2016年03月31日

2016年03月に読んだ本

期間 : 2016年03月
読了数 : 55 冊
シマウマ 3 (ヤングキングコミックス)
小幡 文生 / 少年画報社 (2011-12-12)
読了日:2016年3月30日
シマウマ 2 (ヤングキングコミックス)
小幡 文生 / 少年画報社 (2011-04-25)
読了日:2016年3月30日
J.L. ボルヘス / 筑摩書房 (1986-02)
読了日:2016年3月30日
杉田英明「アラビアンナイトと日本人」つながりで。「千夜一夜」の翻訳者たち、のみ読了。バートン、マルドリュス、エンノ・リットマンの三人に焦点を当て。バートンの破天荒さが印象に残る。馬と砂漠と夜がわたしを知っている 客人と剣、紙とペンとが。(アル・ムタナッビー「詩集」)の機知をものにし、人食いのアマチュアから、睡眠中に数カ国語を話すといった伝説。ナイルの水源への探検隊を指揮し、ソマリ族に槍で下顎を刺されたり、と。
アンと青春
坂木 司 / 光文社 (2016-03-17)
読了日:2016年3月30日
シリーズ第二弾。デパートの和菓子店でバイトする杏子。相変わらず、和菓子は饒舌だと思った。そこに込められた良い思いも悪意もひっくるめて。語呂合わせや季節感、故事に則った奥深さが秘められ。口に含むと甘くさらりと流れていくのだけれど。今回も、飴細工の鳥、に込められた思い。クールな同僚の見せた感情の揺らぎ。京都旅行で発見した和菓子への思い。「見るだけでも楽しい。食べればおいしい。でも、その意味を知ったら、もっともっと楽しくておいしい。知れば知るほど面白くなる。京都は、和菓子に似ている」。「なんかさ、ここまでくると常識とか何って思うよね。どの時点のやつを採用してるかっただけでしょ」。仕事は未熟だが、和食厨房、和菓子職人、パティシエと渡り歩いてきた柏木との出会い。和菓子の師匠の再登場と、謎かけのように、甘酒を織り込んだ警句を吐き。「だからーーー働くしかないんですよね」そのどれにもなれていないから、せめて目の前の仕事をきちんとやって、お金を稼ごう、という思い。一番クスリと笑ったやりとりは、「でも、甘酒もブームなんですか?」「はい。江戸時代から」ってやりとり。そして、自然体でのびのびと、けれどときに思い悩み、仕事に対しては勉強熱心でぐんぐん成長していく、そんな杏子に、思いを寄せ始めている先輩もいて...続きがあることに期待を持たせる終わりかた。
シマウマ 1 (ヤングキングコミックス)
小幡 文生 / 少年画報社 (2010-11-29)
読了日:2016年3月30日
杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)
古井 由吉 / 新潮社 (1979-12)
読了日:2016年3月28日
第二図書係補佐、つながりで。杳子のみ読了。谷底で初めて出会った二人。街中で再会した二人。神経質が神経質を通って、壊れそうな緊張感を持った関係。ピンと張り詰めたような、自分ではどうしようもないような心の失調。「なぜ信じてくれないのよ。すぐにわかったって言ったでしょう。少しも迷いなんかしなかったわよ。」という悲痛な叫び。「あたしを観察してるのね、あなた。勝手になさい。だけど、あなたがあたしを観察すると、あたしも自然にあなたを観察することになるのよ。どちらかだけということはないのだから」という関係。
長峰博之 /
読了日:2016年3月27日
かくれキリシタンは、かくれてもいなければキリシタンでもない、という通説のイメージを覆す研究が紹介され、何冊かある類書へ導いてくれた一編。最先端の研究は、説得力を持って、通説を覆してくれる。あらゆる宗教は土着化するというのは興味深く。他の宗教、他の土地の事例も探ってみたくなる。以下、引用。同じく「かくれ」るにしても、「正統」たる本山と連絡をとるという選択肢があったか否か、これは江戸時代における仏教とキリシタンの根本的な相違点であっただろう。/信仰というものが共同体と密接に結びついていたことを示している。すなわち、共同体の中において完全に個人で信仰を秘して生活することは困難だっただろうし、逆に潜伏キリシタンの村で一人純然たる仏教徒でいることも困難だっただろう。
WORKING!! 1 (ヤングガンガンコミックス)
高津 カリノ / スクウェア・エニックス (2005-11-25)
読了日:2016年3月27日
北海道のファミレスが舞台と聞いて手に取るがまだ北海道テイストは味わえず。小さいもの好きな主人公。小学生みたく見える先輩。仕事はできるが帯刀のチーフ。クールな調理スタッフ。男性恐怖症でみたら殴っちゃう先輩。そして仕事しない元ヤンの店長。空気のようなオーナー。こ、個性的すぎる。
講談社 (2016-03-25)
読了日:2016年3月27日
げんしけん二代目は、ついに班目が自分の手で班目ハーレムの幕を降ろす。結局は誰とも..という形で。波よ聞いてくれは、バトンを渡されたミナレさんがやりがいに燃えるのと城華さんの優しさが。萩尾望都の、由良の門を、はネオ寄生獣読み切りシリーズが単行本になるそうなのでそちらでも読み返したい。読み切りの、あたりのキッチン!、は永久保存版にしたい。新連載のインハンド、は感染症を題材にしたもの。今後が気になる。作品に出てきた「チフスのメアリー」(ちくまプリマー新書)を以前読んだこともあって。はじまりのはる4は、きれいごとだけではない、語られづらい震災後の状況を描きつつ、エンディングを迎える。BLACK-BOXは、キックの王者がボクシングに転向、とライバル現るの予感。ヴィンランド・サガは、フローキがトルフィンの父に抱えていた因縁がきになる。
辺境のダイナミズム (ヨーロッパの中世 3)
小澤 実 , 薩摩 秀登 / 岩波書店 (2009-03-24)
読了日:2016年3月27日
第1章のみ読了。スカンディナヴィアとアイスランドの章を。辺境なのではなく、独自の文化圏なのだ。スカンディナヴィアは、イスラム、カトリック、ギリシア正教の結節点として。アイスランドは、外界とのやりとりが限定されていたおかげで独自の発展を遂げたことが描かれる。特にグリーンランドを扱った章は興味深かった。
