2017年05月01日

2017年04月に読んだ本

期間 : 2017年04月
読了数 : 45 冊
日本海ものがたり――世界地図からの旅
中野 美代子 / 岩波書店 (2015-04-23)
読了日:2017年4月30日
日本海をめぐって、西遊記から始まって、大黒屋光太夫、ラ・ペルーズと話は飛んで、最後は、中国での日本海の捉えられ方までぐるっと及ぶスケール。話は思いつくまま気の向くままなのはいつもの中野美代子節を堪能できる。久生十蘭「海豹島」はあらすじの紹介だけでも興味をそそられる。18世紀のヨーロッパの地図では、日本海、朝鮮海が混在し始め。欧米では宗谷海峡がラペルーズ海峡と記され。オクトプス・マップ、トラブル海での釣りなどの図像で、19世紀ロシアが極東からヨーロッパにまで触手を伸ばす様を描き、それをプーチンと重ね合わせるところは、歴史は繰り返すというべきか。そして、西太平洋はすべて中国のものだ!とい大前提を立てれば、日本海も東海も南海も、それぞれ固有の歴史や現状もろとも吹っ飛ばせるだろう、という見方も示し。一つの海をめぐって、時代により国により、捉え方見方は様々な事を改めて教えてくれる。言われてみると確かに、地図をじーっと見てると、日本海とはいうが、もっと俯瞰で見ると、太平洋と言えなくもない、という気になってくる。
城をひとつ
伊東 潤 / 新潮社 (2017-03-30)
読了日:2017年4月30日
紀伊の国人から後北条氏に仕えた大藤信基を祖とする、大藤家五代を主人公に据えて描く連作短編集。失われたとされる孟徳新書を頭の中に収めたと嘯き、知略を持って、敵の心を手玉にとり、大きな成果を収めていく。太田氏から江戸城を奪うのに大きな役割を果たし、小弓公方を決戦場に引き出し、古河公方を河越の戦いに引き出し、上杉謙信を臼井城に釘付けにし、小田原城を攻められた際も、福島正則と織田信雄相手にひと泡ふかせる。人を騙すのが稼業なのに、逆に騙されて最期を迎えた景長の例もあったが、大藤氏から見た戦国史、連作短編集。/己を恃む者は、一度道を誤れば国を滅ぼすが、衆を恃む者は、一人が誤っても国が滅びない、という旨の氏綱の言葉。私利と暴政、征服欲にかられた大名と一線を画し、民を愛して、国を治めることを掲げるが、大きな権力の前には無力だった。土から生まれて土に還るだけとは、三代秀信のことば。諜報活動を稼業とするということは、大半は史料には残らず、そこが想像力のふるいどころ。リスクをもって飛び込み、敵方の心を捉える様は鮮やか。
『グレート・ギャツビー』の世界 ダークブルーの夢
宮脇俊文 / 青土社 (2013-05-23)
読了日:2017年4月30日
中西部と東部の違い、いくら自らの手でお金を稼いでも超えられない身分の壁、と言った事をはじめとして、グレート・ギャッツビーの世界の背景を情熱的に語ってくれる一冊。「北部ミネソタの美の結晶を彼女に見せたかったのだ。そして、その美しさを共有したかったのだ。」(氷の宮殿、について)/「所詮この世に永遠のものなど存在しない。それならばいっそのこと、短くとも、最も美しく輝いているものを求めよう。」「いつかは目の前から消えてしまうことを知っていたからこそ、一瞬でもいいからその手の中につかみ取りたかったのだ。やがてはダークブルーの闇の中に消えてゆく美を、その手のひらに載せて鑑賞したかったのだろう。」(p.23)/「やがては消えていくとわかっているからこそ。消えゆく美、それを留めることができる場所はひとつだけだ。それは記憶。一旦そこに収まった美は永遠だ」(p.25)/これらのシャツのすべてにギャツビーの忍耐の日々が詰まっているかのようだ。それは絢爛豪華なようでいて、実は彼の苦悩の象徴なのだ。そう思うとなんとも悲しいシャツの山に見えてくる。それらの色が鮮やかなだけにより切ない。 」(p.77)/ニックが結局はギャツビーの遺志を引き継いだこと、終わりのない夢、手の届く少し先にある、走り続けなければ見れない夢、アメリカの夢とギャツビーの関わりについても語られる。読む前から思っていたけど、やはり、グレート・ギャツビーを読み返したくなった。
町田くんの世界 5 (マーガレットコミックス)
安藤 ゆき / 集英社 (2017-04-25)
読了日:2017年4月29日
中学の同窓会だったり、近所の魔女とうわさされてる最近引っ越してきた女性だったり、誕生日をめぐる狂想曲だったり、転校しちゃう同級生に片想いしている子の背中を後押しすることだったり。今回も町田くんの魅力が存分に発揮されているように感じる一巻。人生の深いところまで悟ったような人生観と真っ直ぐすぎたりうっかりすぎて人の気持ちがわからないところのバランスがなんとも言えない。/生まれたばかりの弟を見たとき思ったんだけど、そうか、人は、生まれてくるだけでいいんだなって 生まれてくるだけでもう充分なんだって 価値のない人なんていないよ それでゆっくりでも成長できたらいいなって思うんだ/価値や本質は見かけだけで判断してはだめなんです/僕は悪い人間なんていないと思っています 悪いことをすることがあっても 行い自体は悪くても それには理由があって それなら理由を 言い訳を聞かせてほしいって思います/と言うようなところ。猪原さんの「想いってあふれちゃうでしょ 心の中だけに入れとけないよ」は町田くんにも向けられてるのに、他にもそう思わせるエピソードたくさんなのに、そこはゆっくりと町田くんの中で消化されていくのだろうか。
