガ:ガルムとの対決に決着。トルフィンの、次は友達として会いたかったのにな、に、ガルムがすっきりした表情で、何いってるんだ、もう友達だろ、に戦いに生きるものとして共感か。/イサック:難を逃れたと思いきや今度は蜂起する農民にでくわし。ゼッタはすこしでもイサックのやることを負担しようと奮闘。/大神さん:両親とは違った形で、救いたいというまっすぐな思いが/ブルーピリオド:八虎には、張り詰めていた、息をつめていたことを自覚させてくれた、骨の博物館での息抜き。結果的にはいい方向に作用し。/フラジャイル:初の学会に、宮崎。大御所に取り囲まれ、先輩医師に想いをいだかれ、他の発表者を見て、その研究に次々興味をもち、もっとうちのめされたい、わたしはまだまだできると自信を新たにし/はしっこアンサンブル:子供心に癒やされ、強い印象に残ったというペロティヌス作曲「Viderunt omnes」(ヴィデルント・オムネス)を聴いてみたいと思った。/マージナル・オペレーション:自衛隊から来た正義感は強いが、実現性のない理想しか語れない新入りに、「2度驚かないことだ」「間抜けに見えるぞ」という静かなアラタの怒り。最後はジブリールのまさかの...というところまで。



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2018年11月01日

2018年10月に読んだ本

大澤夏美 / 大澤夏美 (2018-09-30)
読了日:2018年10月1日
まずあざやかなデザインで目を引く小冊子。熱烈なミュージアムグッズ愛が伝わるおすすめをされて、手に取る。/まずね、北大総合博物館のミュージアムショップ「ぽとろ」にすごく行きたくなった。魅力的なグッズ、居心地の良さそうな空間。/そして、著者のミュージアムグッズは映画のエンドロール、思い出や経験を持ち帰るためのツール、と言う言葉がすとんと落ちてくる。/個人的にベストのミュージアムグッズは、2007年に東京都美術館で開催された「トプカプ宮殿の至宝展〜オスマン帝国と時代を彩った女性たち」で購入した、トルコタイルもかくや、という美しい文様をあしらった小鉢。何せ未だに普段使いしているくらい気に入ってるし、眺めてると、ちょっとだけオスマン帝国の時代へ思いを馳せられたりします。


主人公は、有機素子コンピュータ内に、もう一つの世界を作ったはずなのに、主人公の世界ともう一つの世界はだんだんと侵食しあい、ねじれあい、最後には...と。どちらとも受け取れる、あるいは、もっと上位の世界の可能性も示唆しつつ。

「グリフォンズ・ガーデン」の続編。と言いつつ、知ってる人が出てこなくてどこが...と読み進めていくうちに、ようやく藤野教授がグリフォンズ・ガーデンの先輩の藤野さんだと気づく。その間、約25年と言ったところか。物語に重ねて、人工知能が自分で報酬を求め、人の意識まで操作する可能性まで語られて興味深い。

それほど長くない漫画で、どういう症状が現れたか当事者から語られていて理解しやすかった。他の人には、見えないものが見え、聞こえないものが聞こえる大変さ。幻覚を絵画にして仕事に生かすという方法はすばらしいなあ、と思った。幸福な着地点の一つとして。

おおお、昔読んだ、中国てなもんや商社の人だあ、と手に取る。気がつけば中国在住18年なのだとか。中の人から見た中国情報大国事情。ものすごい利便性の裏に、がんじがらめの監視社会。どこにいて何をみて何をして何を買い…すべてが政府に把握される。「スマホでお絵描きするソフト入れたいだけなんだよ。なのになぜ友達全部の携帯番号や撮った写真まで報告しないといけないんだ!」という叫び。アリババの創業者ですら、一生かけて血のにじむような思いで築き上げた王国を一夜で実質、国にとりあげられてしまうというインパクト。そして、感情すら政府に見張られるような試みも。内容は簡潔に読めてよかったのですが、誤字、誤表記が多いので校正はちゃんとして欲しかったなという思い。ちゃんと意味は通りましたけどね。

後輩たちを育成するモードの笹島。ライバルたちの熾烈な争い。高度なクイズテクニックには息を飲む。ただ、群像劇は登場人物が多すぎて、焦点絞りきれてないように感じ。まあ、クイズ大会全国大会を盛り上げるにはこうするしかないのかなあ。

オン・ハーンの野望。ジルグアタイから逃げるキャト氏族。デイセチェンの取り込みを図るテムジン。手を組まないかとやってきたジャムカ。テムジンを引き渡すよう迫るオン・ハーンの部下。西の文明にふれ、そのやってくるところに多大な関心を示すテムジン=源義経。発端は源義経=チンギスカン説の今では伝承・伝奇の世界の話だけど、モンゴル到着後は、鉄の重要性など最新の研究に寄せてきているように感じる。日本からヨーロッパへ、視点が向けられ、繋がっていくという見通しにロマンを感じさせる、といったところか。

本を読むことを楽しみ、時には溺れ、本にまつわることを人と話すのは楽しい、人が求めるものを本を通して差出せたらなお楽しい。ただ、楽しいばかりではすみませんよというのがこのシリーズ。時に人を傷つけることも厭わず、坂を転げ落ちていく人がいることも確か、と。シリーズ続編で娘が表紙になっていたから、あ、あの二人結婚したのかな、今度は娘が主人公なのかな、と思いきや、シリーズ本編で語り足りなかったことを、娘に語り聞かせるという形で物語は進んでいく。あとがきによると、娘が主人公のお話も考えてはいるようですが。毎回このシリーズ読むと何かかにか取り上げられた本を読みたくなるけど、今回は佐々木丸美「雪の断章」を買いに走りました。そしてyoutubeで「からたちの花」と「ファイナルファンタジーV」の名曲をチェック。

何年かぶりの再読。ダ・ヴィンチ三浦しをん特集に触発され。しをんさんとその家族、友人が繰り広げる面白エピソードが満載で楽しいシリーズ。クラブ通いのバイトの同僚と音楽と漫画という追うものが違うだけで同じオタク道なんですと熱く共感し。コムデギャルソンの13万円のワンピースに一目惚れし友人と東京中のコムデギャルソンに電話をかけ在庫を確認し二人でワンピースを共有しようと画策。おばあさんに省電はどこ?と聞かれて国電のこと?と言い、通じたときに「発掘された石に刻まれた象形文字を必死に解読したはいいが、これで本当に合っているのだろうか、と不安だった言語学者がタイプスリップし、その文字を使う人々の世界に放り込まれ、「おお、わしの解読は正しかった!」と感激する気分」になったり/平日の電車で隣に座った男性が、部長島耕作、を音読し出したり/などなどのエピソードに彩られたエッセイ。あと久生十蘭「湖畔」は読んでみたいと思った。

だいたいは馴染みのある作家や音楽家、哲学者の分を拾い読み。様々なパターンがあって、万人に共通する法則などないとわかる。だが、各々がその日課にこだわって成果を上げてきたことは伝わってくる。/トマス・マンの午前中にかける意気込み、自らへのプレッシャー、「すべての文を完璧に」「全ての形容詞を的確に」/アーサー・ミラーの、朝起きると、仕事場へ出かけて書く。そしてそれを破り捨てる。その中の引っかかるものがある。それを追っていく、と言う極端さ/スティーブ・ライヒの作品の95%は正午から午前零時の間に書かれた。小さな問題が生じている場合は、その問題から離れて注意をどこかよそへ持っていくと解決策が浮かぶ、と/神学者ジョナサン・エドワーズはアイデアを思いつくたびに紙切れに書き留めそれを服にピンで留めていた/カントが灰色のコートを着てスペイン製ステッキをもって玄関から出てくると、ちょうど三時半だとわかった/プルーストはカフェインと睡眠薬を飲んで、友人にブレーキとアクセルを同時に踏んでいるようなものだと忠告され/デヴィッド・リンチは砂糖たっぷりのコーヒーを5〜7杯、チョコレートシェイクにも砂糖がたっぷり。大量の砂糖でハイになるとアイデアが次々に湧いてくる/振付師ジョージ・バランシンは、仕事のほとんどをアイロンをかけながらやる/フランク・ロイド・ライトは追い詰められた状況で創造性を発揮し、「落水荘」に至っては図面を書き始めたのはクライアントが今から車で2時間ちょうどで着くと電話してきてから/ガーシュインはインスピレーションを信じず、毎日コツコツ仕事をするのを好んだ/デカルトは優れた頭脳活動をするには、怠惰な時間が不可欠だと信じていた/ゲーテは、何事も無理にやろうとしてはいけない、気分が乗らない日や時間は無為に過ごすか寝るかしたほうがいい、と/シラーは、仕事部屋の引き出しの一つに腐ったリンゴをいっぱい入れていた、執筆を促す刺激として必要と考えて/数学者エルデシュはアンフェタミン、濃いエスプレッソ、カフェインの錠剤がひらめきをもたらすと信じていた/アンディ・ウォーホルは約10年、毎朝1、2時間、友人に電話して日記のように誰と何を話して何があって何を見てどう思ってというのを話し続けた。友人は「ウォーホル日記」として出版した。/振付師トワイラ・サーブは、毎朝トレーニングウェアに身を包み、タクシーに、ジムへ、と行き先を告げるのが習慣。自分がジムへ行きたいか行きたくないかという問いを避けるために。

メロスとセリヌンティウス、太宰治と檀一雄、李徴と袁傪、国語の時間に取り上げられた作品を前に、登場人物たちが喧々諤々の議論をかわすのが面白い。また、夕焼けの詩に背中を押され、引っ込み思案の自分を奮い立たせて、行動にうつしたサラリーマンの章、私が自意識にとらわれて獣になるなら虎なんて強くてかっこいいものにはならない、もし虎になるなら最後は袁傪を食い破って咆哮をあげる、というのが印象に残る。なんども読み返したい一冊。

近藤聡乃「A子さんの恋人」で、翻訳家のAくんが、ようやく憧れの作品の翻訳を任された、として取り上げられていたのが大江健三郎「空の怪物アグイー」だったので手に取る。なんとなくタイトルからファンタジー色の強いものかと思っていたが、アグイーという名前が、作曲家Dが、難病を持って生まれたと告げられた我が子を見殺しにしたあと、実はそれが難病ではなかったと告げられ、その子が発したのが「アグイー」と言う言葉だけで、空から降ってくる怪物にアグイーという名をつけた、というのを知り、エグいエピソードだな、と。産後の回復が思わしくなく人事不省だった間にことが行われた元妻も、今の恋人の映画女優も、そういう甘ったれたところを指摘しつつ、それを目の当たりにする、作曲家の付き人のバイトをする主人公には、それでも...、という思いが感じられた。

山形から秋田へ抜ける道中と、日本へ旅に出る前の、世界をめぐる旅を始めるきっかけになったバードの回想が描かれる。自分との契約について伊藤が隠していたことを知らされ、そしてそれを終わらせざるを得ない可能性を示されるラスト。再三に渡り、バードの命に関わるような旅程に苦言を呈す伊藤と、危険な旅の中でこそ自分の命が燃えると譲らないバード。貧しい民として選択の余地のない自分と比べて、安全な道も選択肢としてあるのに、あえて危険を選ぶバードを苦々しく思っていた面もあったのでは、と示唆される。旅をするきっかけになったビショップ医師の「運命はいつも自分自身の意志の中にあるものですから」、なぜ旅を続けるのかというバードの問いに「わからない人には説明してもわからないし、わかる人には言葉なんて必要ないものよ」と答えたカープ、ハワイの現地ガイドの「私達 死 すぐそばにある だから楽しく生きる いじけている暇ないよ」という言葉が印象に残る。

引続く元彼と弟子のさや当て。いっちょかみしたくて物陰から見てるご隠居がキュート。娘の反抗期がいつまでかわからないから、と付き合いをやめたはずが、父親だって鋼鉄ではなくひとりの人間だとぶつけたところ、和解できて、それでもう一度向き合えると思ったけど、なかなか言い出せないもどかしさが伝わってきて。そしてこの巻の愁眉は、ファッションブランドの確立に奔走する友人桃井が持ってきたおしゃれな靴、椿が手直ししたサンプルを履いた時の、梓の今まで見たことのない満面の笑みのコマ、かな。

著者 : 観山正見
朝日新聞出版
発売日 : 2011-12-20
国立天文台をスタートに、東京、日本、地球、銀河系…とどんどんスケールが大きくなり、最後は宇宙の果てまでぶっとばされる感覚を味わえる。美しい図像のなかはドーナツ状だったり、230万年前のすがただったり。ページを閉じて、ひとつ、深い息を吐く。

ぶっ飛んだ書店員さんの日常エッセイ。正直書店員としての仕事部分はそんなにないけれども、脱線につぐ脱線、妄想につぐ妄想、そんなことぶっちゃけちゃって大丈夫ですかというエピソードのオンパレードで、そのジェットコースターぶりに引き寄せられる。ちょっと見かけただけの人、あるいは職場の同僚の人生を勝手にアテレコ...うん、わかる気がする、そういうことしちゃうよね、と。他人のこだわりについて取材し、漫画に起こして出版していると言う清野とおるさんの作品、読んでみたくなる。超面白いとオススメの中野信子「サイコパス」も。

ふらりと部屋までついてきたヨサノ。屈託無く居心地良さそうに姿をながめつつの杉浦。すごい人が普通に友達として接してくれることについて語るヨサノとマルヒラ。自分も何者かになればと思うマルヒラとそのままで堂々としてるヨサノ。そして菱田賞の「待ち会」のピクニック。ワードバスケットで盛り上がりつつ。ひねりの効いたしりとり。前の巻でも言葉をめぐる遊びがあり、ほんとこのスナック&ブックス実在しないかなあ、と。賞の結果は…だったが、それでも変わらず書く、候補になったりならなかったり、売れたり売れなかったりを繰り返して続いて行くんだよ、と語りかけられた杉浦。大家さんのところで写った、全ての退路を断って売れっ子になった作家のインタビューと対比されながら、この巻はおわり。

東京の下町にひっそりあるみつば商店街。そこにタケミさんが小料理コエドを開店したことから始まる物語。もうみんなキャラが立ちすぎて続き読みたすぎる気持ちしかない。なぜに全1巻。クールなようでいておっちょこちょいの片鱗を見せつつ、「ささくれ刑事」シリーズ大好きのタケミさん。隣の金物屋の娘で町一番の情報通で週刊誌のような壁新聞を張り出す子。年上の女性が好きで太宰マニアな息子。金物屋が副業で官能小説家が本業と嘯くお父さん。昔はスナックをやってた恋多き人ユフさん。などなど。娘さんがお父さんの本当の職業を突き止めようとしているのに!それをことごとくかわすお父さんの強敵ぶり、好きです。

かりそめだから、いまだけだからこそ、いまご大事。美大の同級生だった3人の同居ライフ。昔話よりこれからの話を、いろいろ具材串揚げで楽しく、突然来訪の情熱大陸に取り上げられるほどの活躍の同級生とも、話してみたら、皆、道の途上だったり、臆病だった恋路に少しずつ踏み込んで行ったり。個人的には英治の上司の謝罪メソッドに感銘。先乗りして人の目のあるロビーで徹底的に謝罪してその後に代案。誤ってダメならさっと引く。謝罪で自分をすりへらすな。謝罪を目的にするな。何らかの目標のために謝罪はある。

「バーナード嬢曰く」3、とスゴ本ブログつながりで手に取る。事前の知識では、なんとなく、砦勤務の主人公に何も起こらずに終わる話かと思っていたけど、実際はもっと深刻で残酷なものだった。彼以外の彼の周りにはドラマチックな死や栄転やあったかもしれない楽しい街での生活などがあったのに、いずれも彼の手のひらから滑り落ちていき、いざ、人生のほぼすべての期間、待ち望んでいたものが目の前に現れたのに、なんら手出しできぬまま砦を追われてしまう、と。解説でも、これは人生だ、と述べられていたが、なんら有効な手立てを打たずに、深く考えもせずに所属したところにとどまり続け、もしかしたら自分にも...というあてのない希望だけ持ち続けた先には...と考えると背筋が寒くなる。p.294の新任の中尉とドローゴが行き交うシーンは、最初のドローゴが砦へ向かうシーンと鏡写し。まるで、手塚治虫「火の鳥」の異形編で描かれる、時の中に閉じ込められた比丘尼の話を思い出した。



三宅香帆「わたしの咀嚼した本、味見して。」の"複業したいときに読むべき、おかざき真里の「複業OL漫画」"てエントリに惹かれて手に取る。他人に触られるのが苦手な医療事務の薫が、初めて触りたいと思った一回り以上年上の矢飼先生。悪態をついたりちょっかい出しつつ突き放したりの矢飼先生だったけど、結局は付き合うことに。平行して、物件探し中にばったり会った、サークルの後輩だったシロちゃんの事務所の一階を間借りしてネイルの副業を始めることに。最初から多くを求めないと思いつつものめり込んでいく薫。副業も甘さを指摘されたり辛い目にあったりしつつも着実に改善を重ねて軌道に乗せ。二人の道は結局別れることになったけど、医療事務も、ネイルでも、薫が着実に地歩を固めて進んでいく姿が描かれて物語は終わる。サイドストーリーの赤坂先生と美由紀の話、よかったなあ。

武満徹の「雨の樹」に導かれるようにして、二度目か三度目の再読。ハワイでの交流会の会場が実は精神科の患者たちが反乱してのっとったものだと後で知った顛末とそこで見たように感じた「雨の木」のこと。学生時代の友人の高安の、まるで太宰治「親友交歓」を思い出すような傍若無人な、最後は密輸の罪まで着せようとする、それでいて作家としては敬愛して止まないと言う屈折した思い。メキシコで彷徨い、息子の自分からの自立に戸惑い、また好漢なれど文学的ゴシップに興味のある助手カルロスをめぐる物語、再訪したハワイで高安の妻から救われ、また和解したわけでもなく交流したこと、ハワイでの微妙な緊張を孕む反核運動のこと、そして「雨の木」が焼けて無くなってしまったこと。最後は、そんなことはありえないのに、象徴的な意味として、見知らぬ誰かが結果として己を犠牲にして若者を救ったのではないかというイメージの提示。雨の木の存在によって覆い尽くされるような救いと、それが無くなった後の、ある種の自己犠牲による救いが描きたかったのだろうか。

シリーズ第三巻は、まよってまよって、最後に思いを伝えたら、思いが通じてという大団円。友達もひとりは結婚、ひとりは海外放浪と方向性を決め。しかし、後輩くん、オトコマエだなあ。あと、テレビ塔の展望台、それほどお高くもない値段で貸切プランあるとは知らなかった。サッポロソフト、学生の頃はあまり口に合わないイメージだったけど、その後変わったのだろうか、コーヒー焼酎の原料として絶賛されてた。巻末は定山渓の魅力再発見なストーリー。アップルパイやさんが気になる。

ダ・ヴィンチの三浦しをん特集につられての再読。/よしながふみ「愛すべき娘たち」の永遠の謎、男子禁制の女性同士の会話っぷりを忠実かつ克明に描写していることを紹介。友人あんちゃんの、自分の蔵書を図書館のように蔵書目録を作成した話。新婚夫婦のケーススタディとして、友人の、相手がトイレに入ってる時にドアのコインを鍵で開けるという遊びが流行ってる、て話あたりが今回は印象に。

著者の三島由紀夫との交流が描かれ、意見を異にすることはあっても、お互いに刺激しあい、敬愛し、時に小説のモデルに使われたりといった様子が描かれていて興味深い。三島由紀夫死後に行われた対談では、世間の文脈でその死を分析することの不毛さを語り。死の直後に書かれた追悼文も印象深い。また、三島由紀夫が死の数ヶ月前に行なった対談で、示唆的な内容を語っているところも収められている。

シリーズ第6弾は、凶作続く高岡藩内にて、一部の村にのみ追加の年貢を課したことに端を発する一揆が起こる。農民たちの嘆願は、代官に拒絶され、代表者は拘束され。魂胆を持った商人が農民に加わり。世子の正紀への報告は、怠慢により遅れ、妻や兄や親類に相談しつつ、気になる情報を調査した上で正紀はお忍びで現地に。年貢米を盗もうとしたもの、農民の娘を誘拐して協力を強要したものらを刀て成敗し。印籠を見られたことで、正体を密かに知られるところは、控え控えおろうと恐れ入らせる黄門様へのオマージュなのかアンチテーゼなのか。親類や兄たちの、藩の威光を知らしめよ、厳しい処分を、という声をかいくぐり、農民たちと協議の上で、一人の命も奪わない処置を行なった正紀。老中候補の親類の不快にも、きっぱりと自分の道を行くことを決意する姿が清々しく。また、一揆に立ちつつも、「我らは夜盗ではない」という農民の誇りが印象的。

ヒストリエは、アレクサンドロスとそっくりのパウサニアスを護衛兵としたフィリッポスの意図に思いをめぐらすオリュンピアス。ブルーピリオドは、芸大一次試験の緊迫と濃密な時間。はしっこアンサンブルは、反発する同級生を鎮める曲がフォーレのレクイエム第七曲と明かされ、壮絶な過去が示唆され。マージナルオペレーションは、ジブリールのホラーかというぐらいの思いの強さが描かれ。波よ聞いてくれ、はマキエさんの異常な家庭環境が語られ、兄までボイジャーに参戦。最後の芽代さんの言葉はグッとくる。「心の中に薄暗いものを抱えていない人間なんて滅多にいないの 貴女は自分と同じ種類の人間を楽しませる事だけ考えればいいの」/フラジャイルは、診断を問われ、10割です、と自信を持って答える宮崎医師の成長。岸先生、大月先生の、移植がもっと行われる世の中作りという理想と一手。Black-boxは、ようやくレオンと凌駕の再戦の開始。二人とも満身創痍なことが示唆され、ようやくゴング。恋の罪は、ヘルマンの処刑と、エルネスティナの復讐宣言。四季賞の美しいカラダは、モデルとして見込んだ傷だらけの同級生の毒にの触れて、自分の中に眠っていたものが目覚め、人の闇をえぐって描く道を行くことを決めたように読み取れた。概念ドロボウより、「自ら進んで前後不覚に陥るなどケモノ以下だ」

自分のやりたいことにこだわりつつ、即断即決して、それを実現するためにひとに会いに行く行動力、そして、デザインは作りっぱなしではなく、「デザインを育てる」という考え方が印象に残る。JRタワーのハッピーフラッグや星をあしらった時計も五十嵐さんの仕事だったとはこの本で初めて知った。はじまりを楽しくする秘訣、グッと刺さってきて、身につまされました。あと、ものすごいオファーを何個か特に理由も示さずに断っているんだけど、そこはどうしてだったんだろう、というのが気になりました。

マスターと清美さんの縁も明かされ、マスターの息子さんの進路も決まり、大団円。最後のページに後日譚的に一コマ描かれた絵が、清美さんのこれからの活躍を示唆するようでなんだか嬉しい。外伝やサイドストーリーがあるともっと嬉しいのだけど。夏バテやテストや受験などなどで元気がなかったりするお客さんを、食べやすさや彩り、食材の工夫で優しく気遣うところがほっこりして好きでした。阿吽にはいろいろな名前の無い関係があって、自分もここにいていいんだ、居場所があるんだ、と清美さんが内心思うシーンが一番印象に。

ご飯の本のはずなのに「注意してほしいのは、食事中に読まないこと。中には強烈な刺激を伴うものもある。」てどういうことですか、と。高野さんも、昔は食べれるものの範囲が狭くお腹もこわしやすかったらしいのですが、コンゴ探検時にゴリラやチンパンジーの毛の絡まったような肉を食べたことで開眼、食べれる物の範囲が飛躍的に広がった、と。一般的には参考にならなさそうです。けど、イモムシのピリ辛煮と粋なハイビスカスジュースの取り合わせ。「世界でもっとも美味いビールのつまみ」豚の生肉を発酵させたもの「ネーム」、強烈なアンモニア臭の韓国のホンオ、猛毒フグの卵巣とかは興味が湧く。虫の盛り合わせ出してくれるという歌舞伎町の「上海小吃」てお店も行ってみたくなる。そこでムカデ蛇牛ペニスを食べて、40代編集者はその晩下半身が二十代のようになったのに、高野さんはなぜか、あれだけ飲み食いしたあとなのに、なぜか衝動的にカレーが作りたくなった、てエピソードが面白く。「君の名は」にも出てきた口噛み酒については四回に渡った熱をおびたルポ。

顕定の父や叔父を知る人物に会うことができ、そこからさらに詳しい人へと。直接の謎を知る人物へたどり着けるか。そして、虎徹の登場。愛されキャラで運は人一倍ある、と。巻末には次巻予告で、kk宣言、て。

小説書きたくて芸術大学に来たのに、ゼミは俳句ゼミに振り分けられた流星。強面だけど的確な指導の先生と個性的なメンツに囲まれ、ちょっとずつ噛むと滲み出るような味わいで、俳句の奥深さ、面白さに触れていく。書きたい、書きたいんだけれども、それを人前にさらし、講評されるのは、程度の差こそあれ身悶えするほど恥ずかしく、ハードルが高い、て思いが随所に描かれ。クールな流星と感情ジェットコースターななずなさんの絡みをもっと見たいと思った。叔父の「帝王」、幼馴染で同級生で俳優の航太郎、滝先生や重松先生、坂本先生の一番弟子になろうとしてる人気歌手、喋り出すと止まらなくなる春信くんなど、まわりのキャラも一人だけでも何話も語りたくなる濃さで、もっともっと読みたい気を起こさせる。

今回のテーマは、カラバッジョ、若冲、デュシャン、盧舎那仏、マリー・アントワネット、IT長者の闇。カラバッジョの光と闇だけじゃ語れない異色さ、マリー・アントワネットの実際の肖像の推測、デュシャンの泉の一発屋的なケレン、当時の時代背景があったからこそあれだけの波紋を投げかけられた、今じゃ時代が現代アートを超えているといったフジタの独語が印象に残る。

古本珈琲日曜日さんのイベント「本戒」で購入。個人的にエッセンスと思ったのは、以下の通り。/人間と動物とを区別するエロティックな世界は、視覚なしには考えられないのだ。/人間は、愛の行為においても、生殖本能とは別の衝動、つまり快楽の欲求によって動かされているのである。/エロスの働きは、この二つに分離した男と女を、ふたたび一つに結合させようとする、失われた統一への郷愁なのである/エロティシズムには、必然的には異常をめざし、倒錯の方向に向かう宿命があるのではなかろうか/エロティシズムとは主観的なもので、個人的なものであろう。そのなかから幾つかの法則や原理をみちびき出すことは可能であっても、個人個人のエロティシズムは、ほとんど無限の色合に分割されるに違いない/わたしには愛は性愛だけで十分なような気がする。