イニシエーション・ラブ (文春文庫)
乾 くるみ / 文藝春秋 (2007-04-10)
読了日:2016年3月26日
第二図書係補佐、つながりで。ド直球の恋愛小説と思いきや、ラストは...というところまでは把握していたのだが、自分の違和感アンテナが鈍すぎて、最後の2行で、えっ?そうだったの?と。言われてみれば、そういう構造のミステリは今まで何冊もあったのに。当時の時代背景を丁寧に解説してくれる解説を読んで、もう一度、side-A,side-Bを読み返して、ようやく構造が分かった。トリックともいえないトリック、それは嘘だよね、いや、これは嘘でもないけど本当だよね、というのを後付けつつ。「絶対なんて言葉はないんだよ...。それが分かって初めて大人になる...。」
人間コク宝
吉田 豪 / コアマガジン (2004-12-03)
読了日:2016年3月25日
第二図書係補佐、つながりで。坂上忍、安部譲二、稲川淳二、田代まさし、真木蔵人、岸部四郎、ROLLY、山本晋也、梨元勝、内田裕也、桑名正博、三浦和義、チャック・ウィルソン。濃い、確かに濃いメンツ。インタビューを通すとさらに強く感じる。借金で首がまわらなくなり、死を覚悟することはなかったんですか?と問われ、「そんなのないですよ。死を覚悟するぐらいやったら、もっと借りる(笑)」(岸部四郎)。その後古本関係の取材を一緒にしたとか。その際の芸能、犯罪に強いキントト文庫、気になる。また、内田裕也「俺はロッキンローラー」とかも読んでみたくなる。安部譲二のどこまで本当かわからない大物交友。水道橋博士「芸人春秋」でも触れられていた稲川淳二の壮絶な家庭事情。ROLLYの破天荒な家庭からアンチテーゼが前衛すぎて理解されなさすぎる状況。真木蔵人のコンプライアンスがどうこういう世相だったら生き残れなさそうなヤンチャぶりと独特の語り口。などなど。
プレーンソング 草の上の朝食 (講談社文庫)
保坂 和志 / 講談社 (1996-08)
読了日:2016年3月25日
一緒に住むはずだった彼女と別れ、一人で住む広い部屋。転がり込んできた友人とその彼女。また別の友人。猫と競馬のこと。淡々と語られ、描かれる、練馬区の急行も止まらない駅近くに住む二十代男性の視点で描かれるストーリー。何気なさが何気なさを通って、何気なさに落ち着く。「猫って、一匹だけ選び出すのって、できないんだから。猫はつねに猫全体なのよ」「や、だめなんだよ。俺、さ。会社いくとつい一生懸命働いちゃうから。疲れちゃうんだ。それに、そういうのって、便利に使われちゃうじゃない」といった空気感の登場人物を楽しむ。そして「そんなんじゃなくて、本当に自分がいるところをそのまま撮ってね。そうして、全然ね、映画とか小説とかでわかりやすっていうか、だからドラマチックにしちゃっているような話と、全然違う話の中で生きてるっていうか、生きてるっていうのも大げさだから、「いる」っていうのがわかってくれればいいって」といったあたりがこの小説全体にも通ずるのかな、と。
人生の100のリスト
ロバート・ハリス / 講談社 (2004-02-24)
読了日:2016年3月21日
ファッションモデルと付き合う、原宿に自分のサロンを作る、ギャンブルでメシを喰う、南の島で放浪者たちの集うバーを開く、映画で殺し屋を演じる、人妻と恋をする、バックギャモンの世界チャンピオンになる、阿片窟で一夜を過ごす、ブックショップを開く、娼婦と恋をする、画廊を経営する、男と恋をする、子供を持つ、旅人を主人公にした小説を書く、あたりを読む。ブックショップひらいてた前後の狂騒の時期が、生きるパワーに満ちていて、読み応えがあった。だいぶ前に買った「地図のない国から」読み返したくなった。
87CLOCKERS 8 (ヤングジャンプコミックス)
二ノ宮 知子 / 集英社 (2016-03-18)
読了日:2016年3月21日
ミケがぼっさんと組みハナを切り、ハナは奏でと組んで二人を倒すことを目指し。そこへ久々のジュリア登場。好意と本音を言い放ち、ハナと奏の関係も壊れるかと思いきや一歩前進。奏…たくましくなったなあと思いつつ。奏母、奏妹もいい味だしてたこの巻。ハナ父、ハナ母も乗り込んできたが。急速に話が展開してきている気がする。
B(ベー)ーブラームス20歳の旅路ー (エッジスタコミックス)
留守key / 小学館クリエイティブ (2016-03-11)
読了日:2016年3月21日
型破りなヴァイオリン演奏で人をひきつけるレオーネ、形式にこだわりすぎるところがあるが才能を秘めたピアニスト、ブラームス、20歳。人生観も音楽館も正反対のふたりだが、音楽修行に各地をまわる。楽譜に忠実にあれ、と基本姿勢を持つも、そこにとどまらない柔軟さ、楽しむこと、楽しませることを吸収していくブラームス。この先がたのしみ。そして取り上げられたベートーベン、ブラームスの曲をききたくなる。
BACON ICE CREAM
奥山 由之 / パルコ (2016-01-30)
読了日:2016年3月21日
代官山蔦屋書店で見かけて。店頭のサンプルを一度立ち読みし、しばらくして戻ってきてもう一度通読し、やはり欲しくなり。結局買ってしまった一冊。買ってからも、パソコンの横に置いて、何ページか必ずめくってしまう。「この世界の色、形、光、ぜんぶ」という帯。都会の人の営み。色とりどりの。トランペットを吹く人。雪を漕いでいる人。更地の真ん中にソファを置いてくつろぐ三人の男。水を弾くスプーン。それぞれはつながりを持たないように見えて、そこにある。その様々なシーンを楽しむ。もっともっとたてばなぜこんなに惹かれたかわかるのかもしれない。
世界はフムフムで満ちている 達人観察図鑑
金井 真紀 / 皓星社 (2015-04-30)
読了日:2016年3月21日