あたりのキッチン!(1) (アフタヌーンKC)
白乃 雪 / 講談社 (2017-04-21)
読了日:2017年4月29日
人と交わるのが苦手で友達ゼロ、人の目を見て話すこともできない清美さんだけど、料理で気持ちを伝えることができ、一口食べるだけで材料、調味料を当てることのできる能力の持ち主。一念発起して、接客業だけど、街の定食屋さんにバイトへ。厳しいけど腕は確かできちんと見てくれる大将、奔放なようでいてやさしいとこのある息子さん、いきなり乗り込んできて結婚申し込む小学生、大学で初めてできた友人のすずしろさん、とあたたかい周囲に支えられ。料理の細やかさ、一味ひねったり、お客様の現状を観察してそれに応じたものを出したり、そのひとつひとつが愛おしいお話し。
幻想ギネコクラシー 2
沙村広明 / 白泉社 (2017-04-28)
読了日:2017年4月29日
なかなかに、ワンアイデア、一発勝負的な話が多く感じた短編集。。楽しめたけど、そこはそう来るかあ?というような。最後のも本人的にはいい終わり方だったというが、…キックの強度は鮮烈。
ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録 (講談社文庫)
西川 善文 / 講談社 (2013-11-15)
読了日:2017年4月28日
新聞記者を目指していたのに、瓢箪からコマのような銀行入行。実質4、5年の営業店配属のあとは、ずっと、安宅産業、平和相銀合併問題、イトマン事件、バブル崩壊による不良債権処理と、問題案件の処理に奔走し、頭取まで上り詰め、三井住友銀行へと大型合併を成し遂げ、その後は郵政公社の総裁へ転進。華麗な経歴にも思えるが、細かく見ていくと、あの時こうしておけば、みたいなことも語られ、また郵政公社転進後は、今になってみると著者の方針が正しかったのに、政治家の闘争に巻き込まれて頓挫、挫折というシーンも描かれ、私が政治音痴だったから、と言うけど、では打つ手はあったのだろうか、とも思ってしまう。かんぽの宿は今も赤字を垂れ流し続けている、といった記載からは無念がにじみ出ているように思う。ただ、それも含めて、回顧録にありがちな、私だけが正しかった、ヒーローだった、みたいな筆致ではなく、いいとも悪い子も書かれていて、少なくとも「住友銀行秘史」などよりは、すっと身に入ってきた感がある。「会社は最後は人だ」という最初の方の言葉が、最後の方まで貫かれていたように感じた。
旅人の表現術
角幡 唯介 / 集英社 (2016-06-24)
読了日:2017年4月28日
三浦しをん、沢木耕太郎、鈴木涼美と対談。サハラに死す、への言及も、というのに惹かれて、手に取る。「空白の5マイル」「アグルーカの行方」を読んだ身には興味深く、また、読んだ時の、一歩間違えば死と隣あわせのヒリヒリとした読中感を思い出した。以下備忘録的に。/冒険とは、死を自らの生の中に取りこむための作法である。人は冒険を経験するということによって、現代の都市生活から切り離されたところにある死と明確な契りを結ぶことができる。p.14/開高健への熱い思い、輝ける闇、夏の闇を読みたくなる。また、沢木耕太郎の対談が掲載されるが、他の対談であの対談噛み合ってないところあったよねと言われたり、本当はこんなこと聞きたかったと語られたり。/増田さんの「七帝柔道記」、宮城公博「外道クライマー」読みたく思った。/沢木「ひとたび「物書き」になってしまった以上、さりげない旅などできはしないのだ」/何故山に登るのか。それには答えがない。それは、何故、人は生きるのかという問いと同じであるからだ。「神々の山嶺」/人は、生の反対物としてではなく、生のひとつの相として死を受け入れたときにのみ、無条件な生の肯定を経験することができる。(ジョーゼフ・キャンベル「神話の力」)/ヒマラヤの高山の氷壁に描いた一本の美しい登攀ラインは、下手な文章や音楽よりもよほど人の心に訴える力を持っている。p。244/とにかく定住していないと不安でたまらない三浦しをんさんとの対談。違いが鮮明すぎて面白い。 /でも、得体の知れない、よく分からない場所へ探検に行くことで何か見えるものがあるのならば、行く先がジャングルでも子宮でもそうじゃないですか。(鈴木)/でも、今日ショックだったのは男の人には女に我慢させているっていう罪悪感がないってことです。(鈴木)
海街diary(うみまちダイアリー)6 四月になれば彼女は (フラワーコミックス)
吉田 秋生 / 小学館 (2014-07-10)
読了日:2017年4月27日