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2018年10月03日

2018年09月に読んだ本

期間 : 2018年09月
読了数 : 35 冊
上田純也 , 上田ちひろ / 上田純也,上田ちひろ (2016-07-06)
読了日:2018年9月30日
旅先のスーパーでのご当地ならではの商品をたくさん紹介、ポップや建物やレシートまで含めて。そして窓ガラスやパッケージ、包装紙、個性的な看板コレクションなど。図版豊富で見てて楽しくなってくる一冊。スーパー玉出のギラギラしたネオン、見てみたかった。確か買収されたと聞いたけどネオンはどうなったのだろう。個人的には、旅先でおもしろい印象的な看板があればパチリと撮るけど、ここまで網羅的には集めてなくって。この本みたいにこれだけ並べると壮観だしコメントも気が利いていて楽しい。
赤沼俊幸 / 赤沼俊幸 (2018-09-09)
読了日:2018年9月30日
実名、住所入りで絵馬によくここまで書くなあ、と。著者の読み解きとセレクションが独特でおもしろい。誰それをクビにして欲しいとか、新興宗教から抜けられますようにとか、友達が詐欺をやめますよにとか、なくしたminiSDカードのデータが消えますようにとか、もう様々。かと思えば、願いが叶いましたありがとうみたいな報告の絵馬もあり。闇と光がそれぞれあぶり出される。
ケイタタ / ケイタタ (2018-10-01)
読了日:2018年9月30日
サロン タレ目で、同名の写真展を観て面白かったので、購入。写真集の方は、写真展よりも枚数がぐっと増えててまたまた楽しめた。多分大阪を中心に、人々の何気ない日常の瞬間をパチリと撮って、一言コメントを添える。その組み合わせの妙を楽しむ。日常の瞬間を切り取るだけだと、個人的に大好きな金子山写真集「喰寝」を思い出すのだけど、そこにコメントを添えることで、ネットで見かける「bokete」と通ずるものがあるなあと思った。個人的に好きなのは、電話片手に走り出す少年の「ミッション発生」、ほんとかよ!と思ってしまう「恐るべき用の足し方」。ゴミ収集車の投入口を食卓にした「食卓は選ぼう」、注文の多い料理店山猫軒て店に猫が入ろうとしている「出勤」、ひっくり返ったうどんを素早く丼に戻そうとするおばさんの「迅速なリカバー」、駅の地べたに書類を広げて電話するサラリーマンの「広い机」と、エスカレーター横の塀にパソコンをおいて仕事する「細長い机」。もう文字ではおかしみが伝わりにくくて悔しい。これ許可とってるんでしょうかとか、いっつもカメラ持ち歩いてるんですかとか、どうやったらこんなにドンピシャな場面に遭遇するんですかとかいろいろ聴きたい気もするけど、トークショー逃したのは痛かったなあ、と。
映画大好きポンポさん2 (ジーンピクシブシリーズ)
杉谷 庄吾【人間プラモ】 / KADOKAWA (2018-09-27)
読了日:2018年9月29日
ニャカデミー監督賞の効果で、ハリウッド娯楽大作の、続編の監督をオファーされたジーン。豪華キャスト、設備、予算に驚くも、撮り進めるうちに、商業路線第一に違和感を覚え、吐き気を覚えながら、ようやく編集までたどりつき、ポンポさんに売り物としては太鼓判を押されるも、面白かったの言葉がなかったことがひっかかり、試写会にはゴリッゴリの尖った作家性を前面に出したものを提出。そのまま出せるはずもなくポンポさんと他の監督が商業路線なものに徹夜で編集し直すも。結局ポンポさんの会社を辞めて、自主制作の映画作りに突き進むも、結局ポンポさんの出資を仰ぐことに。その条件は、映画勝負。ポンポさんが今まで映画を観たあとに感じたことのなかった感情を、光を、描いていて、そのシーンは良かったなあ、と。巻末の映画紹介の、サイレントからトーキーへの過渡期を描いた「アーティスト」は観てみたいと思った。
未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)
早瀬 耕 / 早川書房 (2017-09-21)
読了日:2018年9月29日
ものすごい吸引力。2018年の日本にいるのに、ページを開くたびにあっという間に、2009年の香港へ魂を持って行かれた。そんな稀有な経験。IT企業に勤める中井は、タイでの商談をまとめ、香港の子会社社長としての人事発令を受けるが、その真意は...、そして、マカオの娼婦に「あなたは王として旅に出ることになる」と予言された意味は...、暗号化技術をめぐる暗闘は...、とわくわくさせられるのだが、タイトルに持ってきたからといって、強迫的なまでに「マクベス」の筋にとらわれてしまうというのは、いささか無理筋に思えるところもあったけど、総じて手に汗握る、ちょっとでも頭のフル回転をやめてしまえば振り落とされてしまいそうな緊張感、裏切り、ドンデン返し、なんでもありなようでいてなんでもありでなく、と。以下備忘録的に。/きれいは汚い、汚いはきれい。寛容は不寛容、不寛容は寛容ってことか/「バンコクで仕事を取ってこいって言われて、朝五時のスワンナプームに着いたとき、中井は、何かあてがあったのか?」/あなたが王として旅を続けるんだったら、あなたにできることはすべてしなきゃならない/「光は闇、闇は光なのよ」「明るい場所にいるあなたには、暗闇は暗闇としてしか見えないけれど、暗闇からは、明るい場所がよく見えるっていうこと」/そんなに遠くまで行くなら、私を連れて行けばいいでしょう。/もともと、カジノのテーブルなんて、多かれ少なかれいかさまをしているんだから、それを承知でゲームに参加すればいい。/「旅を続ける力って、何だろう?」「疲れ果てて、たとえ目的地にたどり着けなくても、旅を始めた場所に戻ること」/Bei Xuが、James Brant「You're so beautiful」をカバー、松任谷由実のHappy NewyearをカバーしたCDを聴きたいと思った。
悶絶スパイラル (新潮文庫)
三浦 しをん / 新潮社 (2012-08-27)
読了日:2018年9月29日
何度目かの再読。ダ・ヴィンチ三浦しをん特集を読んだら、無性に昔のエッセイを読み返したくなった。案の定、ページをめくるたびに、笑いが堪えられない。蝶ネクタイ+ループタイの男の人とすれ違って「変人」のレッテルを貼るのは簡単だが、お互いの日常を生きてるだけであり、多大な衝撃と刺激を受けたこと。電車男をお互いに読んでしゃくりあげる姉弟。無理めの告白を受けている男子を眺めてジュリーの「カサブランカ・ダンディ」が思い浮かぶ一幕。切羽詰まって、友人に、念力で出版社を爆破して欲しいとお願いする一幕。義憤にかられるタクシー運転手。スター・ウォーズを映画館で観てずーっと号泣してたので、彼氏に、ずっとシュゴーシュゴーっていってるから、ダースベイダーが隣にいるのかと思った、この映画館は最新のドルビーサラウンド方式を採用しているのかといろいろ考えた、と言われた友人。タクシーの運転手さんに、恋愛上級者を気取ったら、ビシーっと決まったアドバイスを受けたのだけど、我に返って、恋愛初心者へのアドバイスも、と思った一幕。スガシカオの「はじめての気持ち」の歌詞の世界にぶっ飛び。「宗教」が「漫画」になっただけで、高僧と変わらぬはずの我らに、なぜこうも周囲は理解がないのか、という対話。もう、おかしなシチュエーションに巻き込まれる率、周囲の友人や家族のキャラ立ち率といい、どうしてそんなにもネタが巻き起るのか、というかしをんさんが引き寄せているんだろうな、そして観察眼が独特だから、こんなにも笑わせてくれるに違いないと踏んでいる。
一休―風狂の精神 (講談社現代新書)
西田正好 / 講談社 (1977-05)
読了日:2018年9月26日
最初の逸話や伝承をまとめたところは面白く、どこかで聴いた話が、一休咄が起源だったのだなと気づいたり。生涯については、エロいことをしても一休ならすごい、殺生しても、破戒しても一休だからすごい、と無前提に叫んでいるようで、もう少し掘り下げてほしかった。やったことの意図が無私かどうかなんて、他人に推し量れるのか?と。並外れた破戒や「風狂」が、当時の仏教界への強烈な批判であることは理解しつつも。終章は若干ファンタジー。茶道も能も歌舞伎もあれもこれもみな一休の影響を受け、典型的日本人としての一休を称揚する。詳しくは著者の「日本のルネサンス」に書かれてるらしいが、さすがにそこまでは手がのびず。/釈迦といういたづらものが世にいでておほくの人をまよはするかな/極楽や地獄があるとだまされてよろこぶ人におぢる人々/門松は冥土の旅の一里塚馬が子もなくとまりやもなし/所詮人間はかりそめに皮をまとった骸骨にほかならない/「閑吟集」にもあたってみたいと思った。
講談社 (2018-09-25)
読了日:2018年9月25日
あたりのキッチン:大好きなあたりのキッチン、最終回は寂しいが、大団円。清美さんも調理師資格を目指し、阿吽のバイトを続けることを決め、清正さんと二人で初のまかないのメンチカツを作り、マスターも認めてくれ、そして、清正さんの進路も決まりと、本当に本当に大団円。清美さんが決意したコマはほろりときそうに。/イサック:「何もせずに死ぬのが恥ずかしいということだ」「天に恥じるという。誰が見ているか見ていないかは関係ない。自分の心が苦しいのだ。」勝算の薄い旅立ちへと向かうイサック/フラジャイル:官僚からの圧力に、岸先生の策略が始まる。業界誌の記事がどう展開するかは次号以降/波よ聞いてくれ:救出されたミナレさんたち。逮捕される教団幹部たち。「ネットには自由な気風があるように放送には公共性に対する矜持がある」と語られるように、教団の願いが結果としてはかなったと描かれ。そして、一番笑ったコマは「会うたびに初めましてと思えるようなそんな輝きをこそ大事にしたいんだ」「滝沢カレンのインスタのハッシュタグみたいなこと言いますね」です。/ブルー・ピリオド:「話術で本音を隠すんじゃなくて 本音を技術で武装したらいいんじゃないか?」強面な友人恋ちゃんのアドバイス。そして突き抜ける八虎/はしっこアンサンブル:イヤホンの修理の申し出と、幼馴染同士のすれ違いからの和解が描かれ。マーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本、手に取ってみたいと思った。パッヘルベルのカノンによる遠い日の歌も聞いてみたいと思った。
AIの遺電子RED QUEEN(2)(少年チャンピオン・コミックス)
山田 胡瓜 / 秋田書店 (2018-08-08)
読了日:2018年9月24日
1-2巻読了。新シリーズは、前シリーズの一話完結から打って変わって長編もの。ヒューマノイドとして自分の人格を売ってしまった須藤の母がいるのではないか、という希望を元に、ジャーナリストとしてロビジアへ乗り込んだ医者のスドウ。幼少期の母との生活が描かれ、なぜ母が須藤のために自分の人格を売ってしまったのかも描かれる。探索の旅は、時に、冷酷に人の命を奪い、バイクを奪いと、一筋縄ではいかず、時に命を狙われるも、サラハという少女とテディという熊のぬいぐるみ型AIをともに進んでいく。その描かれる世界は、人の代わりになり得るAIの登場、ある国がその助言で政治改革、農業改革を行うも国際的に警戒され自爆、その後、様々な規制が加えられつつもAI研究は進展するも、それは必ずしもユートピアを約束したわけではなく、ロビジアでは人間優先主義者とAI至上主義者が戦争を繰り広げらている、と。AIの発展により、世界がこういう風になる可能性もある、という視点を提示してくれる。/セネカ「人生はもしあなたが使い方を心得れば長い」/
AIの遺電子 RED QUEEN(1)(少年チャンピオン・コミックス)
山田 胡瓜 / 秋田書店 (2018-04-06)
読了日:2018年9月24日
A子さんの恋人 5巻 (ハルタコミックス)
近藤 聡乃 / KADOKAWA (2018-09-15)
読了日:2018年9月24日
昔の彼氏たちのことで、ガールズトークに花が咲く導入部。隣家のボヤで大半の家財が水浸しになったA太郎。母から実家の部屋を引き払うよう命じられたA子。念願の作品の翻訳の依頼が来て勇んで取り組んでたのに、A子さんとの何気ないはずのSkypeで調子を崩したA君。その決断は間違ってない気がするが次の巻へ。番外編はゆうこちゃんとヒロくんの結婚報告の旅。ぼんやりしてるようで見るところはしっかりみて、彼女らの関係性も理解してるヒロくんがダークホース。ブルース・リーの「燃えよドラゴン」みたくなってきた。/お互いの悪いところをわかった上で「ふたりで許しあって生きていきませんか?」って言ってるんじゃない?/
こぐまのケーキ屋さん そのに (ゲッサン少年サンデーコミックス)
カメントツ / 小学館 (2018-08-24)
読了日:2018年9月24日
今日も今日とて、こぐまのケーキ屋さんと店員さんの物語。店長はノリツッコミを覚えました、のコマが一番好き。あと、小学校に行きたくて行きたくて、頼んだら、お店の休みの日は家庭科の先生として来ていいと言われ、小学生と仲良くなるこぐま店長が愛らしくてしかたない。
響~小説家になる方法~ (10) (BIG COMIC SUPERIOR)
柳本 光晴 / 小学館 (2018-08-30)
読了日:2018年9月24日
受賞をめぐる響と加賀美大臣の攻防。結果としてマスコミに追われる身に。からの、突然の退学。有望そうな新入生の登場。フィンランドでの響と即帰国を決めた即断即決。帰国後どう動くのか続きが楽しみ。
ゴールデンカムイ 15 (ヤングジャンプコミックス)
野田 サトル / 集英社 (2018-09-19)
読了日:2018年9月24日
14-15巻読了。網走監獄での攻防、のっぺらぼうの死、さらわれたアシリパさんを追って、鶴見中尉たちと合流した杉本たちが先遣隊として樺太への旅。裏切ったものと追うものと。はロシア相撲での決闘を経て、刺青の写しを手に入れ、その後語られる月島軍曹と鶴見中尉の因縁。どんどんと物語が深く濃くなっていく。
ゴールデンカムイ 14 (ヤングジャンプコミックス)
野田 サトル / 集英社 (2018-06-19)
読了日:2018年9月24日
ダ・ヴィンチ 2018年10月号
KADOKAWA (2018-09-06)
読了日:2018年9月23日
三浦しをん特集。桝太一アナと対談するとは!確かに植物学研究者メインの「愛なき世界」とアサリの研究にどっぷりだった桝太一アナ、言われてみれば納得かも。導入が、僕の初恋が描かれたのかと思ったには爆笑。執筆のきっかけが、東大の植物学の教授からのオファーだったとは意外。最初は戸惑うも取材してみたら面白くてのめり込んだのだとか。著者が一つのことを突き詰められない、いろいろなことがしたいほうなので、逆に、突き詰められる人のことを知りたい、とやる気になったとか。自分の知らない世界に好奇心を持って切り込んでいって小説にするのが楽しいのだとか。桝太一アナの、学生時代に西表島に行って、ここで80年間、研究続けられるか、という問いにノーを出したのが今の職業につながったのだとか。たどサイエンスコミニュケーター道険し。放送かさかなクンのようなタレントか以外は食べるの大変だとか。「愛なき世界」みたいな小説を出すのも一助かと。そして、誰かと暮らすつながりで「大家と僕」の矢部さんとの対談も楽しかった。そして、「しをんのしおり」「悶絶スパイラル」読み返したくなった。/安田顕特集。ヤスケンの日常を描いたマンガの、焼酎を二杯頼んで、片方があいたら注文して切らさないようにするってエピソードと、大泉洋にあなたが安田顕が怪物だと思うところは?に、なつかしの「マッスルボディは傷つかない」をあげてたところ。本人的には初主演作「man-hole」は荒削りでできないことが多すぎて見返すのが辛いみたいだけど、個人的にはかなりお気に入り作品。/垣根涼介「信長の原理」の自作紹介。「戦のない世を夢見て登場人物が動いていく唯物史観で書かれた歴史小説が多いなか、僕は構造主義的な歴史小説を書きたいと思ってるんです。本作もそう、そこに正義はない。集団の人間の構造があるだけです。」なんて魅惑的な紹介なんだ!
ブリジット・バルドー 女を極める60の言葉 (PHP文庫)
高野 てるみ / PHP研究所 (2014-08-04)
読了日:2018年9月22日
田辺聖子「苺をつぶしながら」で頻繁にBBの言葉が引用されていたのに影響されて。傲慢でセクシーで小悪魔な「BB」を演じ続けなければという義務感と誇りと疲弊が20年弱で映画界を去らせたのだろうか、ということと、大本命の恋がありつつ、さらにもうひとつ二つ、相手の選択肢がなければいられないという性格、最初の夫のロジェ・ヴァディムが生涯にわたって大人の対応で人生の良きアドバイザーだった、というのが印象に残った。「変わるかも(Ca purrait Chancer)」「ジュ・テーム・モワ・ノン・ブリュ」「メケ・メケ」聞いてみたくなった。/語録から「幸せでいることは難しいんだわ」「愛とは、各瞬間を共有することであり、二人の存在が完全にひとつに溶けあい、ともに生きることである」「選ぶことができないというやっかいな性格のせいで私はいつもひどい目にあってきた」「笑われたって死にはしないもの」「彼が悪いこともあれば私が悪いこともあったんです」「温め直したスープは大嫌いなのだ」/著者の、自分が必要とするお気に入りが何なのかを見極めておけばサヴァイバルできること、というフレーズをかみしめつつ
nu / nu (2006-06-25)
読了日:2018年9月22日
地震の次の日でシャンティブックスで手に取った一冊。「なnD」にはまってた身にはそのうちの"n"を見つけて手に取らずにはいられなかった。/まずもって、ページの1/4〜1/6ぐらい使って転載された「その日ブログでは」が秀逸で、2005年の空気感をぎゅっとつたえてくれるものだったり、知らなかった映画や音楽、そんな視点があったのか、などなど引き込まれる。ページ下部の一行できごとも含めて。/管楽器でいてパーカッションでもボーカル増幅装置でもある不思議な楽器としてディジェリドゥを紹介する南陀楼綾繁さん。ウルグアイ映画「Whisky」(Juan Pablo Rebella y Pablo Stoll監督)の紹介。「なぜ人を殺してはいけないか」と云う設問に、主語を「われわれ」にする以外なくそれ以外では無意味に難しい回答しか出てこないという哲学問答。野菜のフォーを見かけると、レイザーラモンHGを思い出して仕方ないと云う人。Taj Mahal Meets the Culture Musical Club Of Zanzibar「Mkutano」:アフリカとアラブの音楽が融合したタラーブにブルースがミックス。北一輝の思想がどのようにもてはやされて広まって本人の死に繋がっていったのか。写真家米田知子の作品群。「支える会」のシスターからテゼ共同体のブラザーロジェが殺されたと云うニュースを聴いたこと。リーバイスが10秒採寸装置導入。服を着たまま円筒形のドーム内に入るだけで採寸してもらえる仕組み(これってゾゾスーツのものすごい先駆け?)。当時読んでた、「まじぇゴはん」さんの映画ブログ。昨年のSIAFで知った大友良英さんのブログ。そして、今も続いてる!ウラゲツ☆ブログの記事。映画「NANA」を観に行って、なんだこれは、最後は女はバンドマンに抱かれれば幸せってことかよと吠えてる人。などなど/本文の対談と記事では、こちらの知らない当時の東京のシーンや、内輪同士のあれ知ってる、これやったよが多くて読みづらいところもあったけど、興味深い視点もあり。/音楽批評って"紹介"か"宣伝"か"感想"なんだよ(佐々木敦)/ありすぎてない空間(略)検索するのは自分であって、だから結局自分しかいないんですよ、そこには。ブックマークがアイデンティティ(宇川)/上戸彩の「爽」のCMをこれでもかってぐらい深読みしたり。グラフィック・デザインは「先週やった表現?あー、ダメでしょ」って平気で言えるけど現代美術は言えない、とか。globeに瞬間的に南こうせつが加入してたってトピックとか。日本で音のいいクラブって半年くらいたくさんのDJに質問したら「札幌のプレシャスホール」か「名古屋のマーゴ」って結果だったり。と云う佐々木宇川対談。/ビバ彦さんの熱すぎるモーヲタを語った記事。/岸野細馬対談は/まず僕らは何かを思い出すときに、ひとつにはそれが「二回目だ」ってことを思い出しているわけなんですね。/会話というのはあちこちに分岐点があって、選ばれなかった方の分岐図をたどっていくと...と云う視点には興味が尽きない。大友良英x中村八大のSee you in a dreamも聞いてみたい。
マザー・テレサ あふれる愛 (講談社文庫)
沖 守弘 / 講談社 (1984-06)
読了日:2018年9月22日
久住邦春「奇跡の本屋をつくりたい」つながりで。ただひたすらに貧しいものへ愛を。プア・イズ・ビューティフル。賞や派手な晩餐やら高価なものには目もくれず、それらは皆貧しい方たちに分け与えては、と問いかけ、法王から送られたロールスロイスも宝くじの商品にして、新たな施設を建てるための資金にしてしまう。慈善や福祉でやっているのではない、ただ、神の愛に近づくためにやっているだけ。そしてその活動に付き従うシスターたちも、精神的に満たされているように見受けられた。なかなかその境地には至れないけれども、それでも少しでも、と。/以下備忘録的に。/不親切で冷淡でありながら奇跡をおこなうよりは、むしろ親切と慈しみのうちに間違うほうを選びたい/人間にとってもっとも悲しむべきことは、病気でも貧乏でもない、自分はこの世に不要な人間なのだと思い込むことだ。そしてまた、現世の最大の悪は、そういう人に対する愛が足りないことだ。/祈れば、心が澄み、心が澄めば、神が見えてきます。神ば見えれば神の愛が働いて、ことばでなく行動で愛をあらわしたくなります/
桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?(5) (アクションコミックス)
ぽんと ごたんだ / 双葉社 (2018-08-28)
読了日:2018年9月17日
この巻は、ヤガラ、アナグマ、トノサマバッタ、マンボウ、ヤモリを食べる桐谷さん。アナグマすき焼きとマンボウの共和えはちょっと興味が。雑食受け入れ派のキャラたちとは異色の八重樫さん登場。先生がなんとか和解させようと試みたり、桐谷さんなりの接近策を練ったりするのだが…と。そして、不良と思われ周囲から距離を置かれてた佐竹くんをひょんなことからアナグマ解体に巻き込み、生物部へ導いてしまった桐谷さん。ヤガラの頭を雑な感じで鍋にぶっさした絵面に大受けだったんだけど、意外とダシは取れたと言う桐谷さん、とこの巻も大活躍。
方丈記 (光文社古典新訳文庫)
鴨 長明 / 光文社 (2018-09-07)
読了日:2018年9月17日
鴨長明の「地震の当初は、人々はみんなこの世の虚しさを口にして、少しは心の濁りも薄くなったかと見えたが、月日が過ぎ、年数が経つと、もうだれもなにもいわなくなる」(p.32-33)は、北海道胆振東部地震に遭った身には刺さってくる言葉。訳者の、本当に達観した人ならば、なぜ私は達観しているなどと書き残したのか。達観などしていなかったのだ、ちらちらと俗世間に気を配りながら、わたしは達観したのだと書き残さずにいられなかったのだ。そして、生涯を通し、激情の人で、我慢しふみとどまるということのできない、芸術肌の人だった。それゆえに愛された面もあり、魅力を放ち、一部の人を魅了したのだろう。自分で運がない人生と言ってたが、人との出会いには恵まれていたのではないだろうか、という読みが、説得力をもってせまってきた。自分自身でも折りに触れ読み返し、違った感想を抱くのを楽しみたいと思った。また鴨長明の「無名抄」「発心集」にもあたってみたいと思った/「世界というものは、心の持ち方一つで変わる。もし、心が安らかな状態でないなら、象や馬や七つの宝があっても、なんの意味もないし、立派な宮殿や楼閣があっても、希望はない。」(p.48)/ながむればちぢにものおもふ月に又わが身ひとつの峰の松風/
銃座のウルナ 6 (ビームコミックス)
伊図透 / KADOKAWA (2018-09-12)
読了日:2018年9月16日
わたしはひとつの民族を滅ぼした。平穏が戻ったかな思えたウルナの周囲。そして火災の発生。消えたはずのトホマが現れ。ウルナは最後まで和解と逃避行を望んだように見えたが閣下は…。ますます高める国民的人気とうらはらに重いものを抱えたウルナの心は、と。次巻、最終巻。
夏目友人帳 23 (花とゆめCOMICS)
緑川ゆき / 白泉社 (2018-09-05)
読了日:2018年9月16日
市内の三つの高校にあったという、テンジョウさまの絵をめぐる話と、名取、的場たちとの絶えた三春家に妖を迎える行事に巻き込まれた話と。力の強いものをそばに置きながら使わずにいることの難しさと、それが、できている夏目の希有さと。
セリー (ビームコミックス)
森泉 岳土 / KADOKAWA (2018-09-12)
読了日:2018年9月16日
終末に向かう地球でかろうじて動くホームシステムのもと生き残った人間のカケルとヒューマノイドのセリー。カケルはセリーに記憶してもらうために、膨大な蔵書を朗読してもらう。主に海外文学を。二人の置かれた状況を、関係性を暗示するような引用が語られていくが。ついに。人の寿命が先に尽きるのは仕方のないこと。その後の道行きは、手塚治虫の「火の鳥」のなに編か忘れてしまったけど、それを読んだ後の感触と似た空気を感じた。巻末には、著者と妻と義父の大林宣彦との三都市をめぐるストーリーが語られる。/以下、備忘録的に_秋ごとにかけるマーラーの「訣別」(ブルーノ・ワルター指揮キャサリン・フェリア独唱)/「私たちは不連続な存在であって理解しがたい出来事のなかで孤独に死んでいく個体なのだ。」(バタイユ「エロティシズム」)/日々の雑音のスイッチを切れば、まず安らかな静寂がやってくる そしてつぎに、とても静かに、光のように静かに、意味が戻ってくる 言葉とは語ることのできる静寂の一部分なのだ。(ジャネット・ウィンタースン「灯台守の話」岸本佐和子訳(白水社))
愛なき世界 (単行本)
三浦 しをん / 中央公論新社 (2018-09-07)
読了日:2018年9月16日
パッと見、思ったのは、「舟を編む」との対照関係。辞書編纂に打ち込む学者肌のまじめと、和食の料理人のかぐやさんとの恋愛。裏返しとしての洋食屋の見習い藤丸と、植物学研究者の卵の本村さん。そして、三浦しをん作品には、プラントハンターを主人公の彼氏にした短編があったように記憶。その頃から植物への興味があったのかなということも。/底なしにお人好しでまっすぐな藤丸と、研究以外のものは見えない、目に入らないようにしている、ひたすら葉っぱの研究に打ち込む本村さん。素人ながらも、出前の料理を届けるうちに、本村との出会いがきっかけで、植物学研究の面白さに惹かれていき、告白を断られても、めげずに、時に素人ながらのするどい助言を送ったり、美味しい料理をふるまったり。その行方は...というのも一つの興味だし、研究することとは、その面白さとは、というところも読みどころ。/「知りたい」という思いは空腹に似ている。そして、うつくしいものを追い求めずにはいられないから、研究するのです。p.153(諸岡)/そして、松田先生の過去の話が語られるところでは思わず涙しそうになってしまった。/俺も同じだ。覚えようと思ったわけでもないし、忘れられれば楽かもしれないとも思ったのに、俺の脳は記憶している。いろんな料理を作る手順を。本村さんを好きになって、心臓がどんなふうに鼓動したかを。脳の仕組みなんて俺は知らないけど、記憶は勝手に刻みこまれた。たぶん、大切なことだからだ。p.425(藤丸)/本村さんは、愛のない世界を生きる植物のことを、どうしても知りたいんだ。だからこんなに情熱を持って研究するんだ、って p.444(藤丸)/その情熱を、知りたい気持ちを、「愛」って言うんじゃないすか?植物のことを知りたいと願う本村さんも、この教室にいるひとたちから知りたいと願われてる植物も、みんのおんなじだ。同じように、愛ある世界を生きてる。俺はそう思ったっすけど、ちがうっすか?p.444(藤丸)、それに対する本村さんの言葉も、穏やかでいてキラキラしていた。そう、ここまで読んで、愛なき世界は、愛ある世界だった、というのがすとんと落ちてきた。
中ザワヒデキ / トムズボックス (1989-01-01)
読了日:2018年9月15日
見る、魅る!現代アートを鑑賞しよう!(at白石区民センター 2018.9.3)に触発されて。というか魅力的に講義で紹介されていたので。42ページと薄い小冊子に、全て手書き。文字のみならず、紹介する絵画も全て手描きと云う贅沢なつくり。キャンバス全体を金色に塗った絵を紹介する白黒の絵で、カラーでお見せできないのが残念です、なんてご愛嬌も。また、キャンパスを切りさく作品(フォンタナ「空間概念」)の紹介で、実際にページに切れ目が入ってて、これは...本当の手作り...と思ったのもつかの間、3、4ページ先まで切れ目が入ってて、そこはきっちり1枚だけにしようよ!とおかしみを感じたり。/内容は、印象派から始まり、アメリカの現代アートの発展と袋小路を描き、一転、1980年代の日本のイラスト事情が語られ、幕が閉じる。薄いから一読すぐ理解、かと思いきや、なかなか言ってることは凝縮されてて、二、三度読まないと理解できないかもしれない。ただ、読み返したいと思わせる一冊ではある。/マティスの安易ですべってる側面に感じるポップさ、馬鹿でかいキャンパスに茫洋とした色彩を残すマーク・ロスコの魅力、反芸術を突き詰めすぎて芸術をやめ晩年はチェスに興じていたというデュシャン、吉澤美香「三脚」の魅力、もの派の衝撃、制度のあるところに反体制は現れるが、その繰り返しがすぎると袋小路に、そして体制なきところには反体制も生まれず。蓄積なきところに独自の文化が花開いた、特に日本のイラスト界に。と言ったトピックスに興味。なんだか、アフリカでは固定電話の普及の前に一気に携帯電話が広がった話と通ずるものを感じた。
さいはて紀行
金原 みわ / シカク出版 (2016-05)
読了日:2018年9月15日
最高齢なのに新人というストリッパー、川辺でありもので掘っ立て小屋を建てた淀川のピカソ、福島の場末のしおを吹くというストリッパー、犬鍋を食べるということへの葛藤と恍惚、キリスト教看板への愛着と作成者たちとの交流。○○のさいはて、という題で語られる連作紀行。ゴキブリ、犬鍋と「どうしたかというと、結局たべました」が2度ほど繰り返されたのが可笑しい。/以下備忘録的に。/ホームレスになる理由のなかで意外と多いのは「財布をなくしたから」というものなんだそうだ。/バナナパフェカレー、コーヒーラーメン、喫茶マウンテン……ハイブリッド奇食と呼ばれる、食べ物の組み合わせ系の奇食。
マンガ世界の文学 (1)赤と黒
スタンダール / 世界文化社 (1995-11)
読了日:2018年9月14日
グッドウィン「イスタンブールの毒蛇」で女后(ヴァリデ)がヤシムに、最後に、うちに帰ったら、スタンダールの「赤と黒」を読んで欲しいの、と言ってたことから興味を持ち、まず原作に当たるも冗長で投げ出し、漫画版にたどり着く。名もなき家の貧しい育ちのジュリアン・ソレルが、ひとかどの人物になり権力を握りたいという野心をドライブし、満たされなかった愛されるということも踏み台にして、のし上がろうとするが、姦計に落ち、罪に落とされ、逃れる道もあったのに、これが自分の道と23歳で生涯を終えるストーリー。ヴァリデが言いたかったのは、野心に振り回されて最後には命を落としたルフェーヴルを、ソレルに重ね合わせたかったのだろうか。もっとも、ソレルが垣間見せたある種の高潔さはルフェーヴルには見当たらなかったが。以下備忘録的に/俺には知性と意欲とこの美貌だけだ。/軍服の「赤」でのし上がれないなら僧侶の「黒」でのし上がってやる/おれの野心はおれの信念だ。/人生においての成功を願ってきたおれの努力は神の名のもとでは単純でいやしい野心にすぎない/退屈の空しさを知っているのが貴族の条件だ 彼みたいな勉強の虫は一生退屈しないのだろう/このおれが赤でも黒でもなく青い服を着て貴族のように振る舞うとは/
バリ島物語(1) 神秘の島の王国、その壮麗なる愛と死 (アクションコミックス)
さそう あきら , ヴィキイ・バウム / 双葉社 (2016-08-27)
読了日:2018年9月14日
20世紀初めのバリ島。伝統を大事にして生きるパックをはじめとするバリ人。植民地支配を進めるオランダの駐在官。商人としてやってくる中国人。それぞれ理解し合えない面が高じ、衝突の火種がくすぶり始めていることを感じさせるところまで描かれ。原作にも当たってみたい。
お尻とその穴の文化史
ジャン ゴルダン , オリヴィエ マルティ / 作品社 (2003-08-01)
読了日:2018年9月13日
主に文化史、歴史のあたりを拾い読み。最後はマリリン・モンローの死因の話題で締めくくり。
苺をつぶしながら―新・私的生活 (講談社文庫)
田辺 聖子 / 講談社 (1985-05)
読了日:2018年9月12日
乃里子シリーズ三部作、最終作。一作目は恋愛、二作目は結婚生活、三作目は友情を描きたかったということなのかな。最初は、離婚して、独身生活を身体の隅々まで謳歌、特に結婚中は夫がいい顔しなさすぎて、おざなりにせざるを得なかった友人関係が復活し、新たな友人関係も。そこへ土砂降りの雨の中、再会してしまった元夫。けれど、もう言いなりになることもなく、かといって完全に無関心なわけでもなく、いいところも悪いところも冷静に見つつ、時には頼ったりもする、友人のような関係を築くことができ、結局、男女は友情が一番、という境地に立つまでが描かれる。ここまで導いてくれた三宅香帆さんのcakesの記事に感謝。作中、乃里子があまりにブリジット・バルドーの言葉を引用するので、関連する本を買いに走ってしまった。/剛のいちばんいいものだけを抽出して、贅沢に費消するとすれば、彼の友情だけが欲しかった。(p.259)
ビザンツ帝国 生存戦略の一千年
ジョナサン・ハリス / 白水社 (2018-01-20)
読了日:2018年9月11日
「ビザンツ帝国は絶えず国境に押し寄せる人の波を、みずからの人的資源を強化したり、自分たちの宗教や文化に同化させたりした。」「ビザンツ帝国の最大の遺産は、もっとも厳しい逆境にあっても、他者をなじませ統合する能力にこそ、社会の強さがあるという教訓である」という末尾近くの文に尽きるという思い。それも、ここまでの350ぺージに渡る紆余曲折を経た歴史が語られたからこそ。だからこそ、1204年に始まる亡命政権自体に、自称が「ローマ人」から「ヘレネス」(ギリシャ人)へと変わっていったことは、終わりの始まりだったんだな、と。もちろん、今でいうグローバル化一本やりではなく、様々なせめぎ合い(単性派と単意派、聖像崇拝と聖像破壊、戦争と贈物外交、皇帝親征と地方貴族による防衛などなど)と使い分けが、活力を与えていた面があったのかと。そして、贈物外交が有効だった期間は、そのベースとなる経済力があったということで、経済運営もうまくいっていたのだと思う。これらが、興味深い人たち、ビザンツ人の1000年の生存戦略だったのだ、と。
アナル・アナリシス――お尻の穴から読む
ジョナサン・A・アラン / 太田出版 (2018-04-03)
読了日:2018年9月6日
もっと全般的な文化的な話かと思ってたら、特定の話題を掘り下げたもので、個人的にはあまり興味のある議論ではなかった。これまで扱われてこなかったテキストを使って切込むみたいなのは感じられたけれど。デルミラ・アグスティーニ「侵入者」は邦訳で全部読んでみたいと思った。
奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの
久住邦晴(くすみ書房・店主) / ミシマ社 (2018-08-28)
読了日:2018年9月2日
亡くなられたくすみ書房の元店主の遺稿と、生前親交のあった中島岳志さんの文章からなる一冊。ずーっと店主なのかと思ってたけど、経営の先頭にたったのは40代も後半。その後、家族を亡くしたり、何度も倒産しかけたりとどん底を経験しながらも、相談に行った木原くみこさんの、誰もやったことのない面白いことをやること、店主自身が有名になることとアドバイスを受け、なぜだ!売れない文庫フェアや中学生はこれを読め!などのフェアで息を吹き返し、本人も文筆に公園に取材に引っ張りだこになるが、強力な競合の出現、移転、資金のショートを何度も救ってくれた寄付や出資者、それでも力尽き、閉店。けれども、前を向き、次の新たな本屋の構想を練っていた時に、無念の病死。中島さんの書いた「くすみ書房を支えきれなかったことのくやしさ。利便性を優先してネットショップで購入したことのやましさ。もっと足を運べばよかったという後悔。」というのは、最終日に立ち会ったものとして同感の思い。でも、その後の奇跡の本屋の構想は本当に魅力的で、力強いな、と感じた。実際のオープンに立ち会ってみたかった、という思い。何冊か、本も紹介されていたけど、触発されて、マザー・テレサ「あふれる愛」を買いに走ってしまった。
メメントモリ・ジャーニー
メレ山 メレ子 / 亜紀書房 (2016-08-26)
読了日:2018年9月1日
ガーナにポテチ型の装飾棺桶作りに行く話が一番鮮烈でいろんなこと起きて個性的な人目白押しでワクワクした。p.258のリフォームしたマンションの一室に置かれた棺桶とそこに座る著者の写真のインパクトたるや。/他に気になったのは、蔡国強「壁撞き」、神戸マンション事件と雨宮まみ「自信のない部屋へようこそ」、五島出身で日本の教会建築の父だけど、本人は一生、浄土真宗の仏教徒だった大工の棟梁鉄川与助、ベナンの「バナメーのカトリック」 、「それまでの人生を捨てさせる装置」と言うワード。


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2018年09月04日

2018年08月に読んだ本

期間 : 2018年08月
読了数 : 42 冊
パイヌカジ 小さな鳩間島の豊かな暮らし (ヤマケイ文庫)
羽根田 治 / 山と渓谷社 (2016-05-20)
読了日:2018年8月28日
単行本時に読んだが、文庫化であらたに第四章が後日譚として追加されていたので、ふたたび手に取る。初読時とおなじで、やはりみんな飲みに飲むなあ、これで郷に入って郷に従えは下戸にはつらいなあと思いつつ。半自給自足、野菜も魚もとったものは基本的に自分らで消費し、なにか壊れれば極力代用品で修理し、家の建築も下水道整備も、やれるもんはやってしまうたくましさ。タコ漁やら網をひいての漁など、漁の詳細な説明も興味深かった。そして第四章の後日譚は、鬼籍に入った方も、年齢からくる衰えで昔ほど元気ではなくなった方も描かれつつ、海洋美化と環境リサイクルを志す鳩間島のNPO法人「南の島々・守り隊」の存在、島にお金を一切落とさず傍若無人に振る舞う観光客の乗る船をベントー船と言って目くじらを立てていた者も、もはやほとんどいなくなったこと、

現代的な快適さや便利さを否定するわけではなく、受け入れられるものは積極的に受け入れる、アンコウを丸ごと一匹取り寄せ、インターネットのレシピを参考にしながら、吊るし切りにチャレンジする様なども描かれる。/「ハネダさん、もし東京でなにか問題を抱えたら、すぐに連絡してきなさいね。たとえ警察に追われるようなことになったとしても、とにかく鳩間に来なさいねえ」
であいもん (4) (角川コミックス・エース)
浅野りん / KADOKAWA (2018-03-02)
読了日:2018年8月27日
予約が必要と知らなくて年始に緑松の和菓子を手に入れられなかった客に、わたしと知り合いということにしてください、と機転をきかせ、練習中のお菓子をゆずった和とかばう一果、黙認しつつもチクリと言うこともわすれない和の父のシーン。クリスマスのお誘いに元カノもつれていってしまう和のニブちんぶりにいらいらする一果。咲季くんの実家の事情、女装して歩いてる最中の実兄との遭遇、思わず聞いた心強い本音に、いつも調子をとりもどすストーリー、など。
講談社 (2018-08-25)
読了日:2018年8月26日
波よ聞いてくれ:教団編はクライマックス。乗り込んできた沖さんのはじけっぷりが凄まじく。中原くんが北海道にきてから関わったNo.2でヤバい、と。そして、ミナレさんへの理解度の半端なさ。/おみやげどうしよう:福岡みやげ「あまび」、あまおうのわらび餅。ものすごく食べたい。/スキップとローファー:金沢から出てきた女子高生のドタバタしながら始まりそうなハイスクルールライフ。/概念ドロボウ:理想を盗むドロボウ。「理想が尽きた者は奴隷となり、高い理想を貫けた者だけが王となれる」/BLACK-BOX:仲良さげな会見を開いた、レオンと凌駕。二人で交わされた約束とは。そして、最後に試合後に語るといったこととは。/あたりのキッチン:清美さん、初めての友人との旅行。緊張して眠れなかったのに、食べ物の話を振ってくれたすずしろさんのおかげでいつものテンションを取り戻し。豪華な温泉のご飯にテンションが上がり、雨の中の露天風呂で完全に打ち解け。阿吽のマスターが、わかりやすく幸せそうな清美さんを眺めるシーンがよかった。「いつもと違う料理に接するのもいい経験ですから楽しめたならよかったです」という気遣いも。/ブルーピリオド:真面目さに価値があるのは義務教育までよ、という先生の言葉に始まり、空気読む感を指摘され、受験目前にメンタルバランスが崩れそうな八虎、どうする、てところまで。
ワカコ酒 11 (ゼノンコミックス)
新久千映 / 徳間書店 (2018-08-20)
読了日:2018年8月26日
となりに座った常連さんが頼んだ「アレ」が気になって、頼んだ鯛の骨蒸し。タコさんウィンナーのベタでいてハートをつかむ美味しさ。一人カラオケの居酒屋的マイペースな楽しみ方。豪華なローストビーフに幸せを感じる瞬間。などなど。
イスタンブールの毒蛇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジェイソン・グッドウィン / 早川書房 (2009-04-28)
読了日:2018年8月26日
時は、オスマン帝国のスルタン・マフムート2世が死の床についている1939年、イスタンブール。宦官ヤシムは、フランス人考古学者に引き合され、旧主に呼ばれ、考古学者を調べるように要請され、また、追われた彼の逃亡を助けたことから厄介な事件に巻き込まれていく。その間、友人が襲撃され、何人もの人間が殺されていく。事件の背景にいるのは何者か、解き明かすために奔走するヤシム。ギリシャ独立戦争や、ビザンチウム・コンスタンティノープル・イスタンブールと姿を変えてきた都の重層性、各民族の特徴、トルコ料理や文化が織り込まれた一大絵巻。個人的には、母后(ヴァリデ)とヤシムの関係がいいなあ、と。「鼻が高い、ですか、母后?」「もちろんですとも。敵がいないのは腑抜けだけだよ。ひとに憎まれるには-それ相応の気概がないとね。味方を持ち、危険を冒し-他の者は完膚なきまでに叩き潰すのよ!」/「アパルトマンに戻ったらね、ちょっと本を読んでもらいたいの。ムッシュウ・スタンダールの本を」/「あらあら、ヤシム。じゃあ、さぞかしそん話をしたいでしょうね。本で読んだことをそっくり鵜呑みにするもんじゃないわね。それだけのことよ、違う?」/また、トルコ人というのは基本的に運動を好まない、トルコ人というのは感情を持たない人種だと、オーギュスト・ボワイエはかねて感じていた、というのは当時、外から見た共通した印象だったのだろうか。まあ、○○人は○○だという断定はいつの時代でも割り引いて聞く必要はあるけど。/「私のはずだったのに。よく言うじゃない。復讐は料理だ-」「時間がたって冷めれば、味もひとしお。ええ、そう言いますね。そのことわざは聞いたことがあります。信じてはいませんが」(p.463)
STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 1995年 04月号 [特集 フルクサス発]
インファス・パブリケーションズ / インファス・パブリケーションズ (1995)
読了日:2018年8月23日
取り上げられていた中では、個人的には、存在を初めて知ったヨーゼフ・ボイスの活動が気になった。靉嘔のレインボー・アートも観てみたい(ただ、「レインボー・ミュージック」はオーケストラがそれぞれの楽器でシャボン玉を作り、指揮者が割る、とあるが、どうやって作ったのだろう...)。昔、読んで、ピンと来なかったオノ・ヨーコ「グレープフルーツ」も読み返したい。あと、銀座の一等地の一坪3450万円スペースで1日過ごしたっていうパフォーマンスが面白いと思った。映画紹介が、「うたかたの日々」で、日本公開当時観に行ったけど、DVDにもなっていなくて、この紹介記事を手元に置いておきたい、というのも買った動機の一つ。
エル・クターブ (世界・愛のライブラリー9)
青木信光編 / 美学館 (1980-07-15)
読了日:2018年8月21日
古本珈琲日曜日の最終営業日に、棚を見てたら、黒い箱に、金文字で「トルコ」と書いてあったので、思わず手に取った一冊。イスラム世界のセクソロジー本かなとあたりをつけ。ただ、なぜか、本の半分は、旧約聖書あたりから引いてきた説話集。また、19世紀後半の、オメル・ハルビー・アブー・オトマーンという人物の所持していた写本を、誰かが翻訳し、自分の所感を付け加えたものを、日本語に直した、という体裁だが、その「誰か」がこの本には書かれず、他のところで調べて、それは、ジョン・フレヂック・ジョーンスらしいとあたりをつけ。書かれている内容は、当時の人々の考え方を反映したものなのか、コーランから該当箇所を引いてきて、何事も節度を持って、落ち着いて行え、ということに尽きるように思える。ただ、女性観、奴隷観などは現代の視点からすると受け入れられないだろうなあとは感じた。体を清めるために砂をつかう、というのは、置かれた環境もあるだろうが、なかなかピンと来ず。
ビブリオ漫画文庫 (ちくま文庫 や 50-1)
山田 英生 / 筑摩書房 (2017-08-07)
読了日:2018年8月19日
本にまつわる漫画を集めたアンソロジー。読んだ人を食べちゃう妖怪みたいな本や、店の奥が古本でできた洞窟みたいになっていて少しでも本を無理に抜くと崩れてしまい抜け出そうとすると古書マニアの怨霊が追ってくる店や、貧乏学生が古本に挟まっていた千円を思わずとってしまい煩悶するが最後は心温まる話だったり、昭和三十年代のアナーキーなわい本作家粗忽の徹底したアナーキズムと反骨精神とそれに煽られた新聞記者の物語、死んだ作家の本しか読まない古書店の常連とその後生前の作家も読むようになった訳とは...というストーリー、など。なぜ死んだ作家ばかり読むのかと問われ「びっくりしたりがっかりしたりハラハラドキドキしたりするのが嫌なんです」「変ですねそういうのを普通面白いとか楽しいっていうんですよ」というダイアローグがいいなあ、と。南日れん「舞子」はもっと他の作品も読んでみたくなる一編だった。死んだ妻のオススメの本が、内田百間「サラサーテの盤」だというのがちらりと見える近藤ようこ作品。「煙草をふかして酒でも少し飲んであとは寝転がって好きな本を読んで眠っちまえりゃナンもいらんよ」という古本屋台の親爺の潔さ。「古書店主人」、本の虫、或いは文学を志してザセツした者が一度は思い描く夢、というのに我が身を振り返ったり。本好きにはたまらない一冊でした。
アルキメデスの大戦(10) (ヤンマガKCスペシャル)
三田 紀房 / 講談社 (2018-07-06)
読了日:2018年8月18日
10巻まで読了。家庭教師をしていた財閥令嬢の気まぐれで、帝大を退学させられ、失意のうちにアメリカに旅立とうとしていた櫂直。数学の天才として知られ、海軍から巨大戦艦建造計画の阻止に力を貸して欲しいと言われ、一度は断るが...。類まれな計算能力と構想力、吸収力、胆力を兼ね備え、国民の税金の無駄遣いを嫌い、無用の長物への税金投入を厭い、正しいものは正しいと正面突破を図っていく。その矛先は、巨大戦艦建造阻止から、航空機開発、そして「大和」計画の乗っ取りへと怒涛のように走り続けていく。乗っ取りの部分は、ちょっとそれまでと違ってこじつけの感がなくもないが。永田鉄山、東条英機、山本五十六、堀越二郎などなど実在の人物とからめて、昭和初期の活躍が描かれていく。
具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ
細谷 功 / dZERO (2014-11-27)
読了日:2018年8月18日
抽象化とは一言で表現すれば、「枝葉を切り捨てて幹を見ること」/具体レベルでしか考えていない人は、かいつまんで話せ、要するに何なのかと言われることが不快でたまらない、ひとつひとつ目に見える自称はそれぞれ皆重要で、切り捨てるのは不謹慎。だから議論が噛み合わない。/自分やその周りが特別という考えが抽象化思考の障害、他人に自分の話を一般化されるのを嫌う傾向。/「抽象化して考える人は場面場面での目的に応じて、「幹」と「枝葉」を見分けることで、要点をつかんで、効率的に情報処理をしているだけなのです。そして、必要に応じて必要な領域についてだけ、徹底的に具体レベルにまで下りていくことができるのです。」(p.94)/結局重要なのは、「抽象化」と「具体化」をセットで考えることです。(p.129)/乏しいサンプルから断定する「短絡的な思考」と対象が複雑であればあるほど、それをいかにシンプルにするかという「抽象的な思考」の違い。/【雑感】/噛み合わない、は今は離れていった友人との関係を思い出す、抽象の友人と具体のみの自分で。と今ならわかる。/自分だけは特別というのは、逃れられぬ桎梏と感じる。ホリエモンメルマガ2018/07/30で興味を持った一冊。
私的生活 (講談社文庫)
田辺 聖子 / 講談社 (2010-10-15)
読了日:2018年8月17日
言い寄る、続編。今なら、モラハラ、の一言で片付けられそう。お金持ちの御曹司に嫁いだ乃梨子。自分は浮気もするが、妻は他の男と話すのも嫌、自分のマンションを持つのも嫌、仕事するのも嫌、家にすっこんでいてほしい、自分の機嫌をとってほしい、親族の付き合いを積極的にしてほしい、などなど。最初はかすかな違和感だったのが、どんどん我慢できなくなっていって、最後は... と。中杉氏の、はっきりと拒絶しないし、関心は示してくれつつ、支えてくれるような、飄々とした佇まいに救われる。当時としては、亭主関白的な考えも一般的で、それに異を唱えることが珍しかったから、乃里子の決断は喝采を浴び、ベストセラーになったのだろうか、と推量。以下備忘録的に。/昔の映画でローマ皇帝ネロの「涙を入れる壺を持ってこい!」と叫ぶシーン。/犬から見る世界は色がなくて、灰色一色だそうだけれど、剛の見る世界と、私の見る世界はちがうのかもしれない。/私の私的生活は、みんな剛に吸収されてしまって、私地震の存在すらなく、剛の私的生活はの一部分として私が僅かに生き残ってるだけだって。/夫婦というのは、いやらしさ卑しさが、増幅される、ということだ。美しさや気高さは増幅されないのに。
夜と海 1 (芳文社コミックス)
郷本 / 芳文社 (2018-08-09)
読了日:2018年8月15日
ノーテンキな水泳少女内海とクールで美人な優等生夜野。思ったことを何でも口に出すタイプvs近寄りがたくわかりづらいいタイプ。ある日、泳ぐ姿が目に焼き付いて気になり、雨の日に傘を貸して距離が縮まり、わけもなくイライラするから距離を置いたら、それを踏み越えてくるパワーに触れ。そこが嫌だけど、直してもらおうとも思ってない、て。お互い自分にないものを相手に感じ、絶妙な距離感で続く関係。夜野の教室で仲良くしてる二人もなかなかに個性的。
バーナード嬢曰く。 (4) (REXコミックス)
施川 ユウキ / 一迅社 (2018-07-27)
読了日:2018年8月14日
トイレで借りた本を読み切って怒られるド嬢。ノーベル文学賞の翌日に図書室でボブ・ディラン9ちづさんでて、それボブ・ディラン?て突っ込まれたド嬢。けどそれはみんなもyoutubeで聞きまくってたからで...。君たちはどう生きるか絶対読まない同盟を結成したド嬢だけど、かえってはしゃぎ回るミーハーと遠藤くんに返り討ちに遭い...。蜘蛛を見た全員が、ぽろっと今まで見た本の蜘蛛エピソード披露で、私も混ざりたい!と手を挙げたのに、ヒントまでもらった「蜘蛛の糸」で沈黙が走るものの、最後に気の利いたひとこと言ったシーンとか。今回も読書の楽しさと読書家としてこう見られたいと言う見栄のおかしみが余すことなく描かれ。/一つの部屋を同じアングルで、何億年前から何万年先まで描くリチャード・マグワイア「HERE」。/手遊びで集中力を高める、フィジェットキューブ/ディストピア小説の古典、ハクスリーの「すばらしき新世界」。/落合陽一の「魔法の世紀」/この辺りは手に取ってみたいと思った。
であいもん (5) (角川コミックス・エース)
浅野りん / KADOKAWA (2018-08-04)
読了日:2018年8月14日
和が熱で寝込んだ際に見た、彼を音楽の道に引き込んだ憧れの先輩とのエピソード。一果の誕生日に一緒に出かけた遊園地での、一果も引くほどのはしゃぎぶり。そして、見た目はアメリカ人だけど関西弁しか喋れない一果の同級生を、変わり餡と荘子の胡蝶の夢の挿話で暖かく包むシーンが良かったなあと。
金剛寺さんは面倒臭い (2) (ゲッサン少年サンデーコミックス)
とよ田 みのる / 小学館 (2018-08-09)
読了日:2018年8月14日
本編も面白いが、サイドストーリーも饒舌に熱を持って語られていて楽しい。付き合おうと申し込んだのに、自分で決めた予定をパンパンに詰め込んで、デートする時間すらほぼないと突っぱねていた金剛寺さん。はじめてのデートは途中で地獄巡り挟むハードなものだったけれど。わざわざ地獄文字使ってまで描く熱の入れようにあてられ。金剛寺さん、その後、ふとしたことで昔さらわれた飼い猫が戻ってきてメロメロに、それに伴い世界も光かがやいて見えて、樺山くんへの思いも深まり。プライベートな気持ちの保管庫の話まで語り、最後は、チッスしないかね、で締めくくられるこの巻。突然のアトランティス大国の登場に面食らいつつも、明日はどっちだ、と。
テンジュの国(2) (KCデラックス 週刊少年マガジン)
泉 一聞 / 講談社 (2018-08-09)
読了日:2018年8月14日
行き倒れてた病人を助け、孫に成り代わった旅人を気にかけ、幼馴染の打撲のために風呂を立て、狭心症の老人を気づかうカン・シバ。婚約者のラティは、時に手伝い、、時に幼馴染とのやりとりに嫉妬したりするも、カン・シバへの思いを深め、と。お互いの父が酔うとどうなるか語るシーンのほのぼのさといったら。
本日のバーガー 9 (芳文社コミックス)
才谷ウメタロウ , 花形怜 / 芳文社 (2018-08-09)
読了日:2018年8月14日
バーガーフェスを成功させるために、アメリカへ飛んだ神宮寺。ローズバーガー本店前で、移動バーガー屋を開いて、CEOと話すことに成功し、フェスへの出展を説得。もうひとつのボズワースバーガーは孫娘と知り合い、創業者な祖父と対話し最後は出展してくれることに。にしても、神宮寺さん、くもりのないまっすぐな目と確かなうだと情熱で行く先々でファンを増やします。帰国後のパーティーで、母を憎む愛子のオリジナルメニュー考案に手を貸す上杉。自分もそうだったからと差し伸べた手で、どんなメニューができてくるのかあ。あと、オーキーオニオンバーガー、すごく食べてみたくなる。
ピアノのムシ 13 (芳文社コミックス)
荒川三喜夫 / 芳文社 (2018-08-09)
読了日:2018年8月14日
堂々完結、とあったけど、なかなかに拍子抜けな終わり方。恩師の見舞いに行くといったきり、ドイツから戻ってこない蛭田。ハンマーが折れて心まで折れてしまったのか、それとも自分の役割は終えたと、また心機一転ドイツでということなのか。巽社長が、蛭田をスカウトした経緯も描かれた最終巻。
LIMBO THE KING(4) (KCx)
田中 相 / 講談社 (2018-07-23)
読了日:2018年8月14日
新聞記者は確実情報を流すため、上官の意識に潜ろうとするルナとアダム。察知され逆襲を受け、強制ダイブさせられ。ゾエとセスのコンビと戦い、アダムはルナの封じられた過去を目の当たりにし、そして二人は閉じ込められてしまう、と。アラートの中、どう生還するのかしないのか。
三田紀房 /
読了日:2018年8月14日
北海道の中高一貫校道塾学園に主席入学した財前は、連れられるままに、投資部へ入部させられることに。そこは、各学年の主席を集めて3000億円の原資で投資をさせ、学園の運営費を賄うという集団だった。そこで様々な投資の形と現代の社会経済、従来の日本人像の虚実が語られ、財前の祖父の秘密が徐々に明かされ、道塾の創始者一族から、原資の返還を求められ、三番勝負の対決が始まるなど、息をつかせぬ展開。ギャンブルだ、リスクは悪だ、という硬直的な見方に楔を打ち込む作品。/以下備忘録的に。/的外れなところで頑張ることに価値なんてない/自分を信じるな自分の上に法則を置け/自分の人生に高い価値があるなどと思い込んでいるから道を見誤る/決断とは"切って離す"ことなんだよ/相談しようと思うとき私は鏡を見る/投資家なら善悪ではなく損得でものを考えろ/カネを眠らせてたら世の中ひとつも動かないし良くもならない!/考えるだけでは何も生まれない 行動だけに価値がある/先に金を集める これが最強の商売だからだ/自分が優越感を感じられなくなると人は対象者を嫌う/個人に説明責任などない/考え続けることが愛情
スモールトーク (角川文庫)
絲山 秋子 / 角川書店 (2008-02-01)
読了日:2018年8月13日
1章ごとにカッコいい外車をモチーフに描かれる、画家ゆうことその元カレの音楽プロデューサーの関係。いや、どちらかというとクルマがメインなのかな。売れない時代に彼女を振っておいて、十五年もたって連絡してきて、はねつけようとしても、クルマ好きの血が騒いで断りきれず、やがて押し切られるように関係を復活させてしまい。あいだには、相手の近況を何でも話してしまう、共通の友人肇がいて、二人をつなぐ。ゆうこを驚かせるために次々と外車を買ったり借りたりしてくる男が、自分が本当に困った時にスッと身を引いたのに失望し、どこへともなく旅立つゆうこ。併録の作者の会社員時代のクルマにまつわるエッセイも興味深く。会社用のカローラバンを、急ブレーキ踏まず、渋滞を避け、こまめにオイル交換し、と5000kmほど丁寧にならし運転したあと、最強のクルマに育てたのに、転勤の辞令出て、陸送の費用は出すから転勤先に!と懇願するも経理に却下される話とか。クルマにこだわらない身からすると、クルマのそういう性能や外観にしびれ、喜びを感じるんだというところが面白かった。
熊楠の星の時間 (講談社選書メチエ)
中沢 新一 / 講談社 (2016-05-11)
読了日:2018年8月13日
西洋のロゴスの明確な線で様々なものを分別する手法と、東洋の仏教のレンマの論理による一にして他、相即相入のような、すべてのものが混ざり合って存在すると言う考え方があり(因果から縁起へ)、後者の思想をベースに、熊楠は粘菌の研究などの業績から、いわゆる「エコロジー」よりもっと枠組みの大きな新たな学問の構築を図った、と。
小松とうさちゃん
絲山秋子 / 河出書房新社 (2016-01-19)
読了日:2018年8月12日
52歳の冴えない非常勤講師小松と、行きつけの飲み屋で仲良くなったお堅いサラリーマンでネトゲにはまっている40代の宇佐美、そして小松と同年代で新幹線の席がとなりだった縁で小松が惚れ込んでしまうみどり。小松の恋の進展の遅さと初々しさ、みどりの自分が生業とする見舞い屋への鬱屈と小松への少しずつ進む思い、宇佐美のネトゲの盟主としての飽きと責任感と。事態はみどりの雇い主の小松への接近から、それを撃退するための小松と宇佐美の一芝居まで鮮やかに進展し。最後の和やかな居酒屋で宇佐美とみどりの奇縁が明かされるところまで、なんだかいいなあこの人たち、ずっと見ていたいなあ、大好きという思い。本を閉じても、この物語が好きだったという余韻に浸りつつ。著者が、巻末の「飛車と騾馬」でさらっと書いて、もっと書きたいと思ったのもむべなるかなと。併録の「ネクトンについて考えても意味がない」は、たゆたうクラゲに瞑想する女性の精神だけが降りてきて対話をすると言う設定。静かな一編。以下備忘録的に/「こういった関係は最初に持った好感の瑞々しさ以上のものには発展せず、摘み取った花のように容易に枯れてしまうことの方が多いのを彼女は知っていた」/日本のミケランジェロと呼ばれる石川雲蝶/水の流れに逆らって自力で泳ぐことができるのがネクトン、自分から泳ごうとしないのがプランクトン、ずっと海底で暮すのがベントス/七十年も八十年も生きる人がいると聞いて、「そんなに生きて、何をするんだ」と驚く、平均寿命が一年のミズクラゲ/「誰でも最後には等しく梯子が外されることを知っていて、それでも毎日、当たり前のように生きている。野菜や草花のように、いつ実り、いつ枯れるかがわかっていたら面倒臭い小さな社会など必要ないのかもしれない」
アレンとドラン(2) (KC KISS)
麻生 みこと / 講談社 (2018-08-09)
読了日:2018年8月12日
突然エドガーさんに、付き合ってもいいといわれ、ビビりすぎて秒で断ってしまったリンダさん。先生や数少ない友人に相談し、ジェットコースターのように喜びと落ち込みを経験しつつ、エドガーさんと距離を取ろうとするも、結局は…と。発言のうわべだけ救って、斜め上な勘違いを口走り、説教されること二回。けど、よく話を聞いて、エドガーさんが言ったことのバックグラウンドをたどると、なるほどと思うところもあり。さて、エドガーさんの部屋へ向かった二人は、ちゃんとしたやりとりができるのだろうか、と。あと、堀田さん、ええ人やあ。
阿・吽 (8) (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
おかざき 真里 / 小学館 (2018-08-09)
読了日:2018年8月12日
決められた年限を勝手に繰り上げ、長安を去り、日本へ帰国する算段をする空海。一足先に、出発の別れを告げに来る李花、その名を耶律阿不里と教えてくれたが、その行く先は暗転が示唆され..。ゾロアスター教徒にも迫害の手が伸びていると教えてくれた者。船が来るのかわかっていたのか問われた空海、「準備をした者の上にしか機会は訪れん」。「我は詩の力で世界を越える。全ての人間が我の言葉に酔い、釈迦の言葉のように受け継がれるだろう。」と宣言する白居易(白楽天)。空海が去るにあたって言葉を投げかけていく者たち。翻って日本では、桓武天皇の崩御で世情は混乱。政治が濁っているならそれに負けぬ混ざらぬ強さを、より純粋によりまっすぐに、それが人を救う道と語る最澄。それがあなたを苦しめることになると田村麻呂。そして田村麻呂から語られる阿弖流爲のこと。人はどうあるべきか、どのように生きるべきかを会った瞬間にわかりあえた、だがその結末は...と。新しい国、新しい世界を、阿弖流爲と田村麻呂が夢想したやり方ではなく、仏教が見せてくれるのだろう、という力強い期待。そして、太宰府に軟禁されていた空海の帰京への画策。招来した書の目録を開いた最澄は、そこに空海の姿を見、ある高みにまで達した者しかわかりあえぬものを感じ取った、といったところまで。歴史では二人が袂を分かつことはわかっているが、この段階では、お互いを最高の理解者と感じ、深いところでつながっているところが、ビジュアルでも示され、それが見ていて楽しい。密教というと、個人的には、広く深い思想を、凝縮して凝縮して、梵字一字に込めたが、凡百の者にはそれは読み解けず、結局、それは深い修行をした者にしかわからず、凡百の者には注解書などなければ読み解けないのであれば、凝縮した意味はなんだったのか、という感想を持つのだが、深淵に達するための道行きをこんなに鮮やかに示されると、悦びしか立ち上がってこない。
セクシー田中さん 1 (1) (フラワーコミックスアルファ)
芦原 妃名子 / 小学館 (2018-04-10)
読了日:2018年8月12日
不幸になりたくない、リスクヘッジしたいと合コンを重ねる愛され女子の派遣OL朱里。経理部のAIと呼ばれる地味なアラフォー田中さんに注目してたのだけど、ある日入ったお店で別人のようなメイクと衣装でベリーダンサーとして活動する田中さんを目撃。節約生活してトルコかエジプトへの留学を目論み、独学で英語アラビア語トルコ語、トレーニングも欠かさず、ストイックな田中さんに影響され、自分もベリーダンス教室へ。そして、自分で見ないようにして、今まで言わずにいたこともズバズバ言うようになり、モヤモヤしてたものが少しずつ晴れていき。踊りの意味、歴史的背景まで語られた部分は興味深し。最後は、憧れの田中さんに失礼極まりない暴言を吐いた知り合いを手痛い目に合わせるべく、画策するが、と言うところまで。続き気になる。ザクロの効いたペルシアの鶏とくるみの煮込み料理フェセンジュン、食べてみたい。
テラモリ (10) (裏少年サンデーコミックス)
iko / 小学館 (2018-08-09)
読了日:2018年8月11日
副店長の決断、それは中央店を見捨てることではなく、安心して任せられるという意図ではなかったのか。消沈する仲間を鼓舞したのは高宮。それを裏付けるかのように、バイト始めて最初に接客した時のお客様に、いま持てる力で最高の接客ができ、それを周囲にも認めてもらい。そして副店長との恋路も順調に。大団円を迎え。最後はきっとまた同じようにこの世界に入る若者と、それを迎える敏腕な店員としての一コマを見せながら。
不愉快な本の続編
絲山 秋子 / 新潮社 (2011-09)
読了日:2018年8月11日
まさか、「ニート」の最後の一編に出てきた、乾くんが主人公で一冊とは。だから、最初は、不愉快な本の続編の"不愉快な本"、って「ニート」の事かと思ってしまった。そうではなくて...。「ボクの不愉快な本をユミコに渡すわけにはいかない。口が裂けても自分の性癖については言うまいと思った。彼女のために、ことごとく文法をやり直す必要があった。」/呉、東京、パリ、東京、新潟、富山、呉と流されるようにめぐる乾。/さらりとして、人を見下しているようで、もろくて、自分の不愉快な本を持て余し、捨てたいのに捨てられず、もがき、投げやりになり、ユミコと結婚してやり直そうとして果たせず、投げ捨て、杉村に迫られても断り、過激な方法で彼女の盗癖を思いとどまらせ、最後は現実感のない地点へと読者を誘い込み。/ドライなロードムービーを見続けたかのような読後感。/「あっという間に死んでしまうっていうことは、一瞬しか生きていないみたいだ。人間って本当に簡単に死ぬんだなあ。」
雪花の虎 (6) (ビッグコミックススペシャル)
東村 アキコ / 小学館 (2018-08-09)
読了日:2018年8月11日
景虎は兄晴景を見舞い、健在を確かめたはずなのに、晴景は景虎のために、武田の間諜を始末しようとして、その過程で激しく体調を崩し、亡くなる。上杉管領家が転がり込んできて、関東出兵する際も影武者に任せ、ひたすら看病したという設定に。晴景に病弱無能説に、最近では父からの奪権や諸政策から有能だったのではという研究もあるのだとか。また景虎が、出兵中でも月に何日かこもってしまうのを、生理痛であるととらえ、景虎女性説を補強するものとする。そして、信濃からは村上義清が助成を求め、信濃へ。いよいよ川中島へ、と。
放課後さいころ倶楽部 (12) (ゲッサン少年サンデーコミックス)
中道 裕大 / 小学館 (2018-08-09)
読了日:2018年8月11日
前半はエミーのドイツでの旧友との再会と和解、そしてゲーム会社持ち込みの成功とエミーへの思いを秘めた青年の決意。後半は、カンナに恋した奥手のボードゲーム好き高校生の、最初は名前さえ覚えられてなかったけど、ささやかなささやかな一歩までが描かれ。この巻、店長さんでてこなかった。そちらの話も期待。
忘れられたワルツ
絲山 秋子 / 新潮社 (2013-04-26)
読了日:2018年8月10日
部屋いっぱいのモニターに強い震度を監視する装置をおき、それを眺めてばかりいる昔の友人(「強震モニタ走馬灯」)。恩師の葬式に向かう高速のSAで出会った、オーロラを密閉した器具を運んでいるという女性(「葬式とオーロラ」)。いつもの電車で取引先に向かったのに、知らない駅にたどり着き、取引先も見当たらず、もう本当に戻れない「NR」。激しくピアノを引いたあと、母の間男を捕まえに行くと鬼の形相で出かけていく姉、使うあてもない外国語の学習に熱中する父、家族のことをあれこれ思い悩みつつ、結局は大丈夫なはずと自分に言い聞かせる主人公の、おかしみとどこにも行けなさ(「忘れられたワルツ」)。恋愛は雑用、雑用は雑用を呼ぶ、不要ではないから関わりを持たされてしまうという持論を繰り広げる事務員が主人公の「恋愛雑用論」。恋人にお前はアスペルガーだからと責められ、恋人への見方が覚めるのと、死んだいとこと自分が同じだったとさとる、「ニイタカヤマノボレ」。真面目だけが取り柄で自分を他人と比べないことが美質で、幼馴染の議員の私設秘書となり、密かに女装を楽しんでいたけど、議員の妻には見抜かれ、老婆同士遊びにいきましょ、と誘われる、「神と増田喜十郎」。突飛な想定や一見極論を提示しつつ描かれる人間模様に引き込まれる。議員秘書の妻の見せた暖かさが特に印象に。
音楽のつつましい願い
中沢 新一 , 山本 容子 / 筑摩書房 (1998-01)
読了日:2018年8月8日
十年以上ぶりに再読。無性に、ボロディンの項を読み返したくて。化学者でもあり、女性の権利拡大の運動に奔走した運動家でもあり、作曲家でもあったボロディンの。「「ダッタン人の踊り」をもう一曲つくるほうがいいか、それともこの人たちが明日元気で、ふたたび運動に力を注げることができるよう、安眠を妨げずにいるほうがいいか。それはもちろん後者の方がいいに決まっている」/人生のすべてではなく、人生の一部であるからこそ、音楽は美しいのではないか、と/作曲家M・Vとカバレフスキーに自分の作曲が手につかないほどの衝撃を与えた、出来立てのハチャトリアンの「ヴァイオリン協奏曲」。確かに冒頭からぐいぐいと引き込まれる力強いメロディーの曲。/モスクワでの山田耕筰と、スクリャービンの「ポエム」という曲の出会い。/なによりもまず人間の声に耳をそばだて、そこに音楽の発生の源を見い出していたヤナーチェク。/その弦楽四重奏曲第二番「ないしょの手紙」に秘められた激しさ。/チャベスの「シンフォニア・インディア」に流れる、ヤキ族、ウィチョル族、ナヤリット族の音楽/チュルリョーニスの独特な画風と音楽の関係。交響詩「海」の冒頭のひそやかさ。/再読しつつ、出てきた音楽を聴き返しつつ、版画で描かれた作曲家の肖像を楽しみつつの一冊。