音羽館で見かけて。各界の達人にインタビューしたもの。相手の名前は明かされないので、わからない人は本当にわからないけれど、その言葉には重みがある。「スポーツをやってていいのは、二度死ねること」と青年は言った。 競技人生が終わる時が一度目の死。そのあと始まる二度目の人生は「一度死を経験した者として生きられると思う」(オリンピック選手)/「仲間は大事だ。それもほんと。でも。大人になったら、抜け駆けしてもいいんだよナ」(お笑い芸人)/「歌人の条件はまず、ナルシストであること。そうして同時に、嘆き人であること。その両方がないと歌は詠めない。ほら、晶子なんかもそうでしょう」(歌人)/子供のころ架空の天気予想図を書いていた気象予報士。架空の映画館の看守をしていたディレクター。架空の時刻表をつくっていた乗り物雑誌記者。/「調子がいいときのあなただったら、こうするでしょうね」(キャディー)/「私の仕事はものの延命措置です。ゴミになるか商品になるかギリギリの中古品を拾ってきて、誰かに売る。買ってもらえれば、とりあえず延命できる....。」(古書店主)/「決めてることはいっこだけ。それっぽいことをしないってことです」(出版社の社長)/「顔を見たら、有罪か無罪かわかるようになっちゃいましてね」(法廷画家)/「そういえば...むかし見た映画に...こういうシーンがあったなぁ…」ってひとりごとをいうの。「あ、それ使えるかも」と乗ってくる(漫画雑誌の編集者)/「字ぃ書くとき、十を目指しちゃだめ。九で寸止めすんの。粋になりすぎると、野暮になんだよ」(寄席文字書家)
アド・アストラ 9 ─スキピオとハンニバル─ (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)
カガノ ミハチ / 集英社 (2016-03-18)
読了日:2016年3月21日
何もせぬこと それがハンニバルにとっての最大の打撃となるのだ(ファビウス)。カプア、シラクサと大きな拠点をローマが奪還。約定に反し、アルキメデスを救うことはできなかったスキピオ。勝利に浮かれるものたちを前に、まだ戦争は終わってない、気を引き締めねばとファビウス。そこへイベリア戦線でのスキピオの父と叔父の戦死の報。スキピオは志願して特例として指揮権を与えられ、イベリアへ。初戦、鮮やかな戦略で、バラカ家のイベリア本拠地カルタゴノヴァを陥落。バルカ家の連中はただの憎たらしい侵略者だがあんたはまるで言葉の通じぬ神の災いだ、と敵対部族にいわしめる変貌。さて次の一手は。
世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)
マイケル・ルイス / 文藝春秋 (2013-03-08)
読了日:2016年3月20日
バーリ、アイズマン、そしてコーンウォール・キャピタルの面々。彼らはリーマンショックの局面で、下がるほうに賭けて大いに儲けた。しかし、手放しで喜べたわけでもなかった。億万長者にはなったが、ある者は、己が正しいがゆえに己が憎まれることに失望し、金融界を去り、ある者は、破局の引き金を引いた者たちが、自分たちのポケットに大金をつっこんだまま、政府に、つまり納税者にツケをまわしたことを憎み、ある者は、街行く人々の様子がなんら変わらないことを呆然と見つめる。もちろん、リスクを最大限にとって、成功すれば自分のもの、失敗すればツケは税金だなんて、モラル・ハザードにもほどがあるし、クズ債権を寄せ集めて、ピカピカの債権にする手口、そのもとになっている幻想をあきらかにする筆致からは、空恐ろしさを感じる。たしかに無知は罪だ。しかし、だからといって、最初からハメてやるつもり満々の者たちの、詐欺的行為が免罪されるわけでもない。下がるほうに賭けたものたちの慧眼には目を瞠るが、やはり読んでいる身にも手放しの賞賛という気にもなれず。金融の持つ、虚業としての側面があきらかにされ、その後は落ち着いたのかと思いきや、現状そうでもないことにも暗澹とした気持ちに。
17歳
橋口 譲二 / 産業編集センター (2007-01)
読了日:2016年3月19日
写真集食堂めぐたま、にて手に取る。17歳だけを撮りためた一冊。中にはのちに宝塚のトップスターになった人も。みんな、その当時の好きな芸能人、得意なこと、最近読んだ本などフランクに語り。今は皆40代後半。どうしているのか気になる人は何人かいたけど、特に気になったのは、沖縄のサトウキビ畑で働いている、職業 旅の途中、の彼。回り回って今はどこかにしっかり根を下ろしているのだろうか、と。
夜光
佐藤 信太郎 / 青幻舎 (2014-11-14)
読了日:2016年3月19日
写真集食堂めぐたまで、手に取る。夜のネオン街を、人が通らなくなった瞬間を狙って撮りためた写真集。中野正貴「TOKYO NOBODY」に通じる試みか。猥雑で賑々しいはずの盛り場に人がいないと、つるりとしてやけにネオンが迫ってきて、静か。明るくて活気があるのに、より止まって見える不思議さを感じる。
JP-01 SPK
松江 泰治 / 赤々舎 (2014-08-16)
読了日:2016年3月19日
写真集食堂めぐたま、にて手に取る。北海道を上空から空撮した写真。緑なす自然の風景もいいが、整然と並ぶ札幌の街並みにより惹きつけられた。見ていて心がシーンとなって静かな気持ちに。
徳富 蘆花 / 蘆花全集刊行会 (1928)
読了日:2016年3月18日
杉田英明「アラビアンナイトと日本人」つながりで。蘆花全集 第2巻  短篇小説集;石美人,羅武烈号,花あらそひ,老武者,すつる命,外交奇譚 から、外交奇譚の「土京の一夜」を。アブデュル・ハミド2世退位の前後にまつわるストーリー。ある夜、イスタンブルの道を歩いていたフランス大使。犬が加えていた、切り取られた足と靴。その柄は…ある身分のものしか身につけられぬはずのもの。唐突に知らされたスルタンの退位。表向きは病気が原因とされたが、大宰相にせまった大使が引き出した話は…と。奇々怪々な東方世界というオリエンタリズムをかんじながらも、濃厚なエキゾチズムにひたる。
発光都市TOKYO
野口 克也 / 三才ブックス (2010-08-25)
読了日:2016年3月18日