すずの祖母がいた金沢へ行ったこと、金沢で仲良くなったいとこが鎌倉へ遊びに来たこと。すずへの推薦での進学の話が持ち上がったこと。食堂のおかみの遺産分けをめぐるあれこれ。などなど。/立ち上がってきみの悲嘆の地図をたたみなさい(オーデン)が引用されたシーンが鮮やかで、図書館で資料あさってしまったほど。/誰にも、こんなはずではなかった、ということがあるはず/こんなはずじゃなかったけど 別の見方や考え方があるんだとか それまで見えなかったことが見えてきたりとか/悩めるというのは、いいこと 時間と選択肢があるのだから/時間が解決すると言うけど 時間がたっても消えないものもあるからね 古い傷あとみたいに/残されたお金が、残されたものを傷つけることもある/勝手に不幸だとか決めつけんのどーなワケ? (風太)/小林麻美 雨音はショパンの調べ サイモンとガーファンクル 四月になれば彼女は 聞いてみたくなる。/風太のしぼんだりもどったりのシーンが可笑しみ。
アフタヌーン 2017年 06 月号 [雑誌]
講談社 (2017-04-25)
読了日:2017年4月26日
波よ聞いてくれ。ミナレさん今回も爆走。お前毎回アドリブ部分で自分の心をすり下ろして客に出すのな、って麻藤さんのセリフが効いてる。そして、ラジオにそんなサブリミナル規定があったとは。四季賞からは、宇宙のライカ。片道切符だったライカ犬との対比があたたかい気持ちに。宝石の国は、終わりが近づいているのか、舞台装置が次々と明らかに。ヴィンランドサガは、普通の暮らしが楽しいやつなんてここにはいない、という、戦士の嘯きが不穏さに輪を。あたりのキッチンは、単行本買いたくなって来た。
おもたせしました。 1 (BUNCH COMICS)
うめ / 新潮社 (2017-04-08)
読了日:2017年4月26日
いつも着物で、資料を渡したり、貸借したりで、気の利いた自分も食べたいお土産を、おもたせして、だいたい一緒に食べて帰ってくる寅子さん。編集者かとも思ったけど、さくらおばさんからの指令で動いてるから、編集助手?巻末のお話で、目指してるところは少し描かれるけど。作中、文豪のかたる在りし日の東京や当時の食べものが語られ、興味が湧く。また、東京トイボックスの天川さんがちょこっと登場なのもうれしかった。
キングダム 46 (ヤングジャンプコミックス)
原 泰久 / 集英社 (2017-04-19)
読了日:2017年4月25日
新入隊員の選抜、李斯の登用、そして、三軍連合での趙への侵攻。その成否はスピードにかかっている。李斯の、法とは願いだ、という叫びが熱い。
吉祥寺だけが住みたい街ですか?(4) (ヤンマガKCスペシャル)
マキヒロチ / 講談社 (2017-04-07)
読了日:2017年4月24日
大森、池袋、北千住に、双子のリノベーションの行方、ティファニーで朝食をの麻里子さんも登場でにぎにぎしく盛りだくさんに。それにしても双子はどうやって東京中くまなく見所を網羅して自分のお気に入りを見つけているのか、興味深い。楽器可物件、女性も安心なセキュリティ高め物件、映画館のある街を巡ったり、漫画家志望だけど、視野が狭くなってる子に目を開かせるきっかけを作ったり。なんだか物件探しがカウンセリングを兼ねているかのように。
中野 美代子 / 福武書店 (1987-07)
読了日:2017年4月23日
何年ぶりかの再読。言いたいのは、カッコ付きの「良識」。自分たちが良識だと信じて止まない、良識ぶった良識なんかくそくらえ、という叫びではないのか、と思った。カニバリズムを題材として掲げつつも。過去のカニバリズムが起きた事件を取り上げ、その経過を描き、生き残ったものがどう遇され、裁かれ、あるいは受け入れられたのか、もし日本で同じことが起こったら、どう受け入れられるか、自分が同じ状況に置かれたらどうするか、ということも含めて。清代に書かれた「鏡花縁」は手に取ってみたく思った。また、副題に、一つの三島由紀夫論のために、と付けながら、一語も三島由紀夫に触れなかった「王国維とその死について」はやられた感があったが、国家への対し方に通ずるものがあったのでは、と解題に触れられ「社会上の習慣は許多の善人を殺し、文学上の習慣は許多の天才を殺す」(王国維)
札幌人図鑑
福津 京子 / 北海道新聞社 (2017-03-04)
読了日:2017年4月22日
札幌の興味深い人たちにインタビューした動画から70人を選んで書籍化。特に、印象に残ったのは…本当は体育教師になりたかった高田さんが、体操クラブのアルバイトから子供達への指導、教室開催、障害のある子の指導、障害のある子の働ける場の創出と広がっていくところがすごいな、と思ったエピソード。札幌の彫刻の戸籍作りに取り組む橋本さんの、札幌デジタル彫刻美術館構想に興味を惹かれ。/気球からの航空写真を撮る八戸さんの波乱万丈に心踊り/オオドオリ大学学長猪熊さん。「ウェブをやるとユーザーの顔が見えてきます。デザインを最終的に手に取るのは私たち生活者」/自休自足南さん。短い営業時間でも大丈夫なようにずっと考えてきた。/犬ぞりレーサーから建設業へ、林さん/フェラーリのデザインをしていたオクヤマさんが、帰国して山形の地場産業の鉄瓶をデザインで蘇らせたエピソード。/鈴鹿8耐ライダーの武石さんのインタビュー後の、あれをやっとけばという後悔もあるけど、好きという気持ちにしたがった人にしか見えない光景もある、という一言。