ばかもの (新潮文庫)
絲山 秋子 / 新潮社 (2010-09-29)
読了日:2018年8月8日
バイト先で出会った年上で強気な額子に夢中になった大学生のヒデ。しかし、手ひどく振られ、留年しつつも何とか就職し、彼女もできるが、アルコールに溺れていき、仕事を、彼女を、友人を、家族の信頼を失って落ちるところまで落ちるが、居酒屋をやってた額子の母の店でだけくつろげ、それをきっかけに入院し、断酒することに。そして大怪我をして結婚生活も破綻した額子との再会。ぶつかりながらも、やがて静かで穏やかな時間が流れるように。正直、アルコールに溺れていき、もがいているところは、あまりに入り込みすぎて、読み進めるのが辛かったけど、それでもページを離させずぐいぐい引っ張っられる引力を感じた。「想像上の人物」と友人のネユキの造形が好きだった。相手が何を考えてるかなんて、わっかんない、けど、それでも相手の人生に関わりを持ちたいという思いは止められず。/以下、備忘録的に。/多分、このだらだら感が自分にとって唯一本当のことなのだと思っていた。/目を開けたときには自分はいままでの自分ではなく、想像上の人物はそこにいないだろうということをヒデは知っている。/アルコールだけではないだろう、今までやってきたことの殆どすべてが、行き場のない思いから発している。
はじめての<脱>音楽 やさしい現代音楽の作曲法
木石 岳 / 自由現代社 (2018-04-24)
読了日:2018年8月7日
何となく時々聴きたくなる現代音楽。一時期、スティーヴ・ライヒやフィリップ・グラスのCDを集め、時々、ブーレーズのル・マルトー・サン・メートルを聴き返したくなる身としては興味深さしかない一冊。きっかけは中学校の図書室にあった、BERNARD DEYRIES 「まんが 音楽史 (Vol.3) マーラーから現代まで」(音楽之友社)。こんな音楽があるんだ、面白そう、聞いてみたい、と思ってしまったこと。即興演奏と不確定性の章で、笑っていいとも!でのタモリと明石家さんまの「フリートーク」が取り上げられるなど、楽理を説明しつつ、その発展で取り上げる話題は縦横無尽。無調、12音音楽から、ミニマリズム、フルクサス、不確定性など様々な話題が語られ、それがどういう社会背景で生まれ、現代につながっていくか解き明かしてくれる。気になった曲、作曲家、ワードは、下記。

クセナキス:ヘルマ

アイスラー:雨を描く14の方法

トマス・ピンチョン

ジェフスキー :カミングトゥギャザー

the KLF:Chill out

ハリーパーチのオリジナル楽器

リゲティ:ロンターノ

シュトックハウゼン:ミクストゥール

ルイジ・ルッソロ:都市の目覚め

近藤譲 線の音楽の思考に基づく「オリエント・オリエンテーション」「スタンディング」「クリック・クラック」

川島素晴 作品集CD「ACTION MUSIC」

macaroom「cage out」

John Cage:ザ・ビートルズ1962-1970

ラ・モンテ・ヤングの「一本の線を引き、それを辿れ」
トカラ列島 秘境さんぽ
松鳥 むう / 西日本出版社 (2018-07-26)
読了日:2018年8月6日
一時期トカラ列島本を読み漁っていたのと、以前よんで楽しかった覚えのある松鳥むうさんの本であったのとで購入。小規模ながら、宝島の移住者を引き寄せ、様々な産業をおこしつつ、人口が伸びていく様は興味深く。悪石島のボゼには、伝統を残していくことと、そのために犠牲になっていること、それを支える人々について考えさせられる。また交通の便や医者が常駐してないことなど、離島良いとこだけでは済まされない現実も描かれ。けど著者の人柄なのか、島の気風なのか、行く先々で興味深い人、気さくな人に出会えてて、読んでて楽しい。あと、様々な個性的な温泉。心惹かれます。読んでみたい本もたくさん。/稲垣尚友「悲しきトカラ〜平島生活記録」「十七年目のトカラ・平島」、佐竹京子編著「軍政下奄美の密航・密貿易」、ナーガ(長沢哲夫)さんの著作、岩下勝美「神の住む「小宝島」ルーツをたずねて」などなど
薄情
絲山 秋子 / 新潮社 (2015-12-18)
読了日:2018年8月5日
著者が静かに語りたかったのは、地方に住む罪と罰なんてどこにもないんだ、ということだったのだろうか。宇田川は、神主の跡取りとなることは決まってるが、継ぐまではバイトをして過ごし、自由な空気を感じる変人工房に出入りしたり、昔馴染みの蜂須賀と飲んだりドライブしたり、温泉のバイトで知り合った女の子との付き合いと苦い後味、誰とも深く関わりたくないと思いつつ、地方の居心地の良さと閉鎖性に絡め取られ、もがき、それでも、と思考を重ねる様が描かれる。。/以下備忘録的に。/メニューに印刷されてはいるが頼むことのない料理の名前みたいなものになってしまうかもしれない/不謹慎を楽しむこと、真剣にニュースを見ることの差が宇田川にはわかっていない。/自由に生きているのが羨ましくて、でも遊びに行けば自分も少しは自由を知っているような気がした。/最初から存在しなかったようにふるまうことはよそ者に対して薄情で閉鎖的に見えるかもしれない。だがそれだって、おれたちなりの気遣いから出したひとつの結論なのだ。触れないということは、明らかにおかしなことをした、外の人間に対する最低限の配慮でもある。/
dele2 (角川文庫)
本多 孝好 / KADOKAWA / 角川書店 (2018-06-15)
読了日:2018年8月5日
人気バンドの楽曲をめぐるストーリー。ネットアイドルとキラキラアカウントの内実と消したかったもの。そしてこの巻の半分を使って語られる主人公二人のバックグラウンドとその邂逅。複雑に絡み合っていた糸を解きほぐしてみると、そこにあったのは、と。この題材、このコンビ、すごく好きだったけど、この終わり方だと、続編は難しいのかなあ、と。ドラマ版はまた違った脚本のようなので、そちらの書籍化も待ちたいところ。/「俺の望みは一つだけ。鈴のことを考えるときには、混じりっけのない感情で鈴のことを思い出したい。それだけだったんだ。誰かを恨んだり、疑ったり、自分を責めたり、恥じたり、そういう感情抜きで、ただ純粋に鈴のことを思い出したい。」/あと、シューベルトの弦楽五重奏曲、聞いてみたいと思った。
マンガでわかる鉱物コレクターズ・マニュアル
いけやま。 / 創元社 (2018-07-25)
読了日:2018年8月5日
Twitterでさわりの部分を見かけて面白すぎたので購入。知識がなくてもお金がなくても好きという気持ちで突っ込んで行き、よく血を吐くハムスターを主人公に語られる鉱物愛。ミネラルショーというのが日本全国で開催され、実物を眺めたり、実際に購入できたり、そのために虚々実々の駆け引きがあったり。ミンダットと言う世界的な鉱物データベースがあったり、the-vug.comと言う鉱物関係サイトの更新ニュースサイトがあったり。足をかなりひどく骨折した時に友人に頼み込んで連れてってもらったミネラルショー潜入記。ディア◯スティーニがきっかけという告白。などなど、楽しく読み終える。松村栄子「至高聖所」で鉱物愛に触れ、鉱物の写真やエッセイを眺めたりするのは好きなぐらいのライトユーザーには眩しいくらいの鉱物愛でした。
dele (角川文庫)
本多 孝好 / KADOKAWA / 角川書店 (2018-05-25)
読了日:2018年8月4日
ふとつけていたテレビでやってた「dele」に釘付けになり、原作を探し購入。山田孝之と菅田将暉のコンビのクールと軽さの対比をイメージしつつ、読み進め。依頼人から、死後、契約で定めた一定の時間、パソコンやスマホが操作されなかったら、遠隔で、削除してほしいデータを削除するサービスを展開する「dele.LIFE」。依頼者の背景が語られつつ、進むストーリー。どんなデータを、なぜ削除したかったのか、と。資産家の死後迫る女の影。要領が悪く生き方も下手くそな男がなぜ殺されなければならなかったのか。よろけて車にはねられた男はストーカーだったのか正義の騎士だったのか。死に行く妻が削除を依頼したデータを知りたがった会社社長の結末は。死んだ塾経営者が残した秘密は。/「データが何だったかはわからない。けれど、自分の死後、このデータは削除される。そう信じていたからこそ、依頼人は最期までデータを残していられた。俺は依頼人のその信頼に応えなきゃならない」/一時期、出る作品ごとに買っていた時期もあった本多孝好作品。ある時期から、ご都合主義に嫌気がさして離れていたけど、この作品はなかなか読ませてくれた。
キングダム 51 (ヤングジャンプコミックス)
原 泰久 / 集英社 (2018-07-19)
読了日:2018年8月2日
全体としてみれば、兵糧の差で、秦軍が劣勢に立たされそうな状況。そこから起死回生の突撃に出るも、読まれている局面が多く、苦戦しているといったところか。
キングダム 50 (ヤングジャンプコミックス)
原 泰久 / 集英社 (2018-04-19)
読了日:2018年8月2日
王賁の活躍で立て直す秦軍。翌日の王賁の窮地を救ったのは飛信隊。藺相如のころの生き残りの将に先手を取られ続けるが、信が指揮をかわりなんとか食らいつき。そして、大きな戦場ができた傍に、一筋の道。そして一騎討ちが、というところまで。
ダーティ・ワーク
絲山 秋子 / 集英社 (2007-04)
読了日:2018年8月1日
熊井と遠井が軸なのかなあと思いつつ、彼らをめぐる友人、知人、同僚、家族などがそれぞれ語り、また語られていく、縁と時間とが心地よく。読み終えて、この小説好きだなあ、と心から思った一冊。熊井の心臓は固有のリズムを打ち、兄嫁は最近読んだ一番面白い本を「超ひも理論とは何か」であると教えてくれ、頭のいいM男くんが本当はだらだらしたいのに一生懸命いじめてくれる女王様を見抜いてしまいますます好きになる話をしてくれ、見舞いにいった遠井は「安楽死を手伝って欲しい」と気を許した瞬間に横蹴りを食わされ、辰也は自分は泥沼にはまらず、自分というものがない、ゆえに貴子のそばにいなければと思い、遠井と辻森さんは病院で知り合い、辻森さんの趣味の写真展を見に行ったり、そこで熊井と縁がつながったり、辻森は「大事な物には名前を書くな」と学び。そのワンシーン、ワンシーンがいいなあ、と。/以下、備忘録的に、それぞれの章と登場人物。

【warried about you】熊井(語り手)/TT(=遠井)(回想)/坂間/塩垣(彼氏)/TTの弟(回想)

【sympathy for the divil】貴子(語り手)/辰也(彼氏)/麻子(兄嫁)

【moonlight mile】遠井(語り手)/神原美雪(同級生)

【before they make me run】遠井弟(語り手)/高田(語り手)/熊井(友人)/辰也(語り手)/M/K/S/貴子

【miss you】持田(語り手=M)/辻森(花屋)/持田姉/持田姉の夫/辰也(回想)