西荻窪の古本屋ねこの手書店で手に取り、パラパラとめくって、吸い寄せられて、買ってしまう。都市の発光を上空から。見てると、スーッと引き込まれる。活動する都市。愛して止まない都市。
エロ事師たち (新潮文庫)
野坂 昭如 / 新潮社 (1970-04-17)
読了日:2016年3月18日
第二図書係補佐、つながりで。野坂昭如の長編デビュー作。45年前でこの内容だと、当時としてはだいぶ刺激的だったのではないかと推察。いまとなっては、むき出しの欲望は、無機質に綺麗に均され…と思ってしまう。戦争の名残が、確実に濃厚に満ちており、根源からあふれでてくるような生命力もかんじるエロ事師たち。「写真、本、媚薬にはじまって口づてに顧客の数は増え、やがて器具からブルーフィルムにまで手を拡げ、常に強い刺激を求める磯餓鬼亡者相手の東奔西走」(p.18)、果ては女衒、乱交のあっせん、ダッチワイフまで。当初は自分も興奮して人のも、てかんじだったのが、あるきっかけで、人の世話ばかりに。人助けのヒューマニュズムや、と。おそらく半分は衒いで、半分は本当に信じ込んでいたのではないか。最後の送りもスブやんらしく。解説は澁澤龍彦。
世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)
穂村 弘 / 小学館 (2009-10-06)
読了日:2016年3月16日
第二図書係補佐つながりで、再読。今回読んで面白かったのは。もらったラブレターに書かれた私の好きな男…に、ベートーベン、エジソン、伊達政宗とならんで、穂村弘(1962-2031)と書いてあったエピソード。享年が勝手に…てのと、別の知り合いの女性の、男の享年が決まっていると安心して付き合えるんじゃないの?というアドバイスのシュールさ。雪の札幌で、彼女と手をつないで歩いていて、彼女がすべった瞬間に、わっと驚いて、手を離したこと、しばらくして起き上がって、私わかった気がする、と言われたこと。黄昏のレモン明るくころがりてわれを容れざる世界をおもふ という井辻朱美さんの歌。世界の「自由さ」の中に含まれた「自然なルール」がわからないと、人間は一言も口を利くことができなくなる、という嘆き。「誰のことも、一番相手のことも、自分自身に比べたら十分の一も好きじゃないよね、あなたは」と、10年間つきあっていた相手に責めるでもなく言われたこと。又吉さんの語っていた、自分かわいさを極限まで推し進めたらこうなった、というエピソードを堪能できた。
酩酊ガール (バーズコミックス)
アザミ ユウコ / 幻冬舎 (2016-02-24)
読了日:2016年3月15日
会社の同僚の花越路さんと楯野川さんはお酒が大好きなOL。ストレス解消はおいしいお酒と料理。ちょっととっつきづら先輩も誘ってみればお酒大好きで話せる人で。どんどん広がっていく世界。チョコを使わずにチョコの風味をだしたサンクトガーレンインペリアルスタウトチョコレート、大人のカルピスのような日本酒 讃岐くらうでぃ、インドの青鬼あたりは気になるなあ。青鬼は飲んだことあるけど、また飲みたくなる。そして、これでおしまい、はもったいないなあ。つづきが読みたくなる。
俺物語!! 11 (マーガレットコミックス)
アルコ / 集英社 (2016-02-25)
読了日:2016年3月14日
舞台は札幌・小樽、修学旅行。大和がかわいすぎて手を出しそうな自分をおしとどめるのに必死な猛男。あえてわかってて距離をちぢめてしまう大和。みていてほんとに甘酸っぱく。そして、守られるだけじゃだめだ、つよくなりたい!とボクシングや柔道やらに通うこっそり大和。結局猛男から受け身をならうことに。そして砂川に近づき、猛男を遠ざけようとする、一見爽やかイケメンの登場、の巻。相変わらず、猛男、自分の道をまっすぐだなあ、と思いつつ。
女騎士、経理になる。  (1) (バーズコミックス)
三ツ矢 彰 Rootport(原著) / 幻冬舎 (2016-02-24)
読了日:2016年3月13日
PL、BS、手形…。経理の基礎をまなぶにはよいのかも。魔界で囚われて、経理の知識を鍛えられ、人間の国へ帰ってきた女騎士。ひょんなことで銀行にやとわれることになり、行きがかりで、子供達がやっている肉屋の再建を黒エルフとともにすることになるが…。黒エルフの生い立ち、肉屋の先行きが気になるところ。巻末近くからは、勇者編もはじまり。これはまじりあうのだろうか、と思いつつ。
吉祥寺だけが住みたい街ですか?(2) (ヤンマガKCスペシャル)
マキヒロチ / 講談社 (2016-03-09)
読了日:2016年3月13日
今回は、秋葉原、蔵前、経堂、神楽坂。そして、主人公でもある、不動産屋さん姉妹の家もリフォームを検討することに。客は、なんとなく、あるいは、憧れて、前からいて馴染みがあって、と、吉祥寺での物件を目指すが、ヒアリングして、それなら吉祥寺はやめましょう、と他の街へつれだし、いっしょにその街を楽しんで、暮らしを変えるきっかけとする。鮮やかに。蔵前が東京のブルックリン、というのは初めて聞いたなあ。秋葉原の電気街だけじゃない多彩な魅力。経堂のにぎにぎしい商店街。神楽坂のおしゃれな本屋さん。どれも魅力的。
創太郎の出張ぼっちめし 2 (BUNCH COMICS)
マキ ヒロチ / 新潮社 (2016-03-09)
読了日:2016年3月13日
この巻は、沖縄、富山、仙台、鹿児島、上海。創太郎元カノにあうの巻×2。沖縄で偶然再会した「いつかティファニーで朝食を」の麻里子さんとは、朝ごはんをいっしょに食べて、こんな人だったのかな、もう知らない人みたいだ、そして、僕にできることはない、と思いながらも、心からの、幸せになってね、が言えて、大学時代の、元カノからは、自分をずっと思ってたのではなくて、誰でもいいから結婚したいのが透けて見えて、断ってしまい、と。車窓は飽きない、車窓は筋書きのないシナリオだからというロマンあふれる先輩の声に導かれるように、おれんじ電車を堪能したり、上海出張で昔の友人が、茶酔いして脳が冴える話を聞いて興味が湧いたり。総じてお勧めに素直に乗るところがいいところなのかなあと思いつつ。