戯曲 毛皮のマリー・血は立ったまま眠っている (角川文庫)
寺山 修司 / 角川グループパブリッシング (2009-02-25)
読了日:2017年4月21日
ジャパンアヴァンギャルド、アングラ演劇ポスター傑作展を、札幌グランドホテルのグランビスタギャラリーで観たのがきっかけで手に取った一冊。初めて触れる寺山戯曲。た、確かにアヴァンギャルドというかアンダーグラウンドというか。途中、イメージが飛翔しすぎてわからなくなったり。激情の奔流に押し流されたり。共感より驚異、という後味。以下備忘録的に。/どいつもこいつも「代理人」の世の中だ。私は一体、誰の代理人なんだろう。/不満屋ってのは世の中との折合いが悪いんじゃなくって自分との折合いが悪い奴のことなんだから。/あなたに見せてあげたいの、世界やそのなかにきらめいている色んなもの/地下鉄の鉄骨にも一本の電柱にも流れている血があるそこでは血は立ったまま眠っている/歴史を信じない者は歴史に復讐される。ところが歴史だけしか信じない者は孤独になる。/
七つ屋志のぶの宝石匣(4) (KC KISS)
二ノ宮 知子 / 講談社 (2017-04-13)
読了日:2017年4月20日
ついに、赤い宝石を知るグループからの接触か。謎めいた客の、謎めいた宝石が、蟻の一穴となるのか。あと、焼き鳥屋のお姉さんのエピソードがツボ。お前はちっとも惨めなんかじゃねえ、って焼き鳥屋の大将の啖呵、カッコよかった。
テラモリ 6 (裏少年サンデーコミックス)
iko / 小学館 (2017-04-12)
読了日:2017年4月20日
話がぐっと進んだ。副店長、男も惚れる男前。厳しく見えるけど、そこまで部下を、周りを思いやれるとは、と。学生時代のバイトが、いいところだと思って働いてもらえたら、って。もちろん、ぎこちないようでいて、すこしづつ進んでいく、高宮さんとの関係も微笑ましく。
創太郎の出張ぼっちめし 3(完) (BUNCH COMICS)
マキヒロチ / 新潮社 (2017-04-08)
読了日:2017年4月20日
なるほど…そういう形でぼっち飯が終わるのかあ、と。凄平麺が心惹かれたなあ、この巻は。そして創太郎がいい意味で変わっていくのを感じられたことも。白石さんの厳しい中にも暖かい思いが描かれているのも。最後に見慣れた札幌の風景が出てきたのも個人的にはよかった。
損する結婚 儲かる離婚 (新潮新書)
藤沢 数希 / 新潮社 (2017-02-16)
読了日:2017年4月17日
結婚と離婚に関する寡聞にして知らない法律を知ることができたのが有益。それらの制度の幾分かが、今の時代に、人々のライフスタイルに合わなくなってきているという指摘も妥当かと。それに対する提案も語られていて、その点も真っ当かな、と。
ブラックマネー―「20兆円闇経済」が日本を蝕む (新潮文庫)
須田 慎一郎 / 新潮社 (2010-08-28)
読了日:2017年4月16日
様々な事件を取り上げて、反社会勢力の、金融事業、事業会社への食い込みを記載。事件を起こしたものへの筆致は厳しいが、それにとどまらず、背景へも目が配られる。/2000年代、土地に投資が向かったのは、特定目的会社の設立が容易になったこと。キャピタルゲイン(不動産の値上がり分を収益とする。土地が永遠に上がり続けないと誰かがババを引く。)が否定されて、収益還元法(不動産から得られる賃料等の収益を元に価格を評価)が絶対化されたこと。/"ファンドにデリバティブをかませることで資金を極大化し、さらに証券化により債権を流動化するなどという金融テクニックは、金融機関が顧客に提供したり自らが投資プレイヤーとなってファンドを組成する際に散々活用してきたもの"/ただ、ライブドアへの評価は厳しすぎるように感じる。また、見せしめで逮捕されて無罪になった人へ、やりすぎたのだから仕方ない、みたいなものいいはフェアではないと感じる。誰を、どの会社を実名でだし、どれを匿名にするかという選択にも恣意が感じられ、引っかかるところではあった。
仙界とポルノグラフィー
中野 美代子 / 青土社 (1989-07)
読了日:2017年4月15日
再読。今、興味のありそうなところをざっと再読。気賀沢保則「則天武后」を読んで、”ディー判官ものの作者”を再読したくなり。1950年の「中国迷宮殺人事件」がディー判官ものの最初の作品。あとは、エドワード・ワーナーが「中国の神話と伝説」で訳出した、北欧人が盤古を読み込んだバラードが印象に。「時のあけぼの バン・クー(盤古)この世にありしとき 砂もなければ海もなく まして冷たき波もなし 地上は無のみ 高き空もなく 生ける緑のしるしだになく あるは海の深き淵のみ」