【back to zero】遠井(語り手)/辻森/熊井

【beast of burden】遠井(語り手)/熊井(語り手)/高田/神原美雪


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2018年08月03日

2018年07月に読んだ本

期間 : 2018年07月
読了数 : 64 冊
イッツ・オンリー・トーク
絲山 秋子 / 文藝春秋 (2004-02-10)
読了日:2018年7月31日
【イッツ・オンリー・トーク】直感で蒲田に住むことにした、優子/僕はいろんなことを諦めちゃってるからだめなんだろう、と述懐する、旧友で議員の本間。諦めた男は描き続けたいモチーフなのだろうか。自殺未遂の果てに転がり込んできたヒモでニートのいとこ祥一。お互いが求めた時にだけ会う痴漢。二歳年下の鬱病のヤクザはTシャツにジーパン、しかし蛇柄の雪駄といういでたち。目の前からいなくなる前にきちんと挨拶に来てくれて。//お互いの距離を計りあって苦しいコミュニケーションをするより寝てしまった方が自然だし楽なのだ。/その思いを眠剤と一緒に飲み込んで寝返りをうった。/当たり前だよ、月だって人だってそういうとこはあるよ(祥一)/私は自分の、EDの議員の、鬱病のヤクザの、元ヒモのボランティアの座標分布を思った/イッツ・オンリー・トーク、全てはムダ話とエイドリアン・ブリューが歌う。//なんかさ、みんないなくなっちゃって 、という寂しい感じを残しつつ、けど、【第七障害】乗馬クラブでの落馬事故で愛馬を事故死させてしまい、自責の念から、職も彼氏も住処も捨てて、東京に出て彼氏とは折り合い悪いが、自分とは意気投合した彼氏の妹と同居を始めた順子。日々を取り戻しつつ、新たな道に進んだかつての乗馬仲間の篤とも再会し、彼の好意を感じつつ、少しずつ惹かれていく。/ゴッドヒップの死を認めない限り自分はこれ以上前にすすめないのだと順子はずっと知っていた。/名前なんかつけなくていいの。物事に名前をつけるから全ての間違いがはじまるんです(順子)/笑いながら目が覚めて急に取り残された気分になる。夢は補償なのだと気づく朝はつらい。(順子)/俺の第七障害はここなんだ(篤) /紆余曲折を経て、二人の関係が進みそうな予感を残しつつ。美緒の、るるるーと歌い出しながら喋るシーンとか好きだった。
エスケイプ/アブセント
絲山 秋子 / 新潮社 (2006-12-01)
読了日:2018年7月31日
【エスケイプ】時代遅れの職業革命家として20年を過ごした和臣。一念発起、運動から抜けて、妹の運営する託児所で働くことに。その前の一週間、思いついて京都で過ごした日々のストーリー。にしても、心の中は饒舌。人生こんなはずじゃなかったと嘆きつつも、すこしずつ「普通の」日常に喜びもみいだしていく。探してたエスケイプ /ジョディ・ハリス ロバート・クイン がきっかけで、神父と知り合い。「おれのレコ探しと革命の歴史。どっちもゴミだった」、居候として転がり込み、その正体がわかっても、簡単には切り捨てることができずに。 /9・11がなかったらおれはあのままだったかもしれないな。(略)自分がラディカルでもなんでもないことに気がついちゃったんだ。/神なんかより、近所の人の方がよほど神父のことを愛しているような気がするのはおれだけか。 /そして、長い間音信不通の双子の弟を探しつつ、その痕跡までは辿れて、と。 /【アブセント】こちらは、ついぞ交わらなかった、双子の弟の話。お互い、どうしてるかなと思いつつ、交わらない二人。関係をハッキリさせたい同棲する彼女をのらりくらりかわし、結局腹を決めて休みを取り実家へ行くことを決めるも、旧友の死を契機に京都行きを優先しら。 /気がついたらここにいた、という感じしかしない。そしてその感覚は大事だ。 /人間ってバカなことで死ぬもんだな、と思う。/最後の、まだ休みは残ってる、に、含みをもたせつつ。どちらも余韻を残した終わり方。
プリニウス7 (バンチコミックス45プレミアム)
ヤマザキマリ , とり・みき / 新潮社 (2018-07-09)
読了日:2018年7月14日
ローマの大火、ネロは避難所設置や食料供給など対策を打つも逆に民衆からは放火犯と噂される始末。プリニウスはローマの大火を知るも、マイペースにピラミッドなどに寄りつつ、危うく殺されかけるも難を逃れ、一路アレクサンドリアへ。放火犯の捜索は進み、キリスト教徒を犯人にしようと目論む政府側。そしてネロ暗殺の陰謀がバレ、ピソとセネカの処刑命令がだされ。プリニウスの菜園の毒人参の前でセネカぎ佇むところまで。ローマがいかに燃えやすい建物で構成されていたか。医師の見せる処方に当時の文化を感じ。ピラミッドが当時にあっても驚異の建造物であったことが語られ。
応天の門 9 (BUNCH COMICS)
灰原 薬 / 新潮社 (2018-07-09)
読了日:2018年7月14日
奇術めいた仕草で民に施しを与える青海尼。しかしてその正体は...。なぜになぜにと問う道真に、学問する意味を逆に自問させることに。最後は、道真と藤原良基の偶然の邂逅と、そこからこぼれ出た兄の名が意味するものは、といったところまで。おそらく次巻で語られるその機縁に興味がわく。
ちひろさん 8 (A.L.C.DX)
安田弘之 / 秋田書店 (2018-07-13)
読了日:2018年7月29日
可愛がっていた野良猫の死を伝えることを気遣われ、そんな綿菓子みたいな希望がいるほど子供じゃありませんのよワタクシと答えるちひろさん。わけもなく無性に不安になったちひろさんをあたたかく包み込んだバジ姐。私たちは皆 人間という箱に入った宇宙人なのだ、という往年の客の言葉。だから究極わかりあえなくたっていいんだ、という含意。そのあたりが印象に残った巻。
真説 ザ・ワールド・イズ・マイン5巻 (ビームコミックス)
新井 英樹 / エンターブレイン (2006-10-25)
読了日:2018年7月30日
トシの、モンの、事件に至るまでの背景も描かれ、猟師飯島の最期の日も描かれた。にしても、警察の包囲網を抜け出した後のモンは、もはや大きくなりすぎて、追いきれず。それは地球規模の大きさに膨らむヒグマドンも同様。まさに新世代の神。最後は、普段は声高には語られない真理が次々と問われ、大きな崩壊に導かれていく。読み応えと読み疲れ、引きずり回される力のある作品だった。
逃亡くそたわけ
絲山 秋子 / 中央公論新社 (2005-02-26)
読了日:2018年7月29日
このままでは廃人になってしまう、と同じ病院のなごやんを連れ出して、福岡の精神科の病院から脱走した花。ただ目的もなく、戻ろうというなごやんの制止も張り切って、南へ南へと車で逃げていくロードムービー。幻聴に悩まされつつ、奔出しそうな思考の渦と戦いつつ、なごやんと時にぶつかりながら、助け合い、そして…と。理由なんてないのだろうけど、なぜに、何のためには最後まで付きまとい払えなかった思い、
地獄変
芥川 竜之介 /
読了日:2018年7月29日
三宅香帆さんのcakes の記事で、「月と6ペンス」読んだ後におススメとあったので手に取る。人望ある堀河の大殿様と、絵以外には価値を認めないような偏屈で傲岸な絵師良秀。大殿様は良秀に地獄変の絵を描かせようとするが、見たものしか描けない、しかし一度見たものは鮮やかに描いてみせるゆえ、市井の身分の低いものの顔を書き込んだり、災害があるとかけていって仔細に観察し、また動物に弟子たちを襲わせて観察したりと。ある時焼ける車が見たいという良秀に、堀河の大殿様が取った手段は、と。なんとなく誰を乗せるかは予測ついたけど、良秀はそれを見て、構わず恍惚だけ見せるかと思いきや、苦しみや悲しみがまず出てきたところが意外だった。
ふじともこ / ふじともこ (2009-07-12)
読了日:2018年7月28日
瀬戸内の離島旅行日記に惹かれて手に取る。写真が豊富なのと、細かい記録多目で読んでて楽しかった。椎名誠の旅行記に惹かれて、亀の手食べたくだり、その昔、個人的には椎名誠の日本最末端旅行記を読んで飛騨高山に飛んだ身としては親近感。直島のしっくりなじんだアート、小豆島のオリーブはじめとした地のもの尽くしのごはんの旅館など印象に。
傘寿まり子(7) (KCデラックス BE LOVE)
おざわ ゆき / 講談社 (2018-07-13)
読了日:2018年7月29日
ついに、往年の流行作家小桜蝶子の執筆意欲を掻き立てるのに成功したまりこ。自分ともう一人がゴーストライターになり、蝶子に成り代わって作品を書き、それを蝶子にぶつけることで、あたしならもっとこう書けるというのを引き出し。そしてくらはらから依頼された、レトルによる商店街の復興。蝶子とショッピングに出かけることで、商店街ファッションショーという案が思いつき、と。そしてまさかの息子の嫁の秘密にすれ違ったところまで、と。オウンドメデイアの運営という点ではなるほどそうなのかあと思うところもあり。
オリンピア・キュクロス 1 (ヤングジャンプコミックス)
ヤマザキ マリ / 集英社 (2018-07-19)
読了日:2018年7月29日
古代ギリシャの壺絵師の青年デメトリオス。運動が得意なことから、隣村との協議に駆り出され、壺の中で悩んでいたら、雷に撃たれ、東京オリンピックの時の東京へタイムスリップ。そこで見かけたたまご運び走、盆踊りに屋台、聖火リレーなど、さまざまなものを古代ギリシャに持ち帰り、大活躍するお話。にしても、いきなり家に古代ギリシャ人がきても動じない巌野さん、肝太すぎ!そして古代ギリシャに造詣深くて古代ギリシャ語喋れるとか何者?!。次々に村を活性化させるイベントを連発するデメトリオスに、本家のオリンピック委員会も対抗しようと策を練るところまでで、この巻はおわり。「運動の勝者を、人間が普遍的に向き合わなければならない生きる苦しみからの解放の表現者、と捉えていたのではないか。」という見方、自分の力が人の力になる、運動は表現だ、という視点が斬新。
凪のお暇 4 (A.L.C.DX)
コナリミサト / 秋田書店 (2018-07-13)
読了日:2018年7月29日
ゴンさんへの思いを断ち切るために、深夜、自転車で海に向かう凪。途中転倒して、見知らぬスナックに助けを求め。そこのままが作ってくれた青い鳥丼、いいなあ。青い鳥はさがしにいくもんじない、食うもんだ、て。そして、ハッキリと自分の口からゴンさんを断ち切る言葉が。それご、私にとってゴンさんはフライパンいっぱいのちぎりパン、いや女子中学生ですてのがまた個性的で。自分では認めたくない凪への未練で、のたうちまわる元カレ我聞。他の子とは違う別れ際に、いつもと違う気持ちを抱くゴンさん。次巻、展開する予感。
モブ子の恋 3 (ゼノンコミックス)
田村茜 / 徳間書店 (2018-07-20)
読了日:2018年7月29日
遅々として進まない二人の関係。恋の終着駅にこのままでいいなんて言葉はない、て言葉に背中を押されるように。入江くんから一歩踏み出し、動物園デート。ぎこちなさがあると思うも楽しく時はすぎ、そのまま終わりかと思いきや、伝えたいことがある、というところまで。進展するのかなあ、次巻で。
BLUE GIANT SUPREME 5 (5) (ビッグコミックススペシャル)
石塚 真一 / 小学館 (2018-06-29)
読了日:2018年7月29日
四人揃っての初ライブは、…自分でなんとかしようという個性がお互いに強すぎて、空中分解寸前。1時間のライブで客は6割帰り。必死にリーダーシップを取ろうとするダイ。そこへ差し伸べられたのが古いワゴン一台でヨーロッパ中を回るツアー。ファーストアクトは田舎のレストラン。ウィーアーザワールドやレットイットビーをリクエストされ往生するも、ちゃんと観衆の楽しめるジャズに仕立て上げ。そこから自分たちのオリジナルを演るところまで持ち込み、といったところまで。どう転ぶのかどこまでいくのか、この勢い、目が離せない。hatocoffee にて読了。
BLUE GIANT SUPREME 4 (4) (ビッグコミックススペシャル)
石塚 真一 / 小学館 (2018-02-23)
読了日:2018年7月29日
どんなプレーヤーとも合わせて来たドラマーのラファエル。クセが強くことごとくバンドのメンバーとぶつかって来たピアニストのブルーノ。なんとかセッションするところまで持って来たダイとハンナ。初セッションは大成功に思われたが、やはり誰とも組まないという流儀を貫いたラファエル。しかし、ぬるいメンバーや観客とすごすうちに、むくむくともたげて来た気持ちがバンドに入ることへと。傾き。hatocoffee にて読了。
袋小路の男
絲山 秋子 / 講談社 (2004-10-28)
読了日:2018年7月28日
◾️袋小路の男、小田桐孝の言い分:袋小路の家に住む男との袋小路の関係。ハンサムな小田桐に激しく惹かれた日向子だが、話したりデートはしてもらえるものの、一貫して彼女にはしてもらえず。ストレートに迫っても日向子にはわからない理屈ではぐらかされてしまう。他の男に走れば察して頻繁に連絡してくるが、戻ってくるとまた素っ気なくされる。けれどもお互いの考えてることはだんだんとわかってくる。そして、もう一編で、小田桐側の言い分、日向子からすれば勝手な言い分が語られる。最後の背中を向けたところに、長い付き合いから喜んでることを感じ取るシーンがいいな、と思う。最後まで詰まらなそうだけど、ちょっとずつちょっとずつ距離を縮めて行く感覚。以下備忘録。あなたが持っている最後の担保はカッコよさなのに、そんなのはひどい、裏切りだ/もっとも豊かな愛は時の仲裁に服するものである/おまえと縁を切るつもりはないけれど、俺は本当にいろんなことを諦めているんだ。これで答えになるのかな/けど追い詰めたりしない。しずかな気持/◾️アーリオオーリオ:清掃工場に勤める、理系のこと、特に星座が好きな主人公が、中学生の姪をプラネタリウムに連れていき、そこから文通がはじまり。人との関わりが苦手な三十代といろんなことに疑問を持ちストレートにぶつけてくる十代のやりとり。しつらえはほぼ違うのに、理系の父と娘のやりとり、池澤夏樹「ヤー・チャイカ」似た、涼やかな読後感。「人間は何もかも説明しようとするが、宇宙空間に言葉や数式は転がっていない。」
講談社 (2018-07-25)
読了日:2018年7月26日
四季賞の受賞作、久保田かど「背に負はば月影の重き」は本当に完成度高く味わい深い。学生芸人の主人公は、天才的な相方に普通人としてのコンプレックスをいだきつつ、就職か芸能生活の二者択一に思い悩むが…と。まさかそういう結論を出してくるとは、と。芸に生きるものの葛藤と自負と受ける蔑み、普通に就職していくものの優越感と羨望と反発も織り込んで。「成功を妬まれるのも失敗をほくそ笑まれるのもお前らの特権じゃねえのかよ」波よ聞いてくれ)教団施設に乗り込んだ三人組とマンガならではのマンガ的強さを発揮した救出劇。ミナレさんの言葉に、これはいまきかなくていい言葉だと判断する中原くんのシーンがいい。こんなにわかりあえているのに。あたりのキッチン)ようやく、清美さんと阿吽のマスターの過去の縁が明かされ、思いあふれ。まさか…これで終わりか、と思いきや、話は続くようでひとあんしん。マージナル・オペレーション)別の子供に、ジブリールは男女的な意味でイヌワシが好き、と告げられ動転するが、さてどう展開するのか。なぜ村人を助けるかの説明は戦略的な意味合いと人道的な意味合いが半々で。「弱点や欠点を直すことは恥ずかしさを消すことだ。恥ずかしさなんてのは我慢すればいい。そんなもの命と釣り合うものじゃない。」「僕が目指しているのは完璧じゃない。僕は勝ちを目指してる」フラジャイル)ややこしいことと知りつつ、ほっとけない、首をつっこむ宮崎先生。バレれば医師免許剥奪なのに、それでも。「腎不全の一番大きな合併症は永遠に続く自制」 Blacjboxは凌駕にせまる疑惑に、弾けそうな緊迫。概念ドロボウは、ますます不穏さを増し。
海の仙人
絲山 秋子 / 新潮社 (2004-08-28)
読了日:2018年7月26日
ある日宝くじがあたって、敦賀の海辺で世捨て人のような暮らしを送る勝男。そこにあらわれたファンタジーと呼ばれる見た目がおじいさんの神様。船で水島まで渡してくれる釣り仲間の豊じいさん。ハウスメーカーの課長で意気投合してつぎあうことになったかりん。働いてたときの同期で勝男に思いを寄せる片桐。同じく同期でひょうひょうとしている澤田。思いをぶつけて、つきあい、車の旅でなかよくしつつ、思いは果たせず、また何度でもアタックしてみたり。ファンタジーの造形が秀逸。神様なんだけど、なんらかの力をふるって願いを叶えたり予言したりとかはなく。ただそこはかとなくあらわれて、言葉をかわし、同じ時をすごすだけというの。宝くじ+恋人がガンで死亡って、なんだかなと思うところもあったけれど、独特の距離感と登場人物の個性にあてられ、味わいのある読後感。 エディット・ピアフの祭は続くて曲。「恋はあせらず」て曲。きいてみたくなたくなる。「幸せってなんだ」「ありのまま、を満足すること」/「自らが自らを救うのだ」 /生きている限り人間はすすんで行く。
初期室町幕府研究の最前線 ここまでわかった南北朝期の幕府体制 (歴史新書y)
日本史史料研究会 , 亀田 俊和 / 洋泉社 (2018-06-04)
読了日:2018年7月26日
九州の南朝勢力を鎮圧するための九州探題の労苦。満足な根拠地を与えられず、在地の守護と利害が対立すれば、それは満足に戦えぬもの、と。今川了俊は、征西府をほぼ平定した後も、島津氏との関係で苦労。許す、背かれる、をくりかえすうちにもともとの味方の信頼も失っていき。最後は、義満に、懐良親王のあとをついで、明から対外窓口となることを危惧されて、罷免されたのでは、という見立て。/義満権力が桁外れという従来の評価には、それでも最終決済権は天皇にあったという点で、留保がつくのではという指摘/初期室町幕府は直義が最高権力者として全ての権限を行使する体制であったという試案/義詮が室町初期に受け継がれていた鎌倉幕府の制度を一つ一つ変えていったこと/などのトピックが興味深かった。
きのう何食べた?(14) (モーニング KC)
よしなが ふみ / 講談社 (2018-07-23)
読了日:2018年7月28日
漫画だから見た目はそんなに変わらないけど、主人公たちももう50の坂を越えてるわけで。筧の母の極端から極端ぶりは健在な提案もあったり、最後の最後にケンジが店長にという話が降って湧いたり。にしても、ケンちゃん思い切ったなあと。初詣と年越しそばが高齢化で朝にシフトでケンジがもやもやのシーンがちょっとおかしみ。
波よ聞いてくれ(5) (アフタヌーンKC)
沙村 広明 / 講談社 (2018-07-23)
読了日:2018年7月28日
ミナレ南波クレコの三人旅での和寒取材旅行。ガイドの穂隠さんに案内を受けるもその正体は…と。四人の旭川でのすき焼きナイトがいちばん可笑しいというか。築かれつつある三角関係にミナレの実況中継。そして、突然の監禁とそこからのドタバタ。悲惨な状況のようでいて悲壮感はないというか。いつもの暴走ミナレさんを楽しみつつ。
札幌謎解き散歩 (新人物文庫)
合田 一道 / KADOKAWA (2014-01-15)
読了日:2018年7月24日
興味のある分を拾い読み。/Boys Be Ambitousのクラーク博士がアメリカ帰国後は、鉱山会社を立ち上げるも、破綻し、不遇な晩年をすごしたこと。/定山の名前のもととなった定山坊が死んだ際に流布した行方不明説は、あとをついで温泉を運営していた使用人が、定山と早川氏の一代限貸渡契約が実行されるのをおそれて、行方不明であると吹聴したのではないか、という仮説。/新選組の永倉新八が北大生に維新の回顧譚を語り、剣の稽古をつける一幕があったこと。/都ぞ弥生の作曲者が、以前、別の作者の寮歌を手直しして、その作者のものとして発表したことを批判されたことを受け、それなら自分で作ろうと思い立ったこと、曲が素人くさいからプロに編曲してもらえという批判に耳を貸さず、有島武郎のそのままで、というひとことでそのまま採用されたこと。/篠路歌舞伎の勃興と衰退/坂本龍馬の姉の子の長男・次男と北海道の縁。次男の孫が坂本直行であること/すすきのゼロ番地の誕生経緯/などなどのトピックが興味深かった。
合田一道 / 岡山どさんこ会 (1996-11-01)
読了日:2018年7月24日
定山渓という名前のもととなった美泉定山の生涯をたどった一冊。岡山の寺の跡継ぎからの出奔、東北での修行。蝦夷地に渡り、道路の開発と湯元の発見。無私の姿勢、志は高く評価されたが、本職が僧侶だからか、それからの成り行きからすると、経営手腕はそれほど高くなかったのでは、と。行方不明説は、あとを継いだ使用人が、定山への一代限貸渡の契約の実行を恐れたために吹聴されたのではないか、という仮説も提示される。
アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ (文春文庫)
ジョー マーチャント / 文藝春秋 (2011-11-10)
読了日:2018年7月16日
#藤村シシン講座 at 札幌で参考文献に挙げられていて興味を持った一冊。ダイバーが発掘して、その後、科学史家、学芸員、映像ジャーナリストと多くのものが発掘されたアンティキテラの解明に挑み、徐々に正体が解き明かされていくノンフィクション。「プライスは機械をカレンダー・コンピュータとして発表し、ライトは天体運行儀と表現した。フリースは、食を予測する機械と捉えたのだ」/それにしても、学芸員ライトがあとがきからすると一番取材に協力的だったためか、後半は主に彼の視点によって描かれているのだろうか。そのためか、彼の関わった人々は、優れた手腕もある反面、人のアイデアをあたかも自分のものとして語ろうとするクソ野郎としても描かれている。そう言われた側としては、それぞれ言い分はあるのかもしれないが。/そして、科学技術というのは線的に発展しないのだなという不思議を抱いた。もし古代ギリシャの技術が継承、発展されていたなら、人類は千年も前にとっくに宇宙に行ってたのかもしれないという夢想。また古代が「原始的」で現代が「先進的」と言う見方に一石を投じることでもあったと。古代ギリシャの技術が翻訳されて、保存されたという、イスラム文献にも、解読されてないものが膨大にあり、それらが解き明かされていくと、また違った古代ギリシャ像が刻まれるかも、という期待もあるのだとか。/また、チョーサー「アストロラーベの話」は探して読んでみたい思い。
ラジ&ピース
絲山 秋子 / 講談社 (2008-07-31)
読了日:2018年7月22日
仙台のFM局をやめ群馬は高崎の地方FMに転職したアナウンサーの主人公野枝。人と壁を作り、人を寄せ付けず、けれどもラジオDJしている時だけは生きている実感を得られる。越してきて初めての居酒屋で第一印象最悪だったのに友人になった女医の沢音。/仕事もスマートで言いよってくるも厳しくはねつけられる石田。「世の中には、狂人と変態以外いません」「僕、泣いていいですか」/家族、特に妹との確執。話の合いそうなリスナーを一人選んで一緒に遊びに行ったり。そして以前別れた美丈夫の面影を引きずりつつ。/周囲から見たら独特の、本人としてはいたって筋の通った、野枝の人との距離感が印象的。最後は少し解けたような思いで日々は続いていく余韻を残して。併録の「うつくすま ふぐすま」は自分と同姓同名の、妹の同僚と、奇妙な一致を楽しみつつ、心解け、スパッと男を捨てる短編。
言い寄る (講談社文庫)
田辺 聖子 / 講談社 (2010-09-15)
読了日:2018年7月22日
三宅香帆さんの https://cakes.mu/posts/21388 て記事に触発されて手に取る。45年前に連載されていたもの。デザイナーの乃里子は、昔馴染みの天女ならぬ天男三浦五郎を振り向かせようとするもなかなかうまくいかず、金持ちのボンボン中谷剛に言い寄られ、妻子持ちの渋い会社社長水野にも気持ちを持って行かれるが、肝心の五郎は...と。恋愛の事は大抵はうまく運べそうなのに、肝心のところだけうまくいかないもどかしさと運命。「ほんとに言い寄れるのは、あんまり愛してない人間の場合である。」(死産の子を)「見たら煩悩がおこるのん、ちゃうかなあ」「お互いの過去や現在の情事をほじくり返したところで、何の足しにもならぬことをオトナだから知ってる。同様に、未来のことも口に出すだけでマヤカシになることも知っている。」「私にはついに言い寄れなかった五郎が、美々には「会って二度めに」言い寄っていたという事実は、私と五郎の長い歳月を、いまさらのように思い返させるに充分だった」
ニート (角川文庫)
絲山 秋子 / 角川グループパブリッシング (2008-06-25)
読了日:2018年7月22日
ニートの友人にお金を貸す主人公、そしてルームシェアしてる部屋に引き取る話。婚約者を亡くした友人の引越しを手伝うがわかれぎわに彼女が自分と連絡を断とうとしていると直感してしまう話。タクシー待ちでナンパした眼科医の女性と別居状態の妻と自分を育ててくれた母のいとこの間で揺れ動く男性。最初は教え子として、再開した時はムショ帰りになってた男性を連れ帰り、性癖をぶつけられ、受け入れる話。/なぜ直感できたのか読み取れず。また揺れ動く男性がどうするのかも読むものに委ねられ。乾の孤独とそれゆえの欲望の強さ。自分が庇護者と感じる時の自問と相手との距離感が興味深く。/「寄付というのは、どんなささやかなものであってもやはり一種の欲望だ。一方で金というのは自由のへたくそな方便でもある」
並木陽 / 銅のケトル社 (2018-05-06)
読了日:2018年7月21日
#文学フリマ at札幌で配布されてた約20ページほどの短編。ヴェネツィアの謝肉祭を舞台に、仮装の下の正体はお互い詮索せぬ暗黙のルールの上に、お互いの正体を察しつつ、ほのめかすも、あえて暴かず。決められた嫁ぎ先へと送る漕ぎ手と送られる花嫁の、短い会話が余韻を残す。
藤村シシン他 / 藤村シシン
読了日:2018年7月16日
やはり、黒川巧さんの小説がよかった。渦巻く思いをまっすぐ伝えられないハデス、そんな姿を見て責め立てながらも、最後は愛しさが勝ってしまうペルセポネを描いた佳編。あと、全編通して感じたのは、ハデスが日本で人気なのね、ということ、シシンさんの「古代ギリシャのリアル」を読んだ後だと、するすると頭に入って来ること、いつかはと思っていた、オデュッセイア、イリアスに挑戦したい思いが湧き上がってきたことかな。ちょっとミルトンの失楽園までは手が伸びない。
沖で待つ
絲山 秋子 / 文藝春秋 (2006-02-23)
読了日:2018年7月17日
「勤労感謝の日」、会社を辞めて実家ぐらしの主人公が、義理ある人からの見合いを断れず、けれどあまりにあまりな相手に、途中でぶっちぎり、後輩の子を呼び出して渋谷に飲みに、それでもおさまらず、近所の居酒屋で呑んだくれて、と。/職安に最初に行った時、セリーヌの「夜の果ての旅」のバルダミュよろしく事務所の中をとっくり眺めた、とあるその作品、読んでみたい。/後輩の「国連脱退の松岡洋右みたいでした、カッコよかったなあ」の可笑しみ/「虫愛づる姫君か」と言うつぶやきと蚕のたとえ/マスターみたいに、「それでだめだったら、そのときさ」と、思えるかな、思いたい。と言う独白がグッとくる。「沖で待つ」、住宅メーカーに就職した主人公と同期の太っちゃんの物語。同期とは戦友、といった感じで共に初めての福岡で仕事し、転勤が二人をわかち。そしてどちらかが先に死んだら...とある約束をするのだけれど、と。仕事の喜びも辛さも諦めも覚悟も伝わってきて。最後に、それはねえだろ、というジョークで笑いあうシーンに、読んでよかったな、と味わい深い読後感が襲ってきた。/「私を育ててくれたのは会社の先輩よりも、現場の人たちでした。だって、事実は現場にしかないのですから」/
古代ギリシャのリアル
藤村 シシン / 実業之日本社 (2015-10-15)
読了日:2018年7月14日
#藤村シシン講座 at札幌 を受けて、再読したくなり。神。神慮めでたく。古代ギリシャという国は一度も存在せず、大小1500の都市国家が共同体ごとに独立していた。「我々は同じギリシャ人だ。同じ血を持ち、同じ言葉を話し、同じ神々を信仰し、同じ生活習慣を持っている」(ヘロドトス「歴史」)。神々は「人間から見ると強大な力を持つ超越的存在だが、慈悲深いわけでもなく、ましてや人類全体を愛してもいない」。ゼウスが浮気者にされるのは、神も人気商売で、各都市がうちに関連があったんだ!と関連付けたがるゆえのこと。古代ギリシャと人の終末観の特徴が、モラルのなくなった世界というのも興味深く。力では劣っても知恵で渡り合うヘルメス、貴族社会に知恵と技術で挑むヘファイストスあたりが個人的には好みかな。アポロンの神託・名(迷)回答集もなかなか面白かった。個人的には、松村栄子「至高聖所(アバトーン)」と連なる所にも興味。アスクレピオスの神殿での治癒行為。治癒は夢の中でなされる、「共同寝室(アバトン)と呼ばれる場所で夜を過ごし、夢の中で神の啓示があるのを待ちました。そして昼の間は、神域にいる「人間の医者」にかかり、薬の処方や外科手術を受けるのです」といったあたりに。
(P[さ]4-6)札幌あやかしスープカレー (ポプラ文庫ピュアフル)
佐々木 禎子 / ポプラ社 (2018-07-03)
読了日:2018年7月16日
キタノステラ増刊「ポッケ」つながりで。ある能力を持っていることで人とうまく関われない達樹。高校のクラスでも溶け込めないかと思ったが、一見かっこよくて爽やかで人当たりもいい人気者のヒナに絡まれることで徐々にほぐれ、ひょんなきっかけでスープカレー屋さんでバイトすることに。そこは、あやかしというタイトルがつくだけあって...と。あまり札幌でなくては、という場面もなかったように思うのが地元民としては若干寂しいけど、気弱一辺倒だった高校生が、スープカレー屋さんでの出会いに力を得て、少しずつ人と関わりたいと思っていき、友情を育んでいくところが、読んでてほっこりする一編でした。/以下備忘録。/気力を迸らせる脂身とタンパク質/各人チョイスのまちびこスペシャル、それを食べる人の顔や汗の量でコンディションを推し量り、次に活かすと/怖いもの祟るものを人は大事にするが、そうではなく人の役に立つことで自分たちの存在意義を打ち立てたい、例えば料理上手の一族となることで、と。
イスタンブールには、なんで余裕があるのかな。 (ビームコミックス)
市川 ラク / KADOKAWA (2018-07-12)
読了日:2018年7月15日
トルコ留学中の市川ラクさんの現地事情エッセイ。カフェでたむろするおっさんがたくさんいて、余裕あるなと思ってたら、若く見えるけど、年金もらえるの50からとかで、そういうからくりか、と。コミックフェス、コミコンにおける許容の多彩さ、ゆるさとフットワークの軽さが印象的。親日のイメージのあるトルコだけど、外から来る客には日本に限らずのおもてなしを発揮してるだけで、一般の人はそれほど日本に関心があるというわけではない事情。バスで重病人が出た際の乗客たちのスムーズな救護に見る余裕。勤め人はだいたい別荘をもてるという生活の余裕。貧富の格差はあるけれども。いずれにせよある程度の生活を賄えなければ余裕など出るはずもなく、生活費の安さなのか、整った福祉なのか、助け合いの精神なのか、いろんなことが起こりすぎるので対応力がついてるのか、と。占いにハマるものとイスラム教徒しての観点からの否定、様々な見方があることを示唆してくれる。このシリーズでの出版は一旦終了とのこと。次は、イスタンブールの他のこと書くかもだし、ぶらりと他の国かもしれないし、と。いずれにせよ楽しみ。
真説 ザ・ワールド・イズ・マイン 4巻 (ビームコミックス)
新井 英樹 / エンターブレイン (2006-09-25)
読了日:2018年7月15日
トシモンの、潜伏する電器店からの脱出、自衛隊ヘリの乗っ取り、そしてマリアの親友宅を乗っ取り。結末は悲惨なものとなり、マリアは白髪化して失神。モンは、それまでは恐れていたのに、再び、殺しの引き金を引くことにためらいがなくなっていき。壊れたように笑いながらついていくマリア。どんどん凶悪化していくトシ。あなたたちは何を求めている?と言う問いへの答えは出されぬまま、ただただ増えていく犠牲者。片や、脅迫を受け、公共の電波でのストリップショーを目論む由利総理。その結末もまた予想外のものであった。猟師の飯島の、殺すものと殺されるものの中間にいるものとしての重い言葉。そして警視庁の官僚や県警刑事たちによる、多数を殺すために一人を殺すの是か否か。それが自分の娘であったとしても、と言う議論にも出される答えは様々。次巻で物語はどう転がっていくのか。
真説 ザ・ワールド・イズ・マイン 3巻 (ビームコミックス)
新井 英樹 / エンターブレイン (2006-09-25)
読了日:2018年7月14日
ハイスコアガール(9) (ビッグガンガンコミックススーパー)
押切蓮介 / スクウェア・エニックス (2018-06-25)
読了日:2018年7月16日
ようやくようやく自分の気持ちに気付いた主人公。そして大野さんには差し迫ったアメリカ渡航話が。お互いの決着をゲーム大会でつけようと、大阪に乗り込む二人。前乗りで大阪を楽しみ、大会予選突破するところまで。次の巻で完結。/ようやくか、ようやく気づいたのか、というもどかしさと、恋をすっ飛ばして愛だろうと周りに言われ、そうなのかな、と。そして、一緒に泊まった部屋の、気持ちが通じ合っているような、通じていないようなもどかしさと甘酸っぱさが印象に。
西村優紀(編) / 岡本愛香 (2018-07-08)
読了日:2018年7月12日
#文学フリマ札幌 で購入。荒削りな印象。また、原稿を依頼しても集まらない嘆きまでもそのまま載せられ、他人事ながら、先行きが危ぶまれる。安請け合いはしたものの、命の危険も経済的損失もない中で、書く意欲を失っていったということなのかなあ。「帰る」で語られた実家でのあたたかさ、「煎茶とカップラーメン」の整形疑惑をめぐる気持ちの揺れあたりがかろうじて印象に残った。
発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術
借金玉 / KADOKAWA / 中経出版 (2018-05-25)
読了日:2018年7月7日
ライフハックとは「目を良くしようと努力せず、すぐメガネをつかえ」ということである https://blog.tinect.jp/?p=52175 という記事に触発されて購入。一番印象に残り、抱腹絶倒だったのは、「よくやっている机の上を5秒で片付ける儀式。1 まず机の上に腕を置きます。2 次に、その腕を右もしくは左に大きくスライドさせます。3 大量に物が落下しますが、作業スペースだけは確保できるはずです。後から拾えばいいんです。」と。象を冷蔵庫に入れるには?冷蔵庫を開ける、象を入れる、冷蔵庫をしめる、に通ずるユーモアを感じた。確かに、クリーンなデスク、クリーンなPCのデスクトップが頭の混乱を消してくれるのは納得。他にも、カバンぶっ込みが最強、ひらくPCバッグがおすすめ。大きな白紙こそ思考を広げるのに最適。まず中心に「打開」という概念を据え、そこから思考を広げていく。完璧な休息の必要性。人間は他者に与えたものに対して対価が支払われなかった時、大変強い怒りを覚える、お金に限らず。茶番センサーを解除するために茶番を必死にやるしかない。上記アイマスクとヘッドフォンして毛布にくるまって20分ほどで精神をクリアに。自己肯定に根拠はいらない、などなど。発達障害から来る生きづらさのエピソードはそうではない身には壮絶に思えたが、こうすれば乗り切れるというのを編み出して、なんとかやっていけてるところがいいなあ、と。解説の芥川龍之介が「最も賢い処世術は、社会的因襲を軽蔑しながら、社会的因襲と矛盾せぬ生活をすることである」と書いていた、という一節も目に止まる。
高森純一郎 / 高森純一郎 (2018-05-06)
読了日:2018年7月10日
#文学フリマ札幌 で購入。高森純一郎( @takamori_j )氏の著作。今作の舞台は、天安門事件の直前、1987年から1989年の中国とソビエト連邦。政治に振り回された一家の少女が、北京の大学の政治学科を目指し、そこからソビエト連邦へ留学し、血気にはやるだけではない、したたかな政治運動を目の当たりに。自由な空気と保守的な締め付けの繰り返し、揺り戻し。言葉通りに受け止めると痛い目を見る、裏の裏まで読んでの行動を身につけざるを得ない空気。率直で、社会の不正義に憤る友人たち。ペレストロイカの進められていたソビエトでは、学生たちの自由を求める運動を容認する余地があり、キャンパスでの運動も、最高権力者の介入を図り、落とし所を見つけることができた。しかし帰国した主人公が直面した現実は...と。不正義に憤り、声をあげることは重要だが、血気にはやるだけではなく、対峙するものの背後にまで目を凝らし、立ち上がるのは今か、ここで捨て石の犠牲となって本当に意味があるのか、ということまで冷静に考えて、行動することも必要、という視点が印象に。/「人間は「考えるべきこと」を考えるよりも前に、「考えたいこと」を考えることを優先したがちだ。それは、今のように熱狂的な雰囲気が社会全体を覆えば覆うほど顕著になる。」(セルゲイ・ミクロフ)/「相手と意見が違う時、それを互いに認めあう価値観の中では生きてこなかった。私も含め、ここにいる人たちは、自由というものに対して余りにも不慣れだわ」(イリーナ)。/
無節の欅-おれは一万石(5) (双葉文庫)
千野 隆司 / 双葉社 (2018-05-09)
読了日:2018年7月11日
なんとか寺の建替費用を工面した正紀と正広。廃嫡を目論む正広の父らの画策に苦しめられるも、親戚筋の松平信明の公正さに救われる。建替の奉行として木材を納入する商人も選定し、いざ運搬へ。今回守るものは材木。確かに、杭、塩、醤油、麦、材木と毎回なんらかの物資の運搬に関わり、それを敵対勢力から守るというのがパターンになってきてはいるが。そして、一万石という小藩、お世辞にも人材豊富とは言えない中、毎回、正紀を害そうとする勢力が現れ、そのうちに返り討ちにして行っては、早晩、人材が払底してしまうのではという野暮な心配も。作中の松平信明が言った通り。また、相場で費用を工面したことについても批判を受け。しかし、だったらどうすればよかったというのが示されなければ、それは、京が言ったよに言わせておけばよい、としか思えないだろう。この巻で正紀・京夫婦の絆もまたグッと深まり。
谷早都希(編) / 札幌ワカモノ文学サロン (2018-07-08)
読了日:2018年7月11日
#文学フリマ札幌 で購入。札幌ワカモノ文学サロンというサークルが発行しているとのこと。ぱらっとめくってなんとなくいいなあ、と思い購入。小学校時代の友人のことを書いた「Tについて」のTくんの強烈なキャラクターが印象に。文学サロンって、ナンヤネン?」…のとにかく書いて、それを出して、なんらかの声をもらえることの貴重さというのは伝わってきた。「アシンメトリ」からはまっすぐにブンブンサテライツ愛が伝わってきて。「私にぴったりの友人」は、なんとはなしに親友に対してこちらから連絡を断ってしまった主人公が、AIが仕立ての友人によって心身ともに回復し、勧められるままに、久々に連絡をとろうと思ったら...という一編。確かにざざざっとなるかも。あと、何で書いてるはみなさん個性が出て。個人的には、FocusWriter、早速ダウンロードしてみました。
迷子 / 迷子 (2018-07-08)
読了日:2018年7月8日
#文学フリマ札幌 で配布されてたもの。 @maigomaigomind さんの作品。突発的旅行記三連発。思い立ったらGOの勢い、好きです。高価な焼き物を買いに読谷村へ、奇跡の一枚を撮りに東京の写真館へ、そして軍艦島へ。読谷村の焼き物、確かに鮮やかで印象的なブルー。軍艦島は結局上陸できずだけど、酔い止めとの格闘、船酔いとの戦いがユーモラスに描かれる。
迷子 / 迷子 (2018-07-08)
読了日:2018年7月8日
#文学フリマ札幌 で購入。 @maigomaigomind さんの作品。大人の童話、なのかな。ある日、近所に染抜きの腕のいいクリーニング屋さんができたというので行ってみたら応対に出てきたのがスポンジ。とっても一生懸命で、お客さんの話もじっくり聞いてしまうのだけど...と。人の心の染抜きは、本当に本当に黒いものを吸い上げてしまうのだと。スポンジの汚れをザブザブと落とすように、落とすことができたらいいのに、と思ってしまいました。
Atsushi / Atsushi (2018-04-20)
読了日:2018年7月9日
#文学フリマ札幌 で購入。南1西4 四丁目会館の「居酒屋 錨」を紹介する一冊。昔の随想を織り交ぜつつシブーく紹介されててそそられる。ただ、後半がほぼ掲示板のコメントのやりとりで脱力。それはそれで面白かったけど。あと、コメントの中に、なぜか、味覚の探求者、という超短編が紛れ込んでて、鼻に犬の嗅覚を移植した男の話、味わい深かった。
たけおみしげのぶ , ひらままひら / たけおみしげのぶ,ひらままひら (2017-07-09)
読了日:2018年7月8日
泡盛×旅行記、ワイン×バトルというコピーに惹かれて購入。泡盛...沖縄旅行記なのかなあと勝手に思って買ったんだけど、近未来SFものだった...けど、好きなテイストだったので結果オーライ。水位が異常に上がった地球でのお話。高層ビルに住む生き残った人々。縦穴と横穴を旅する人々。泡盛が出てくるシーンはなかなかに印象深く。ワイン×バトルは、なんとなく流れてコンビニのバイト専業になった青年が、強盗の体でやってくる客とのやりとり。あの...毎回監視カメラに写ってたと思うんだけど大丈夫だったんですかね、と野暮なツッコミは置いておき、最後は希望を感じさせるラスト。
渚詠美 , 鉄大泪 / 結日書房 (2018-07-08)
読了日:2018年7月9日
#文学フリマ札幌 で購入。結日書房さんというサークルの作品。逃避行、釣り、お花見の3モチーフで、女性視点で描かれる、おにぎりがポイントになるエピソード。特に、鵡川へ逃避行した先で、食堂兼民宿で出会った人と話すうちに心ほぐれて、一緒にピクニックした先でのダイアローグがとてもよかった。あと、鮭の筋子おにぎりとオロナミンCで二日酔いなおる設定のお話…治るのかなあ、と。できればシリーズ化して欲しいなあ。
藤川駿佑 / 藤川駿佑 (2018-07-08)
読了日:2018年7月8日
#文学フリマ札幌 で購入。@shunsuke_fjkw さんの個人誌。ブログが元になっているのだとか。爽やかな表紙とぱらっとめくってみた感触がよかったので購入。オススメのNostola「Sigh」、聴いてみたけど確かにゆったりした気持ちになれます。あと、元チューバ吹きというのにも個人的に親近感。短めの断章で、世の中の事象、こう考えたらいいのでは、というのが示されていて、なかなかにいいなあ、と読み進める。大人になりきれない大人については、自戒もこめて、じっと手をみました。次回作も読んでみたい。
真説 ザ・ワールド・イズ・マイン (2)巻 (ビームコミックス)
新井 英樹 / エンターブレイン (2006-08-31)
読了日:2018年7月8日
自分たちが逃げつづけるために邪魔な存在を消し続けていく。そんな時にモンが遭遇したヒグマドン。それ以来痛みを感じて殺しができなくなるモン、引き換えに残忍になっていくトシ、そして加害者家族として焦点の当てられるトシの母、挑発するかのようなネットでの殺人代行受付。総理大臣由利の各世代に訴えかけるスターたちを集めた特番、またも極論、詭弁を繰り出して、世論に投げかける。怒涛の二巻。
送水こうた / 東天青 (2017-07-09)
読了日:2018年7月8日
#文学フリマ札幌 で購入。大正時代の月寒が舞台、というのに心惹かれて。生真面目な新米官僚の小林林太郎と、身寄りなく実家に引き取られてきた5歳下の丹下メイコの淡い恋物語。そっと手渡されたアンパンのようにしっとりと。後見人になりたい、という年上らしく振る舞う林太郎に、メイコが「一生懸命すぎて、アンパンを買って食べるくらいの用事について、月に行く方法を考えるくらい難しい考え事をしていますよね」とビシッと指摘して、「考え事が終わった後に、一番先に林太郎さんが思い出すのがわたしのことだったら。それだけでもう十分です」という穏やかだけどきっぱり告げるシーンがよかったなあ、と。
北18条文学 / 北18条文学 (2018-07-08)
読了日:2018年7月8日
#文学フリマ札幌 にて購入。動物園の象がラーメン大将の肉チャーハン食べたい、って話。いろいろ無茶苦茶なんだけど、結局果たせて、しかもばれなかったという展開が力技すぎて脱帽。今野さん、罪作りです。そしてかしゆかに似た樫野さん。ここまでくるとホラーというかなんというか。最後。なんでアレクサンドロス大王が...ってこの人とラーメン大将の肉チャーハンを結びつける突拍子のなさと強引さに脱帽。あと、作者じゃない、表紙などに登場する男性が、SHIBUYA.Tさんだ、ということはわかった。次回作も楽しみ。
北18条文学 / 北18条文学 (2018-07-08)
読了日:2018年7月8日
#文学フリマ札幌 で購入。今回も誰だかわからないけど今野さん特集。留年に留年を重ねて30になって中退をせまられ落涙。どうしてそうなるまで何も...とは端からの思いで、本人的にはどうすることもできない無気力の奔流に押し流されてということなのだろうか。鎌倉時代から生きている男は、言ってしまえば航空券予約をめぐるドタバタなのだけど、その後の展開が抱腹絶倒のドタバタ具合で...まあ三つ目のパターンは読めたといえば読めたけれど、それにしても。そして次は砂漠の遭難者の幻と今野さん。不条理な、あまりに不条理な。そしてそんな今野さんを愛していたという女性のエピローグでしめられる。もっと読みたいような、他の話も読みたいような。会ってみたいような会ってみたくないような、強烈なキャラクターが、ラーメン大将の肉チャーハンのように強烈な印象。
藤沢チヒロ , あきの実 , 佐々木禎子 / キタノステラ出版 (2018-07-02)
読了日:2018年7月8日
#文学フリマ札幌 で購入。キタノステラ、狸小路ワンダー、鴨鴨川フレンズと買った身には買わずにおれない一冊。特集:酒場 北の酒場で酔い痴れる。まさかここで北大正門前の「松」のエッセイが読めるとは。山田航さんの筆によって。2002年にはすでにホームページを持っていたという先進性とそこから止まってること。また厳しいマナーと美味しい料理。確かにうとうとしかけて注意されたことあるわ!/帯広紹介ではHoccino coffee、ミントカフェ、Flow motionなどがきになる。/室蘭のシブーい酒場の紹介も/また、秋永真琴さんのセコマ愛溢れる紹介と第三モッキリセンター愛の漫画もいい。セコマのワンコインワインG7にジンギスカン、お惣菜で宅飲み。そして100円パスタのバラエティ。個人的には一時期ここのパスタ朝ごはんにしてたので親近感。/最後の琴似の酒場を舞台に大学生と正体不明の男のグダグダとしたダイアローグの一編も印象に残る。
ハーン ‐草と鉄と羊‐(2) (モーニング KC)
瀬下 猛 / 講談社 (2018-06-22)
読了日:2018年7月8日
カサルとの勝負で味方につける。テムジンが招いたこととはいえタイチウトとの決戦。そこへ近くオン・ハーンの軍勢、と言うところまで。最後に、ボルテの現在、ホラズム・シャーの現在が語られ。鉄の重要性も語られる。
南部は沈まず
近衛 龍春 / 日本経済新聞出版社 (2012-08-24)
読了日:2018年7月7日
南部信直、南部利直の二代記。英雄でも英邁でもない。時に、周囲に、愚鈍と、飼い犬と、機を見るに敏ではなく、過去の恨みに頑なにこだわり、さして力のないものと思われることがあっても、歯を食いしばり、屈辱に耐え、着実に家名を残してきた二代。地味といえば地味。信直。最初は小身、主君に兵を向けられ手厳しく撃退するも、その後10年、寝たきりの主君を追えず、その間に父は津軽為信に謀殺され、仇を討つ力もなく。最初は本妻への約束も果たせず。本家を乗っ取ったあとは、独裁君主ではなく、国人たちの筆頭という立ち位置ゆえ、思うようにいうことを聞かせられず。九戸の一揆も結局は豊臣軍の力を借りねば征伐できず。小田原参陣では一番最後に到着。検地も遅々として進まず。奥羽の一揆時に、なりふり構わず、真っ先に浅野家家臣を助けたのが、忠義ものとして中央の評価は得たものの。利直の代になり、新田開発、鉱山開発、城下整備など進められるが、大阪の陣では配下を大阪城にも送り、それを見抜かれ、窮地に陥ったことも。末年は度重なる震災の復興に力をつくし、それが東日本大震災と重ね合わされる場面も。最後は、新巻鮭とわんこそばの起源を利直に重ね合わせて物語は終幕に。/独立にあたっての津軽家の外交上手は印象に。津軽側の視点も読んでみたい。/「そちには朱印状で返り忠が者を討つ許可を出した。なにゆえ小田原参陣前に討たなんだのか?」「討てなかったか、熟寝を貪っていたか、あるいは余に討たそうとしておったのか?」/(前言の取り下げは関白の胸先三寸。儂のことなど、どうでもよかったということか)/「ならん。関白は我らが惣無事令に違反し、斯波、閉伊を併呑したことを知りながら、当家の存続を認めたのじゃ。」/「自が家臣を討てもせぬのに、許容する心がないゆえ返り忠が者を出したのではないか?」/家康の今際の際の、三河生まれの余にとって陸奥人の気質はよく判らぬ、と言う述懐。二度も二股をかけたのは乱世ゆえ仕方ない。検地しかり金山しかりこのごに及んで明確にせず平然。粘り強さが公儀のためになると思ったゆえ潰さなかった、と。
たったひとつのことしか知らない (アフタヌーンコミックス)
本田 / 講談社 (2018-07-06)
読了日:2018年7月7日
こちらもアフタヌーン本誌を毎月買ってる身としては、永久保存版にしたくて、切り取って持っていたもの。電子書籍版になり書き下ろし漫画もつくと知り購入。やっぱこの話好きだわあ。小3のとき、一瞬同級生だった二人が、他愛もない話をするだけの電話で繋がってる話なんだけど。書き下ろしの二ページ、後日譚、読むとさらに味わいが深くなっていいなあと。需要ないかもだけど、これからの二人の物語も読んでみたく思った。
不朽のフェーネチカ (アフタヌーンコミックス)
竹良実 / 講談社 (2018-07-06)
読了日:2018年7月7日
アフタヌーン本誌を毎月買う身としては、これは永久保存の短編だ!と思っていたら、電子書籍化プラスオリジナル書き下ろしありとのことで、買わずにはいられなかった。再読しても、やはり良い作品。ずっと手元に置いておきたい。生前列聖が噂されるマザー・ドロテアとその過去を暴こうとするジャーナリストのアレハンドロのお話。ドロテアが生涯を問うような、究極の選択を迫られ、思いが駆け巡り、従容として受け入れ、ただの満足したシスターだよというシーンが強く印象に残る。
まんが星座事典 (学研まんが事典シリーズ)
あいかわ 一誠 / 学習研究社 (1982-04)
読了日:2018年7月4日
#藤村シシン講座 at札幌に触発されて、何十年ぶりかに再読。88の星座とそれにまつわる神話や成立の話が語られる。子供向けだけど、ギリシャ神話の神々が自由奔放で、聖人君子などではなく、神話も今の基準からするとひどい話、と言われそうなものであることが語られていた。ぎゅっと凝縮されてるし、藤村さんの講座でも語られてた通り、様々な説があるということも触れられていた。また神話なき星座たちも興味深い。たて座が、1683年のオスマン帝国のウィーン包囲時のポーランド軍の活躍を記念して作られていたとは。また、17-18世紀に作られた星座は、当時発見された動物や発明された道具などを記念して作られ、得てして、どう星を結んでもそうは見えないものが量産された模様。1930年に今の星座に定められたが、その取捨選択の過程、どの国でどのように星座が作られ、語り継がれ、語り継がれなかったのか、といったあたりに興味がそそられ、そこに触れた本があれば読んでみたい。
CUBA ユーウツな楽園
田崎 健太 , 横木 安良夫 / アミューズブックス (2001-12)
読了日:2018年7月4日
楽園なだけではない、という現実を見に、著者は。物資の乏しさ、いい加減な公共交通、インフラの未整備、などなど。ただ、我らは貧しい、しかし幸せだ、という人々も活写。
ネルーダ事件 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ロベルト アンプエロ / 早川書房 (2014-05-01)
読了日:2018年7月3日
チリのノーベル賞詩人パブロ・ネルーダに人探しを依頼されたカジェタノ。失業中だったが、メグレ刑事シリーズを数冊渡され、「これで探偵業を勉強してくれ」と言われ、メキシコ、キューバ、東ドイツ、ボリビアと飛び回り、チリに戻ってきたが...と。時はアジェンデ政権下チリ、政治の季節、1973年。そして、手の届かない尊敬するノーベル賞詩人が、赤裸々にカジェタノに語る、愛と裏切り。改めて、ネルーダの詩や評伝に触れてみたいと思った。以下備忘録的に。/パナマ運河開通によるバルパライソの壊滅的な打撃。/「キューバに世間知らずはいない。まぬけや恥知らずや日和見主義者はごまんといても、世間知らずはひとりも。」/タンゴの名曲ボルベール/私が気に入らないのは(略)「黙っていれば愛しい。いないも同然だから」、そう言われている感じ。/「キーをたたいていい詩が書ける人間などこの世にいるものか。詩はペンで手書きにするものだ。詩は、チロエ島の海岸に打ち寄せる潮のように脳みそから降りてきて、体から手へと流れ、紙の上にあふれだす」/「くだらんことを!人生は仮装パレードだぞ、カジェタノ」/「人を不死にしてくれるのは、本ではなく子供であり、インクではなく血であり、本のページではなく肌なんだ」/
マンダラ発光―杉浦康平のマンダラ造本宇宙
臼田 捷治 / DNP文化振興財団 (2011-12)
読了日:2018年7月3日
3年前に、札幌のグランドホテルのギャラリーに、「マンダラ発光」という杉浦康平さんの展示がきてて、それにやられて、二度見に行ったことがあって。 https://twilog.org/choku70/search?word=%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%A9&ao=a そんな記憶が、西野の古本屋「古本珈琲日曜日」で激しく湧き上がってきたのがこの一冊。マンダラの豪華本、「ヴィーナスの誕生」「ボッティチェリの春」の豪華本、写真集や詩集などの一連の豪華本と、巻末のエッセイが詰まった一冊。この並びでルネッサンス絵画は斬新かと思ったけど、きちんとした構造が読み解かれていてよみふける。マンダラはもう、ただただ、眺めて、とろけそうになる。展覧会のことを思い出しながら。精緻に構造が読み解かれていて、ただただ読みふける、幸せな一冊でした。
絲的サバイバル (講談社文庫)
絲山 秋子 / 講談社 (2012-11-15)
読了日:2018年7月2日
「北緯14度」に触発されて。この本の一節が、「絲的サバイバル」の出張版である、と銘打たれてたので、本家も気になり。絲山さんが群馬県をメインに、愛するフィアットでキャンプ場へ駆けつけ、主に一人キャンプ、時に編集者と、時に飲み友達を日帰りでよんだり薪を持ってきてもらったり。自分と自分の対話調だったり、ステファニーと語るみたいな体裁だったり、文体もところどころ凝っていたり。何もしない時間の貴重さを噛み締めたり。キャンプ愛とフィアット愛が伝わってきて楽しいエッセイでした。天の声氏は、北緯14度のムッシュ・コンブロネなのだろうか、と推測したり。
もし文豪たちが カップ焼きそばの作り方を書いたら
神田 桂一 , 菊池 良 / 宝島社 (2017-06-07)
読了日:2018年7月1日
cakesで一部公開されてたのを読んでたんだけど、本当に芸がこまかい。愛あるパロディとしてるけど、ファンが読んだら怒るかなあと思いつつも、特徴を捉えているなあ、と。まあ個人的に元ネタがわかる範囲でだけど。個人的には、松尾芭蕉、小沢健二、名言集、石野卓球、アンドレ・ブルトン、やまもといちろうあたりが、大笑いできました。
トルコで私も考えた ジェネレーションズ (愛蔵版コミックス)
高橋 由佳利 / 集英社 (2018-06-25)
読了日:2018年7月1日
25年も経つと、著者も還暦を迎え、息子さんは東京の大学へ、神戸のトルコ料理店は閉店して夫はトルコへ働きに戻り、と様々な変化が。息子さんといとこのトルコ、ジョージア珍道中がおかしかったのと、今のトルコのお店を回った息子さんが、10軒に1軒くらいしかまともな接客されなかったと嘆いたのが印象に。個人的には、20年前に行った時は、道端でぼろうとする人はたくさんいたけど、店ではいやな接客されたことほとんどなかったので。あと、著者の親族にも、政治情勢によっても様々な出来事があったんだなということが語られ。
真説 ザ・ワールド・イズ・マイン (1)巻 (ビームコミックス)
新井 英樹 / エンターブレイン (2006-08-31)
読了日:2018年7月1日
圧倒的な理不尽と暴力とどこへ向かうのかわからないスリリングさ。モンとトシはどこから来て何を目指しどこへ行こうとしているのだろうか。立ちはだかろうとするも一度は折れた塩見課長はどうするのか。そして、適当そうな外観で実は肝が座って誰も言わなそうな本質的なことをえぐり出す総理の造形も気になる。