三代目薬屋久兵衛 3 (フィールコミックス)
ねむ ようこ / 祥伝社 (2016-03-08)
読了日:2016年3月13日
思いがけず直接会ったことで、ほどけた三久の呪縛。まっすぐ叶くんに向かっていき、うまくいきそうなところに、アキトの邪魔。しかし、それがかえって叶くんを後押ししたことなり。見るなら見せる覚悟が必要、という言葉も彼を後押しし。おせっかいなんだけど、あたたかく見守りつつ、うまくいくように手を差し伸べるまわりのメンバーも微笑ましく。
地獄のガールフレンド 2 (フィールコミックスFCswing)
鳥飼 茜 / 祥伝社 (2016-03-08)
読了日:2016年3月13日
なんか、もうボタン押すの疲れたんだよね、というのと、人としてみる、というところが、記憶に残るというか、ゲスなようでいて、言わないことを言う鹿谷くんがいい味出してるなあ、と。
IPPO 4 (ヤングジャンプコミックス)
えすとえむ / 集英社 (2016-02-19)
読了日:2016年3月13日
切磋琢磨しあえる強烈なライバルの登場。客の要望を最大限に取り込んで、いい靴を作りたいという想いと、自分の中の美しい靴の美学が確立している職人がぷつかり。どんな化学反応が起こるのかたのしみに。お客様の要望があって僕がやると決めれば、どんなことでもできる、というかっこよさ。
銃座のウルナ 1 (ビームコミックス)
伊図透 / KADOKAWA/エンターブレイン (2016-02-25)
読了日:2016年3月13日
孤島の軍事施設へ派遣された狙撃兵のウルナ。厳しい先輩、襲撃してくる蛮族、襲われる補給隊。唯一軍人ではない孤島研究の第一人者の謎めいた行動。それを垣間見た時に、蛮族と遭遇し…と。厳しい環境、不可解な命令、謎の生態。続きが気になる。
応天の門 5 (BUNCH COMICS)
灰原 薬 / 新潮社 (2016-03-09)
読了日:2016年3月12日
藤原基経による、宮廷内での祭の提案、藤原良房の暗殺未遂、大納言伴善男の毒殺未遂。心ならずも巻き込まれる道真。引くも進むもままならぬところを、もち合わせる知識を総動員さして対処。結果として大納言とよしみを通じることに。また密航してきた唐人の女の正体は、目的は?というところで次巻に。
ほんの小さな幸せをきっと君は奇跡だという 猫とろ恋愛シチュエーション・アンソロジー
猫とろ / KADOKAWA (2015-11-20)
読了日:2016年3月12日
表紙を見てジャケ買い。だいたい見開き2ぺージのショートストーリー。甘酸っぱい、切ない、哀しいまで、想うことが美しい絵で綴られる。
エンバンメイズ(4) (アフタヌーンKC)
田中 一行 / 講談社 (2016-03-07)
読了日:2016年3月12日
メインの勝負は、迷宮を仕立てて、千台のダーツ台を配置し、先に投擲し終わったものの価値。もはやダーツの技術を超えたところの話になってきているが、策略の巡らしあい、手に汗握るシーソーゲーム。終わったあとの打ち上げのシーンに心和む。
ヴェーベルン―西洋音楽史のプリズム
岡部 真一郎 / 春秋社 (2004-04-30)
読了日:2016年3月12日
ウェーベルンの「交響曲」、第一楽章の第一部分と第三部分が六音ずつのシンメトリーの関係、中央の部分は音列の特質に基づいて構成、楽章全体も大きなシンメトリー、と示されても、シンメトリーを感じられる耳ではなく、歯がゆいというか。楽理を身につけたひとなら容易に聞き分けられるのだろうか。「交響曲」は、20年代末から30年代末にかけての、音色に対する執着というえるまでの特別の関心をあらわす作品群のひとつ。コンポーザー=コンダクターとしてのウェーベルンは、一定の評価を受けつつも、あちこちで根付かず、時勢などのタイミングも悪く、完璧主義が負の方向に出てしまって、投げ出したり、オファーを断ったり、と大成功とまではいかなかったようだ。指揮者として身を立てるには余りに未成熟だったのかもしれない、あるいは、成熟の道を選ぶほど指揮活動に全身全霊を傾けていたのではないかも、という指摘も。協力者、仲間たちが次々と亡命する中、孤立。当時のドイツの政権には冷遇されているのに、信頼感を寄せる、政治的立ち回りはあまりうまくない印象。そして、アメリカ兵に誤射される悲劇的な最期をとげる。
いつかティファニーで朝食を 9 (BUNCH COMICS)
マキ ヒロチ / 新潮社 (2016-03-09)
読了日:2016年3月12日
大好きだった後輩に、送別会の最後で思いの丈をぶちまけることができた麻理子。ニューヨークへ旅立ち、見るもの会う人食べるもの全て新鮮で発見に満ちている典子。結婚直前のいさかいで、男嫌いが爆発してしまうが結局いまの相手が自分を救ってくれたと思い直すリサ。三者三様のライフ。今回の朝食は、江ノ島、ニューヨーク、尼崎。
ナワナノ~七菜乃緊縛写真集~ (SANWA MOOK)
一 鬼のこ , 七菜乃 / 三和出版 (2015-08-27)
読了日:2016年3月12日
レトロスペース・坂会館でポスターを見かけたのをきっかけに手に取る。縄が彩る独特の世界観。まるで生きているかのように。人を絡め取るかのように見えてきて不思議な気持ちに。
新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか (SB新書)
田村 圭介 , 上原 大介 / SBクリエイティブ (2016-03-05)
読了日:2016年3月12日
各電鉄内を示す地図はあっても、新宿駅全体を示す地図が今までなかったというのは意外。プラットホームは南北に走っているから、連絡通路は東西を横断。JR新宿駅は、階段を登れば南口、階段を降りれば東西口。旧甲州街道は尾根であり、その起伏にそって地下も作られている。p.111の新宿駅を東西につらぬく抜け道は、すごく有益。1950年ごろは、都電と西武新宿線が東口界隈を活発にし、歌舞伎町の繁栄を支え、新宿を盛り上げた。西側の整然さと、東側の雑然さの対比。新宿学、という本は手にとってみたいと思った。どうやってさばくのか…という話はなかったように思うが、新宿駅とその周辺の駅も含めた「大新宿駅」の構造や成り立ち、歴史を深く知ることができて興味深かった。また、スマホアプリ「新宿ダンジョン」をクリアした身からすると、その制作秘話にふれられたこともうれしかった。