響~小説家になる方法~ 6 (ビッグコミックス)
柳本 光晴 / 小学館 (2017-04-12)
読了日:2017年4月15日
波乱の会見の続き、そこからの逃亡の後にも事件を起こし。ただ反響だけは大きく、出版も進み、ベストセラーに。高校生活は、新入生も入り、また一悶着。そして同級生がやらかしたことの後始末に上京するが、最後に禍根を残しそうな予感で閉じられる。相変わらずの疾走感。これだけ事件を起こして、そのどれでも訴えられていないのは奇跡に近いし、SNS全盛の時代に脇が甘すぎると思わないでもないけど、そこはそれ。
いつかティファニーで朝食を 11 (BUNCH COMICS)
マキ ヒロチ / 新潮社 (2017-04-08)
読了日:2017年4月15日
おもにニューヨークに飛んだ典子と、日々を悩みながら過ごす真理子のストーリーを軸に。かたや着々とニューヨークに居場所をつくり、のびのびと過ごし、かたや、自分の仕事に限界を感じ、ついに仕事を辞めることを決意。ニューヨークでふたりは再会するが、その背後では、新たな再会がありそうな予感…といったところまで。湯葉バーみたいなのすごくいいなあ、北千住、と思いつつ。富山県立図書館にも心惹かれる。/「人の目なんて気にしなくていいのよ 後悔しないことが大事 そうすれば周りも変わっていくんだから…」
重版出来! 9 (ビッグコミックス)
松田 奈緒子 / 小学館 (2017-04-12)
読了日:2017年4月15日
初めての連載担当作家の初めての単行本。難しい性格の故、アシスタント探しには苦労するが、対話を重ねるうちに少しずつ少しずつだけど人柄がねれてきて。3Dプリンタでのフィギュア作成や、紙を折ってつくる付録などの工夫も凝らされ。そして、この巻でも、自分だけではなく、後進を、育てていこう、育っていってほしい、という願いが込められているように思う。/「きみをきっと遠くまで連れてってくれる」「中田さんには理解できない苦しみやみじめさを知っている人たちに向けて、僕は漫画を描きたい」「手にするものが違っても 必ず何かが残るから、怖がらなくていいの 遠慮しなくていいの 誰からなんと言われても。自分の夢を捨てなくていいんだよ」「この耳が私の金メダルなの!」
厄除け詩集 (講談社文芸文庫)
井伏 鱒二 / 講談社 (1994-04-05)
読了日:2017年4月15日
ハナニアラシノタトエモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ、という有名な一節が収められているのを知り、手に取る。オリジナルではなく、于武陵「勧酒」という漢詩の自由訳だったとは初めて知る。他に、巻頭の、雪崩の先頭に悠然と座る熊の詩、素直にせまってくる、「紙凧」あたりが印象に。”私の心の大空に舞ひあがる はるかなる紙凧一つ 舞ひあがれ舞ひあがれ 私の心の大空たかく舞ひあがれ”
世界は幻なんかじゃない (角川文庫)
辻 仁成 / 角川書店 (2001-09)
読了日:2017年4月12日
ミグ25に乗ってソ連からアメリカに亡命したベレンコ中尉と対談、と言うのに興味を惹かれ手に取る。その前に、大陸横断鉄道でゆっくりとアメリカを横断する旅を挟みつつ。フォークナーの稀覯本に目を輝かせ、アメリカ娘とのささやかなすれ違い、そして再開時の気遣い、「カウボーイにはボスはいない。あらゆるものから自由な者がカウボーイだ」「俺たちは、牛と仕事があればどこへでも駆けつける。たった一人でも仕事をやり遂げる自信がある」という本物のカウボーイたちとの出会い。巻末近くに、ベレンコの元へ。当初は注目を浴び、再婚もし、様々な引きがあったが、今はリスキーな投資に破れ、家族にも去られ、細々と働きながら、けれどもアメリカには選択の自由がある、亡命したことは悔いていない、といい次なるビジネスのことを捲したてる、最後の最後に、ソ連に残してきた息子のことをどう思う?と訪ね、それだけは質問するな、とかえってきたやりとりが印象に残る。
ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち (光文社新書)
ジョン・ロンソン / 光文社 (2017-02-15)
読了日:2017年4月10日