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2018年07月01日

2018年06月に読んだ本

期間 : 2018年06月
読了数 : 31 冊
和田夏十の本
和田 夏十 / 晶文社 (2000-04)
読了日:2018年6月27日
木皿食堂で、気になる脚本家としてあげられていて手に取る。炎上、黒い十人の女、のシナリオを読む。どちらもググッと引き込まれ。炎上は、原作の三島由紀夫「金閣寺」も読みたくなってきた。/「僕の罪じゃないだろ、現代の社会機構が悪いんじゃないか。僕は被害者じゃないか」「社会機構を殺すわけにはいかないでしょ。人間が殺すことが出来るのは人間とその他の動物だけよ」(黒い十人の女たち)/親父は二度結婚して二度死別した、二度とも親父がくびり殺した、という「二枚の写真」も強い印象。/「ある人になにかを求めても得られなかったなら深追いしないほうが良い。なぜならその人はあなたが求めているものを持っていないからである。あなたはすぐに次の人を探しに出かけなさい」(聖書ふうに)/沢田研二やなかにし礼への言葉。そして、今では当たり前な言説でも、40年以上前では、きっと風当たりが強かったと思われる、女性への保守的な見方への批判が印象に。/「楽しい話なんて何処にもありませんわ。だから空は高く美しく、風は光っているのですわ。」(p.79)/
アフタヌーン 2018年 08 月号 [雑誌]
講談社 (2018-06-25)
読了日:2018年6月26日
あたりのキッチン:中学でうまくいかないと感じ、また夏バテもしている樹を気遣う阿吽の面々、という構図がほほえましく。波よ聞いてくれ:久連木の逃亡へ希望を繋ぐための仕方なしの入信と、それに続く南波ちゃんとミナレさん。それを見抜いた教団の儀式に伸るか反るかの所で、救援にきた三人の登場でどうなることやら。イサック:態勢を立て直したイサックと駆け寄るゼッタ。スピノラ隊長が突撃命令を下せば、スピノラ自身の命と引き換えに城を落とせる、という情勢を作るところまで持って行くことができ。スピノラの死んでは元も子もないという考えを引き出せたイサックの勝利。BLACK−BOX:レオンとの再戦は話題性を増していったが、降って湧いたのは、凌駕の周りが凌駕の罪をかぶったのではという疑惑。概念ドロボウ:全巻買った異端のダーツ漫画「エンバンメイズ」の著者田中一行の最新作とあって期待大。目に見えないものを盗んでいくドロボウと探偵の対決。これはこの先も面白そう。マージナル・オペレーション:イヌワシが指揮するところを初めて見たと興奮するジブリールの微笑ましさと、ミャンマー軍に襲われた村人をできるだけ助けようとするイヌワシに懐疑の目を向ける少年のシーンが印象に。ヒストリエ:王の前で謀反かと思われたエウメネスだが、実は王の前で宮廷での陰謀を示唆。最後はオリュンピアスが王の前に呼ばれ。はじっこアンサンブル:「聞こえないのに聞こえてる」ということばに、「音韻修復」「耳内倍音」「カクテルパーティー効果」「ノイズキャンセリング」という現象を矢継ぎ早に重ね合せる木村の博識と勢い。/広告からは、木尾士目の新装版「陽炎日記」「四年生」に単行本初収録の「クラチカットの街」、よ、酔いたい!てのと、ガイコツ書店員本田さんの本田さんの読み切り「たったひとつのことしか知らない」と辺獄のシュベスタの竹良実の「不朽のフェーネチカ」が7/6緊急電子化というのがすごく心惹かれる。
凍りの掌
おざわゆき / 小池書院 (2012-06-23)
読了日:2018年6月25日
ユリイカのこうの史代特集で見かけて、そのうち手に取りたいなと思っていた一冊。漫画家の孫が、祖父のシベリア抑留の記憶を聞き取って、漫画家したという形の作品。素朴な絵柄で語られる凄まじいまでの体験。敗戦間際に学徒動員され、どこへとも告げられず、配属されたのは、ソ連満州国境。敗戦後は捕虜として連行され、厳しい労働にさらされ、次々と仲間を失い。帰国だ、という噂と、果たされないことの繰り返しに深まる絶望。やがて、ソ連の思想教育で、階級が上のものや人望のあるものなどを吊るし上げる、密告が流行り、精神的にもきつい状況に。祖父はなんとか生き延びて帰ってきたものの、家族を振り切って、まっすぐ代々木の共産党本部に向かったものもいたのだとか。年月により記憶が薄れ、また、辛い記憶に蓋をしようとする作用から、思い出すことは大変だったろうにという思い。ただ、今では語られることも少ないシベリア抑留のことはしっかり伝わってきた。
麦の滴-おれは一万石(4) (双葉文庫)
千野 隆司 / 双葉社 (2018-04-11)
読了日:2018年6月24日
本家から降ってわいたような、菩提寺改築。分家の世子、正紀と正広が普請に関わるように命じられ、しかもそれにかかる各々250両を2ヶ月で集めろ、と。それは、もともと彼らが世子となった事を快く思ってない、正広の実父と本家の勢力が、彼らに無理難題をふっかけ潰そうという策略であった。主人公正紀は、商人と渡り合い、また街で助けた事のある商人に助力を求め、大麦、銭の相場に、足りない分の金策を賭ける事に。最後は老中の懐刀に陳情する商人たちについていき、理でもって銭価改定を具申し、自ら買った銭の相場を有利に進めるためのロビー活動も。これ先物ですよね。なかなかに先進的な商業の一旦に小藩の世子が目を開く、というシーン。そしてシリーズ初、次巻に続きます。
荒ぶる季節の乙女どもよ。(2) (講談社コミックス)
絵本 奈央 / 講談社 (2017-08-09)
読了日:2018年6月23日
荒ぶる季節の乙女どもよ。(3) (講談社コミックス)
絵本 奈央 / 講談社 (2017-12-08)
読了日:2018年6月23日
文芸部廃部の危機から、ひょんなことでなんとか顧問の先生を捕まえて乗り切り。それぞれ、片思いだったり、思いを寄せられてたり、イメチェンからの環境の激変と原稿用紙50枚の課題、劇団時代の指導者との邂逅、小説家として行き詰まり先生に迫るも逆に提案を受けたりと様々な方向に走り出す一幕、と。
北緯14度 セネガルでの2ヵ月 (講談社文庫)
絲山 秋子 / 講談社 (2013-04-12)
読了日:2018年6月23日
サッカーの日本-セネガル戦を前に、あれ、そういえばセネガル滞在記持ってなかったっけ?と本棚から引っ張り出してきた一冊。絲山さんの率直さが印象に残る。どれだけ危ないと注意されたって、無謀ではなく、自分なりに考え、感じた事を大事にして、突き進んでいくところと。そしてセネガルの面々、みんな率直に感情をぶつけてくる。子供らしい嫉妬、喜び、好意。/ブーレ・ヤッサ、ご飯の上に鶏のローストを味の濃い玉ねぎソースで煮たものを乗っけて食べる、ての食べてみたい。「衛生観念についていえば、セネガル人は我々よりずっと病気に弱いから、食べ物にしても、体を清潔に保つことについても、ものすごく気をつけている」「ここにはいくらでもうまいものがある。フランス料理なんてパーパパパパーだ」「もう、限界かもしれない。人の世話になるのは。人の都合に左右され続けるのは。外国にいるのってそういうことか?生きてるのはくだらない冗談を言っているときだけなのか」「言葉を生業としている私が、言葉じゃないんだ、ということを学んだのはとても大きいと思います。短い単語、平凡な言葉のなんと雄弁なことか(略)逆に、流暢な言葉は多くの者を壊してしまう。日本人と話すたびに、いろいろなことが壊れて行くのを感じるのです。」
中米ブラックロード
嵐 よういち / 彩図社 (2013-05-16)
読了日:2018年6月23日
メキシコからパナマまで中米を縦断。人口10万人あたりの殺人事件発生数が世界でも一二を争うシアダー・フアレスやサンペドロスラのような都市へ乗り込み。けれども気をつけていればそれほど直接的には事件に出くわすことはなく。ただ治安が悪そうな空気はひしひしと感じ。一部では東洋人への差別が存在することが描かれ。グアテマラのスラムでは、犯罪を犯すと追放されるため、それなりの自治が行われていることが描かれ。アンティグアを見下ろす十字架の丘で絶景を目の当たりにし。ダブルブッキングでバスの座席がなく、太鼓の上に座らされる羽目になり。シュウさん、オガミノさん、ムシゾウさんと個性豊かな旅の同行者が、一人旅よりも旅の行程を個性的なものにしてくれてるように感じた。「スラム」(彩図社)は手に取ってみたい。
ジャスミンの残り香 ──「アラブの春」が変えたもの
田原 牧 / 集英社 (2014-11-26)
読了日:2018年6月23日
エジプト、シリア、いわゆる「アラブの春」の影響を確かめに渡航した著者。革命前より状況が悪くなったとしても、革命を後悔していないと言い切るエジプト人たち。単純な白黒の線引きでは語れない状況。そして、最後は、優れた少数の集団が革命を起こして人民を指導するというモデルの機能不全が語られ、絶えざる権力への不服従のみが革命精神を成就するのだ、と述べられる。「大半の信徒たちは敬虔でありながらも、同時にイスラームの教えに抵触する偶像をまつったピラミッドを誇り、イスラーム主義者が忌み嫌うベリーダンスを許容し、マイノリティのコプト教徒(原始キリスト教)との共存に気を配っている」「悩ましいのは、反政府系メディアにも情報操作の影がうかがえたことだった。結局、どのメディアも信用できない。そのことが逆に市民たちに深い閉塞感をもたらした」「GIAはこのタクフィール(背教宣告)の対象を「不信仰な為政者を黙認している者」にまで広げ、さらに「GIAに服従しないすべての者」にまで拡大解釈した」「「美しき初期のウンマ」の再現という作業は預言者やサラフ(教友、父祖)のいない現在、私たちのような平凡な人間の手に委ねられるしかない」「でも、自分の可能性を広げるということはどだい、疲れるものだ。それが自由という者なのかもしれない」
バルタザアル
アナトール フランス /
読了日:2018年6月20日
中井英夫「香りへの旅」つながり。エチオビアの王バルタザアルが多くの貢物を持って、シバの女王バルキスの元へ。熱烈な求愛に思いは通じたと感じたが、お忍びで出た先でバルキスを守ろうとして命の危険にさらされるも、回復すると、バルキスの心は離れ。失意で故国に帰り、バルキスのことをきっぱり忘れようとし、そのことが噂で伝わると、自らの心変わりは棚に上げ、裏切られた気持ちになり、軍とともにバルタザアルの元へ乗り込むバルキス。しかし、己への気持ちが微塵も感じられないことをさとり、引き返す、と。神話の神々のような挿話。「まことの幸福は幸福をすつるにあり。われを愛せ、わが外なる一切の者を愛する勿れ。そはわれのみ愛なればなり」「人間は愛する為に造られたものだ。世の中には解釈の出来ぬ事が沢山ある」「女の心がはりだ」
ヨシダ,裸でアフリカをゆく
ヨシダ ナギ / 扶桑社 (2016-05-26)
読了日:2018年6月20日
ヨシダナギ写真展に触発されて。アフリカが好き、アフリカに憧れる、という気持ちだけで、英語なんて4語くらいしかわからないのに、英語と現地語しかわからないガイドを雇ってエチオピアに乗り込み。もちろん、憧れだけできて楽しいこともあったけど、語学力不足や差別、ゴーングマイウェイすぎる人々に振り回され、苛立ち続けることもあり、それでもものすごい優しくてホスピタリティに満ちた対応を受けることもあり、今となっては笑って語れるところがすごいな、と。ものすごく驚いたり、テンションが上がってるところは、手書き文字みたいなフォントになってるところがまたおかしくて。どんなに警戒心が強くてぶっきらぼうな少数民族も、同じ格好をすれば仲良くなれるという信念と実際にそうなれたこと。著者自身は黒い肌に憧れ、なりたいと子供の頃から思っていたけど、実際にそうである身からすると、そんな人ばかりじゃないし、肌の色だけで人生の選択の幅を狭められ、理不尽に思う人もいるという現実を突きつけられ。究極に困って言い返せなくてどうしようもない時は、号泣すると、自分が悪者になりたくないアフリカ人に対処することができたり(一般的だではない、とのことだけど)。なんだかんだで、だいたいは会いたい少数民族にあえて、写真を撮ることができていてすごいなあ、と。勢いとパワーには感服。他の本も、写真集にも触れてみたいと思った。/以下備忘録的に。/同じ国の人間でも、肌の色の明るさで階級がある、と語る男。今まででベストのクスクスだったけど、半端なく小石や砂が入ってジャリジャリした体験。カセナ族の幾何学的模様でとてもアーティステックな建物。エアコンの吹き出し口から大きなイグアナが飛び出してきて。「人は配られたカードだけで勝負しなきゃならない。ないものねだりをしても無駄だろう?だから、こんな何もない国で暮らしていても、私たちは毎日それなりに楽しむことができるんだ」(ジプチ)、アイスを食べてる時にはこないけど、余してるように歩いているとそれを察してさりげなく持っていく、「これがジプチ人だ」(ジプチ)。ガイドに止められてもラクダの生肉を美味しくいただき。濁った水で洗われたゆで卵に「何か問題が起きたとしても、腹をこわす程度だろう?そんなのトイレ行く回数が増えるだけだからあんま気にすんな」という割り切り。コマ族と仲良くなろうと、志願して全裸になって、葉っぱの衣装を身につける著者。ヒンバ族の"衣装"赤土を全身に塗り、重さを感じ、そして四日間取れなかったこと。
一年ののち (新潮文庫)
フランソワーズ サガン / 新潮社 (1960-01)
読了日:2018年6月17日
佐藤真由美「恋する世界文学」つながり。パリのふた組の夫婦、二人の女性をめぐる恋愛模様。とりとめないといえばとりとめないのだけれど。人の気持ちが変わるのは光速の17倍に、と仏典にあるという木皿泉のエッセイを思い出しつつ。そしてうまくいくかどうかは多分にタイミング、相手のご機嫌がうるわしいかうるわしくないかという側面も。そしておおっぴらに他に好きな人がいても隠そうともしない側面もあったり。最後はまた振り出しに戻ったような。読み終わってみれば、ベルナールの吐く言葉に一番惹きつけられていたのかもしれない。/文化とは、何もできない人間に残された唯一のものなのさ(ベルナール)/どうして、ある人たちからは何かを感じ、ほかの人たちからは何も感じないのだろう?(ベルナール)/そんな問題じゃないんだ。おれは分けあわないんだ(ジャック)/彼は、情熱というものが、人生にとってなくてはならないものであることを知りすぎるほど知っていたのだ。それから、情熱が君臨しているときはそれなしには生きられないということも。そのくせ、そうでない時、我々は結構情熱なしで生きられるのだが(アラン)/人は叫び声をあげて生まれる、それは意味がないわけではない、それからあとは、この叫び声の徐々に弱まった続きでしかないのかもしれない。(ベルナール)/人生には恋以外のこともあるのだ、と彼は気づいた(エドワール)/不幸は人に何も教えず、あきらめた人間というものは醜い(ベルナール)/われわれはまたもや孤独になる、それでも同じことなのだ。そこに、また流れ去った一年の月日があるだけなのだ(ベルナール)/以下備忘録的、人物一覧。

アラン …ベアトリスが好き/ファニー …アランの妻

ベルナール …ジョゼが好き/ニコル …ベルナールの妻

ベアトリス …女優志願/ベアトリス夫

エドワール …アランの甥。ベアトリスが好き。/ジョリオ …ベアトリスが好き。ベアトリスに良い役を与えられる劇場支配人。アランの友人。

ジョゼ …25歳の魅力的な女性/ジャック …医学生。ジョゼが好き。
悟浄歎異 —沙門悟浄の手記—
中島 敦 /
読了日:2018年6月16日
学はなくとも実務に優れる悟空と、学はあるのに実際の役に立たず、文字による教養の哀れを感じる悟浄。三蔵法師については、外面的な困難に遭遇した際に切り抜ける道を外ではなく内に求める、普段から動揺しない平静な心が作り上げられている、いつどこで窮死してもなお幸福である心をと語り。ある種の天才たちに囲まれ、己の非才を嘆きつつも、どこか親しみを覚えてしまう。
早乙女選手、ひたかくす 6 (6) (ビッグコミックス)
水口 尚樹 / 小学館 (2018-06-12)
読了日:2018年6月16日
ようやく早乙女さんとの出会いを思い出したサトル。そして、東京行きでマネージャーとライバルのミルキーと一泊するアクシデント。二人の子どもっぽい意地の張り合いが可笑しくて。最後ははじめてのデート、ボクシングの聖地後楽園ホールでお互いの決意を伝え合い、と。まっすぐで初々しすぎてまぶしくてなストーリー。
真昼のポルボロン(3) (BE LOVE KC)
糸井 のぞ / 講談社 (2018-06-13)
読了日:2018年6月16日
完結。持ちあがった縞さんのイギリス行きの話。察してるつぼが身を引こうとするも、るつぼの母のことをようやく思い出した縞さんは、今度こそ過去の轍は踏むまいとがんばり、最後は…と。大団円。失われた時間は取り返せないけど、きっと縞さんとるつぼがよい関係を築けると予感させつつ。教授と英梨さんのやりとりとその後の言葉を託してたところがすごく印象に。おまけのアフタヌーンティーを描いた小編もキュートで。
信長と弥助 本能寺を生き延びた黒人侍
ロックリー トーマス / 太田出版 (2017-01-25)
読了日:2018年6月15日
信長、最後の一年間に仕えた「弥助」。イエズス会のヴァリニャーノによって信長に献上された黒人戦士。近侍する者となり厚遇されるが、本能寺の変においては、信長のそば、ついで信忠のもとで奮戦するも叶わず、教会へ逃れ、史料はそこから途絶える。可能性としては宣教師たちと九州へ逃れ、龍造寺隆信と有馬晴信の戦いの際、有馬方との砲兵として活躍したのでは、と。インド人は北東アジアの奴隷を「ハブシ」(アビシニアを表す)と読んでおり、それがポルトガル語では「カフル」となり、フロイスの書簡で弥助もそう呼ばれていたこと。いかんせん史料が少なすぎて、繰り返しと推測と背景説明が多かったように思う。それはそれで興味深かったが。また、アニメやテレビゲームなど現代における弥助のイメージにまで言及されてた点は面白かった。以下備忘録的に/光秀が弥助を伐たなかったのは、有名でも武名もなく注目に値するほど身分も高くない男だったからかもしれない。/推定では1630年代までにのべ数百人のアフリカ人が日本の居住していたとみられる/
イスラム教の論理(新潮新書)
飯山陽 / 新潮社 (2018-02-16)
読了日:2018年6月14日
「イスラム国」ですら、正しいイスラム教徒ではない、と非イスラム教徒が難じることはできない。むしろ、コーランに愚直に則った、それこそイスラムの論理に則った統治、行動だったと語られる。イスラム教徒の中にも、西洋の側から見れば、穏健から過激派まで様々ではあるが。西洋の民主主義と折衷した考えを持つ者もいるが、コーランに愚直に従って行けば、ジハードは義務であり、世界をイスラムの考えで染め上げることは正しいことであり。そこに対話はありうるのだろうか。イスラムは「寛容」などといった議論が一面しか指していないことも明らかにされる。またコーランを読んでその論理の一端でも知りたい。/「イスラム教は、神が人間に恩恵として与えた導きです。神の恩恵であるイスラム教が、人間の産物である民主主義に優越するのは、彼らにとっては「当然のこと」です。」「カリフが神の立法したイスラム法にもとづいて統治を行い執行権を行使する、これがイスラム教において正しいとされる政治のありかたです」「インターネットは、こうした規範テキストへのアクセスの物理的困難さや言語の障壁ですら、いとも簡単に取り除きました。」「ジハードの呼びかけが普遍化すればするほど、彼らにとっては好都合なのです。「イスラム国」は、この「ジハード・スイッチ」とでもいうべき者をオンにしたことで当初の目的の半分は果たしたと評してもいいほど」
北の島 グリーンランド
長倉 洋海 / 偕成社 (2011-07-08)
読了日:2018年6月13日
能町みね子「逃北」に触発されて。北極点まで1300km、グリーンランドで有人の最北の村カナークへと向かった著者。電気も通りプレステで遊ぶ子供た地、テレビもありと近代化の波は押し寄せ。温暖化の影響で氷が緩み、犬ぞりでカナダへ渡ることもできなくなり。また国際的な規制で狩猟も制限され、狩猟による生計は成り立たなくなり、子供達も憧れる職業ではなくなり。同行した狩猟は過酷な旅路、しかし自然の厳しさと対峙していることは感じられ。白熊そのままの毛皮のズボンは印象に残る。堅信式で振る舞われたキビヤック、実写は初めて見たが、「もやしもん」で初めて知って以来食べてみたい一品。
GO! ヒロミGO! コミック 全8巻完結セット
読了日:2018年6月12日
某最高学府T大生ヒロミの、ノンストップ暴走コメディ。何回読んでもパワフルで元気でるなあ、と。
だがしかし 1 (1) (少年サンデーコミックス)
コトヤマ / 小学館 (2014-09-18)
読了日:2018年6月10日
駄菓子屋が舞台のコメディ。実はすごいのかも、と思わせる、息子に店継いでほしい、店番任せて自分は遊びに行きたい、父。菓子への愛情もあり知識も豊富だけど継ぎたくはない息子。そしてやたらと絡んで来る、お菓子愛に溢れる菓子会社の令嬢、と。
夜の樹 (新潮文庫)
トルーマン カポーティ / 新潮社 (1994-03-01)
読了日:2018年6月10日
マキヒロチ、失恋喫茶まさこ、繋がりで。引用されてた一節は、夢を売る女、から。夢を買う富豪、夢を売る女、取り返しに行ったらすでに夢を使ってしまった、と…。夜の樹は、夜汽車で帰宅しようとしてた女子大生が、奇妙な中年男女と同席することになり、グイグイと距離を詰めて来るのに困惑しひやりとする。ミリアムは、夫を亡くして一人暮らしの老女が、美しい少女に目をつけられるが…ホラーな成り行きに。
香水
フランソワーズ サガン , ギヨーム アノトー / 新潮社 (1984-03)
読了日:2018年6月10日
アノトー、サガンの共著になってるけど、当初は大幅に参加の予定のサガンが病に倒れ、章末に少しエッセイを寄せるだけの形になった模様。中井英夫「香りへの旅」の参考文献で見かけて手に取る。/プルーストの作品はタバコの巻き紙一枚でこと足りるだろう。それは次の文章に要約されてしまうだろう。「レオニ伯母のマドレーヌは甘かった。」/現在まで、香水にかんするかぎり、セックスへのあらゆるほのめかしは惨憺たる失敗をこうむっているのである。/ノストラダムスは、いちはつ、ちょうじの蕾と、桃色のバラと、麝香と、龍涎香とを、鉢の中で混ぜ合わせる。ペストの予防薬。/パリ攻囲と食料欠乏のあいだ、人々はリュバンのジャスミン花精油を徴発し、このあまい香りをはなつ蜜でジャガイモをあげたのである。食料品の歴史でもっとも高価なフライド・ポテトだ。/現在化学で知られている二百万の物質のうち、五分の一、つまり四十万は固有の匂いをもっている。これら四十万の匂いは、ご存知のように、少量の基本的な匂いに決して還元されることがなかったのだ。/人々は、香水はつけて、身体は洗わなかった十八世紀を、ひどく馬鹿にした。十九世紀末の人々は、香水をつけず、身体も洗わなかった。/そして詩人の芸術とは、つかの間を引き伸ばしてみせることではないだろうか?...ジャック・ゲランの「青い時(ルール・ブルー)」。
木皿食堂2 6粒と半分のお米 (双葉文庫)
木皿 泉 / 双葉社 (2018-01-10)
読了日:2018年6月10日
脚本家木皿泉のエッセイ、対談、書評、シナリオ、などなど第二弾。/最近は全く売れないというペナント屋に売ってた「地球」と言うペナント。/まず、信頼関係があって、コトバはその場で初めて機能するものである。/人の気持ちは、光の速度の十七倍の速さで移り変わってゆくと仏教の本に書いてあるそうである。/高倉健さんを描いた「男の中の男」/お前まだバレてないのかと言われゾッとした男を描く「秘密を開く」/「寺内貫太郎一家」が向田ドラマの最高傑作/この世のほとんどは、どうでもいいことと、どうにもならないことでできている。(Q10)/今ここにある「現実」の中で一生懸命生きることも大事だけど、外から「現実」に揺さぶりをかけ、修正していくと言う二つの視点がないとダメだと思う。/脚本家和田夏十。市川崑監督の妻。/岩井俊二監督のナレーションもなく字幕だけのドキュメンタリー「市川崑物語」/シナリオ「逃げるってことは」にはグッときた。特に、バラバラに暮らしてる家族が、東京でオリンピックを見るために集まり、バスケを見ながら、「コートの中では、みんな、必死にボールを追っていた。ふいに中の人たちが家族に思えた。ボールは子供だ。その子供を取られまいとかばいながら、力の限りジャンプする。子供を自分の頭より高く差し上げる。それは、まるで生きる方へと押し上げているように見えた」にグッときた。
グアテマラの弟
片桐 はいり / 幻冬舎 (2007-06)
読了日:2018年6月8日
大学を出たあとぶらりとグアテマラに向かいそのまま永住してしまった著者の弟。そこを姉が尋ねたときのエッセイ。最も一番連れてきて欲しかった母を連れ出すことには失敗したのだけど。手土産も、チャッカマンでいい、と。「チャッカマンは売っているけど、たいてい火がつかないんだ」。一番印象に残ったシーンは、結婚して初めて妻と連れ子を日本に連れてきたシーン。グアテマラの山奥から初めて出てきた8歳のフェルナンドが、中華料理屋で新しい料理が出てくるたびに、目と口を限界まで開けて驚き、一口食べると世にも幸せに顔をとろかせたのを、著者の父がとろけるように眺めて、「こんなに感動して食べ物を食べる人間を見たことない!」とうなぎ、天ぷら、寿司、すき焼き、特大エビフライとごちそうに連れ出すけど、最後に、一番美味しかったものを聞いたら「さんま!」と著者の母が作ったさんまの梅煮を答えられ、がっかりの父、喜ぶ母の図まで含めて。/日本人相手メインのスペイン語学校を経営しつつ、日本人観光客が一人もいなくても暮らしていけるような布石を着々とうつ弟。/弟と二人で眺めたティカルの四号神殿の眺め/わさび醤油に浸して、間違いなくヒラメのエンガワだ、断じてココナツの実ではない!と言うシーン/ドーナツを砂糖汁に浸したみたいなブニュエロと言うお菓子/グアテマラから飛行機が離れたときに流れた涙。「すみません、悲しいわけじゃないんです。嬉しいわけでもないんです。寂しいわけでもないんです。でも寂しくないわけでもないんです。」
木皿食堂 (双葉文庫)
木皿 泉 / 双葉社 (2016-05-12)
読了日:2018年6月6日
脚本家木皿泉のエッセイ、対談、書評、シナリオ、などなど盛りだくさん。/気の利いた女が実は男にはとても負担なのだということを繰り返し描く向田邦子ドラマ。/雛祭りの歌を作ったサトウハチローが、当時妻に逃げられてて、楽しいだろ?な、楽しいだろ?と必死に子供に訴えかける情景が浮かぶとか/これからのドラマ。あまりにも甘いものでは現実離れし過ぎているし、かといってフィクションまで苦くては、観客は息苦しいばかりだ/何十年経っても朝起きて隣に誰かがいる不思議さ。「あ、おった!」と心のなかで言ってしまう、と/「お金を稼ぐのは尊いことだと思う。が、同時に、踏みつけにされることでもある。自由を得ることであり、不自由になることでもある。」/どんな関係であろうと、「大切な人」それだけでいいじゃないか、と思うのです。/いてよし!と言ってあげられるドラマを。/ウサギとワニが世界を作った寓話。ウサギが世界を半分作って、ワニが起きると、世界が半分できた!ワニがまた寝てるうちに、ウサギがもう半分世界を作った。そこで夢を見てる人がいるから世界ができるのでは、と。/それで出すときって、自分がなんかひき肉の機械に入るような感じになっちゃうんですよね(羽海野チカ)/「Q10」第6話の「さらば恋人」、聞いてみたい。/西遊記といえば、中島敦「悟浄歎異」、写真集 浅田政志「浅田家」赤々舎あたりは手にとってみたい。「Q10」のシナリオブックも。/木皿泉「君ほほえめば」、「世の中を忘れたような蚊帳の中」、木皿泉「くらげが眠るまで」 イッセー尾形、永作博美あたりは実写版見てみたいなとおもった。
水中翼船炎上中
穂村 弘 / 講談社 (2018-05-23)
読了日:2018年6月3日
17年ぶりの歌集。気になったのは四首。静かなのが二種。うららかなのと、あざやかなのを一つずつ。血液型が替わったのは、大量の輸血のせいだろうか。新しいことばで言った「たましい」はなんだろうか、と思いを馳せつつ。/もうそろそろ目覚ましが鳴りそうな空気のなかで飲んでいる水/カーテンもゴミ箱もない引っ越しの夜に輝くミルクの膜は/血液型が替わったひとと散歩する春は光の渦を跨いで/スカートをまくって波の中に立ち「ふるいことばでいえばたましい」
夜とコンクリート
町田 洋 / 祥伝社 (2014-02-03)
読了日:2018年6月3日
泥酔して終電逃して泊めてほしい同僚と建物が喋るのが聞こえるというその知り合い。静かな。不眠を払いのけてくれるようなイメージ、の表題作。謎の飛行機の残骸と、もう一つの世界から来たという老人の話。自分がいると思っている世界がくるりと一回転するような後味。そして、シマさんのイメージと語る寡黙な娘と仙人と呼ばれる男のささやかな交流。「別に信じてとはいわない」「それが私にとって本当であればいいんだ」「ありがとう わたしはおそれずに大人になる」。静かな、とても静かな後味。
消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)
豊田 正義 / 新潮社 (2009-01-28)
読了日:2018年6月3日
スゴ本つながり。戦慄する読後感。無期になった被告がだんだん人間性を取り戻していくように感じられるのが救いと言えば救いか。暴力による支配、何も考えられず、自らの意志をなくし、なすすべもなく流されていく恐ろしさ。対岸の火事と済ませられるだろうか、と考えさせられる。
青春、残り5分です。(3)
LiLy / カエルム (2018-05-28)
読了日:2018年6月2日
追い詰められたヨシの飛び降り。一命は取り留めたが一生歩けない体に。責任を感じつつ、一生寄り添うことを決意しつつも、どこかホッとしていると感じるダイ。編集者の道を走り始める葵。タケルのプロポーズを振り払って、惚れ込んだセツのプロデュースに賭け、昔の男山崎にもよろめいてしまう薫。子供ができたことで、今までしたことのない向き合いを弥生に見せる山崎。それぞれの道を示しつつ、8年後。後日談はそれぞれ、甘いだけじゃない、苦いところもあるけど、「あたしたちは気づいてなかったここからが本番だってこと」て終わり方が素敵。/巻末の対談、「一生青春!」ておじさんが好きじゃなかったが、ハングリーでいたい、現役でいたいて意味なら賛成、だけど人生のある時期をすぎたら、きちんと大人になることが知性と品格だと思っているんです。大切なものは大人じゃないと守れないから。大人になるのはすごくかっこいいことだっていうのが伝えたかった。というのがグッとくる。/人によって捉え方違うと思うけど 見た目とか育ちとか才能とか ぜんぶ関係ないところで 人が幸せを感じる瞬間て実は 同じなんじゃないかって そういうの追いたい気持ちでずっと編集者やってるよ(安村)/どんなに苦しい夜も必ず明けるから未来 そこに光をのせるの 自分で(薫)/
凶犬の眼 「孤狼の血」シリーズ (角川書店単行本)
柚月裕子 / KADOKAWA / 角川書店 (2018-03-30)
読了日:2018年6月2日
一作目「孤狼の血」が、昭和63年で終わり、平成16年までの年表が示され、平成16年時の日岡をエピローグで書いて終わってたので、続編は年表でさらりと書かれたところを埋めていく試み、ということなのか。エピローグのその後を書く手もあったと思うが。小料理屋志乃の晶子、一ノ瀬、瀧井、唐津、斎宮など、前作のメンバーも登場。大上が絡んだ一連の事件を知りすぎた日岡は田舎の駐在所に飛ばされ。そこには、以前、建築会社の社長と紹介された、実態は一ノ瀬の兄貴分の国岡が工事の現場監督として身を寄せてきた、と。やり残したことがあるからまだ娑婆にいる必要がある、やり終わったら必ずあんたに手錠をかけてもらうから、と暗に見逃すことを求める男の言葉を、信じて待つ日岡。そのやりとりでお互いの男に惚れ込むようになり。犬になれいうならあんたも俺の犬になれ、とヤクザ相手に一歩も引かない日岡。大上だったらどうしたらだろうか、と思いながら決断していく日岡。誰にも漏らさないとはいえ、ヤクザと五分の盃を交わす日岡。自分の貯金を崩して大金で不良刑事から情報を買う日岡。型破りで、彼なりに大上の意志をついだ日岡は、広島県警の暴力団係に戻ってくるが、手腕は評価され一目置かれるが、同僚からもその手法は批判にさらされている。これこのまま、第一作のエピローグまで突っ込んでいくのだろうか、それとも暴対法施行のなかで、変わっていくのだろうか。続編にも期待したい。
午前4時、東京で会いますか?―パリ・東京往復書簡 (ポプラ文庫)
リシャール コラス , シャンサ / ポプラ社 (2009-12-05)
読了日:2018年6月2日
中国出身フランス在住の作家と、フランス出身モロッコ育ち日本在住の実業家の往復書簡。読んでみて、基本、両者ともエリートだなあ、と。中国側は一族の苦難の歴史はありつつも、華麗な経歴。ただその中でもお互い、違った文化からみた今自分がいるところの文化みたいな側面にはふれてみたいと思い、手に取った。シャンサと春美、バルテュスの出会い、コラスと骨董屋の主人の出会いは強く印象に残る。/ページとページの間を読み取れる者にとって、本は作者の魂と心を映し出す見事な鏡(コラス)/我は、我思うゆえにあるのではありません。人間の考えがなければ世界は存在しない、などというのは、単純すぎます。(シャンサ)/関口夏子作品にふれてみたい思いと、ソフィア・コッポラ監督「ロスト・イン・トランスレーション」、二つの文化が出会いながら、決して理解しあえないことを描いた映画、観てみたい思い。