球団と喧嘩してクビになった野球選手 (双葉文庫)
中野渡 進 / 双葉社 (2014-03-13)
読了日:2016年3月10日
村瀬秀信「4522敗の記録」を読んで気になり、手に取る。中野渡進。横浜ベイスターズの中継ぎの投手。スポーツニュースで、個性的でユーモアあふれる、キャンプ時の声出しの様子が放送されて、ブレイクした記憶はあった。活躍できたのがほぼ一年だけだったというのは知らなかった。小宮山さんと仲良くなったきっかけ、飲み会を断られて巴投げした話(小宮山さんからは、背負い投げ、と訂正されていたが。)、清原も含めた食事会で死ぬほどフォアグラを食べて以降食べたくなくなった話、びびってボール球を続けて出したら、ミットをもった谷繁が全力疾走してきて、その勢いのままみぞおちにグーでパンチされ、叱責されたこと。辞めた後も、ラジオDJ、悪役商会、大学の野球監督とオファーがあったのを断ってもつ鍋やの開店を決意。精密機械部品加工の会社の社長が働かせてくれることになり、昔書いたサインが縁で本来個人になんか卸してくれない食肉会社が卸してくれることになり、役所に行けば、プロ時代を知ってるおじさんがどうすれば効率良く融資されるか丁寧に教えてくれる。選手同士の楽しいエピソードから、球団に対して立腹した話、厳しかった高校時代、社会人時代の練習と、尊敬できる監督や先輩たちの話、などが描かれていて、読みごたえがあった。
ポオ小説全集 4 (創元推理文庫 522-4)
エドガー・アラン・ポオ / 東京創元社 (1974-09-27)
読了日:2016年3月9日
杉田英明「アラビアンナイトと日本人」つながりで。シェへラザーデの千二夜の物語、のみ読了。千一夜を生き抜いたシェヘラザードが、余計なことをして、結局殺される、というあらすじだけ見かけて、原作が気になり。平穏な生活を送っていたのに、どうしても、シンドバッドの冒険の物語を、当時は眠くてはしょって語ってしまったことが気になって、寝ている王を叩き起こしてまで語り始める。が、女たちとヒトコブラクダの見分けがつかない話をしたところで、バカにしてるのかと逆鱗にふれることになり、絞首台に送られてしまうことに。もっと荒唐無稽な話は千一夜のあいだにもあっただろうし、なぜに今回だけ、という思いと、最後に思ったことはいささか溜飲をさげたとは思うが、王には届かなかっただろうな、という思いと。
図説 ブリューゲル ---風景と民衆の画家 (ふくろうの本/世界の文化)
岡部 紘三 / 河出書房新社 (2012-08-09)
読了日:2016年3月7日
ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論 (集英社新書)つながりで。ざっと通読。豊富な図版、細部までの描写、それに対する解説が目をひく。描かれたくなかったであろうことまで描く、と。在世中は、ほどほどの評価。死後しばらくして忘れられ、二十世紀初頭に再評価されたとのこと。ポピュラーでよく知られたひとなのかと思ってたけど、意外と残された記録がすくなく、謎の部分が多いのだとか。
竹内 豊治 / 法政大学出版局 (1986-02)
読了日:2016年3月7日
ざっと読む。楽理は理解難しく。シェーンベルクの音楽理論を語ったところが興味深い。「一羽の小鳥が飛んでくる…」というのがそれを示しているのだとか。
声と文字 (ヨーロッパの中世 第6巻)
大黒 俊二 / 岩波書店 (2010-02-26)
読了日:2016年3月7日
最初は、1427年シエナでの説教師ベルナルディーノの説教を独特の速記法で一言一句漏らさず記録したベネデット。最後は、自分では書けなかったが、代筆を駆使して帳簿をつけ、富裕な農民として立派な経営をした、おそらく読むことはできたであろうもうひとりのベネデット。古代から中世まで、ヨーロッパを中心に、使われていた言語はラテン語か、俗語か、使われていた文字は何か、文字を知るものと文字を知らぬものの対比、その間に広く横たわる「文字を知るがごときもの」のグレーゾーン。行われてきた言語改革、文字改革。宗教と説教の果たした役割。などなどが述べられる刺激的な試み。史料から、実際に、話されていたことを復元するのは困難きわまりないが、史料と背景を読み込むことでスリリングにせまっていく。/史料を通す際の歪みや偏光を是正して生の声に近づく、歪みや偏光自体に歴史性を読み込む。筆記することによる「声と文字の複雑な絡み合い」=「声と文字の弁証法」の特異性。「声と文字の弁証法」「俗語とラテン語の弁証法」の二項対立の構造とその広がり。俗語の流動性とラテン語の不変性。西欧中世に独特のラテン語と俗語の二重言語体制の生成発展の様相を追い、その構造と特徴を社会生活の広まりのなかで解明すること。刹那文書の内容、外見、具体的な使用法から、中世人と文字の付き合い方を探ること。これらのことが目指される。/ベネデットは、反芻するために説教を記録した。/カロリング・ルネサンスのラテン語改革は、ラテン語の純化と統一により、聖職者のラテン語と民衆の口語との距離が一気に開く。/ブリテン島のラテン語学習者たちの生み出した最大の工夫は「分かち書き」の手法/カロリング・ルネサンスのために書かれたような「初めにことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった」(ヨハネによる福音書、冒頭)/シャルルマーニュの言語改革は、誤りに満ちたテクストは聖書や典礼の理解を危うくするから、こうした危険を排除して神のことばを正しく伝えることが目的であった。/分かち書きの定着を促したのは、黙読の必要/11世紀が「声と文字」の関係の質的転換、声から文字への大分水嶺。書かれたものの量の増大、リテラシーの拡大。