大罪を犯したわけではないが、著作の中の著名人の引用が捏造であると指摘された売れっ子ノンフィクション作家、人種差別的なツイートで職を失ったIT企業広報部長、戦没者追悼施設で中指を立てた写真で非難された女性。確かに褒められたことではないが、やったことに対して、あまりにバランスを欠いた、法による裁き以上の過剰とも言える非難を受け、職を失い、精神的にも経済的にもひどくダメージを受けた様子、その後のことまで描かれている。同じようなことをやっても人生を壊された人、壊されたなかった人の差は、運がよかった悪かったぐらいのことしか見当たらない。堂々としてればいい、と言っても、それだけで差がついたとも思えず。恣意的な、あまりに恣意的な制裁が下されているように思える。そして、ひとつひとつは何気ないtweetが集まると大きな矢のようになることは心に止めたいと思う。また日本の例でも類書があれば、と思った。/以下備忘録的に。「ツイッターは今や法律によらない私的裁判の場になっていて、不当に人が裁かれ吊るしあげられているのではないだろうか。/「群衆を動かすには、感情を煽るしかない。物事を誇張して話す。言い切る。そして繰り返して言う。決して、自分の言っていることの正しさを論理的に証明するようなことをしてはいけない」(ル・ボン)/公開羞恥刑は、刑を受ける者が恥ずかしいと思うから成り立つものです。当人が恥ずかしいと感じなければ、すべては崩れます/私たちは恥を感じるのではなく、恥を苦しむのです。」
傷だらけの店長: 街の本屋24時 (新潮文庫)
伊達 雅彦 / 新潮社 (2013-08-28)
読了日:2017年4月9日
街の本屋の店長さんの悪戦苦闘エッセイ。全体的に非常に重いトーン、辛い苦しいが、オブラートにも包まれず、笑いにも昇華されず。私が本当に欲しいのは、時給が低かろうが 土日祝祭日が潰れようが関係ない、本が好きだから本屋で働いてみたい、という気持ちを持った人材である、って。それは、逃げ恥で言うところの、やりがいの搾取ですよね。長年バイトとして戦力になってくれて、一時期は正社員も夢見たがやめていくベテランバイトに、店長を見てると本当に大変で…と言われ。本を愛し大変な読書家だった同業者が、書店を辞めた時の辛さで、本はもう読まない、書店にも近づきたくない、となったエピソードなど。そして、かすかな最後のラインは、「探していた本を見つけた時の喜び。意外な本に出会う楽しさ。客がそれをかなえる空間を創り上げることのみを夢見て、書店員を続けていた」という独白だったのだろう。それも、大型競合店の進出 、赤字による閉店を経て、思い切ることになるのだけど。その喜びにはささやかな本読みとしてはしごく共感するのだけれど。好きだけでは売れない、続けていけない、という部分も大きく感じられ。
東方の黄金 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1804)
ロバート・ファン・ヒューリック / 早川書房 (2007-09-14)
読了日:2017年4月8日
氣賀澤保規 「則天武后」を読んで、狄仁傑の記述に触れ、中野美代子「仙界とポルノグラフィー」で取り上げられていた、「ディー判官ものの作者」を思い出し、一冊読んでみようかと相成った次第。出版年次が一番最初かはわからないけど、狄仁傑の人生の時系列からすると最初になる、この一冊を手にとる。都から転任して、最初の知事業務に当たる平来県での事件。前任者の知事の毒殺から始まった事件は広がりを見せ...と。紆余曲折を経て、最後は手並み鮮やかに解決するが、そこにはまた苦さもあり、と。ストーリー中、朝鮮との交易の話が出てくるが、地図をみると、山東省、確かに海を挟んですぐに朝鮮と向き合っていて、これは確かに交易盛んだったろうな、と思わせる。/全か無かいずれかだ。中間はない(狄仁傑)、剣によって死ぬさだめとあらば、わが血を吸うのがこの剣でありますように!(喬泰)/厩を知らん馬があるか?(柏開)などのニヤリとさせられる名台詞も散りばめられ、普段手に取らないミステリを楽しむことができた。
いのちの車窓から
星野 源 / KADOKAWA (2017-03-30)
読了日:2017年4月8日
療養中に、一切の情報を偽って、ツイッター上のみで交流したことが、救われたというエピソード。あとは、大泉洋、新垣結衣とのかかわりを語った章、そして構成作家の寺坂さんの章が印象に。紅白の前口上を全部記憶してる紅白マニアでラジオ大好き。お互い思春期に救われたことから、ラジオが大好きになり、話が盛り上がり、友情が生まれ、紅白出場が決まったらいの一番に報告し、出場時の台本を寺坂さんが書くことになるなんて。出来すぎた短編映画のように。大泉さんは口では嫌うようなこと言って、うっとうしく絡んでくるようでいて、底に愛が溢れるエピソードもいろいろあり。新垣さんは、普通、がテーマ。スターダムに長くいると失われがちな普通さが残ったのか再獲得されたかして発される気配りと素敵さ。あとは、人見知りで、と自分で言うのは、自分はコミニュケーションを取る努力をしない人間なので、そちらで気を使ってください、と恥ずかしい宣言をしているのでは、と思い至ったこと。深夜の蕎麦屋を出て、「いつだって、世界を彩るのは、個人の趣味と、好きと言う気持ちだ」と思い至ったシーンが印象に。
アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)
パウロ コエーリョ / 角川書店 (1997-02)
読了日:2017年4月8日