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2018年06月03日

2018年05月に読んだ本

期間 : 2018年05月
読了数 : 63 冊
マキ ヒロチ /
読了日:2018年5月30日
失恋した人にだけ見えると云う失恋喫茶まさこ。どんな失恋をしたの?と話をせがまれ、その人にあった一曲をかけてくれ、最後にビシーっと背中を押してくれる言葉をくれるまさこさん。最高です!ラインナップは、JITTERIN'JINN「プレゼント」、スピッツ「運命の人」、ユニコーン「すばらしい日々」。引用されたカポーティ「夜の樹」は読んでみたいと思った。「あらゆるものごとのなかで一番悲しいことは個人のことなどおかまいなしに世界が動いていることだ。もし誰かが恋人と別れたら世界は彼のために動くのはやめるべきだ」。/「恋が終わる度目をつぶって想像してみるの/愛した人が笑顔でおいしいご飯を食べ夜はぐっすり眠る充足した日々を/そして理想に燃え信念のために生きている人生を/そうすればきっと思えるでしょ/2人で過ごした日々はとっても素晴らしかった!って」
ののはな通信
三浦 しをん / KADOKAWA (2018-05-26)
読了日:2018年5月30日
昭和が終わるころをスタート地点にした手紙のやり取り、女子高生のしゃべり口調の応酬に、なかなかとっつきづらかったのだけど、気持ちのぶつけあい、激しさはつたわってきて。一度は通じたと思えた気持ちも、結局は離れてしまうことに。大学時代に再会するが、この時も結局はすれ違い。二十年の時を経て、またメールのやりとりが始まり…言えなかった思いも明らかになるが。たとえ関係がずっと続かなかったとしても、二人の間にあった激しい思いは、その後の人生を照らす道標になったと感じられた。/「ひたすら清廉に神と対話しようと努めても努めても、どうしても恋や欲望と手を切れず惑ってしまうというなら、明らかなことはひとつ。神の教えの方がまちがっているのよ」「だけど本当のところは無理だよね。だって私たちは友だちではなかったんだもん。もっと激しいなにかだったんだもん。」「あなたをなによりもだれよりも大切に思い、あなたの幸せを祈るものがいること。それだけは変わりません。永遠に。」「ひとが手にすることのできる最もうつくしいものは、宝石でもお花でもなく、記憶なのです。」「あなたに出会ったおかげで、私は人間として生きる喜びと苦しみのすべてを知りました。」
桜の園 (Jets comics)
吉田 秋生 / 白泉社 (1986-09)
読了日:2018年5月30日
女子高で青春を送る生徒たち、それぞれの葛藤と喜びと。しっかりした娘だなんて、望んで呼ばれたわけじゃないのに。男の子みたいって言われ続けてもちっとも嬉しくなくて。やりたいことやってる派手な人と思われてたり。それぞれ飲み込んだり、吹っ切れて違う方向へ行ったり、柔らかくなったり。そういうのいいなあ、と思いつつ。「みんながあたしを大事にしてくれないって思うのやめたの そんならあたしが自分を大事にすればいいんだって」。
孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子 / KADOKAWA / 角川書店 (2017-08-25)
読了日:2018年5月29日
小説→映画→小説、といった形で再読。映画を味わったあとで、もう一度小説の世界を味わい治したくて。やはり、こちらの方が、大上とヤクザたち、大上と大上班、大上と晶子、大上と日岡と、それぞれ濃厚な絆が感じられて、好み。二十年近く経ったあとの日岡が、すっかり大上の薫陶を受けた刑事になって、その意志を注いでいるシーンにグッとくる。
七つ屋志のぶの宝石匣(7) (KC KISS)
二ノ宮 知子 / 講談社 (2018-05-11)
読了日:2018年5月29日
町田くんの世界 7 (マーガレットコミックス)
安藤 ゆき / 集英社 (2018-05-25)
読了日:2018年5月29日
ちょっと猪原さんとの距離をはかりかねてた町田くん。けど栄さんや氷室くんのあたたかい後押しもあり、自分の気持ちにようやく気づいて、猪原さんにストレートに思いを伝え、ようやく付き合い始めたふたり。初めて町田くんのうちに遊びにきた時、猪原さんが、家族ってよくわからなくって、と言ったのに、難しく考えなくていいんだよ安心してここにいればいいだけだ、って町田くんが言ったのにグッときた。そして最後まで、町田くんは最高だった。それはプロポーズですよ、だなんて。
逃北―つかれたときは北へ逃げます
能町 みね子 / 文藝春秋 (2013-02-01)
読了日:2018年5月28日
稚内、グリーンランド、小樽、夕張、青森、三陸、宮城、新潟。疲れた時は北へ逃げる、そこでなんちゃって生活者として、滞在を楽しむのが好きという能町さん。稚内1ヶ月、やってみて欲しかった。グリーンランド編は再読したけどやはりいいなあ。夕張は、栗下食堂、おーやま、夕張鹿鳴館で町おこしだ!と。アイスランドが青森なら、グリーンランドは夕張、って、すごいたとえきたなあと。レストランと飲み屋以外、博物館、美術館、コミュニティセンター、郵便局、お土産屋、スーパー、カフェ、ケーキ屋、服屋、本屋、コンビニ、CD屋、墓地、海辺と巡ってヌークの生活を楽しんだってのもいいなあ。ノシャップ寒流水族館のヒレで自分をたたいてこっちに餌をとアピールするアザラシ、キュートすぎる。バカにしてるわけではなく、いい感じに寂れてる具合にグッとくるのだとか。
最低の軍師 (祥伝社文庫)
簑輪諒 / 祥伝社 (2017-09-13)
読了日:2018年5月27日
舞台は戦国時代、原氏の治める下総臼井城。上杉輝虎来寇の知らせに、北条方からの援軍は、松田康郷率いるわずか250の兵。城方の当惑と捨て石にされることへの疑義。松田のとった策は、易者である白井浄山を北条家随一の軍師に仕立てて、北条方が力を入れてると信じ込ませることだった。義のための戦いなら何をしてもいいのかという疑義。たとえ最低の軍師と罵られようとも、義のためになくなっていい命などない、という浄三のつぶやきが印象に。城方といえど、領民といえど、もちろん一筋縄ではいかず。浄三と河田長親の幼少期の因縁。その後の流浪の際に知り合った足利義輝の薫陶と戦のない世を終わらせるという理想と挫折。その際に抱いた上杉輝虎への憤り。戦術も何もない籠城軍へ授けた幾つかの策。そして最後に打った大きな策は、ギリギリのところで間に合ったが、それは...、と。河田長親のいうところが本当であったとしても、やられる方がおとなしくやられる義理はないし、それで打ち砕かれるだけの策であればそれまでのこと、とも思えるが、浄三がどう思い、どう自らに言い聞かせたかは行間から読み取るしかない。痛快なようでいて苦さも残し。
めしにしましょう(5) (イブニングKC)
小林 銅蟲 / 講談社 (2018-05-23)
読了日:2018年5月26日
レバーと同量の溶かしバターをミキサーにぶち込む。サイホンの原理でめちゃくちゃ濃いコンソメを取る。金華ハム、干しアミガサタケ、すっぽん、干し貝柱、カツオけずり節を加え...。茹でシャコのオーロラソース。テンパリングの原理。めちゃくちゃ美味しいけどめちゃくちゃ臭いチーズ、リヴァロ。と、この巻も青梅川さんの爆裂レシピ、暴走調理が目を楽しませてくれます。青梅川さんの過去を知る売れっ子漫画家さんも登場する一幕もあり。
アフタヌーン 2018年 07 月号 [雑誌]
講談社 (2018-05-25)
読了日:2018年5月26日
今号は「不朽のフェーネチカ」「フラジャイル」「あたりのキッチン!」が圧巻だった。/南米で、世界初、史上初の生前列聖を噂されるマザー・ドロテアとその背後を探ろうとするジャーナリスト、アレハンドロをめぐる物語。80ページたらずで語られる背景、重さ、究極の選択。「フラジャイル」は、恩師を生かすため、決死の集中力でようやく正しい診断にたどり着いたのに、自分の診断を信じてくれなかった担当医のために、助かる命を救えなかった悔い。泣きながら「今後私の病理診断は絶対です」と叫ぶ宮崎先生。そっとしておいてるようで、岸先生の、君の病理担当増やしといたから、が評価を伝えていて。「あたりのキッチン!」は、花愛づる鈴代さんに撃ち抜かれる清美さんと兼原くん、マスターの幼馴染の花屋さんのぎっくり腰から兼原くんが手をあげた花屋の短期バイト。鈴代さんと親しくなるために花に詳しくなりたい思いに、周りもニヤニヤしつつそっと支えてあげるのが微笑ましく。/あとは、決死の脱出も報われなかったけど、久連木の手の込んだ指示を理解できて、ようやく外部にSOSを送れた「波よ聞いてくれ」のミナレさんと、柳沼くんが自分の中の気持ちに向き合うことにしたのに対して、きっちりついていく「大上さんだだ漏れです」の大上さんかな。/「マージナル・オペレーション」の戦場のヒリヒリさを緩和するかのような、ジブリールのアラタへの恋心もじれったくなってくる。もっとどストレートでいかないと気づかない、いや気づかないようにされてると思いつつ。
レディ&オールドマン 5 (ヤングジャンプコミックス)
オノ・ナツメ / 集英社 (2018-05-18)
読了日:2018年5月26日
ケネデイ暗殺の日、ささやかなナットとオールドマンの誕生日パーティ、ナットを一緒に外に連れだそうとするレディとオールドマン。決意を持って外へ。ビートルズの映画とサンデーを食べるのを心から楽しんだナット。レディの母に会いにいく二人を見送ったナットだが…。レディは母に会えたが一筋縄ではいかなそうな雲行き。オールドマンも弟が行方をくらまし、と。最後はスピンオフで、ジョニーとクレイグの話も。
南米ブラックロード
嵐 よういち / 彩図社 (2008-10-27)
読了日:2018年5月26日
治安が悪くても危ない目にあってもそれを補ってあまりある魅力があることを伝えたい、とあるけど、これでもかと続く危ない目のオンパレードに手に汗握ってしまった。確かに魅力は伝わったけど、相当な準備と覚悟しないと乗り込めないなあ、と。荷物を全く持たずに、前、後ろ、横と15人の州兵に囲まれながら移動する日本人グループに遭遇、ってそこまでいるのかと。ブラジルに死刑制度はないが、様々な形で私刑の仕組みがあるのが制度の矛盾と言うか歪み。毎度のことながら、一節一節ごとのつながりが希薄なところもあるのはご愛嬌。バイーアの女王イヴェッチ・サンガロは聞いてみたいと思った。ペルーの強い酒ビスコに、レモン絞って、砂糖と卵白入れたビスコサワーも飲んでみたいと思った。そして編集者との関係。何か弱みでも握られているのだろうか...様式美なのだろうか。責任取れないしとる気も全くないと明言しながら、著者を、より危険なところに送り、危険な目に合わせて、命削ってこい、こんなんじゃまだまだ納得しませんよ、という様に、嫌悪感を感じた。
守りの名将・上杉景勝の戦歴 (新書y)
三池 純正 / 洋泉社 (2009-05-02)
読了日:2018年5月26日
景勝以外の記述はだいたい従来の通説に則っている感。関ヶ原前後の毛利輝元の行動が光成準治研究に拠ってるところが目にとまるぐらい(決戦に目を注ぐのではなく、大阪城に入って以降、西国支配に意欲を燃やし始めた)。景虎との跡目争いを勝ち抜き(景勝の扱いは臣下の第一人者だったが、景虎は常に謙信のそばに置かれ優遇されていたのでは、という指摘)、信長による包囲網で滅亡寸前に追い込まれながらも本能寺の変で息を吹き返し。紆余曲折を経て、天正14年の上洛で秀吉に従属する一大名に。1598年、越後91万石から、会津92、佐渡14、出羽庄内14の計120万石となった(とあるが、以前は、越後、佐渡、信州川中島だったような。)。会津への移封は国人領主を束ねる立場から近世大名に脱皮する契機でもあった。神指城は、敵を迎え撃つ意識が弱い、領国経営の中心となる意識が感じられ、それを謀反と称されるのは片腹痛かっただろう、と。上杉家への侮辱は、謙信への侮辱、この屈辱を晴らすため、傷つけられた誇りを取り戻すため、家康相手に上杉家の存続をかけても戦わねばならなかった。この「誇り」がこの本を貫くキーワード。革籠原で大規模な一戦を想定したと言う「北の関ヶ原論」には疑義。景勝が兼続に「武名の衰運今においては驚くべきに非ず」と語り、幸福。戦後は「律儀」を評価され、将軍家の深い信頼を得るまでに。「偉大な謙信の正統な後継者として、景勝はその誇りのままに最後の最後まで戦人として戦い抜いてきた。そこには己の生き方を貫いたという満足はあっても、少しの後悔もなかったはずである」
飲食男女(おんじきなんにょ)―おいしい女たち (文春文庫)
久世 光彦 / 文藝春秋 (2006-04)
読了日:2018年5月23日
違う唇が喋るのを聞いたエピソードからして妖しく強烈な導入。亡き親友の彼女に迫られた、背伸びして入った高級な湯豆腐屋。子供の頃の一時期一緒に住んでた親戚のお姉さんとジャム。同じアパートの人妻と白桃。次々と豪華なんだけど取り合わせの奇妙なディナーを持ってきてくれる親友の妻。メロンパン、クリームパン、刺身、せんべい、牛乳...。子供の頃仲間たちみんなで見た写真の女と電車でばったりあった驚き。札幌に疎開していた時にあった活発な少女。とろろ芋の好きな女。骨の鳴る女。近所の洋館に出入りする外国人の男女の思い出。煮凝りの思い出と共に語られる日仏ハーフの絵描きとの日々。/なんとも言えないあじわい深さ。もう何度か読んだらしっくりくるのか/「<ファウスト・ハイム>では、いつだってヴェルレーヌみたいな雨が降っていた」と言う一文の印象と、井上順のお茶の水えれじい聞いてみたいなという思い。
素顔のままで
北川 悦吏子 , 島崎 ふみ / フジテレビ出版 (1992-06)
読了日:2018年5月22日
ふと思い立って米米CLUBのベスト借りてきたら、その中に「君がいるだけで」入っていて、そういえば、「素顔のままで」の主題歌だったよな、と思い、ドラマ見たこともないのに、手に取った一冊。安田成美、中森明菜W主演の月9。お嬢様でおっとりしていて自分の気持ちを殺してしかれたレールを進んでいた司書の優美子、思ったことははっきりといいミュージカル女優になる夢に向かってまっすぐ進んでいくカンナ。正反対の二人が、ひょんなことから同居することになり、優美子はカンナに影響されて、しっかりと自分の考えを持つようになり、自分の気持ちに正直に生きていくように。それが、カンナの好きな一也との恋につながってしまったのは皮肉だけれども。カンナは孤独な生い立ちから突っぱりがちだったのに、初めての友情に触れ、信じられる人ができて、心がほぐれていき。5人のあいだで恋が生まれて、破れて、夢を見つけて、諦めて、諦めきれずに再び夢見て。最後は、どうして、と思わずにはいられなかったけども。そのうちドラマの方も見てみたいと思った。/「いくつになったからできて、いくつになったからできないってことないよ」(カンナ)/「感じのいいさよならなんか、私はいらないわ。私は心が躍るような瞬間が欲しい」(優美子)/「でも男との女のことは、そうそう決めたようにはいかないさ。さあ、始めましょうで、始まるわけでもない。気がついたら、もう始まってるんだよな」(卓郎)/「人が人を愛するというのは、とても大切な、かけがえのないことじゃないか。そんな心の大事な心の真ん中のところで、親友に嘘をついてしまって、本当の友情と言えるのか」(優美子の父)/「こんなことで駄目になるアタシたちじゃないだろ」(カンナ)/「カンナいつか言ったじゃない。明日や明後日は自分の味方だって」(優美子)/
孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子 / KADOKAWA / 角川書店 (2017-08-25)
読了日:2018年5月21日
映画が気になって、先に原作を読んでみたくなり。読んでから、映画の公式サイトをみると、ああ、この人は出てこないんだ、この人とこの人をまとめたな、とかいろいろ想像したり。知らない人からみれば、悪徳警官、違法捜査てんこ盛りで、ヤクザから上前はねて、めちゃくちゃなことをしてると言われる大上。新たに配属された日岡は、振りまわされ、違和感を、反発を覚えていたが、次第に、どういう思いで大上が行動しているかを知り...。そうなってしまったか、という思いと、ミイラ取りがミイラという思いと、いや、確かに意志は継がれ、と。続編もあるらしいけど、どう続いていくのか、年表で駆け足で語られた日岡の日々が描かれるのか、と。同志です、とつぶやいた重さが、ひどく印象に残る。
カラスと書き物机はなぜ似てる? (ジュールコミックス)
小池田 マヤ / 双葉社 (2015-10-17)
読了日:2018年5月19日
女と猫シリーズ第四弾。美味しいもの大好きの専業主婦新上さんが主人公の三編と、前巻の主人公九さんと清水くんが主人公の二編。この構成。個人的には、九-清水コンビの話、作者も気に入ってると見たのですが、どうでしょうか。と自分に寄せて考える。新上さんのターンは、夫も母も子育てに協力的で、自分一人の時間として外に飲みに行くのもオーケー、保育園で虐待だ不倫だと絡んでくるママに、落ち込んだこともあったけど、ちゃんとかばってくれる人あり、理解してくれる人ありで、立ち直り、最後はきちんと言いたいことを言えて、と。並行して進む、銀さんとヒラリーの件は、さりげないアプローチに、ヒラリーが、その気はないから、とど直球で打ち返し続けるものの、自分のいたらなさを見抜かれやんわり大人の指摘をされたシーンでは素直に悪かったと思い、あえてそれ以上は突っ込まない銀さんの優しさも。九-清水コンビの続編は、小鳥遊さんが九さんタバコ減った、清水さんは九さんに合わせて酒量をセーブしてると見抜いたり、九さんのなんでも周りに喋ってしまうデリカシーの無さに、清水くんが「俺が我慢するからいいよ」と受け、それがさらに九さんを面白くない気持ちにさせてとループになるも最後は大団円。「良かった大きな病気じゃなくて」「俺達はもう若くないからお互い気をつけような」にグッときてしまう。
テラモリ 9 (裏少年サンデーコミックス)
iko / 小学館 (2018-05-11)
読了日:2018年5月19日
テラモリへ入社したいと語る高宮に、平尾副店長の、もっと慎重に検討した方がいいというアドバイス。喜んでくれると思ったのに、意外な反応に、仕事に影響出るくらい悩む高宮。けど、誰だって完璧になんてできない、仕事に影響出ることだってある、とテツコのアドバイスに背中を押され。職場の実態を知ってなお、入社したいと言ってくれるなんて私たちへの最大の賛辞だわ、と花が語るのを聞き、少し考えをかえる平尾。そして、いきなりの職場へ高宮父の登場。不審な動きに怪訝な気持ちを抱くのをグッとこらえて丁寧に接客し、父親からも太鼓判を押され。高宮へ、入社したいと言ってくれたのは嬉しかった、と伝え。二人の気持ちも通じあいこれから、というところで最終コマのどんでん。次の巻ではどうなるのか。
たぶんサワークリーム
井口 可奈 / 密林社 (2018-03-25)
読了日:2018年5月19日
もくじが、小さなイラスト+ページで、そのキュートさに撃ち抜かれる。小さなイラスト+俳句+短い小説+短歌+短いコメントが見開き2ページに詰め込まれ、それが15パターン。一番好きな組み合わせは、七五三みずうみに放てば民話、と始まり、ループタイ 力が欲しいかと問われほどほどがいいと答える 欲しい、で終わる一編。誰も見てないけどみずうみに立てる主人公のエピソード。そして、おばあちゃんに車でひかれて、何でひいたんだと問われ、おじいちゃんが、愛だよ、と照れ笑いするシーン。とくべつな動物が吐き出すという錦糸卵どういう理屈だ、が唐突で印象に残る。
仕事は狼ではなく森へは逃げない(下) (ジュールコミックス)
小池田 マヤ / 双葉社 (2018-05-17)
読了日:2018年5月19日
女と猫シリーズ第6弾は完結巻。まさか銀さんと小鳥遊さん、そう来たか、という展開から、小鳥遊さんのうふふふに刺激されたかのようで、ヒラリーは、銀さんのお料理には働く女子への癒しがある、と思い起こし、九さんの、どんなに疲れていてもこの店でヒラリーをいるとお酒が美味しいまた頑張ろうと思えるという思いがあったり。最後には、ニックネームじゃなく、本名で、きっぱりと思いを告げる銀さん、猫をみたら詩を詠むことも覚えてるで、と添えて。思いが通じて。猫を見なくても詩を詠めるようになった、どれだけ凹んでいてもたちなおれるぐらいの元気をもらったヒラリー。最後は、銀さんのお店で、粘着してくる元彼の上司に、きっちりとNoを伝えることができ、「私のための」「私の」料理を美味しく味わうヒラリーのシーンで大団円かな、と。
仕事は狼ではなく森へは逃げない(上) (ジュールコミックス)
小池田 マヤ / 双葉社 (2018-04-17)
読了日:2018年5月19日
女と猫シリーズ第五弾は銀さんが主人公。ヒラリーへの思いを募らせる銀さんの独り言シーンに、なぜか居合わせてしまう清水さん。泥酔した九さんの代わりに携帯を探しに来て、「当然だろ惚れてる女なんだから なんでもしてあげたいと思うよ」とか、「ヒラリーさんは狼じゃないから森へ逃げないしね」とか、「何か変化があったのなら何もないより前進だな」とか、「年上のお姉さんはへこんだ年下の男が大好きなんだぜ」とか、要所要所でさらりと銀さんに、アドバイスとか、似たような状況にあった自分と重ね合わせた気持ちとかを伝えてくれて。けどけど、二度もヒラリーと朝を迎えたのに、ドキッパリ正面から、気持ちは嬉しいけど付き合えない、あなたが好きじゃない、とヒラリーから直球を投げられ、振り回された形の銀さん。研究と称して、ベトナムの花鍋を食べたかえりに、ヒラリーの自棄とも思える申し出に、「物理やなくてマインド!ええも悪いも気持ちごまかし生きとったら何やったってなんか減るんや!」「オレのメシ食うて出来た身体もっと大事にして」と潔く返す銀さん。二人の関係、袋小路のまま次巻へ。
鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす (ジュールコミックス)
小池田 マヤ / 双葉社 (2014-05-17)
読了日:2018年5月19日
女と猫シリーズ第三弾。詩歌の雑誌の編集長を勤める九さん。今期の新入社員は文芸とか全然詳しくないキュートな20代と、以前の部下で出戻りの清水くん。/清水くん「知識の差とか考えや常識が人それぞれ違うのはあたりまえ!みんな別の人生を生きていてたまたま今同席してるだけなんだから」/「俺の気持ちは室町時代の閑吟集の蛍です」(我が恋は水に燃えたつ蛍、蛍 物言はで笑止の蛍)と九さんに遠回しなようなはっきりとしたような告白/小鳥遊さん「マジョラムの香りを知ってるあの歳の男子なんて貴重よ」/清水くん「俺だってあなたの気持ちに火を灯したかったんだ」/タベルさん「年齢を年の功にするにはまずは素直にならなきゃね」/九さん「もういいとか言いながらずっと押せ押せで口説いてるくせに 私にどうして欲しいの?欲しくないの!?どっちなの!?」/そしてはっきりした告白は、都都逸の折句で風流な清水くん/そしてタベルさんから所望の都都逸は、ベタベタの大甘なのを提出。めでたく二人がうまくいったことを隠しても隠しきれない様に。/清水くん「俺 わからなくても聞くよ」「わかりあえなくても一緒にメシ食って楽しいなら充分なんじゃないの?」「わからない同士でもうまく一緒にいる方法を考えられるくらいにはお互い年をとっただろ?」/本当この清水くんが男前で男前で惚れ込んで、このシリーズで一番好きなキャラクターに。彼を主人公に一冊書いてくれればいいのに、と思うぐらいに。/煮立てたビールで豚しゃぶとか豆腐を煮る。
老いた鷲でも若い鳥より優れている (ジュールコミックス)
小池田 マヤ / 双葉社 (2013-04-17)
読了日:2018年5月19日
女と猫シリーズ二作目は小鳥遊さんが主人公。バイト先にやってきたかっこいい店長に迫られるも、いなしかわしつつ絶妙な距離感を測り、銀さんのお店に連れてきたり。息子を愛するがゆえに、厳しいこともいい、自分が認めない彼女とは別れさせたり、当然反発も受け。凛として飄々としているようでも悩みどころは勿論あり。「母さんはあんたの奴隷じゃないし炊飯器でも冷蔵庫でもぬか床でもないのよ 洗濯機でも掃除機でも留守番係でもないし 思うままに怒鳴っていい壁じゃない 嘘つかれて待たされて平気じゃない 作った料理を食べてもらえなくて悲しくないわけじゃない」「人は私を悪く言わないかわりに距離を置く いつものことで辛くはないけど寂しかった でも今更どうにもで来ないと諦めているのも私なのよ」「50代の私は「妻でもあり母親でもある私」 「心地いいそ

れだけで充分幸せだわ」「老いた鷲でも爪は衰えてないって早く教えてさしあげたいわ」そして、銀さんの「体が欲しいもん教えてくれてる時は素直に従ったらええですよ」にグッとくる。ブリコのマリネ、しょっつる仕立て、揚げ出し豆腐のからし菜漬け、、地鶏の煮凍りとじゅんさいのポテトサラダ、食べてみたい。
女と猫は呼ばない時にやってくる (ジュールコミックス)
小池田 マヤ / 双葉社 (2012-05-17)
読了日:2018年5月19日
二股の末彼氏は後輩に取られ、転勤で関西から東京へやってきたヒラリーさん。居を高円寺に定めたのは、憧れの詩人に会えるかもと言う目論見。猫を見たら詩を詠むことにするとマイルールをつくり。ふとした縁で近所のサラダとワインの美味しいお店へ。そこは研究熱心なシェフ銀さんと、佇まいの美しい凛とした美魔女でスーパーのパートさんの小鳥遊さん、美味しいもの大好き専業主婦新上さん、詩歌雑誌編集長の九さんと楽しい常連の集うお店だった、と。銀さんのほのかな恋心なり、妻子ありつつよりだけ戻そうと追っかけてきた元カレだったりごちゃごちゃあったりしつつ、そんなん酒と食事の肴程度のもん、初めて食べたもの、美味しいと感じる時が一番、と最高の笑顔で締めくくるヒラリーさん。憧れの詩人の正体も意外なところから現れ、と。
探検家の憂鬱 (文春文庫)
角幡 唯介 / 文藝春秋 (2015-05-08)
読了日:2018年5月19日
「探検を含めた冒険行為は人間が生きることの意味を表現するための有効な手段になる」と考える著者が、冒頭、便利な飛行機や自動車や通信機器の揃う現代で、冒険することの意味、どういったことが冒険となりうるかについて熱く語る冒頭は、少々理屈っぽすぎて、挫折しそうだった。なんでそんなことするの?と言う冒険しない人からの無理解に、きっと自分なりに考え続けたことだったのだろう、と。ただ、「それしかない」手段で行われた大昔の冒険と、無補給やGPSなし、単独、徒歩など、自ら望んで制約をつけざるを得ない冒険との間には、質的にも意味合いとしても大きな違いを感じざるを得ない。/「「物書き」が紀行文においてさりげなさを装うことは欺瞞にすぎない」(沢木耕太郎「夕陽が眼にしみる」)は、エッセイや自伝にも当てはまらないかとふと思い。/北極の冒険が文章になりにくいのは、「雪の上を歩いた。寒かった。飯を食った。寝た。」でかなり説明されるから、と言いつつ、アグルーカの行方は、手に汗握る読み物として成立していたのは、手腕が発揮されていたからか。/「私は探検や冒険がしたい。未知の空間の中ではらはらとした時間に身を置き、それをうまく文章で表現したい。だけどうまくそれができなくて困っている」/私たちの身体が自然から大きく切り離されてしまったことへの警戒感/
中井 英夫 / 平凡社 (1975)
読了日:2018年5月19日
香道、植物の香り、香水、香水の詩集、植物図鑑、オリジナルの小説、と様々な要素で魅せる一冊。香り高い題材、文章にたゆたい、遊ぶ一冊。/「クラブサンの上に置かれる白い指に似て、香りは眼に見えず人を虜囚にする」/vol de nuit 夜間飛行、には、夜を盗む、人でなしの恋、という意味もあるのだとか/橋立は老松という銘なのだから、海に映るその影をしみじみと思い浮かべて楽しむほうに主眼/紅い涙-夜間飛行、眸-カランドル、の印象的な詩/奈良の壺阪寺の盲人のための植物園、道標の綱がはっていて、それを伝わっていくといい香りのする植物だけ植えてあるのだとか/旧約聖書に題をとった、アナトール・フランス「ユダヤの太守」「バルタザアル」も読んでみたくなる。
穂崎円 / 穂崎円 (2017-11-1)
読了日:2018年5月16日
がたんごとんさんにて。ひさびさの一目惚れで完全に衝動買い。装丁の手触りもフォントも挿絵も色合いも好みで。そして中の短歌も個人的にはなかなかに好みの世界観。以下、引用しつつ。

ハローハロー視界は真っ白なのですが無かったことにはならない どうぞ(p.9)

樹が君にひとであること責めたのか 森に陽射しはまっすぐ落ちて(p.26)

君に降るあれは光でなく埃 懺悔のような上書きをする(p.31)

雪の降る予感に顔が上を向く記憶するとは負けていること(p.36)は、忘れてしまえる方が勝ちでいつまでも覚えてる方は...と言うたとえなのか。

束の間の眠りの前に分かちあう酒、歌、煙草、故郷の話(p.46)は、何となく初回、あるいは浅い付き合いだけどポツポツと話しあったりする情景が思い浮かび。

博愛のことば説きつつ地表まで決して届かぬ天使の梯子(p.51)は、少し皮肉さを感じながら。

心臓にふいご吹き込むようなひと今夜わたしの部屋へ来なさい(p.67)、はなびらがいくさの後に降るように今夜わたしの部屋へ来なさい(p.68)をはじめとした、一連の「今夜わたしの部屋へ来なさい」の畳み掛けるようなリズム。

あ。わたしの中の水位が上がりだし波際しろく泡立っている。(p.90)は、感情が溢れ出す瞬間をあざやかに切り取っているように感じ。

手はわたし、手放せるのはわたしだけ。広げた手から鳥が羽ばたく(p.118)

でも「きみ」はどこにもいない鳥の異称いつかは終わる影おくりの影(p.120)
重版出来! 11 (ビッグコミックス)
松田 奈緒子 / 小学館 (2018-05-11)
読了日:2018年5月16日
表も裏も光も闇も全部撮るんだ。世間の興味がご主人様だ。という週刊誌カメラマン。担当作家と人気アイドルのストーリーは苦い結末を見せつつも。/才能はあるのになかなか次作が出せない作家に、担当を黒沢さんに変えるという荒療治。最近の顧客は興味だけで購入するので、掲載誌、出版社などをほとんど意識せず、SNS発のヒットも多い。象徴的なエピソードとして、電子書籍ストアあてに届いたファンレター。そして柔軟にもweb用のコマ割の研究を始める漫画家さん。電子書籍は星の光みたいなもんかなと思う電子書籍ストア社員。星の光が届く時間は様々、読む人にゆっくり届く作品も、秒で届く作品もある、でも書かれた漫画は全て誰かの心に届いている、と。/自分の明らかなミスや弱点を確認したら負けたことは忘れていいんですと選手時代のことを語る黒沢さん。担当する作家さんも、徐々に前作が電子書籍で盛り上がりを見せ、次作にもようやく手がつき、そして知人の子が編集者になりたいと宣言する場に居合わせ、頑なな作家さんに少し春のきざしを感じさせるところで次巻へ。
現代詩人探偵 (創元推理文庫)
紅玉 いづき / 東京創元社 (2018-04-12)
読了日:2018年5月15日
SNSが縁で地方都市で開かれたオフ会「現代詩人卵の会」。九人の参加者は、今後の詩作を続けることと、10年後の再会を約して別れた。しかし10年後に集まったのは、5人だけ。他の4人は死んでいた。自殺だったのか事故だったのか。どうして死ななければならなかったのか。それまでどんな詩を書いてきたのか。最期の詩はなんだったのか。それらの詩にどんな意図が込められていたのか。それを知りたくて、主人公の25歳の男性は、遺族の元を、当時の関係者のところをまわる。時に、暖かく迎えられたり、冷たく追い払われたり。墓を暴くような所業とわかっていても、やめられず。その結果は生き残ったメンバーと都度集まり報告し。しかし、話が進むにつれ、詩にかけることの苦しみ、苦味、時折射す喜びが語られ、大きなトリックは主人公にも...と。最後、彼は詩を書くのだろうか、いや書くんだろうきっと、と思いつつ、また全ての創作者への祈りに深く頷きつつ。/以下備忘録として。詩は彼を救わなかったのだ。それが不幸なことなのか幸せなことなのか/たかだかそんなことのために。死ぬことで男の詩人になる、それだけのために/僕は知りたかったはずだ。死ぬしかなかったのか、死ななければ詩人でなかったのか。それを探して、考えて。/
おもたせしました。3 (BUNCH COMICS)
うめ(小沢高広・妹尾朝子) / 新潮社 (2018-05-09)
読了日:2018年5月13日
新潮社クラブとあんみつと文豪のエピソード。開高健が、釣りで坊主だった時の哀れな開高健ですと言いながら出てくるとか半年缶詰で22枚しか書けなかったとか、庭から本当に逃げ出そうとしたこととか。川端康成の霊が、原稿に詰まってたら手伝ってくれるとかいう話とか。/留学の夢叶う友に、たい焼き型茶漬けを持って行き、一緒に食べつつ、留学先にもたせたり。/杜鵑花でさつきと読ませる名前がきっかけで不登校になった子に、森鴎外のオットーやアンヌなどに漢字をあてた子や孫の名前を教えつつ、吉祥寺のケーニッヒのホットドッグを頬張り/カップリングや腐女子がわからぬ老作家と、檀一雄と太宰治が、シュッとした二人が乱暴に毛蟹を食べる構図を思い浮かべたり/最後はみんなで持ち寄っての花見シーン。文学と手土産をからめた「おもたせしました」てエッセイ書きませんかと編集者から依頼を受けた主人公の寅子。きっとネタにはつまらないだろうなと思わせつつ。いつもLINEのみでやりとりしてた叔母のさくらさんは最後、後ろ姿までしか見せず、おもたせもかぶったところで、大団円、と。/文豪たちが名教師だった頃(佐久間文子)読んでみたいなと思った。クールに見える芥川龍之介が意外や熱血教師だった話、とかとか。
違国日記 2 (フィールコミックスFCswing)
ヤマシタトモコ / 祥伝社 (2018-05-08)
読了日:2018年5月13日
母を亡くした高校生の姪と、叔母の小説家。ぎこちないながらも始まった同居。元の家を片付ける過程で思い起こされる姉との忌まわしい思い出。それを抱えつつ姪の朝には自分なりに公正に接しようとする槙生。親のいない子と無神経に全クラスに知らされたと聞きすっぽかした卒業式。槙生の元カレの不意の訪問。そして槙生と旧友たちとの女子会。距離感、責任、自分なりの流儀、そのバランス。その模索する感じも読んでてすんなり入ってくる。
鞄図書館4
芳崎 せいむ / 東京創元社 (2018-05-11)
読了日:2018年5月13日
戦地で読んだ、ブルックリン横丁。そして、兵隊文庫。ノンフィクション「戦地の図書館」。ナチスの行なった、書籍大虐殺(ビブリオコースト)と重ね合わせながら語られる。また、クレオパトラとカエサルの時代にタイムスリップした鞄の活躍。警察官と婚約者と古本屋の微笑ましい交流が一転、その影にあったものは、というストーリー。ただの何気ない読書会かと思いきや次々と参加者の素性が明らかになり、というストーリー。ラッセル・ブラットん「ウィンブルドン」は読んでみたいと思った。/ダフネ・デュ・モーリア「いま見てはいけない」「人形」「鳥」を軸に語られるミステリー。など。「本というものは分解してみれば白い紙の上に黒い線が引いてあるものでしかないのです くねくねと曲がりくねったこの黒い線の列なりに 我々の心は深く揺らされ笑わされ泣かされ身体の底から勇気づけられる」(司書)
紫の夢-おれは一万石(3) (双葉文庫)
千野 隆司 / 双葉社 (2018-02-14)
読了日:2018年5月13日
高価な龍野の醤油をめぐる強盗殺人事件と、突如高岡藩に発覚した出入りの商人からの巨額の借財、その二つが結び合わさって進んでいくのが今回のストーリー。堅物で藩財政のことで頭がいっぱいで、時に妻の気持ちに無神経になってしまいむくれられる主人公。しかし、藩への真摯な思いは通じて、すれ違いを見せつつも、最後に今後販路を開こうとする各大名への振る舞いの場でも、妻が大きな役割を果たし。最後の、ふすまを開けるシーンは、もう一幅のドラマにしたい、このあとエンドロールが流れるな、という大団円。直言の臣下に、言外に殿も汗をかいて金策をと迫られたり、奥方に構えるところがあるから味のことしか言えなかったのではとアドバイスされたり。杭のこと、塩のことと前巻までの活躍が買われて、財政手腕を発揮している親族に見込まれて、借財を返すきっかけの大きな仕事を任されたり、と個人的には見所もいろいろだった。
アルカイダから古文書を守った図書館員
ジョシュア・ハマー / 紀伊國屋書店 (2017-06-15)
読了日:2018年5月13日
0513読了 イスラム武装勢力から古文書を守ったハイダラを軸に、彼が古文書を収集する仕事についた経緯や仕事ぶり、その後の寄付を募る活動、世界中からの講演やネットワークづくり、国内での古文書を扱う人材の育成、図書館の創設などが語られる一方、トンブクトゥを含むマリの歴史、中世に花開いた科学と宗教が共存する進歩的な学術都市と、原理主義の脅威にさらされるという反動をくりかえす歴史。植民地主義に翻弄され、独立後も一筋縄ではいかない状況。世俗的な音楽プロデューサーの活動。中世のイスラムに戻そうという原理主義的なイスラム勢力、ゼイネブ、ベルエフタール、ガリー、など。映画Timbuktuは映画館で観られたので、トンブクトゥのウッドストックも観てみたいと思った。実際の古文書救出大作成は、トンブクトゥ各所への分散した隠匿、トンブクトゥから首都バマコへの移送作戦の二段階に別れて行われたが、30回以上に渡る移送が、武装勢力に気づかれず、あるいは気づかれても見逃されたのかわからないが、奇跡的なこと、という印象と、実際の作戦遂行は、ハイダラの甥が身体を張って陣頭指揮をとったという印象を受けた。また堅物かと思いきやお茶目なと言うか図太さというか、図書館の建設は、資料のデジタル化が先と釘を刺されてたのに、無視して建ててしまい、しかも選定地ミスで数十年に一度の洪水で水浸しになった際は、それでいて、もう一度建て直してもらわなければなりません、という目的のためには図太い一面も持つハイダラ。訳者あとがき(2017年)段階では、まだ古文書をバマコからトンブクトゥへは戻せていないようだけれど、いつかそのニュースに触れられたら、と思う。また砂漠のブルース、アリ・ファルカ・トゥーレも聴いてみたく思った。「ハイダラが信仰していたのは、文字で書かれた言葉の力だ。本の表紙と表紙のあいだには、人間の多種多様な経験と思想が閉じ込められている。ハイダラはその力を信じ、それがこの男を衝き動かす原動力になっていた」
土漠の花 (幻冬舎文庫)
月村了衛 / 幻冬舎 (2016-08-05)
読了日:2018年5月12日
以前に読んだ同じ作者の「槐」と構造が似てるな、という読後感。半グレ集団に襲われたキャンプ場と敵意ある武装勢力に追われるソマリアの自衛官たち、というどちらも極限状況。戦ううちに、結束が高まり、理解しあい信頼も深まったと思いきや、仲間はどんどん死んでいき、全員は生き残れないと思い極めた者が自己犠牲で皆を救い、生き残ったものは、死んだ者たちの分も懸命に生きねばと思う。そして苦い読後感。だからと言って価値が下がるとかそういうものでもなくぐいぐい引き込まれたのだけど。「土漠では夜明けを待つ勇気のある者だけが明日を迎える」。
パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)
川内 有緒 / 幻冬舎 (2010-07-01)
読了日:2018年5月11日
絵を描く素養もなくパリに飛び込んで、絵描きとして評価され絵で食べれるようになったエツツさん。何度だまされても、前にフランスで暮らした楽しい思い出がないからそれまでは、と何度も再起する鍼灸師。前例のないヨーヨーのパフォーマーとして悩みつつも這い上がっていくアーティスト。本物のアフリカを感じたいからという理由でパリで花屋を開いた者。パリでオートクチュールのテーラーになった人。パリで漫画喫茶を開いた人。そんな生き方、考え方もあるんだ、と目を開かせてくれる人たちのお話。「全てはちゃんとやりたいようになるんだから。不安に思っているとそっちの方に行っちゃうよ。心配しちゃだめ、だめ。ほら、それよりさ、飲もうよ」(エツツさん)。スクワットの成立過程については、何か他にないかあたってみたく思った。「日々やっていることはしょうもないことでも、それが何か大きなものにつながってる。自分は確かに正しい世界にいるって知ってることが大切。」(国連職員)
短歌と俳句の五十番勝負
穂村 弘 , 堀本 裕樹 / 新潮社 (2018-04-26)
読了日:2018年5月9日
歌人穂村さんと俳人堀本さんが、毎回、いろんな方からお題をもらって、それを互いに詠む。それに伴い、詠んだ背景や思い出、空想などを重ね合せる一冊。お題「窘められて」の"なめくじにトマトケチャップかけてたらたしなめられて恋に堕ちたり(穂村弘)" "瞑目を窘められてジャズ暑し(堀本裕樹)"は一つのお題で、個人的に二人ともいいなあと思った題。それぞれ背景は全く違うけど。瞑目を...は若い頃、デビット・マレイ 「octet plays Trane」をふと聞いたことからジャズ喫茶にはまり、そこのマスターに言われた一言にちなんで、と。あとは、堀本さんの”つやつやのバターロールや秋の湖” "切り口の楕円美し胡瓜漬け"が鮮やかな一瞬を感じ。 "スキヤキを低く歌ふやクリスマス"にしみじみとした情感を。また、穂村さんの”五円玉にテープを巻けばゲーム機は騙されるって転校生が"に思わず小学校の情景が浮かぶ。最後は、あとがき対談。異化を感じさせるという西東三鬼の俳句、読んでみたくなる。/引用としては、元カノがつけてた香水をふと嗅いでしまった混乱から、ラマンのDVDを借りたり、不意のエロスだけが風景を異化する、という句が苦虫を噛み潰した村上龍の顔とともに浮かび上がった、とか。「人生はただ一問の質問に過ぎぬと書けば二月のかもめ」(寺山修司)を自らの句と重ね合わせたり。初代ファミコンのよくやったゲームが個人的にドンピシャだったりの堀本さんの雑感が目にとまる。
桝田 武宗 / 筑摩書房 (1990-04)
読了日:2018年5月8日
八重山を読む、つながり。八重山の社会と文化、つながり。寡聞にして知らなかった、八重山共和国とはなんだったのか。終戦直後、行政機構としては、日本政府も、沖縄県も、八重山支庁も無くなった八重山で、”食料の欠乏、物資の不足、手のほどこしようもないマラリアの蔓延、あらゆる種類の犯罪の多発、闇商人たちの横行、栄養失調者の群れ”という状況の中で立ち上げられた、八重山自治会=八重山共和国。著者が幅広く調査してきて打ち立てるにいたった仮説をバックに、執拗に、独立を意図していたのではないか、という問いかけをし、ようやく肯定してくれた当時の創設メンバーの一人。ようやく手にした自治だったが一週間足らずでアメリカ軍政の支配下に置かれ、事実上解散。しかし、そのメンバーの多くは、引き続き発足した、八重山支庁に参画したが、人民寄りの政策により実害を被る資産家らのロビイングにより、11ヶ月で、首長はじめ大量の離職者をだし、八重山共和国の理念は崩壊した、と。著者がピックアップした、当時の海南時報の記事も、当時の空気感を知るよすがとして参考になった。
羊の木(5) (イブニングKC)
いがらし みきお / 講談社 (2014-05-23)
読了日:2018年5月7日
最後の方は暴走して自滅するものあり、なんども与えられたチャンスをことごとく無にして消えたものあり、そして、のろろの正体は、三田村は何者で動機はなんだったのか、プロジェクト自体があったのかという可能性まで示唆しつつ、ひとまずの大団円。残されたものはそれぞれ溶け込んだのだろうと思わせつつ。
羊の木(4) (イブニングKC)
いがらし みきお / 講談社 (2013-10-23)
読了日:2018年5月7日
ネコノヒー 2
キューライス / KADOKAWA (2018-04-27)
読了日:2018年5月7日
納豆リベンジもやはり果たせずネコノヒー。菓子パンのカロリーを見てしまって震えるネコノヒー。セクシーに塩をふるトルコ人ヌスレットの真似をするネコノヒー。ヤセノヒーになってしまいペショペショとしながらチャーハンをつつく哀愁。イカスミパスタを豪快に食べ過ぎて、上半身真っ黒になって、けど満足そうに店を出てくるネコノヒー。お正月の顔の変遷が、土日月火曜日の顔の変遷と一緒のネコノヒー。この巻も哀愁を漂わせつつ、愛らしくて目がはなせない。あと、テテテーンランド、行ってみたいな、と思った。
羊の木(3) (イブニングKC)
いがらし みきお / 講談社 (2013-01-23)
読了日:2018年5月7日
荒ぶる季節の乙女どもよ。(1) (講談社コミックス)
絵本 奈央 / 講談社 (2017-04-07)
読了日:2018年5月7日
文芸部で官能小説を朗読する部員たち。観念ばかりふくらんで、実際のそういうことは否定的だけど興味は隠せず。けれど、教室で不用意なひとことで非難にさらされたり、かばってくれる男子がいたり。主人公は、急激にかっこよくなってモテはじめる幼馴染への気持ちに気がついてしまい。そんなところに校長先生から廃部のお知らせ。どうなることやら、と。
人間の居場所 (集英社新書)
田原 牧 / 集英社 (2017-07-14)
読了日:2018年5月7日
AKB48の秋葉原の劇場、新宿ゴールデン街、三里塚闘争の小屋、磯釣りの浜辺、LGBTの運動、カリフ制再興を唱える日本人ムスリムとその周囲の人々、子供食堂、長期囚のいる刑務所、ヤクザ、シリア難民の避難先。誰かにとっての居場所が描かれる。「理解するのではなく、分からないことを大切にする。性は闇。それでいい。そのうえで違いを対等に認め合う。それが共生の前提である。」「銀河系という店には、暴力の匂いがあった(略)たとえ相手が何者だろうと馬鹿なこと言いやがったら殴るぞ、という姿勢があった。」
ミザントロープな彼女(3)<完> (アフタヌーンKC)
厘の ミキ / 講談社 (2017-05-01)
読了日:2018年5月7日
こじらせとこじらせがぶつかりあい、あさってのほうに向きつつ、最後には…と。個人的には、正直最後のほうはついてけなかった。
世界の終わりとオートマチック (オフィスユーコミックス)
岡井 ハルコ / 集英社 (2018-04-25)
読了日:2018年5月6日
80歳が寿命とされた世界で、生前葬を演出する会社に勤める女性。大きな失敗をして、なし崩しに退社したが...。青い猫があらわれて死者とかすかに繋がれるという都市伝説に望みを託す人々。亡くした子供と一目でも会いたい。あるいは軽はずみな娘が危ない目に合わないように訴えかけたい父。そして、明かされるこの世界の成り立ち。いつか無くなる世界だとしても、それでも、と。
ハーン ‐草と鉄と羊‐(1) (モーニング KC)
瀬下 猛 / 講談社 (2018-04-23)
読了日:2018年5月6日
源義経=チンギス・ハン説の作品がこの時期に読めるとは。学術的には否定されてるけど、伝奇としては描くに足るのか。蝦夷地、金の地方都市へと逃れ、タタルに捕らえられ、ケレイトに連れ去られる。オン・ハンのもとで頭角を表すも謀反に失敗。逃亡しボウルチュとあったところまで。ボルテとの一瞬の邂逅、ジャムかとの盟友の誓いも描かれ。鉄を重視した描写が印象に。世界帝国を打ち立てるところまで描かれるのだろうか。
めしにしましょう(4) (イブニングKC)
小林 銅蟲 / 講談社 (2017-12-22)
読了日:2018年5月6日
1-4巻まで読了。漫画家广さんの仕事場で、チーフアシの青梅川さんが、アシめしというには、豪快すぎスケールでかすぎなご飯をこれでもかと繰り出すマンガ。ファイナルカレー、ファッチューチュンあたりはいいなあと思いつつ。バター一個づかいとかも。よくわからない陶器から素材が出てきたりとか魔改造されてんのかてくらいなルンバとか異能の新担当とかいろいろぶっ飛んだ設定もたのしみつつ。
本日のバーガー 8 (芳文社コミックス)
才谷ウメタロウ , 花形怜 / 芳文社 (2018-04-16)
読了日:2018年5月6日
バーガーフェスの会場探し、華道部の生徒に思いを伝えたいバーガーから、母校の桜を残し、校舎解体前にバーガーフェスの会場として使わせてもらうためのバーガーまで。そして、テレビのドキュメンタリーがバーガーフェスを取り上げてくれると思いきや一波乱。最後は、日本未出店のバーガーチェーンを呼ばないかアメリカに飛ぶが早速一波乱に巻き込まれそうで、と。
響~小説家になる方法~ 9 (BIG COMIC SUPERIOR)
柳本 光晴 / 小学館 (2018-04-27)
読了日:2018年5月6日
ドキュメンタリーはお蔵入りに。そして、文芸部長かよの思いつきで、全員、高校生文芸コンクールに応募することに。その過程で、小説家になりたいと強く思うようになった咲希。苦節五年でようやく芥川賞に手が届いた作家。そして、生臭い、総理を目指すが決め手に欠ける文部科学大臣が次の波乱を巻き起こしそうで。正直、次々と波乱を起こさなければストーリーが進まないのかという気にもなり。
おしゅしだよ どうもね!
やばいちゃん / KADOKAWA (2017-08-07)
読了日:2018年5月6日
崖の下に落ちたおもちゃ取りたいからと、マグロがタコのネタ借りたのに、ネタごと崖の下に…てシーンが不憫で一番印象に。
ボルジア家風雲録 (下) 智将チェーザレの激闘
アレクサンドル・デュマ / イースト・プレス (2013-08-07)
読了日:2018年5月5日
通読して、当時の通説ではボルジア家は、毒薬と陰謀と近親相姦で彩られ、教皇の政策は聖性など欠片もなく、全て自家の利益のために図られ、チェーザレの打ち立てようとした王国は自らのなんら理想もなく自らの野望と栄達のためで、約束は平気で破り、仲間は平気で裏切るが、弁舌で言いくるめ、したたかに生き延びる、といった形で描かれる。ボルジア家の悪徳を否定した、という最近の研究にも当たってみたい。/下巻からは、ルクレツィアの資産の増大。教皇軍総司令官に任命されたチェーザレ。享楽と戦費のために免償(大赦の期間にローマを訪れる代わりに払うお金)を売り出し、また枢機卿たちを増やし気まぐれに亡きものとすることで財産を増やした。美しき男女が一年間チェーザレに弄ばれて捨てられた描写。最後は客用に用意した毒ワインによって教皇は死にいたり、チェーザレは死線をさまよった、と描かれる。最後はフランスに幽閉され、逃亡後に小領主の小競り合いで命を落とすチェーザレ。最後まで見捨てなかったのはミケロットだけだった、と。
オイディプス王 (岩波文庫)
ソポクレス / 岩波書店 (1967-09-16)
読了日:2018年5月5日
デュレンマット「巫女の死」つながり。宣託を避けようと行われた処置をくぐり抜け、知らぬ間に父を殺し、母と結婚し子をなしていた。それを知らずに十数年、王位にあったオイディプス王。一つの神託をきっかけに、知らずとはいえ己のなしたことを知らされ。一つ証言が出るたびに、いやそれなら自分は当てはまらない、いややはり当てはまったと波状攻撃で真実を知らされ。「こんなことならどうしてひとは、デルポイの神託のかまどだの、空に鳴きさけぶ鳥だのと、あれこれ気にすることがあろうか。」(オイディプス)、とずっと思てたら良かったのに、なぜに当時の人はかくも神託にすがり振りまわされていたのだろうか。なぜに自分の母親ほどの年齢の妃とすんなり結婚する運びになったのか。今よりもずっと平均寿命の短かったと思われる古代ギリシャでもそれは普通のことだったのだろうか。そして、デュレンマットも書いていたが、オイディプス王の名前の由来にもなったという踵の傷を見て妃は何も思わなかったのか。などなど思うところはあるが。そういった全てをひっくるめて一編の悲劇ということか。じゃあ、いったいどうすれば良かったんだ、と。確かにその神託を下した意志とはなんだったのかと呪いたくもなろうかと。
あんずのど飴 (IKKI COMIX)
冬川 智子 / 小学館 (2013-01-30)
読了日:2018年5月5日
行きたい大学を書けというオーダーに、行けるところならどこでも的なことを書いて、職員室に呼ばれたことが縁で仲良くなった二人。片方はあなたは心のきれいな人だ、片方はあなたは面白い人だ、と意気投合し、二人の仲はいつまでも続くかと思われたけど。かすかなすれ違いは大きなものとなって。卒業式の時も顔を合わせないまま、時は流れ、同窓会。あなたが眩しかった、あなたが大好きだった、とお互いに伝えられなかった思いを打ち明けつつ。切なく、その時は戻ってこないことを惜しみつつも。
中央モノローグ線 (バンブー・コミックス)
小坂俊史 / 竹書房 (2009-10-17)
読了日:2018年5月5日
中野、高円寺、阿佐ヶ谷、西荻窪、吉祥寺、武蔵境、荻窪、それぞれに割り当てられてキャラクターがモノローグで語る四コマ。中野の漫画家、高円寺の古着屋オーナーが一番多くて印象に残るかな。阿佐ヶ谷OLの年数を経て得たしたたかさや、西荻窪の劇団員のささやかな居場所だけど、それでも...と言ったところも目に。
昭和天皇物語 2 (ビッグコミックス)
能條 純一 , 永福 一成 / 小学館 (2018-03-30)
読了日:2018年5月5日
朕は国家なりという意識、自らが感情を出すと周囲の誰かが傷つくという戒め。そして皇太子となってその儀式に自分を10年養育してくれた足立タカの姿を認め、またタカもそれを感じたシーン。皇后候補として学習院女子部にやってきた現皇后。引き合わされた二人の様子に周囲は安堵を見せるが。民衆の中に分け入り、民衆が何を考えてるか知り、民衆とともにありたいと願った大正天皇像も描かれ。貞明皇后の凛とした宮中に政治を介入させまいという姿勢もまた描かれ。それに対する山縣の策謀としての宮中某重大事件の幕開けが告げられるところまで。
ボルジア家風雲録 (上) 教皇一族の野望
アレクサンドル・デュマ / イースト・プレス (2013-08-07)
読了日:2018年5月4日
ボルジア家の悪徳とは研究により多くが否定されてきた、と「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」で読んだ気もするが、否定された悪徳に基づいた書も読んでみたく思い手に取る。/上巻からは、伯父の教皇に、枢機卿になるように勧められたこと、教皇になる可能性もあることをほのめかされて以降、ロドリゴが完璧な悪魔の化身となったと描かれる。ジェムをめぐってはオスマン帝国のバヤズィト二世もヨーロッパ外交の重要なプレイヤーとして登場。そして流暢なイタリア語を駆使し、フランス王に親愛の情を抱かせ、チェーザレと馬を並べる様子が描かれるジェム。そしてチェーザレの片腕ミケロットの登場。対フランス同盟の結成、など。
ネコノヒー 1
キューライス / KADOKAWA (2017-10-30)
読了日:2018年5月4日
ちょっととぼけてるけど、いろんなことにチャレンジして、ちょっとうまくいかなくて哀しい表情になったり、目が離せない。苦いものは苦手だけど、つい口にしたくなったり。流しそうめんの前日に素振りまでして楽しみにしてたのに、でっかい猫に隣にこられてちっとも食べれなかったり。信長の草履をあっためてるうちにあったかくなって寝ちゃって、信長に羽織をかけてもらったり。食券の仕組みがわかんなくてお腹すかせて待ちぼうけだったり。卵かけ御飯の卵が山盛りのご飯から滑り落ちていったり。納豆を力一杯混ぜすぎてつき破っちゃったり。カップ焼きそばを湯切り前に蓋を全部とっちゃったり。あるある、てことから、そりゃないよね、てことまで目白押しで、笑いつつ共感しつつ、ネコノヒーが好きになりすぎてこまる。
失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選 (光文社古典新訳文庫)
フリードリヒ・デュレンマット / 光文社 (2012-07-12)
読了日:2018年5月4日
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2018/04/post-b67f.html つながりで。「トンネル」普段と同じように列車で大学へ向かっていた男が、いつもよりトンネルに入ってる時間が長いと感じてから、どこへともなく限りなく速度をあげて、果てしなく下っていくトンネルへと列車が走るところへ乗り合わせてしまったストーリー。「僕たちがコンパートメントにすわっていたときにはもう、すべてがおしまいになっていたのに、それに気づいていなかったんだ」「まだ何も変わったところはないような気がしたのに、そのときには本当はもう、僕たちは深みへと落ちていく穴の中に入り込んでしまっていたんだ」が印象に。また当時は150kmでも相当速い部類だったんだな、と。「失脚」ある共産主義国家の政治局員十三人の対話劇。序列13位のNの目から描かれる。権力闘争の血生臭さと滑稽さ。綱渡りの対話劇で最後に失脚するのは、と。「故障」車の故障で田舎の宿に泊めてもらうことになったビジネスマン。毎晩老人が行う裁判ゲームに嬉々として参加したが...。何が正しいかより、自分にはこんなことだってできるという全能感に酔っていき、最後にとった行動と老人たちの驚き。「巫女の死」もう適当な宣託しか下したくない疲れ果てた老巫女。金を積まれればどんな神託も述べさせる神殿長。金を積んで神託を行わせる陰謀家。神託に踊らされる支配者一族たち。オイディプス王の挿話に一捻りふたひねりが加えられ、唸らせられる。描かれなかったソフォクレス「オイディプス王」の裏面、といったところなのか。原作の方も読んでみたくなる。「どうでもいい話など存在しないのだよ。全てがつながっているのだから。どこかを揺すれば、全体を揺さぶることになるのだ。パニュキスよ」
おしゅしだよ
やばいちゃん / KADOKAWA/エンターブレイン (2014-04-28)
読了日:2018年5月4日
他愛なさすぎる、けど愛らしくて目が離せない。まぐろとタコが出会って、タコがくしゃみしたらネタが吹っ飛んで、まぐろの上にポトリ。えーんえーんていいながら、二人でシャリだけになりながら、吸盤で引っ付いたネタをはがそうとしてるのが一番好き。そして、気がつくと、ててーん、と口ずさみたくなる。
深夜のダメ恋図鑑 (フラワーコミックスアルファ)
尾崎 衣良 / 小学館 (2015-04-10)
読了日:2018年5月3日
辛辣といえば辛辣だけど、言われる男もどうかと思われる案件多し、で。外面が良いにも程があると同じ作者だから買って見たけど。
昭和天皇物語 1 (ビッグコミックス)
能條 純一 , 永福 一成 / 小学館 (2017-10-30)
読了日:2018年5月3日
一部創作ありって書いてるけどなかなかにしっかり描かれてる印象。敗戦後、マッカーサーとの会談。古今の王で、命乞いに来たのではなく、自分の命と引き換えに民を救おうとしたものがいただろうか、どんな風に育ち、生きて来たのかという回顧から、昭和天皇の少年時代のストーリーへ。しかし、一つの漫画に、原案、脚本、監修がつくって相当手厚い布陣なのでは。
パリの国連で夢を食う。 (幻冬舎文庫)
川内有緒 / 幻冬舎 (2017-06-09)
読了日:2018年5月1日
エイヤとアメリカの大学院に行きそのまま就職、日本に帰ってきてコンサルで激務。そんな中で、ふと軽い気持ちで出してみた国連の採用に受かりパリへ。国連のお仕事、採用の仕組み、国によって拠出金や人口の割合で割り当て人数が決まっていて、同国人の枠がすでに一杯ならどんなに優秀でも採用されず、予算は2年縛りで柔軟に使えないので、火を吹きそうな部署に人が割り当てられず、暇な部署に人がいても助けられないという硬直性。組織をよくしようと、もっとリサイクルを!という活動に携わるも様々な壁にぶち当り。そして、中で働く様々な国籍の個性的な職員たち。もっとも日本の小さな都市に住んでるとそう思うだけで、川内さんも書いてるように、彼らは彼らの国の常識にしたがって行動してるだけかもしれないのだ。また、サキーナというレンズを通したパリやイタリアが居心地が悪い、という話にもつながる側面があり。そしてパリ生活もなかなかに大変。部屋は少なく、高く、設備も様々で大家や銀行、役所との交渉、交渉、格闘。パリで知り合った魅力的な人々、アーティストたち。その辺はインタビューしてデビュー作にまとまってるとのことでそちらを読んでみたい(「パリでメシを食う」)。印象的なのはやはり、世界一周の旅人。一緒にフランスの田舎にいっていいなあと思ってたのが、思わず戻ってきてくれて、「そして、旅人は、恋人になった」と。あと、目に止まったシーンを。「リッスン(聞いて)。出張なんかどうでもいいんだよ。人生では家族のことのほうが仕事よりもよっぽど大切だ」「もし、きみが、幸運にも、青年時代にパリに住んだとすれば、きみが残りの人生をどこで過ごそうとも、それはきみについてまわる。なぜならパリは移動祝祭日だからだ」「国連組織のミッションは、「人類の心の中に平和を築くこと」である。しかし、国連で働くこと自体は、果たして職員の心の平和に貢献しているのか」