読み書きできなくても「リテラシー」を持つ者の存在。読み書き能力の量的増大。/短時間に大量の文書を作成する必要が生じた際の、草書体の出現、証書・カルチュレール・帳簿の登場。/無文字文書、12世紀の欠け歯のナイフまで、儀礼と象徴に満ちた「声の文化」の執拗な持続が見られるが、13世紀末イングランドでは、モノに即した記憶と証明の世界は遠くなりつつあった。/「書記局の偽造」。権力者が代替わりしたときに、以前に発給された特許状が再認されるのがつねで、その際自分が有利になるようひそかにテクストに手をいれること。/中世後期における読み書き能力の躍進は、「文字を知らぬ人」がラテン語を覚え、「文字を知るがごとき人」の段階を経て「文字を知る人」に変容していくのではなく、俗語が文字の世界に進出することで展開。/遍歴商人から商人の定地化。為替などのさまざまな商業技術の発達により。/ラテン語は俗語を文字に導き、書字言語に成長させる役割を果たしていた。/安定した書字言語の影響下で声のみの言葉が書字言語に成長する例は、ほかにも漢文を読み下すことで文字に親しんでいった古代日本人、トルコ語やペルシア語がアラビア語と系統のことなる言葉でありながら文字はアラビア文字を採用した事実などが思い浮かぶ。(この方向もっと推し進めてほしい。というかそういう研究はないのだろうか)/カロリング・ルネサンスのラテン語復興は、神の言葉を正しく伝えるため。イタリア・ルネサンスのほうは神の言葉に対抗して人間の言葉を復権。自然と人間の発見、教会支配からの人間の解放。カロリング・ルネサンスは俗語の抑圧をともなったが、イタリア・ルネサンスは双方で書き、使い分ける。カロリング・ルネサンスがラテン語の古典回帰と反動としての俗語の自立を促し、二重言語体制の出発点となったのに対し、イタリア・ルネサンスのラテン語復興は、二重言語体制を前提とし、そのもとで俗語が優位になっていくなかで行われた。/ベネデットの帳簿の大半は動産、不動産売買、嫁資や小作の契約、債務、債権の記述で、当事者名、購入物品、金額、支払期限が淡々と記される。重要な取引を忘れず、相手に欺かれない証拠とするため。/最後は、中世一千年の「声と文字」の発展の結果としての俗語の確立が「母語の発見」という経過を経て、近代世界がかかえこむ国家、民族、言語の関係という重い課題を予示していることにふれられ、しめくくられる。
自ら上場した会社を辞め、41歳で再び起業したシリアルアントレプレナーの挑戦 『ベンチャー魂は消えない』
経沢香保子 /
読了日:2016年3月7日
前の会社を辞めた時のことはさらりと、今の会社の立ち上げと運営については情熱をもって語られる。特に印象に残ったのは、心に澱をためない工夫。心と身体の状態が安定していないといい仕事できない。いい夢は、周囲を幸せにすることで自分も幸せになる、悪い夢は、自分の欲や自己顕示に基づく、という対比。あまりにつらくて、上場をやめようと思うと相談した時のサイバー・エージェント藤田社長の、「そう、大変だったね、でも一度決めたことはやり遂げた方がいいよ。一生後悔するよから」というアドバイス。
渦森今日子は宇宙に期待しない。 (新潮文庫nex)
最果 タヒ / 新潮社 (2016-02-27)
読了日:2016年3月6日
最果タヒさんの詩が好きで、それがきっかけで手に取った一冊。宇宙人+女子高生…ふだんはあまり手に取らない分野なので、個人的に入り込めるかなあと思ったけど、読み始めたら疾走感。きらきらととりとめもなくつづられる考え事がどどっと流れ込んでくるかんじの文体が心地よく。「私が宇宙人なのは、ちょっと左利きなの、ってぐらいのことで、それに私には友達がいる。放課後に喫茶店。友達や後輩が待っている。それでどうしてさみしいなんて、思うんだろう。」(p.104)/宇宙探偵部なんて、何をするのかわからない部に入ることになり、謎の転校生もやってきて、体育祭と部活の合宿。楽しいことみんなつめこんで、それでも高校生だから高校生なりの葛藤や気持ちのゆらぎや焦りや将来のことなんかも考えたり。オカルト好きの部長、真面目でしっかりしすぎでかっこよくてモテる律とまわりに気を使いつつも我が道をゆく柚子の姉妹、部長大好き夢見るツインテール少女の岬、クールで美しい転校生の須磨。個性豊かな面々とすごす高校三年生の夏。終章の覚悟を決めるあたりのところが特に好き。
定山渓連合町内会事務局 / 定山渓連合町内会事務局 (2005-07-01)
読了日:2016年3月3日
妙木忍「秘宝館という文化装置」つながりで。/温泉場の開発につとめた美泉定山の情熱、生涯が簡潔に描かれ、行方不明になったとされる最期についても、客死してある寺に葬られていることを明らかにしてくれる。また、昭和30年代までは混浴だったとは寡聞にしてしらず。そのなかで、自然なかんじで映っている男女の写真もあり。/今は、豊平峡ダムの底に沈んでいるが、豊平峡の入り口より3キロあまりのところに炭酸水の湧き出る泉があったとか。それを一斗瓶に詰めて売った人や、地元の子供たちが砂糖持参で即席のサイダーを作ったりしていたのだとか。/吊り籠の渡しは、命綱もなく、むき出しで、渓谷から渓谷へと渡るもの。今はないようだが、機会があればのってみたかった。/豊羽鉱山が10年前まで操業していたのも寡聞にして知らず。/定山渓鉄道は、最期は、走れば走るほど赤字が増えて、昭和44年に廃線。/図版も豊富でよみごたえがあった。
中華と対話するイスラーム―17‐19世紀中国ムスリムの思想的営為 (プリミエ・コレクション)
中西 竜也 / 京都大学学術出版会 (2013-04)
読了日:2016年3月3日