読もうと思って買ったのに、5年ほど寝かせてしまった本。夢に導かれ、それを兆しと信じ、背中を押され、宝物を探しに出かける羊飼いの少年のお話。書かれたことを信じること、前兆を信じること、キリスト教なりイスラム教なり、一神教の信仰を持っていれば、すんなりと信じられるのだろうか、と思いつつ読み進めた。以下、備忘録的に。心に留めておきたい言葉を。/人は人生のある時点で、自分に起こってくることをコントロールできなくなり、宿命によって人生を支配されてしまうということだ。それが世界最大のうそじゃよ。/彼は今まで慣れ親しんできたものと 、これから欲しいと思っているものとのどちらかを、選択しなければならなかった。/僕は他の人と同じなんだ。本当に起こっていることではなく、自分が 見たいように世の中を見ていたのだ/わしはだんだんと不幸になってゆくような気がする。なぜなら、自分はもっとできるとわかっているのに、わしにはそれをやる気がないからだ/私は砂漠を何度も越えたことがある しかし砂漠はとても大きく、地平線はとても遠いので、人は自分を小さく感じ、黙っているべきだと思うようになるんだ。/人は、自分の必要と希望を満たす能力があれば、未知を恐れることはない、ということです。
風の歌を聴け (講談社文庫)
村上 春樹 / 講談社 (1982-07)
読了日:2017年4月4日
学生時代に読んで、かっこいい、クールとしびれ、社会人になってから読んで、すかしてるなあ、と思い、少しはなれ、今また手に取ってみると、味わい深く感じられる。
格闘する者に○ (新潮文庫)
三浦 しをん / 新潮社 (2005-03-02)
読了日:2017年4月3日
5年ぶりの再読。折を見て読み返したくなる一作。就活に悩む人にオススメの何冊、みたいな書評エッセイで見かけて、朝井リョウ「何者」読んだのに引き続き、手に取る。今回は、独特の妄想と現実との境目が見えなくなるシーンが特にツボ。
住友銀行秘史
國重 惇史 / 講談社 (2016-10-06)
読了日:2017年4月3日
イトマン事件前後の住友銀行内の、銀行の将来なんかそっちのけの権力闘争。そこに自分の身を捨てて、真に銀行の将来を考え、改革の理想に燃える著者、という立ち位置。やはり著者だけがカッコよくヒーローというのは納得いかないところ。やっていることは、著者が批判している側とどう違うのだろうか、と。メインの攻撃手段は、怪文書とマスコミを使ったリークだし。ただ、情報はこうやってとっていくのか、というのは興味深かったけど。権力闘争とは畢竟、業績ではなく、あいつが好き、嫌いという原始的な感情的な人間関係に基づくのだなあ、と感じさせる。そしてなぜ今頃イトマン事件のことを、というのは著者の説明でも弱いなと思った。ただ、バブルの時代の世相、その狂騒は感じられた。当時の金融行政が護送船団方式の末期であったことはひしひし感じられたが、イトマン事件の処理が表層的なものに止まらず、メインバンク制を改めるところにまで踏み込んでれば、失われた10年にならなかったのに、というは歴史のif、なんとも言えず。
カフカ 《Classics in Comics》
西岡兄妹 , フランツ・カフカ / ヴィレッジブックス (2010-04-20)
読了日:2017年4月3日
カフカの作品から、家父の気がかり / 変身 / バケツの騎士 / ジャッカルとアラビア人 / 兄弟殺し / 禿鷹 / 田舎医者 / 断食芸人 / 流刑地にてを取り上げて、漫画化。ストーリーをそのまま漫画化というよりは、地の文をそのまま当てはめて、挿絵に近いというか、その中間というか。「断食芸人」は、carib song,田辺剛「サウダージ」で取り上げられたのとは趣を異にして、抽象的な文様が、芸人の心象を表しているのかな、と。「兄弟殺し」は、動と静、なぜ殺したいのかも明らかにされず、殺すまでの高揚と、殺した後のただ呆然と連れて行かれる対比が印象に。田舎医者も、理不尽、唐突な馬丁の出現と、往診で裸にされ、最後は雪原に放り出される医者。流刑地にて、の得意な処刑器具の紹介とそれに飛び込んでいく将官もシュールで。
則天武后 (講談社学術文庫)
氣賀澤 保規 / 講談社 (2016-11-11)
読了日:2017年4月3日
空前絶後、女性として女性のまま中国の皇帝となった則天武后。太宗の後宮から、感業寺に尼として入り、高宗が見出した、と言うよく知られるエピソードに疑義を呈し、対立者を取り除いて、皇帝たる高宗を実質的には服従させ、政治を動かした則天武后。個人的には、酷吏の跋扈するこの時代に住みたいとはあまり思わないが、大胆な人材の登用で人身を収攬し、外征にも手腕を発揮し、明堂をはじめとした文化事業にも取り組み、といった側面も伺いしれる。使えるとなれば奸臣だろうと酷吏だろうと使えるだけ使い、潮時と思えば、姻族だろうと容赦なく殺す。そして拙速ではなく、女性が皇帝位についてもおかしくない、と言う世論を、慎重に慎重に編み上げていって、皇位につく様は圧巻。死に際しては「無字碑」を建てさせた。”自分がやってきた仕事や業績は文字にして表しきれないほど無限に大きいということ”、”その評価を後の人間にゆだねたい”ためであったのでは、と。