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2018年05月01日

2018年04月に読んだ本

期間 : 2018年04月
読了数 : 64 冊
無名亭の夜
宮下 遼 / 講談社 (2015-08-26)
読了日:2018年4月30日
再読。同じ著者の「多元性の都市イスタンブル」を読み、再読したくなる。味わいもまたひとしお。表題作「無名亭の夜」は少年-連隊長、アフマド-隊長-宰相、精霊-驢馬-語り部-酒場の主人、と言うつながりを注意深く結びつけて、物語の組成たる視覚聴覚嗅覚触覚味覚に知性を加えた6つをあげ、最後の一つは...というのもテーマ。トルコ語のアシュクが日本語ではなんと語られるかは読んでのお楽しみ。書に描かれる枠線が、物語の世界と現実の世界を分ける国境線...そこを超えて行ったのはイスケンデルと...と成長した少年こと連隊長だった、と。ジェンギズ・ハーンの裔たるクリム・ハン国の姫君がとらえられたことで行われたセリム1世とシャー・イスマーイールの美姫を賭けた将棋での一騎打ち。そこで帝王からの問いに見事な回答を見せた連隊長、「この世の在りようはわしの詩想と詩の技とによって、詩連へと結わえられた」とアフマドが語るシーンが印象に。また現代東京と16世紀オスマン帝国を行きつ戻りつしつつ、東京側の「彼」が徒弟の語る物語を聞きつつ、時に踏み込み、物語の中にいる心地になり、また、彼の描く一筆一筆が、徒弟の語る物語を結わえることになったのも味わい深く。「ハキルファキル」は、表題作の野心に満ちた仕掛けを堪能した後では、少し軽めの小粋な小品に感じられた。そしてやはりバーキーについて調べたくなった。
大清帝国と中華の混迷 (興亡の世界史)
平野 聡 / 講談社 (2007-10-18)
読了日:2018年4月30日
2章から6章と終章を読了。門外漢には刺激的な通史。清の統治理念がいかに変遷していって、どの部分が現代中国にも受け継がれているのか、対モンゴル・チベット関係の問題の淵源がどの辺りにあるのか、日本との関係はどうだったのか、解き明かしてくれる。/「清は当初内陸アジアの帝国として台頭し、発展しつつあったのであり、決して日本人が一般的に考えるような「東アジアの中華帝国」「歴代中華帝国の最後の王朝」という存在ではなかったと考えrている。」(p.134)/雍正帝の、人間性や道徳は民族・文化の出自に関係なく備わり得るものであり、満州人と漢人を問わず、徳の高い者と凡庸な者は当然存在しうると考えた/「伝統」「美風」が政治的に強調されるのは、権力の側にそれを保つための自信がないときや、外部により協力な他者が現れたときであることは古今東西変わらぬ、例えば「美しい国」なども。/乾隆帝の「堂子」。仏陀、菩薩、関羽やシャーマンの神々で孔子は含まれぬ「中外一体」の小宇宙。/雍正帝と乾隆帝の「盛世」は、満州人、そして内陸アジアと漢人の関係を何ひとつ根底から変えないまま、漢人の「華」に対するかつてない弾圧・抑圧と、それと引き替えの巨大な版図を残して暮れていった。(p.186)/「中華」の文化的伝統と、現実の近代「中華」国家との間には大きな隔たり。(1)理念としての「中華」。「中華」の文明が華開く場としての「中国」-文化的に決定される「中華」(2)「中華」の文明が行われていようがいまいが、「中華」王朝が支配した場所は全て「中華」「中国」でありうるので、それを放棄せず維持する-権力的に決定される「中華」(p.207より)/円明園の本当に悲劇的なものだけが放ちうる凄絶な美/清末。漢人による「暗黒でおくれたチベット」改造の正当化とチベット人の「もはや自分たちが清を受け入れる理由がなくなったばかりか、抑圧ばかり被るようになった」という意識。近現代チベット問題の根源。(p.282より)/琉球=沖縄が「東アジアの結節点」たりえたのは、日明・日清関係が疎遠なものであった間までのこと/宮古・八重山が日本領となっているのは紙一重の外交史的展開によるもの。伊東博文の割譲案に李鴻章が頷いていれば今頃中国領だったかもしれない、と。サンシイ事件参照。/モンゴル・チベット人からみた新政は、既存の仏教中心の社会を解体し、強制的に漢人との同化を迫るものとしてとらえられてゆき(p.337)
ダークマスター オトナの漫画 完全版 (ビームコミックス)
泉 晴紀 / KADOKAWA (2018-04-12)
読了日:2018年4月30日
玉石混交。読み終えて、謎すぎる!とか、なんだそりゃ!と思うのもあったけど、クスリと笑ったり、暖かい気持ちで読み終えたものもあり。マスター、どこ行ったんだろう、とか、UFOはないだろう、とか、人が消えるマジック終わってそのまま蒸発とか、様々。
かぞく (ニチブンコミックス)
土田世紀 / 日本文芸社 (2013-04-19)
読了日:2018年4月29日
ぱらっと手に取ってみて、全部読みたくなった一冊。少し前の家族観、家族の情景を描きたかったのかなあと思いつつ。連続ものにしようとして絶筆になってしまった、最後の二章、行く末が気になった。
カフェでカフィを 2 (集英社クリエイティブコミックス)
ヨコイ エミ / 集英社クリエイティブ (2018-04-25)
読了日:2018年4月28日
腐れ縁の同期だと思ってた二人の行く末、内向的なまま大人なになってしまった兄と妹、そして姪との関係などなど。コーヒー、お茶がキーになるショートストーリー。
サトコとナダ 3 (星海社COMICS)
ユペチカ / 講談社 (2018-04-28)
読了日:2018年4月28日
ナダの婚約者アブダーラさん。突然のアメリカ来訪。周囲の友人たちとは会えたけど、ナダとは空港にいく車から一瞬会えただけ。自主性を尊重してくれない兄への反発、時折見せるサウジの慣習を奇異に思うんでしょ!と言う憤り。けど、お互いに違いを認めつつも、自分のところに引き寄せすぎず、過剰にそこへ入り込もうとせず、穏やかな距離感が保たれていてホッとする。後半は、サトコが教会のボランティアで様々な立場の人々を目の当たりにしたり、日本人コミニュティに入って新鮮な思いをしたり、と。
あたりのキッチン!(3) (アフタヌーンKC)
白乃 雪 / 講談社 (2018-04-23)
読了日:2018年4月28日
鈴代さんが恋愛に興味がないと知り玉砕するも、友達になりたいとストレートに清美さんに頼む兼原くんの巻。旧な伯母さんの来訪に動揺するも、ちゃんとやってることは伝えられた清美さんの巻。幼い頃の清美さん、その父、阿吽のマスターのつながりが示唆される一幕。バレンタインをめぐる狂想曲。樹くんの父へ何かをプレゼントして喜ばれたいという思いと、周りの店員達がこぞって協力してくれる愛され具合の巻。辛いものを食べるのが娯楽ってちょっとわかる気がするわ、と微笑む鈴代さんのシーンがこの巻の白眉かなと個人的には思いつつ。そして、料理で人を喜ばせる!というところに清美さんが自分の適性を見出したシーンも。
アフタヌーン 2018年 06 月号 [雑誌]
講談社 (2018-04-25)
読了日:2018年4月27日
猫が西向きゃ:フロー、空間の浮動化。思念が現実に影響を与えてしまう世界での奇譚。ヒストリエ:なんだかやけになったエウメネス。王の御前で対話の末に剣を取り出して取り押さえられようとするが。イサック:城を遠巻きにする草原で剣で対峙するイサックと錬蔵。迫り来る敵兵。逃亡を図るプリンツ。ヴィンランド・サガ:フローキを殺そうと猛るトルフィンの前に身を投げ出したのはバルドル。彼の説得で、皆で変装して脱出することになるが...。ブルーピリオド:大作を仕上げて受けた翔さんと、次回作が自己模倣に陥って酷評の落差。好きな事をしてるからって楽しいことばかりではない、と煩悶。フラジャイル;北風と太陽を参考に、岸とは違う道で病理医として何かをつかみかけてる宮崎先生。あたりのキッチン:勉強に悩む清正と友人たち。鈴代さんの特別授業と清美さんの勉強応援メニューが少しは効き目があって、と。Black-Box:理恵がレオンのところに乗り込んで再起不能のレオンの婚約者と意気投合して決まったレオン-凌駕戦。チャンピオンになって幸せを掴んで、と言う言葉に、俺にそんな資格はないんだと返した凌駕の真意は。恋の罪:すでに物語は破局へ向けて最終局面なのかな。四季賞の蛇の山はひやりとした読後感。手元においておきたい。
ミコさんは腑に落ちない(2) (アフタヌーンKC)
イツ 家朗 / 講談社 (2018-01-23)
読了日:2018年4月26日
もっともっと読んでいたかったと思った完結巻。冒頭はミコさんとエンさんの出会いの話。エンさんの勤めるレストランに客としてやってきたミコさんの激しすぎる「美味しい」のリアクションが店員一同のハートをぐっと鷲掴みにし。そして仕事で落ち込んでやってきたミコさんを、店の範疇を超えた独自のこだわりでもてなすエンさん。そのこだわりが店を辞すことにつながったのだけれど。そしてエンさんが無職なことに過剰反応してしまったミコさんの友人二人。電話で詰問するような事をしてしまうけど、本人を目の前にして、納得。ミコさんとエンさんの素直に喜ぶところと息がぴったりなところと気遣い合うところがベストな組み合わせで、見てて微笑ましく。最後は、エンさんが元の勤め先の先輩の独立に誘われめでたく再就職。引っ越し後とその後の二人がさらりと描かれ。ああ、この空気感にもっと触れていたかった。単行本はサブストーリーも一個追加されていて嬉しかった。
検証 拓銀破たん10年
北海道新聞社 , 道新= / 北海道新聞社 (2008-07-01)
読了日:2018年4月24日
拓銀破綻から10年の北海道経済を描いたもの。/ウインザーホテル洞爺の再生劇について。「再生しつつある北海道経済の象徴」「道外の資金、ノウハウに頼るしか無い自立できぬ北海道経済の象徴」「サミットのテーマ「環境」がこれからの北海道経済の切り札になる」と様々な見方。/厳正な処理をすることが日本の将来のため、という正論が山一を自主廃業に追い込んだ。その流れに拓銀ものみこまれた、という元大蔵省の官僚。道銀との合併の話があったから大蔵省も最悪の事態に備えて勉強をはじめた、と語る元道銀頭取。財政金融政策の責任を誰も問おうとしない、拓銀幹部の責任ばかり問題にするのはおかしい、と元北洋銀頭取。リスク回避の嗅覚が鋭すぎてそれゆえリスクがつきものの企業育成はあまり得意ではなかったのかもと描かれる。それぞれの立場で見えてくる風景も様々。/受け皿銀行に移す時、黙って移せば受け皿がつぶれる。移さなければ北海道経済が崩壊する。そんな状況に直面し、悪戦苦闘して引当金付きの買い取り制度を考え出しました。(武井北洋銀元頭取)/北海道人気質。自然体の生き方、つきあいの良さは、裏を返せば、危機に対する感応度が低い。道庁や自治体、国などのお上頼み、官依存。/もちろん、元行員の行く末も様々。この当時はうまくいってるととりあげられていても、今となっては会社も吸収され、悪評もあり、行方もわからないというケースも。拓銀破綻をばねに生き残り、成長した会社も。
夜明けの図書館(4) (ジュールコミックス)
埜納 タオ / 双葉社 (2016-05-17)
読了日:2018年4月24日
John Lurie,The gift from a night sky(星を蒔く妖精たち)をめぐる先輩社員と留学生のストーリー。亡き夫が必ず買ってきた白くて丸いものがたくさんぶらさがったものが十団子という魔除けで、いかに一緒にいたひとを大切に思ってたかわかる話。非正規職員から見た図書館司書という仕事、正職員への視線…嘱託だからまかせてもらえないという思いに投げかけられた柔らかなひとこと。ディスクレシアの疑いのある児童へ、できることはないかという思いから、行きあったひとつの解決方法。レファレンスが人生を豊かにする、といった思いを抱かせてくれるストーリー。
拓銀はなぜ消滅したか
北海道新聞社 , 道新= / 北海道新聞社 (1999-03)
読了日:2018年4月23日
後から振り返ってみれば、潰れるべくして潰れたように思えるが、渦中にいては押しとどめようもなかったのでは、との思いも。バブルもハジけようという時に、積極攻勢に出て大きな穴をあけた経営陣。ダミー会社に塩漬けにしておけばいつか市況が回復するのではという甘い見通し。取引先も悲喜こもごも。政治銘柄で破綻した拓銀から運転資金を引き出した会社もあれば、無情にも連鎖倒産した会社もあり。預金は保護されたが、拓銀抵当証券を買ったものは放って置かれ、親会社の債務を押し付けられた子会社や関連会社は、再就職でも一番後回しにされ。最後の頭取が大蔵官僚にかけた「これ以上無理です」の電話。なんの心の準備もないまま、受皿銀行にされた頭取の、即断即決。大蔵省は否定しても、日債銀の時とは明らかに力の入れ方が違い、拓銀はスケープゴートにされたという見方。刑事告訴は、時効の壁で、バブルの戦犯と名指しされた者たちではなく、その後始末を押し付けられた形の者たちへと刃が向き。海外メディアに「NAREAI」と書かれた北海道の銀行と企業の体質。様々なトピックが目に止まり、どうにかできなかったかとの思いとどうにもならなかったのだという思い。
五色の舟 (ビームコミックス)
近藤ようこ , 津原泰水 / KADOKAWA/エンターブレイン (2014-03-24)
読了日:2018年4月22日
見世物小屋一家と未来を見通す異形の獣くだん。血の繋がりはないが家族のように暮らす一座と、座長を以前から支援する医師。気の持ちよう、なのかもしれないけど、望んだ世界へと人を運ぶくだんの能力。あったかもしれない戦後の話と家族の行く末にすこし救われる思い。
A子さんの恋人 4巻 (ハルタコミックス)
近藤 聡乃 / KADOKAWA (2017-09-15)
読了日:2018年4月22日
A子さんには、東京にひとり、アメリカにひとり、恋人がいて。ぐるぐるぐるぐる考え続けていて。性格の悪い仲のいい友達がいて。なかなかに辛辣なセリフが飛び交い、思ってたことは顔に出て、図星を指したりさされたり。山田、懐深いなあ。Aくんのいつもクールですましてるのに、A子のことになると時に取り乱すところ、すべて見通した上でまだ待ちつづけるところなど。4巻まで読み進めてきて、もうAくんでいいよー、Aぬんにしようよー。という読後感。まだ続くとのこと。
傘寿まり子(6) (KCデラックス BE LOVE)
おざわ ゆき / 講談社 (2018-04-13)
読了日:2018年4月22日
なんとか看板作家も確保でき、順調な滑り出しを見せたまり子のWeb文芸誌。しかし、ゲリラ的な番組に看板作家の家を直撃されたことから暗転。なんとかみんなで片付けをはじめ、それを中継することで、また評判を呼び。最後のページの提案になるのかならないのか、と。
森田真規 , 戸塚泰雄 , 小林英治 編集 / nu (2018-04-11)
読了日:2018年4月22日
5号がよかったので6号も購入。個人的にはハッとさせられる考え、キャラクター、作品、人などのとっかかりをくれる貴重な一冊。気になったフレーズ、作品を備忘録的に。リラックスして描いてるように見えて緻密、どこまで描いたら絵として最高なのかを知っていて不足もなく余計なこともしてない、と安西水丸べた褒めの台湾人カップル。柴崎友香のアメリカ滞在時の経験を元にした、新潮、連載の連作短編。ロベルト・ポラーニョの「2666」のトートバッグ。会社の福利厚生にサウナを含めてくれるよう社長にめっちゃ熱くプレゼンするライターさん。清原椎監督「わたしたちの家」。仕事の関係で二年ほど集中的に立ち食いそばを食べ歩いた、と言う出だしにやられたエッセイ。テンギョウ・クラさんのプロフィールにあったvagabond.link。芥川賞の選評で宮本輝さんに噛み付いた温又柔さんみたいなパンチライン。諦めたとしても最終的には自分を信じてる、ちゃんと労ってる、そういうもう一人の「自分B」を持ったほうがいい。草森紳一「ナンセンスの練習」所収の「ビートルズと極楽浄土」。世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦。イワフチさん「8月の不良」、きくちゆみこさん「愛を、まぬがれることはどうやらできないみたいだ」、SNOW SHOVEKING中村さん「NEW YORK BOOK STORE」。
珈琲の世界史 (講談社現代新書)
旦部 幸博 / 講談社 (2017-10-18)
読了日:2018年4月22日
歴史の流れよりは、個々の興味深いトピックに目がとまる。モーガン・フリーマン、ジャック・ニコルソン「最高の人生の見つけ方」に出てくる、コピ・ルアクしか飲まないという億万長者。カフワは14-15世紀にエチオピアからイエメンに伝来するももともとはコーヒー以外の材料から作られていた、白ワインやカート茶なども。ザブハーニーが、コーヒーの果実や種子にもカートと同じような働きがあるからとそこからカフワを作ろうと考えついたこと。16世紀半ば、オスマン帝国全盛期に、民衆の不満がスーフィズムへの傾倒を呼び、それにつきもののコーヒーやカフェハネがイスタンブルで流行。政治的に扱われたコーヒー禁止令、大宰相キョプリュリュ・メフメト・パシャも就任直後に発令。オーストリアをオスマン帝国のウィーン包囲から救ったコルシツキーが開いた、青い瓶の下の家、と言うカフェにちなんだのが、ブルー・ボトル・コーヒー。浸出法やネルドリップの原型はフランスから。第二次大戦中のコーヒー豆品薄の時期に、薄く入れて飲んでいたのが、アメリカで今でいうアメリカンが定着するきっかけ。1952年に宣伝のために作られた言葉「コーヒーブレイク」、仕事中に小休憩をとる習慣は同時期に発明されたカップベンダー自販機とともに普及。カフェ、といえば交流、コミュニティがメインで、コーヒー自体の美味しさを売りにするカフェは以外にも、20世紀末になるまで現れず、しかもまず日本に現れた、と。
ポップア-トのある部屋 (講談社文庫)
村上 龍 / 講談社 (1989-03-10)
読了日:2018年4月21日
発作的に再読。左腕だけは君のもの。あなたの全ては私のもの?と尋ねられ、Noと答えたら、けど左腕くらいはいいでしょう、と。どんな時に幸せを感じますか?と言うインタビューをするエピソード。マイルス・デイヴィスのビッチェズ・ブリュー、聞きたくなる。
魔法少女サン&ムーン~推定62歳~ (バンブーコミックス)
サメマチオ / 竹書房 (2018-04-07)
読了日:2018年4月21日
いままでとはガラリと違う作風。コンパクトをふてり同時に開くと、その時だけ時が止まり、したがって成長もしない。そんなこんなで、実年齢はずっと若いまま、70を越してしまった二人。やろうと思えば不老不死だけど、周りの人の年齢は止められない。そんな中での苦悩と葛藤。それでいて、とぼけたところもあって、と。
ヴァレンタイン会議 三島芳治選集 (つゆくさ)
三島芳治 /
読了日:2018年4月21日
味わい深くて大好きだった「レストー夫人」を描いた人だ!と思い、反射的にダウンロード。ずっと耳栓して人の声に耳を傾けない子の「これはコスモアンプリファイヤーと行って外界のノイズをしゃだんする事で自分の中の小宇宙を」に「その設定はもういいよ」のシーンが一番好き。限定一人でその人の時間を止められるという能力のささやかさも。
古本屋台 (書籍扱いコミック)
Q.B.B. , 久住 昌之 / 集英社 (2018-04-05)
読了日:2018年4月21日
気がついたらぶらりとててる古本屋台。白波一杯100円で飲ませてくれるけど、うちは飲み屋じゃないんだからとおかわりはナシ。ぶっきらぼうだけど、たまにおつまみくれたり、バイオリン弾いたり、古時計かけてみたり。他の客に絡む客や常識のない客には、ピシリと、帰れ、と。ヒゲの主人公がまた親父さんにしびれてる様がまたかわいらしく。どこでなにをしてた人か謎だけれど。行きたいと思った時になかったり、しばらく見かけなかったり、常連さんやご近所さんがどこどこでやってたよと教えてくれたり。そんなつながりもいいなあと。かすかなようで、ゆるやかにつながっているような。
葉桜と魔笛
太宰 治 /
読了日:2018年4月20日
cakesの三宅香帆さんの連載で見かけて。病気で死が間近の美しい妹のタンスから衝撃的な手紙の束を見つけ、その相手から手紙が来たかのように姉が代筆するも、全て見抜かれ、妹に実は...と語られる短編。姉が妹に向けた気持ち、妹が手紙を書いた気持ち、それぞれがからまりあい...と。
私の男 (文春文庫)
桜庭 一樹 / 文藝春秋 (2010-04-09)
読了日:2018年4月20日
5年ぶりの再読。今回は、骨になっても一緒に...というフレーズをキーに読み進める。そのために、恩人を流氷の上に流し、東京へと逃げてきたのに、結局は離れてしまうことに、と。その8年の間隔での移り変わりが気になった。あとは、匂いと風と。目に文が吸いつくようで読み飛ばすのを許さないような引力。津波テンデンコなんていうけど一人で生き残ってもしょうがないと言う老婆の嘆きが重く。
通商国家カルタゴ (興亡の世界史)
佐藤 育子 , 栗田 伸子 / 講談社 (2009-09-18)
読了日:2018年4月20日
アド・アストラつながり。7,8,9章のみ読了。歴史は勝者が書く、とばかりにローマ帝国の視点の者しか目にしたことがなく、カルタゴ視点のものは初めて読むかも。ボリュビオスは、ハンニバル戦争の真の要因は、傭兵浅草寺のサルディニア問題に遡ると指摘。そのため対ローマ復讐へ傾き、その急先鋒がハンニバルの父ハミルカル・バルカであり、彼がスペインへ出発した時には、開戦への秒読みが始まっていた、と。またそれは民会に集結した下層の者たちの支持を受けていた、と。ハンニバルはサグントゥム問題で開戦したが、それよりは不当に奪われたサルディニア島の返還と不当な賠償金の返還を要求した方がよかった、と。アルプス越えは、ハンニバルの名将ぶりよりも、フェニキア人、カルタゴ人が長年に渡って蓄積した地理学的実力の発揮であった。ファビウスの無限の補給と豊富な人員を生かした持久戦はじわじわと効果をあげ。そして明確なプランを描き切る前に、サグントゥム問題で開戦してしまったため、ハンニバルは、あと一突きでローマを陥落させられるチャンスも座視してしまい。ハンニバルのイタリアで試みた、反ローマ、非ローマの緩やかな同盟の結成は叶わず。最後はザマの敗戦を招いた、と。ハンニバルが、ローマに敗れたあとも、貴族層の発言力を弱め、財政改革を行い、一般民衆の税負担を軽減したこと。しかし急進的な改革が反発を受け、国外に逃亡し、シリア王のブレーンとなったのち、自死することとなったことが描かれる。またカルタゴに原因があったかのような滅亡についても、当時のローマが、簡単に戦争を仕掛け、簡単に殲滅する戦争マシーンともいうべき様相を呈していたことを指摘している。それは力のおごりだけではなく、軍事的栄光をめぐる激しい競争に起因していたのでは、と。
東京を生きる
雨宮 まみ / 大和書房 (2015-04-22)
読了日:2018年4月17日
http://lineblog.me/ha_chu/archives/67276069.html つながりで。故郷を憎み、東京に溶け込み、東京の人になろうとして、なのに東京でも屹立してる人でなければ、東京の人だなんて言えない気がして、生活を削って華やかなものを纏うことのアンバランスさに気づいたり、もしも死ぬならダンスフロアで死ねたらいいという思いに自らの「生命力」を感じたり。ここまで自分をさらけ出し、痛めつけ、それでも東京への愛と憎んでいたはずの故郷への愛を確認する、凛とした姿勢を感じた。
世界地図のおもしろい読み方 (扶桑社文庫)
「地図の読み方」特捜班 / 扶桑社 (2007-06-28)
読了日:2018年4月15日
日付変更線を変えてまで…キリバス。内陸国なのにチチカカ湖に海軍…ボリビア。フランスとスペインに税金納めるアンドラ。ロシア連邦内の仏教国、カルムイク共和國。ハワイの鎖国中の島、ニイハウ島。国家まであるのに定住民のいないディエゴガルシア島。国内移動なのに出入国手続きのいる、タンザニアのザンジバル島-広範な自治権をもった政府があるため。中国の標準時が一つであること-西の人は不便だろうなあ、非公式な新疆時間はあるようだけど。ルーマニアとチャド、モナコとインドネシアは全く同じ国旗。などなど興味深いトピックだった。
夢の雫、黄金の鳥籠 11 (フラワーコミックスアルファ)
篠原 千絵 / 小学館 (2018-04-10)
読了日:2018年4月15日
狩りの練習でヒョウを追う皇子たち。敵対する妻妾を殺さないからとヒュッレムをなめてかかった女官に下された裁断。そして、アルヴィーゼ・グリッティの帰還。客人としてハディジエに引き合わせるイブラヒム。最愛のものと結ばれぬ四人の交錯。グリッティの最期を史実から知る身には、儚く映るが、手柄を立てて必ず迎えに来るという力強い宣言。いざ場面はハンガリー遠征へ、と。個人的には見開き2ページで古都エディルネがこの時期も重要な拠点として描かれてたのがうれしく。
編プロ☆ガール (ぶんか社コミックス)
川崎昌平 / ぶんか社 (2018-04-10)
読了日:2018年4月15日
同じ作者の、重版未定、重版未定2が面白かった身には、買わずにいられなかった一冊。出だしからして、フィクションて言ってるけど、この本のことだろ!とツッコミたいエピソード。そして、醤油大さじ9、まだ△覆里豊で用意した調味料、弱火でコトコト煮込み焦げ目がしっかりつくように焼く、200分強火にかけた鍋に上質紙3kgを流し込み200度に熱した油を注ぐ...と恐怖の誤植オンパレードのレシピ本が実話だったこと...。ミスを謝罪にきておいて、うちは編プロで編集はするが刊行物に責任持つのが版元でしょう、火事が怖いなら薪を焚べるな、と啖呵を切った逃げた編集者の上司。確認、という最低限の手間さえ惜しんだ、あるいは惜しまざるをえなかった忙しさ、その発生する構造。どこかで本が出なくても人が死ぬわけじゃないとこっそり消える編集者たち、真正面から受け止めて心を壊す者たち。「あっという間に消える本をあっという間に編集する それが俺たち編プロなんだ」という矜持。「読まれるかどうかは編集者が決めることじゃない読者が決めることなんだよ」。「読まれない本にも読者に選択肢を与えている点で意義があるんです」。クールでニヒルなシーンが多いけど、それでも...という思いがかすかに残っているのは感じられる。出色は、版元の危機を企画で救ったエピソード。作者自身もほぼありえないけどこういった形があってもいいのではないか、と。最後に新米だった束美が編プロでしかできないことをやると引き抜きを断り、先輩と同じことを新人に言いながら教育するシーンで締めくくられる。
居酒屋の世界史 (講談社現代新書)
下田 淳 / 講談社 (2011-08-18)
読了日:2018年4月15日
第四章 イスラム圏の居酒屋のみ、目にとまり。コーランでは、飲酒を戒める章句はあるが、それほど厳しいものには感じられない、と著者。アブー・ヌワースの詩にあるように実際には、市井に居酒屋はあった、と。またオマル・ハイヤームやハーフィズにも飲酒を詠う詩があったと。ヨーロッパの多機能な居酒屋とは違い、社交の場としてはモスクがその役割を果たし、飲酒、エンターテイメント、売春といった機能に限られていた、と。オスマン帝国ではカフェにその役割が移っていった、と。読み落としたのかもだけど、アラビア語やオスマン語では居酒屋に当たるのはなんだったのか気になるところ。アブー・ヌワースは読み返したくなって来た。
家島 彦一 , 渡辺 金一 / 東洋経済新報社 (1984-10)
読了日:2018年4月14日
湯川武「ユダヤ商人と海 ゲニザ文書から」を読みたくて、「イスラム世界の人びと4 海上民」手に取る。「昼も夜も彷徨え」つながりで。マイモニデスは直接は出てこなかったけど、作中でいえば弟のダヴィデが商人の道を選んだこともあり、そのバックグラウンドの世界を知りたく思い。遠隔の地の姻せきを巡って、アデン、インド、エジプトとめぐる商人がいたり、代理人やパートナーにのみ頼るのではなく、利益になるとなれば、遠方まで自ら出かけ旅し時には住み付く商人もいたこと。遠く中国まで足をのばしたものも。そしてムスリムと同様に各地のユダヤ教徒コミュニティがそれを後押しした面も。
夜明けの図書館(2) (ジュールコミックス)
埜納 タオ / 双葉社 (2013-05-16)
読了日:2018年4月14日
新米図書館司書が主人公。レファレンスで利用者の人生にちょっとした転機がもたらせたら、と。この巻は、あいまいな情報から姉妹の思い出の絵本を探してギクシャクした今の関係がいい方向に。廃部寸前の男子校の料理部に、最初は受け入れられなかったけど、いろいろ館内を見て回るのはムダじゃなくてチャンスだよ、と背中を押し。昔芸妓でならした人が長年の相方の記憶に訴えかけるために探してる唄。東京から来てクラスに馴染めない子が探している植物。最後はレファレンスばかりにかまけて他の仕事が回ってないと事務職の同僚に怒られるオチも。あいまいな情報から推測に推測を重ねて求められていた情報にたどり着いた時の楽しさ。
夜明けの図書館(3) (ジュールコミックス)
埜納 タオ / 双葉社 (2014-08-16)
読了日:2018年4月14日
新米図書館司書が主人公。この巻のレファレンスは、司書を目指すきっかけになった子供時代の近所の司書さんに、だいぶ遠回りしたあとに助けてもらい、近所の体の弱い友人のためにすずなり星を調べるエピソード。自分がバカだと決めつけて、祖父からの遺品のオウムを手放そうとする青年へのアドバイス。病気に悩む人に、治療はできないけど、できるだけの情報を手渡そうとする話。定年退職してどこにも居場所のないと感じる人がよりどころにしていた遺構が、大昔に建設計画だった鉄道の施設の一部だと解き明かすまでの道のり、など。
八重山の社会と文化 (やいま文庫16)
古川 純 / 南山舎 (2015-04-01)
読了日:2018年4月14日
オヤケアカハチ、及び波照間島への興味から手に取った一冊。それに限らず興味深いトピックがあったので、以下備忘録的に。/八重山の考古学発掘の成果からの、土器→無土器→土器という稀有な変遷。/オヤケアカハチ・ホンガワラは、大浜の倭寇の子孫で偉大な気高い(赤髪の)頭領、という意味。/琉球から独立するアカハチ王国の意図があったのでは、それに対する宮古、与那国の反発が、琉球王国と組んでの、アカハチ討伐になったのでは、内実は八重山の内戦だったのでは、という提言/宮古・八重山の先島の民のみ人頭税を課された。/津波痕跡が残らないことこそが、その地点を津波が襲った証拠にもなりうるのだ。(トートロジーに陥る恐れも)/1945年12月、一週間だけの八重山自治会=八重山共和国。/出版許可綴の申請書に見る八重山再建の熱意/復興博覧会(1950)。(これについてはもう少し掘り下げてみたい) /八重山では敗戦後4ヶ月間行政機能が停止していた。/波照間の住民が強制移住させられた崎山の「崎山節」。(これももう少し当たってみたい)/蔡温が強制移住の提唱者。
長尾 雅人 , 福永 光司 / 岩波書店 (1988-01-01)
読了日:2018年4月13日
井筒俊彦「中世ユダヤ哲学史」のマイモニデスの項のみ読了。聖なるシナイ山の体験に直結するタルムードが、それだけでは人を「神の宮居」に導き入れない。当時のユダヤ知識人社会において、哲学は一般に、非ユダヤ的な営み、聖に反する俗なるものと考えられていた。その哲学が「神の宮居」への直線コースであると、主張。と言った一節のみ引いておこう。
キングダム 49 (ヤングジャンプコミックス)
原 泰久 / 集英社 (2018-01-19)
読了日:2018年4月13日
朱海平原の戦い。初日。馬南慈と信の一騎打ちは時間に阻まれ、そして、王翦と李牧の読み合いは、間隙を縫って、左翼の麻鉱を討った李牧に軍配があがるかと思いきや、蒙恬の決死の立て直しでなんとか挽回。山の民と犬戎うの戦いも火蓋が切られ。2日目は、王賁に超軍が殺到するところまで。臨時とはいえ将に立てられた蒙恬に信は…と。立って戦え、が檄となり。
歩きながら考える編集部 / 誠光社 (2016-01-01)
読了日:2018年4月13日
「なnD」5を読んで興味を惹かれたZINE。その中から気になった三人を。/野村正次郎。Mac OS 10.5、Windows Vistaにチベット語を搭載。2010年にiOSにチベット語システムが搭載され、チベット人たちは自分たちの文字で多くのデータを作ることができるようになった。数百巻のチベット大蔵経をiPhoneで読むことができ、伝統的なチベット仏教の伝授会に僧侶たちはiPadを持って出席。/「私たちはかつての物質的な文字ではなく、新しい文字をいま手にしている。ここから新しい文学や芸術が必ず生まれるであろう」/60歳超えた新人ギタリスト濱口祐自。「たまにはジャズ屋もブルースやファンクやったりしたらいいんじゃないかと思うね」。アルバムにも当たってみたい。/谷口愛。坂口三千代「クラクラ日記」の紹介。「相手のことは変えられない、でも自分のあり方は決められる。」
TRANSIT(トランジット)特別編集号 美しきイスラームという場所2015 (講談社 Mook(J))
ユーフォリアファクトリー / 講談社 (2015-06-19)
読了日:2018年4月11日
ざっと読了。イエメン。世界初の高層建築都市と二人のフォトグラファーの対談が印象に。サウジ。リヤドに建つキングダムセンターの、周囲から抜きん出てそびえ立つ威容の写真が強い印象。その他、美しき光景を収めた写真をパラパラと眺めて楽しむ。
くるい咲き 越前狂乱
大塚 卓嗣 / 光文社 (2018-02-15)
読了日:2018年4月11日
戦国時代。越前。潮目が変わった、と朝倉家の衰退を予見し見限り、織田陣営に走った武勇一本槍の富田長繁。いっとき、戦場で長繁と関わり、最後まで朝倉家についていた小林吉隆。ただただ面白き戦をしたい、越前を手に入れたい、民に良い暮らしなど興味がない、戦では無類の強さを発揮する長繁と、民のこと主家のことなど良心と戦いつつ、長繁とは付かず離れずどこか煮えきれない、けど生き残ってきた吉隆。信長により朝倉家が滅ぼされ、後に据えられた桂田長俊を長繁が滅ぼし、越前を手に入れたと思ったのもつかのま、湧き上がる膨大な一揆勢。最後は700vs100000の兵力差を物ともせず、蹴ちらす勢いだったが...。先行きの見えない、度重なる出陣は味方から、背後からの銃撃を誘った、と。燃えるような、己の欲望剥き出しの長繁像は鮮烈な印象。ただ、凡人ではそれについていけないというのもまた理解でき。
辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦
高野 秀行 , 清水 克行 / 集英社インターナショナル (2018-04-05)
読了日:2018年4月11日
前作、「世界の辺境とハードボイルド室町時代」が面白かったので、同じコンビだし手に取る。「ゾミア」から浮かび上がる、「強大な権力の支配から逃れるために、あえて「窓口」をつくらない、というのは支配される側の一種の知恵ですね。」「結局、文明とは誰のものなのか」「むしろ文明でメリットを得てきたのは国家の側だったんだっていうことを学びました」という視点。イブン・バットゥータの「大旅行記」で最高のキャラと紹介されるのが暴虐と慈愛の君主、インドのムハンマド=ビン=トゥグルク。/町田康「ギケイキ」で描かれる中世への鋭い視点には二人とも賞賛。「「ギケイキ」の中で義経は、兄の頼朝について「あの人の場合は、意識的に田舎者になった節がある」という言い方をしてるでしょ。これ、鋭くないですか。/頼朝はあえて関東の田舎者になったからこそ、田舎者の世界でトップを張れた。/「列島創世記」。縄文時代はゴテゴテに凝った土器をつくっていたのに、時代が進んで弥生時代になると、土器がシンプルになっていく/道具は必ずしも実用性からデザイン性へという変化をたどるわけではない/というのを読んで、個人的に、最近読んだ八重山の社会と文化で、考古学の発掘成果から土器->無土器->土器と言う時代変遷が紹介されてたおり通ずるものがあるのだろうか/「日本語スタンダードの歴史」「現代日本語の源流についても、約五百年前、すなわち応仁の乱以降の一五・一六世紀の日本語を眺めれば足りる」/室町期には、流通が発達して、都にいろいろなものが集まってくる、と同時に、都の知識や教養が地方に拡散していった結果、人々が都を目指すようになったって言ってたじゃないですか。/政宗もローカルルールにのっとって文書を書いていたんですが、朝鮮出兵のときに、九州の名護屋城にいろいろな大名たちと一緒に集結させられて共同生活を営むようになると、文書から三濁点が消えて点が二つになるんです。/様々な興味深い視点が提示されていて飽きさせない魅力。もう、「普遍」というものを根底から覆す「ピダハン」はもっとも強烈な印象で手に取ってみたく思った。/あとは、清水和裕「初期イスラーム時代の奴隷女性と境域の拡大」「歴史学研究」950 2016/10月号 ー原則イスラーム教徒を奴隷にすることはない、細川重男「頼朝の武士団 将軍・御家人たちと本拠地・鎌倉」洋泉社新書y - 吾妻鏡を元に頼朝周辺の御家人の生態を描いた。彼らの会話がチンピラ言葉で訳される。あたりにもあたってみたい。
織田信長 <天下人>の実像 (講談社現代新書)
金子 拓 / 講談社 (2014-08-19)
読了日:2018年4月11日
史料に基づいて、信長は革新的かつ先進的な存在ではなかった、という視点で描かれていると知り、手に取った一冊。「天下」という言葉を日本全国と捉えるか畿内周辺と捉えるか。後者ととらえ、天下布武とは畿内周辺を静謐とし、それ以外の領域の勢力とは信長優位で友好関係を結べればそれでよしとしてたのではないか、と。領国支配も柴田、羽柴ら大身の家臣に分権的に領域支配を委ねる、さして目新しくなく(中央集権的ではなく)、行政制度、租税徴収制度では後進的という評価もあり。将軍義昭を担いでいた時期も、戦国期室町幕府の政治的枠組みから逸脱しようとしておらず、強い主導性の発揮には慎重。朝廷との関係も、将軍がいる際は将軍が、いなくなった後は信長自身が朝廷を支えるべきという素朴な考えから行動していることが伺える。官位に対しても、さほどどうあるべきかの知識もなく、思い入れもなかった。ゆえに朝廷と官位を巡って確執があったこともない、と。ただ、最晩年については、著者は、天正十年武田氏討滅から将軍推任に至る流れが、天下静謐すれば事足れり、としていた信長の意識に変化を生ぜしめたのではないか。中国四国攻めへとうつる動きがあまりにも性急だったため。また、長宗我部氏との断行の経緯は、天下静謐の考えからはみ出した、剥き出しの欲望、統一への志向が見られ、それも含め、天下静謐から全国統一という流れを感じ取り、阻止しようとしたのが光秀であり、その結果としての本能寺の変ではなかったか、と。興味深い説。