序章、1・5・8章、終章のみ読むことに。/イスラーム法の規定では、夫婦喧嘩の際、夫が怒りにまかせて妻に離縁を口走ろうものなら、それでほんとうに離縁が成立してしまう。イスラーム法と中国の法との矛盾を引き起こす原因。/アラビア語の著書でだが、中国に暮らすムスリムが「戦争の家」に住んでいることを宣言する馬徳新。/その解決法が、妻たちの犯行に対しては罵倒よりも殴打を選べ、なのは、著者のいう通りどうかと思うが、理念と現実に折り合いをつけようとしていたことは確か。弟子の馬聯元は、あくまで中国ムスリムが聖戦にまきこまれないで住むことを第一に考え、そのうえで万が一に備えて合法的な戦闘の進め方を明らかにした。イスラーム法と中国の現実が衝突するケースをあえて問題にし、イスラーム法学に背かぬようそれを解決する方法を真摯に探求していたことを明らかにしたのが第5章。/文明間対話のあるべき姿として、普遍主義と特殊主義のいずれにも偏らない道を模索する場合、中国ムスリムの諸事例は、モデル・ケースとして十分参照にあたいするのではなかろうか。(p.382). また回良玉氏のように、2003年から2012年まで国務院副総理をつとめ、中国ムスリムとして、イスラーム諸国との外交の場で活躍したケースも紹介される。
野崎卓也 / 野崎卓也 (2015-11-08)
読了日:2016年3月3日
野崎が行く!シリーズ全4冊読み終わったけど、なぜか中国編が一番ぐいぐいひきこまれ、一気に最後までページをめくる手がとまらなかった。相性なのか、4冊読み続けて野崎ワールドに身体が馴染んだからかなのかはわからないけれど。しかし、第一部漢族編が、判型違いで織り込まれているのは何か意味があるのだろうか。(漢族編)約一千年前の街並みが残っているという鎮江の西津古渡、中国入国三日目で持参していてあカメラをラーメンに落として壊してしまったというこのあと新疆、カザフスタン、ヨーロッパへと向かう旅人。その旅人とシンクロするようにカメラが壊れてしまい、道行く人に声かけて、壊れてるけどカメラ要る?と譲渡するシーン。以前日本に留学経験のあるアメリカ人の「トリガナイテイマスネ、マダ、ニンゲンハオキルマエ。イマハトリノセカイ、モウスコシデニンゲンノセカイニナル」という朝のつぶやき。街の音、寺の音とかを録音しているといって驚かれて、テープを意識してだまりこむふたりの間とか。(チベット族編)鳥葬を目の前にした「魂の抜けた人間は、ただに肉の塊か」というつぶやき。声をはれない、元巨人の吉村選手似のタクシーの運転手によせる共感。八美ですれちがった泣いている女児にクッキーをにぎらせたらぴたりと泣き止み、宇宙とは繋がっているものだ!と感心したシーン。それぞれのシーンがあざやかに印象に残る。漢族圏の各都市は、ファッションセンター、携帯屋、カフェなど日本の市街地とほぼ変わりなく、若者のほとんどがスマホを所有していた。東チベットのラルン・ガル・ゴンパの僧侶たちでさえも所有していた、というあとがきから、失われていく風情を惜しむ感を読み取ったり。
野崎卓也 / 野崎卓也 (2015-02-27)
読了日:2016年3月2日
沖縄編での友人Sさんとの「たくちゃんはなんでバンドとかドラムをやってるの?」「うーん、音で気持ち良くなってほしいからですかね。Sさんは?」「お客さんに笑ってもらいたいからかな」という対話が一番印象に残る。あとがきの「僕は東京に戻ってきた日の翌朝、出社するために、地下鉄のホームへと向かった。すると驚いたことに、僕は他の歩いている人達に、次々と抜かれてしまった。東京はペース(流れ)が早いということを、改めて実感させられた出来事であった。」という一節。これも含めて、便利すぎるもの、過度に文明的なものへの忌避感があるのかなと思った。また、出社ということは会社員なのだろうか。だとしたら、頻繁に旅に出られるという環境はいいなあ、と思った。バンドを組んでツアーしたり。台湾編は、バンドでツアーのお話だったから。非常にもりあがったみたいで、他の日本や台湾のバンドとも心温まるかんじで、読んでるほうも楽しくなってくるような。
アウトサイダーの幸福論 (集英社新書)
ロバート・ハリス / 集英社 (2015-02-17)
読了日:2016年3月2日
読みおえて、少し肩の力が抜ける本、楽になって、リラックスできたような。自分の中を爽やかな風が通り抜けていく。それだけでもめっけもの。以下備忘録的に。/ポーカーとバックギャモンでメシを食っている時、一晩でギャンブルのための軍資金全てと三ヶ月分の家賃を持って行かれたことがある。一晩寝ては起きをくりかえし、翌朝シャワーを浴び、涙を洗い流し、夜には新鮮な気持ちで勝負にでかけた。/(今は会わなくなった友がいても)あの時はあの時だ。彼らと過ごした素晴らしい瞬間は永遠に素晴らしい瞬間としてぼくの心の中に刻まれている。でも、今のぼくは違う瞬間の連続の中で生きている。/プレヒトの「快感」という詩。それを真似て書かれた著者の「快感」/「お前はいつもニコニコしてなにも考えなくて良い気なもんだ。もっと真剣に自分を見つめたらどうだ」「ぼくは今、この時、この瞬間を楽しんでいるんだ。今はキミとこうして屋台で食事をするひとときを楽しんでいた。キミはそんな瞬間を見事にぶち壊してくれた。さも分かったような口を利かないでくれ」/ぼくはヒトを社会的地位や役職や経歴や学歴などではなく、良いやつか嫌な奴か、信用できる奴か出来ない奴か、頼りになるかならないかといった、根本的な見地から人を判断、認識することを覚えた。/映画「イージーライダー」とケルアック「ダルマ行者たち」が放浪の旅のきっかけ/人間、オープンでいるかぎり、傷つくときは傷つくし、胸が痛いときは痛い。生きるということは、喜びを感じるのと同じように、痛みを感じることも条件なのだ。/魅力的なアフォリズムもひかれている。出典がわかるともっとうれしいのだけれど。/自由と、本と、花と、そして月があったら、幸せになれない人間なんているだろうか。(オスカー・ワイルド)/真実の最大の敵は、権威に対する思慮のない敬意である(アインシュタイン)/空を舞う星を生むためには、魂にカオスがなければならない(ニーチェ)/降参するな、希望を捨てるな、自分を売るな(クリストファー・リーヴ)


chokusuna0210 at 22:45│Comments(0)TrackBack(0)clip!メディアマーカー 

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