町田くんの世界 3 (マーガレットコミックス)
安藤 ゆき / 集英社 (2016-03-25)
読了日:2017年4月2日
すべてを見下す弟の友達に、友達を作るのに資格なんていらないよ、とさらりと言うシーンが印象に残る。
町田くんの世界 2 (マーガレットコミックス)
安藤 ゆき / 集英社 (2015-11-25)
読了日:2017年4月2日
人類を全部家族と思ってるんじゃないか、と思われたり、それは幼稚園の先生に言われた言葉がきっかけだと描かれたり、何を幸せとするかはその人の自由だから、と諭したり、踏み出せ、大丈夫、何があってもにいちゃんがいるから、と背中をおしたり、この巻の町田くんもかっこいい。
町田くんの世界 1 (マーガレットコミックス)
安藤 ゆき / 集英社 (2015-07-24)
読了日:2017年4月2日
メガネの似合う優等生な見かけだけど、勉強も苦手、活字も苦手、運動も苦手だけど、少しでも関わりのある周囲の人を家族のように大切に愛し、そのことで本人は無自覚なまま愛される町田一くん。頑なだった不良っぽい美少女、いじられてばかりで卑屈になってた惚れっぽい男子、女子にはぶりっこと思われがちな女の子、モデルをやってる男子、幼稚園の時の先生、などなど、に。読み終わると、世界が愛おしく、誰にも優しくしたくなってしまうような読後感。立て続けに、二回、読んでしまう。/恋に関してはよくわからない。けど、ゆっくりいこうよ、といっているような言葉がすっと受け入れられるシーンが印象に残る。
漫画として現れるであろうあらゆる恋のためのプロレゴメナ (torch comics)
窓ハルカ / リイド社 (2017-02-24)
読了日:2017年4月2日
本屋で見かけて衝動買いしてしまう。男性恐怖症でそのことをネタにデビューを目指す漫画家志望女子と、下ネタ大好き華奢でコスプレ大好きな男子のラブコメ…とくくっていのかどうなのか。二人とも屈折の仕方が面倒くさすぎて、展開も唐突すぎて、思わず噴き出すところもあったし、いや、いくらなんでも顔覚えてなさすぎだろう、と思うところもあったけど、息をもつかせぬジェットコースター、一気呵成に、最後も、え?そこで?という終わり方だったけど、ここまできたらなんとかしそうな気もするし、と。他の作品も読んでみたくなった。
忘却のサチコ 9 (ビッグコミックス)
阿部 潤 / 小学館 (2017-03-30)
読了日:2017年4月2日
相変わらずの、一仕事終えた後の、ご褒美のご馳走を味わうシーンがおかしい。宇都宮で餃子を味わうシーンの、コック姿のパンダが、カリッ、モチッ、プリッと言って微笑んでるシーンが特にツボ。そして鹿児島でまさかの再開、信じられないけど信じて待とうかという思いに。またある時は、野球にも造詣が深く、ある時はイタリアの世界的な作家に日本の編集者の日常を示し、ある時は賞を逃した担当作家のやる気を奮い立たせる、敏腕編集者の一面も描きつつ。しかしタフで該博だなあと感心してしまう。
3月のライオン昭和異聞 灼熱の時代 4 (ヤングアニマルコミックス)
西川秀明 / 白泉社 (2017-03-29)
読了日:2017年4月2日
ふらりと楽しんでいた祭りで、絡まれてしまった大道将棋。手も無くコテンパンにひねりつぶしたあとに現れたのは、真剣師あがりの先輩棋士。お互い泥沼のそこから這い上がった同士の、激しくぶつかり合う勝負。それは、この先の名人戦への足がかりとなるものとなり、また、隣人の香織との絆を深めるものとなった、と。新たな戦法がどこまで通じるのか、話しがどう進んでいくのかこの先楽しみ。相変わらずの熱量の高さを堪能。
ラーメン大好き小泉さん 5 (バンブーコミックス)
鳴見 なる / 竹書房 (2017-03-30)
読了日:2017年4月2日
つけ麺の奥深さから、ラーメンの幅広い世界へと話しは続き。市場の朝の魚介系ラーメンに舌鼓打ったり、地盤沈下でナナメに傾いたラーメン屋で一杯を味わったり。そして、ラーメンサラダが取り持つ縁。クラスに馴染めない転校生が馴染むきっかけを作ったり。札幌グランドホテルのビアホールが発祥とは知らなかった。ちょうどグランドホテルでお茶してる時に読んだので個人的にシンクロ感。そして北海道のローカルフードだったとは…全国区の食べ物だと思っていた。
町田くんの世界 4 (マーガレットコミックス)
安藤 ゆき / 集英社 (2016-11-25)
読了日:2017年4月2日
猪原さんのがどういう気持ちか相談した時の、”相手を想像して研究し続けていられればずっと仲良くしていられるんじゃないかな”、という父からのアドバイス。人も自分も気持ちを大事にして初めて愛せるんだ、とクラスメートを諭す町田くん、のシーンが印象に。


chokusuna0210 at 22:05│Comments(0)TrackBack(0)clip!メディアマーカー 

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