また、参考文献としては、・金子拓「誠仁親王の立場」「織豊期研究」15,2013 ・等身大の姿を描いたと話題になった池上裕子「織田信長」吉川弘文館,2012 あたりにあたってみたく思った。
マジカルプランツ 食虫植物・多肉植物・ティランジアをおしゃれに楽しむ
木谷美咲 / 山と渓谷社 (2012-01-13)
読了日:2018年4月10日
漫画「タニクちゃん」を見て、そそられた一冊。みんな食べてる多肉植物の項で挙げられていたアロエ。そうか!多肉植物だったのか、と。他にアイスプラント、グラパラリーフは食べてみたことあり。食虫植物食べてみた、はなかなか食欲がそそられず、チャレンジ精神には頭が下がります。多肉植物の寄せ植えやアレンジメントは美しくて見てて飽きず、でした。
ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装
斎藤 康毅 / オライリージャパン (2016-09-24)
読了日:2018年4月10日
通読するものではないのかもだけど通読。途中までは手を動かしながら。途中からは読むのみで。一度挫折。外部のセミナーを受けたあとに再挑戦。高校数学の復習が必要。また何度か立ち返って自分のものにすることも必要。/重み、バイアス、ネイピア数、シグモイド関数、ソフトマックス関数(出力を確率として捉える)、過学習=あるデータセットだけに過度に対応した状態。ニューラルネットワークの学習の際に認識精度を「指標」とすべからず、パラメータの微分がほとんどの場所で0になるから。/勾配が示す方向は、各場所に置いて関数の値をもっとも減らす方向。/ミニバッチとして無作為に選ばれたデータを使用する確率的勾配降下法(SGD)/逆伝播/重みとバイアスを訓練データに適応するように調整することを「学習」 /ニューラルネットワークの学習において重みの初期値は重要/ベイズ最適化/NumPyではfor文を使うと処理が遅くなる->im2col関数を使用。
ハイスコアガール(8) (ビッグガンガンコミックススーパー)
押切蓮介 / スクウェア・エニックス (2018-03-24)
読了日:2018年4月8日
ハルオをめぐる大野と日高。大野のブラックユーモアあふれる、自分の部屋へのハルオの招待、ハルオをのこしての、日高とのゲームでの直接対決。最後のシーンの大野の真意は次巻へ。
銃座のウルナ 5 (ビームコミックス)
伊図透 / KADOKAWA (2018-03-28)
読了日:2018年4月8日
トホマの正体を知ってしまったウルナ、それでも受け入れ、求め合い、一体となったと思ったときに、戦火が忍び寄り、人々は疑心暗鬼に。その矛先はよそ者へと向けられ…。黙って一人去るトホマ。残されたウルナは…。誰が悪いわけではない、そういう側面もあるが、やられたものが許しとともに言うならともかく、やったほうがいうのはな、というシーンもありつつ。また、記憶するものがいなくなれば、無かったことにされてしまう悲しみも。
池袋レインボー劇場 1 (ヤングアニマルコミックス)
えりちん / 白泉社 (2016-06-29)
読了日:2018年4月8日
全3巻。家出してきて当てにしていた先輩のところにもいれなくなり、転がり込んだのが歩夢姐さんのところ。何をしているか最初は教えてくれなかったけど、仕事先についていくとストリップ劇場と知り。そのステージを見たことで、魅せられ、自分も踊り子を目指すことに、と。後輩の踊り子さんたち、寮の大家の不登校の中一の少年、歩夢のストーカーで客の警察官とそれぞれ個性的。好きでやってることだけど、理解してくれる人ばかりじゃないと言う歩夢の言葉。主人公が好きになった美術教師のバックグラウンドと、5年後に…と言う言葉を残して閉じられる物語。その先のことも、これまでの歩夢のストーリーも読みたかったなと思いつつ。
えじぷり! 1 (裏少年サンデーコミックス)
ナオダ ツボコ / 小学館 (2017-09-12)
読了日:2018年4月8日
エジプトの国民食コシャリ専門店コシャリ屋コーピーのカウンターにあって気になってた一冊。モテすぎてモテることに飽き飽きしていた高校生のコウ。親友の並川。そんな時に、コウが見かけた、エジプトの壁画のような女の子クレオに一目惚れし猛アタック。ちょいちょいエジプト小ネタを挟みつつ、ヒエログリフの手紙を送るなど、遠回しなアプローチに終始してたけど、並川の助けも借りて、付き合うことに。おとなしくて、見た目は壁画見たいだけど、趣味はいたって和風なクレオだけど、誰かが争っているのを見ると大声でたしなめたりと気の強いところをみせたり。構わずエジプト好きを突き進むコウとの案外いいコンビっぷりが微笑ましく。
タニクちゃん (フィールコミックス)
よねまる / 祥伝社 (2016-07-08)
読了日:2018年4月8日
現在3巻まで。母が世界一周に出かけたため、転職中で無職の男が、母の経営する多肉植物の店の店番を任されることに。頼りない店番ぶりに、多肉植物が喋れるようになり、時に、育て方を厳しく指導したり、時に、恩に感じ好意を寄せたりとにぎにぎしく進められるストーリー。多肉植物の種類、育て方などに触れられて楽しい。東京根津の「弥生坂 緑の本棚」と言う多肉植物ショップ&カフェで見かけて気になっていた一冊。
死にたい夜にかぎって
爪 切男 / 扶桑社 (2018-01-26)
読了日:2018年4月8日
夫の...の、こだまさんと一緒に同人誌を出してたとのことで手に取る。どうにもならない実家の人々、実家のある町への思いの描き方が通ずるものがあるかなあ、と。あとは、帯に描きたくなるフレーズ目白押しの暗黒かつ怒涛の青春時代が赤裸々に語られ、初体験から、職場で好意を寄せてくれた人、一晩だけあった人、行きつけの喫茶店の名物おばさん、そして六年暮らして、大ゲンカしながらも最愛と思った人に振られ、自分が長い間持っていたコンプレックスも砕いてくれて、愛した女は時速400キロで去って行った...て、ウルっときそうな終わり方かと思いきや、あとがきのどんでん返しがまたすごかった。
金子山 / Kumanbachi Books (2014-06-22)
読了日:2018年4月7日
模索舎の店頭で見かけて一目惚れした写真集。2010-14年の東京での人々を撮った写真。ほぼカメラ目線の人がいない...ということは無許可なのかなと思いつつ。まず巻頭からして朝方のラブホの前でふざけて寝っころがりながパンツ脱いだ男の人とそれ見て笑う人。そして、これでもかと街中で路チューしてる人たちいるのか、と、そんな隙間で寝こけている人たちがいるのか、と。虚ろな目で荷物を運ぶ佐川女子。なぜか大股広げて空を見上げるスーツの男性。電話で二人とも寝こけているのにハーモニーを感じる一枚。座り込む人。電話する人。待ち合わせ顔の人。様々な人々が描かれ、猥雑な、東京の空気が伝わってきて、エネルギーを感じる一冊。ほとんどの人がガラケーなのも少し時代を感じる。個人的には宝物になりそうな一冊。
3月のライオン昭和異聞 灼熱の時代 6 (ヤングアニマルコミックス)
西川秀明 / 白泉社 (2018-03-29)
読了日:2018年4月7日
白い巨塔とかの作家がモデルなのだろうか。パフフルな小説家に見込まれた神宮寺。半生記を書くから取材させろと押しかけられ。その間もぐんぐん勝ち進み。神宮寺の元カノが大女優となり結婚、祝ってやれと背中を押したのも小説家だった。乗り込んだA級は曲者の実力者の揃う手強い世界だった。初戦の行方は…というところまで。
明日クビになっても大丈夫! (幻冬舎単行本)
ヨッピー / 幻冬舎 (2017-09-20)
読了日:2018年4月7日
ネットでよく見かけるライターさんの、軽快なタッチで描かれてるけど、そっと背中を押してくれるような一冊。水風呂はいるのはいいなあ、とちょっと思った。めちゃくちゃやっているようでいて、ちゃんと道筋はついているんだなあ、と。以下備忘録として。/少しのふざけも許されない会社に呆れ、どんどん浮いていった会社員時代。組織が優れていれば優れているほど、個人のやりがいは搾取される仕組み。反面、インターネットの世界ではオモコロでお下劣記事を連発。お金にはならず、むしろ減る一方だったけど、やりたいことをやりたいようにやれていた、と。で、結局のところいいたいのは「あなたも本業以外に何かやれ」と。とにかく自分がやってみたいことを100個ぐらい書き出してみて。消費する趣味を生産する趣味にする方法を考えよう、と。まだまだ儲かるイスなんて探せばガラガラに空いてるんだからと。/生きる上で大事にしていることは、会いたい人に会う、行きたいところにいく、やりたいことをやる/何かしようと思って行動して何かができた時は自分の事を少し好きになれるはずで、結局のところ「幸せの近道」なのでは、と。
森田真規 , 戸塚泰雄 , 小林英治 編集 / nu (2017-3-29)
読了日:2018年4月6日
東京のクリエイターたちへのインタビュー。そんな考えあったんだ、とかその映像見てみたい!と新鮮な刺激を受けた一冊。模索舎で見つけて手に取る。興味深いトピック目白押しで書き留めてみる。/「百年」というお店の店主。「百年を選んで売ってくれるということは、値段だけではなて、自分が大切にしていた本が、百年を通して、どこか別のところへ行くとをいいことだと思ってくれているのかなと思うんです。」/恵比寿映像祭の空族のインスタレーション=映画「バンコクナイツ」のスピンオフ、見てみたかった/ゆっくり本を読みたい人のためのカフェバー「fuzukue」@初台 行ってみたい。ただ、お連れ様同士の会話も厳禁なそうで/映画「バンコクナイツ」。オレたちは神様じゃないから。これが正解ですよ、みたいなことをやろうというつもりはないわけで。オレたちは現実で怒っていることをが面白いと思っているんです。/富田克也さん。最近読んでるんですけどコレすごいですよ、が譚嗣同「仁学」、支配階級が天に通ずる道を絶たれた、本当はみんなそれぞれ天に通じていたはずなのに。/コーネリアスのインタビュー見て、小沢健二、流動体について、神秘的、チェックしたくなった/テンギョウ・クラさんには強烈な印象。格闘家を目指してたところから英語教師、そしてヴァガボンドへ。ザ・東京ヴァガボンドx上野とか興味深い。/Mother Tereco「Oracle」聞いてみたい。/渋谷TSUTAYA O-EASTビル屋上で農業始めちゃう三人組/黒田三郎の詩を読むと泣けちゃうという前野健太さんと、古書往来座の今は亡き名物店長のお話が鮮烈/キデンセンの餃子の王将話も面白く/ヴェルベット・アンダーグラウンドのファーストと「FANTASMA」/Thomas A.Goldwasser Rare Booksというサンフランシスコの予約制の本屋さん。それだけで一編の小説の書けそうな。/三品輝起さん。人も物も聖俗で判断してはならない。陰影こそ見なくちゃならない。/
織田信長 不器用すぎた天下人
金子拓 / 河出書房新社 (2017-04-22)
読了日:2018年4月4日
浅井長政、武田信玄、上杉謙信、毛利輝元という一度は信長と同盟を結んだ大名、松永久秀、荒木村重、明智光秀といった信長を裏切った家臣との関係を洗い出すことで語られる信長の実像。/裏切られの理由には、信長に「外交の手ぬるさ・不器用さ」があった。(略)信長と個々に同盟している相手同士の敵対という状況があるにもかかわらず、現状に配慮せずに一本調子で、彼らの和睦を推し進めようとしたこと(信玄・謙信の例)、現地における対立的状況を無視して、一方だけ、あるいは双方ともに肩入れすること(久秀・輝元の例)、信長と相手の支配地の境目に位置する領域にある勢力に対する、無配慮な支援・介入(信玄・謙信・輝元の例)などが挙げられる(p.162より)と言う一節に集約されれるのではないだろうか。信長は人を信じすぎたのではないだろうか、という一文が印象に。/信長と謙信のすれ違いを、謙ちゃんと信くんの恋愛模様にたとえたり、RADWIMPSの歌詞が出てきたりとポップな面も見せて読みやすくする一面も。/やまもといちろうBLOG -【書評】『織田信長 不器用すぎた天下人』(金子拓・著)に中小企業オーナー経営者の悲哀を見た、を読んで手に取った一冊。
イスラームの「英雄」サラディン―十字軍と戦った男 (講談社選書メチエ)
佐藤 次高 / 講談社 (1996-05)
読了日:2018年4月3日
中村小夜「昼も夜も彷徨え マイモニデス物語」を読んで、参考文献に挙げられていて手に取る。サラディンが権力を握ってからをざっと拾い読み。カーディー・アルファーディルについては随所に記述が見られたが、マイモニデスについての記述は皆無だった。また、一貫して、ザンギー朝、アッバース朝を形式的には敬い、上において、刺激しないようにした姿勢は印象に残った。
珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎
橋口 幸子 / 港の人 (2011-04-18)
読了日:2018年4月3日
港の人、の社名にもなった詩集「港の人」を書いた北村太郎。彼の晩年に、夫婦で、ご近所さん、大家として関わりを持った著者の語る詩人との交友が味わい深く描かれる。時に、こういう気持ちだったのでは、と推しはかりすぎるところが、目につきはするが、総じてその視線はあたたかく、読んでて心地よいものだった。北村太郎の詩をもっと読んでみたくなった。
ヒラヤマハルタカ / しまや出版 (2016-1-31)
読了日:2018年4月1日
食品サンプルを集め続け、部屋に飾るA美。同棲する彼氏にプロポーズと同時に、今後食品サンプルを買わないでくれと告げられ...。追い出し、手酷くふったあとに、食べ物が食品サンプルに、食品サンプルが腐る幻覚が見えるようになり。最後は...と。スイーツは最強、って、元サヤに戻ったのか、快方に向かッタのかは、読者に委ねられ。あとがきの、人は生まれながらに、何かを集めたがるものだ、が染み入る。自分の場合は...本だな。
あこ / あこ自宅 (2017-08-20)
読了日:2018年4月1日
とくしゅう ストリップの手引き。女性目線からの案内。料金システム、観劇のマナー、全国マップ、観劇を楽しもう!。なるほど、こんな感じなんだ、という入り口には良いのかも。北海道にはもう全然ないみたいです。
川嶋克編集室 / 川嶋克編集室 (2018-01-01)
読了日:2018年4月1日
スナック文化論、と銘打たれた小冊子。スナック4軒とも、大分県日田市隈町1丁目と2丁目にあるお店。常連客と乾杯、水割り濃いめで彼の人生もちと濃いめ、なんてキャプションに導かれつつ。地元の人に愛され、ママの人柄が愛され、大人の社交場にくつろぐにくる人たち。ママの来歴も様々で。味わい深い一冊。
大畑沙織 / 株式会社インディヴィジョン (2007-08-01)
読了日:2018年4月1日
タイトルが、藤岡亜弥「さよならを教えて」に感じが似ていて、手に取る。パラパラと。明るい廃墟。もの寂しい印象だけど。そこまで深くは入り込んでこず。
RAPID COMMUTER UNDERGROUND (ビッグコミックススペシャル)
座二郎 / 小学館 (2014-07-30)
読了日:2018年4月1日
東京の満員電車の地下鉄、通勤の行き帰りで描かれたという一冊。通勤車両にウサギやら象やらの動物がまよいこむファンタジーな展開から、twitterで漫画描きながら通勤してるとつぶやいていたら、ファンの女子高生が会おうと乗り込んでくるけど、微妙にすれ違ったり、と。独特の味わいの絵とストーリー。
臆病な詩人、街へ出る。 (立東舎)
文月 悠光 / リットーミュージック (2018-02-16)
読了日:2018年4月1日
自分の臆病さを、肝心なことから逃げて、相手にばかり委ねてしまう面もあると気づき。/かと思えば、叩かれると落ち込むどころか生き生きする面もあり/エイヤとミスIDのオーディションに申し込む勢いもあり。"恐れるな。挑まなければ、「負けた」という記録さえ残らないのだから"/その振れ幅と言うかギャップというかそこは面白いなあと思いつつ。/"<学生詩人>の看板が定着した頃、私は最大のミスを犯した。大学を卒業してしまったのだ。"のユーモアに吹き出し。/チョーヒカルさんからの率直なダメだし。それでいて、指摘するだけ指摘したらあとはカラッと付き合ってくれる気持ちのいいところに感心/女のくせに、詩人のくせに、というカテゴライズへの反発。/石原吉郎の詩、雨宮まみ「東京に生きる」は手に取ってみたくなった作品/ただ、その場で言い返すのが苦手で、後からいいたいことがまとまるからって、対話が、相手のセリフのみ、自分のセリフは後から本でのみ、というシーンには違和感。作品が一番だからといって、後付けでそれをされると、される側は...と思ってしまった。/
疲れをとるなら帰りの電車で寝るのをやめなさい
伊藤 和弘 , 佐田 節子 / 日経BP社 (2017-11-25)
読了日:2018年4月1日
タイトルに惹かれて手に取ってみる。いくつかは取り入れてみようかな、と。以下備忘録的に。/帰りの電車で席に座って寝てしまう/ベッドの上で寝る前に本を読む/まだ眠くないのにベッドに入る/休日にいつまでも寝ている/は疲れを取るのによくない、と。直感的にはなんで2つ目、3つ目はダメなんだろう、と思いつつ。/様々な専門家に聞きに行ってるので、それどっちがいいんだろう(例えば適正な昼寝の時間)みたいなトピックもあり。/昼寝は横になるのベスト、できなければなるべく上半身倒してリラックスした姿勢、時間は30分以内、カフェインの効果が現れるのは20-30分後だから昼寝前にコーヒー/湿度を50%以上に保つとウイルスの95%は活動できなくなる/休日はいつもより2時間以上遅く起床してはいけない/ベッドにいる時間をできるだけ短くすること、そのためベッドで本を読むのはいけない、の理由が、脳にベッドは眠る場所と習慣付けさせること...がいまいち納得いかず。/朝起きてスマホやPC使うのは、交感神経刺激して良い、寝る前はダメ/仮眠はイスに座った状態、あるいは机に突っ伏し、20分目安/夜の断食時間をしっかり確保、朝は太陽の光を浴びながら朝食/じっくり考えてもいいアイデアがでない時はさっさと寝る、イヤなことがあって眠れない時は、忘れるためと思って無理に眠ろうとしない、という知見/起床後4時間以内に光を見る、起床後6時間たったら仮眠タイム、起床後11時間経ったら体を動かす/
昼も夜も彷徨え - マイモニデス物語 (中公文庫)
中村 小夜 / 中央公論新社 (2018-01-23)
読了日:2018年4月1日
一章一章がそれだけでドラマに成り得る、読み応え。学問に邁進するモーセ、商人となり家族を支えようとする弟ダビデ。厳しいだけかと思われた中に尊敬すべき点を持つ父マイモン。か弱く見えて芯は強いライラ。名家出身で機転のきくサラ。言葉と高い事務処理能力でのし上がるカーディー・アルファーディル。そして、かの有名なサラディン。それぞれの人物像が際立ち、名言を吐き、己の思想にしたがって突き進んでいくところが魅力的。個人的には、背教者と蔑まれる強制改宗者の同胞を、悩みに悩んで、理路整然と、律法を読み解くことで、救い出そうと熱弁を振るうシーン。「私たちが従うべきは 神の律法だけです なぜ異教徒の法によって 同胞を断罪しなければならないのでしょうか」「トーラーを知らずに他者を断罪するは神の御名を汚す行為です 同胞を共同体から絶つことは命を絶つに等しい行為です 知らなかったからでは許されません」 (彼らが死か強制改宗か選ばされた際、それは命惜しさではなく)「命がなければ 神への愛と信仰を 貫き通すことができないからではありませんか 」が一番印象に。/また、公開書簡中で語られる、昼も夜もさまよえ、にも感銘。「たったひとつでも教えに背くことを強要される地には留まるな。家も、故郷も、持ち物もすべて手放して、己の信じるものを守れる場所を見つけるまで、昼も夜も彷徨え。世界は大きくて広いのだから」/肉屋の祖父アモスの諫言も深く染み入る。/そして、終章の言葉も。「でもそれは町から町へ国から国へ 場所を変えることじゃない 生きていることそのものが魂の旅なんだ 何かを知れば知るほど 人間の身では永遠に知り得ないことがあると気づく 言葉を重ねれば重ねるほど 言葉にできない想いがこぼれ落ちてゆく 求めれば求めるほど宇宙の果てが無限に遠ざかっていく 決してたどり着けないと知りながら その果てを目指し続けること それが人生の旅なんだ 」
ロマンス暴風域
鳥飼 茜 / 扶桑社 (2017-10-23)
読了日:2018年4月1日
端で見ればどうしてと思っても、渦中にあれば暴風に対するように抗えず、といったところか。どんどんはまっていき、距離が縮まったように感じた時の、急転直下。そのあとの今までのことが全て嘘だったかのような仕打ち。意図がわからず混乱するのもむべなるかな。相談に乗ってくれる後輩の真摯さが身にしみる。これ一巻で終わってもいいような気がするけど、どう続くのか。


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2018年04月03日

2018年03月に読んだ本

期間 : 2018年03月
読了数 : 42 冊
多元性の都市イスタンブル -近世オスマン帝都の都市空間と詩人、庶民、異邦人
宮下 遼 / 大阪大学出版会 (2018-02-28)
読了日:2018年3月29日
贅沢で豊穣な時間旅行を味わう。読んでる間は、16,17世紀のイスタンブルに迷い込みたゆたうような感覚、読み終わり深い余韻が残る。建築物や街並み、宮廷が描かれ、高官、詩人、庶民、外国人の目から見たイスタンブルが描かれる一冊。
アフタヌーン 2018年 05 月号 [雑誌]
講談社 (2018-03-24)
読了日:2018年3月27日
今回の読み切りは、ガイコツ書店員本田さんの作者が送る「たったひとつのことしか知らない」。小学生時代そんなに長いこと親しくしたわけでもなかった相手が、大人になってから、必ず節目節目に電話をかけてきて、くだらない雑談をする。それだけなのに、ただそれだけなのに、と。とっておきの切り札が、酔ったインド人のおっさんに...された話とか。/恋の罪。伯爵に陵辱されるヘルマン。そしてエルネスティナが旅立つ理由とは。/あたりのキッチン。辛いものがきっかけで、親友鈴代さんの誕生日を知り、辛いものでもてなすことを目論む清美と兼原くん。カレーとラッシーの組み合わせは合理的、と冷静な鈴代さん。辛さが娯楽を実感して楽しげに笑う鈴代さん。そして、就職する際の適性に思いあたる清美さんでした。あたたかい。/波よ聞いてくれ。盗聴を警戒して筆談しつつ、ごまかすための久連木、ミナレ、南波の会話がまた面白くて。/バギーポップ。不用意な一言が頼りにしていた先輩を芯から怒らせてしまい。/ブルーピリオド。手段のための手段で描いていたと後悔していたが、先輩の仏像をモチーフにした祈る絵を見て、自分の中の描きたいことを見つけ出した八虎。/イサック。抜け穴が見つかりもうダメかと思いきやイサックの機転で抜け穴を塞ぎ。またロレンツォが皇族を殺したことが伝わり、攻め手も撤退の構え。防御側も、傭兵部隊はボルマン隊長が死に、16歳の少年があとをつぐことに。/フラジャイル。ダメ病理医伍代先生、岸先生に尻叩かれて、危ない橋渡ってそれでもちゃんとした病理医になりたい一念でやり遂げるの巻。/ヴィンランド・サガは、父の仇との思わぬ遭遇に、トルフィンの押さえ込んでいたものが決壊する兆し/やたらと電子押してたなあ/それにしてもやたらと、コミックDAYSのこと押してたなあ。もう紙は諦めて、電子に移ってほしいのだろうか。/
カフェイン・ガール (リュエルコミクス)
飯塚 めり / 実業之日本社 (2018-03-15)
読了日:2018年3月25日
カフェインを取るとピキーンと効いてきて仕事がはかどったりイメージがひらめいたりなメルちゃん。その効果はカレーのスパイスでも現れるみたい。カフェインがキマると見えないお友達が現れておしゃべりしたり相談したり。そんなタッチで描かれるキュートな東京カフェめぐり。新宿の珈琲貴族エジンバラ(通常モーニングの他に雑炊!高い位置からミルクとコーヒー注いでくれるカフェオレ!)、アマーテ京王モール(ゴージャスで純喫茶な内装)、下北沢のNeue(チョコミントパフェ)、カフェ・トロワ・シャンブル(カフェ・グラッセ、シナモントースト!)あたりが個人的には気になった。
沙門空海唐の国にて鬼と宴す 壱 (単行本コミックス)
大西 実生子 / 角川書店 (2013-06-26)
読了日:2018年3月25日
映画「空海」の原作の漫画化。漫画は、遣唐使船で日本から渡ってくるところから描かれ、白楽天の代わりに橘逸勢が相棒として描かれる。二人が金吾衛の屋敷へ化け猫祓いに入っていくところまででfin。続刊がないのが惜しまれる。原作の雰囲気をなんとなく感じられてよき、と思ったのに。
世界は寒い 1 (フィールコミックスFCswing)
高野雀 / 祥伝社 (2018-03-08)
読了日:2018年3月25日
バイト先の忘れ物の紙袋に入っていたのは、モデルガンではなく、本物の銃だった。拾った女子高生たちが、殺したい人を一人づつあげて、実行しようと計画を練るが…と。元の持ち主の手が迫ってるなか、次はどうなることやら。狂言回しの細野さんの向こう見ずな好奇心と冷静さが気になる。
北北西に曇と往け 1巻 (ハルタコミックス)
入江 亜季 / KADOKAWA (2017-10-13)
読了日:2018年3月25日
北北西に曇と往け 2巻 (ハルタコミックス)
入江 亜季 / KADOKAWA (2018-03-15)
読了日:2018年3月25日
アイスランド在住、フランス人の祖父に引き取られた慧。17歳だが探偵稼業。犬をつれもどす依頼の真意は...。そして昔女優だった女性の尋人は...と。祖父と付き合うことになったカトラ。その姪のリリア。車と話せる慧。声の美しさで嘘をついてるかどうかわかるリリア。少し不思議な能力もアイスランドの大地では受け入れられそうな感じがしてくる。連絡がつかなくなった日本で叔父夫婦に引き取られていた弟。叔父夫婦殺害の嫌疑がかけられるが本人は否定。けど、その話は一巻で謎めいて締めくくられるのに、二巻ではほぼ全く語られず。慧のプログラマーの親友が日本からやってきて、アイスランド案内をする二巻。それはそれで美しき友情とアイスランドの観光スポット、来歴が語られ面白かったのだが。三巻はどこへ向かって展開していくのか。
ピアノのムシ 12 (芳文社コミックス)
荒川三喜夫 / 芳文社 (2018-03-16)
読了日:2018年3月24日
蛭田をはめようとしたピアノ教師を逆に返り討ちにし、生徒たちの前で罵倒したことで、名誉毀損で訴えられ。おまけに、プロレス観戦中のヤジで、傷害事件に巻き込まれ。留置場であった、刑務所帰りの調律師に、何を求めて調律師をしてるのかと問われ。客を選び客を妥当し続け、ピアノを調律しようと望むものは、それならの金と教養がなければと言わんばかりに見える蛭田に対して。その問いは、後輩女子にとっては、どんな一見のピアノの良し悪しもわからない客であろうと客は客、いつかきっと…という理想をいだいて走り続けることの合わせ鏡に。もういっしょに出向くことはない、という宣言、次の最終巻ではどんな結末を迎えるのか。
ゴールデンカムイ 13 (ヤングジャンプコミックス)
野田 サトル / 集英社 (2018-03-19)
読了日:2018年3月24日
暗闇での戦いの結末。そして、アシリパさんを連れての網走監獄行き。のっぺらぼうが父なのかどうかを確かめに。監獄への潜入はうまくいったかに思えたが。真ののっぺらぼうは?そして、網走監獄に攻め込んで来た第七師団の成否は?と。
狷本一貧乏な観光列車瓩走るまで ながまれ海峡号の奇跡
佐藤優子 / ぴあ (2018-03-02)
読了日:2018年3月21日
1,2章は、ごく低予算な観光列車が、知恵と工夫と情熱で、運行にこぎつけ、鉄タビオブザイヤー2016グランプリに輝くまでの軌跡を描いた物語。3章はそれを支えた地元の人のストーリー。4章は、仕掛け人の永山さんのストーリー。/スタート地点からして大きなハンデ。JR九州の豪華観光列車の十億円、社内デザイナーを登用し抑えに抑えたJR四国の観光列車でも予算二億円のところに、道南いさりび鉄道は3500万円。必要最低限の設備も揃えられず、クーラーがつけられないから、窓を開けて楽しんでもらう。貨物との共用路線で待合が発生するから、無人の信号所で止まって絶景を楽しんでもらう、地元の人ですら何もないところに観光のために人など来ない、というところに、ホームでのバーベキュー、終着駅のイタリアンに協力を得て車内で振舞われるイタリアン、沿線の店に協力を仰いだ駅売りスタイル、と知恵が絞られ、魅力的に描かれる観光列車。利益も出ず熱い思いだけで手弁当でバーベキューを運営してくれるメンバーに、客の目線で冷静にダメだししていく運営者とあいだに立つ仕掛け人が何とかなだめて納得してもらい、本番では素晴らしいものができ好評を博したところが個人的には印象に。定期観光列車の企画プロデュース募集販促催行精算