時計

2007年03月26日

Lange 31に驚愕

 某所や某所で紹介されているLangeの新作に関して。
 その名も"31 Days"。衝撃の1ヶ月巻きです。目玉は巨大な単一の香箱とコンスタントフォース機構。
 ロングパワーリザーブの時計にありがちな複数の香箱は使用しておらず、31日ものパワーリザーブはムーブメントの2/3を占めようかという巨大な香箱一つで賄われています。そんな化け物じみた香箱を使う以上当然巻き上げには多大な労力が必要。そういうわけでなんとLangeは古典的な鍵巻きを採用してしまいました。鍵はゼンマイ切れを防止するためトルクリミッターを搭載したもので、その操作やフォルムともども好事家が涙を流して喜びそうな仕様です。
 で、この時計のもう一つのキモがコンスタントフォース。これだけ巨大なゼンマイですからトルク変動は非常に大きく、等時性確保にはもってこいな機構です。形態としてはThomas Prescherのものに似ているように見えますね。リシュモンによる特許公開2003−194963や特許公開2004−245838に機構的に似通ったものがあります。前者のほうが分かりやすいかもしれません(今までLangeに結びつかなかったのは不覚)。簡単に説明しておくと、第二のヒゲゼンマイ(便宜上そう呼んでおきます)が取り付けられた4番車に三角形のルローカムが乗っており、そのカムを第二アンクル(便宜上以下略)のフォーク状部品が規制、4番車が回転することで第二のヒゲゼンマイにトルクが蓄積され、ルローカムが第二アンクルを押し、フォーク状部品と反対側で噛み合っている単一の爪を持ったストップ車を開放、次の噛み合い場所までトルクがリリースされるという一連の動きを10秒単位で繰り返します。ストップ車が噛み合っている間にもテンワにトルクが伝達されるように4番車は上下2枚となっており、その連結は第二のヒゲゼンマイによってのみ為されています。ヒゲ玉は上側の4番車に、ヒゲ持ちは下側の4番車にそれぞれ固定されています。ストップ車が噛み合っている状態での挙動は固定コレットと可動コレット、またそれに取り付けられたピンによって規制されているものと思われますが、そこまで詳細な発表が無いので今のところ推測の域を出ません。ヒゲ持ちが固定されているディスクに恐らくピンを逃がすための切り欠きがありますのでそれ程的外れではない……といいな。

 さて、最近時計関連の話題に触れていなかったのは、自分の立場を考えると大したソースも出ないうちに感想に過ぎない記事を書くのが躊躇われたからです。それでもこの時計だけはどうしても紹介したかった。
 正直1ヶ月巻きにする意味は何一つ無いとすら思っています。どうせコンスタントフォースやるなら物凄く長いリザーブ付けちゃえ、ゼンマイ長いから鍵巻きにしちゃえ、などというやり取りがあったかどうかは分かりませんが、とにかくこの時計は笑ってしまうほど豪快で無意味にオーバースペックで非常にエキサイティングな出来です。リヒャルトランゲの有り様に疑問を感じた私としては故Blumlein氏の魂健在という感じで溜飲が下がる思い。今までLangeに対して好意的とは言えなかった自分ですが、やっぱりLangeは凄いなぁと言わざるを得ない状況で嬉しいやら悲しいやら。

ci_netzach at 18:12|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年09月17日

コンスタントフォース雑記

 振り角を落とさないこと。今も昔もこれこそが時計設計における至上命題であろうかと思います。この命題を視覚的に最も分かりやすく解決したのがコンスタントフォースと言えます。
 現行でコンスタントフォース、つまり定力装置を載せた腕時計は

 F. P. JourneのTourbillon Souverain
 DeWittのAcademia Tourbillon Force Constante
 Thomas Prescherの各種Tourbillon
 A. Lange & SohneのTourbograph

 以上の4つです(多分)。George Daniels一派の時計は市販品と言えるかどうかも疑わしいので省略。
 LangeのFuseeは何度も紹介していますから置いておくとして、残りの3つには共通点があります。それは何れも輪列の途中に定力装置を噛ませ、駆動輪列のトルクとは別に定期的且つ断続的にトルクを供給しているということ。続きを読む

ci_netzach at 21:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年04月16日

BASEL, SIHH, その他プレスリリース

 久しぶりに時計の話題を。

 先日バーゼル等プレスリリースイベントがまとめて開催されましたので、気になるモデルをいくつか紹介しようと思います。

Patek Philippe Ref.5130

 最初にネガティブな方向で気になったものを。
 5110の新バージョンということになりますが、短針が初期のワールドタイマー(Agassiz等)を彷彿とさせる円形の物に変わったものの、その形状は余りに平面的で著しく高級感に欠けるものです。サイズが大きくなったことでワールドタイマーの魅力である凝集感も失してしまい、個人的には改悪と言ってよいものだと感じています。5110は現行に限れば魅力的なワールドタイマーであっただけに残念。
 Patekで良さそうなのはRef.5396(5296の年次カレンダー)くらいでしょうか。続きを読む

ci_netzach at 11:00|PermalinkComments(2)TrackBack(1)

2006年01月13日

Lang & Heyne Albert of Saxony

 予てより噂になっていたクロノグラフが遂に公式サイトで発表されました。
 仕様はLemania 5100のように分積算針が中心に置かれたワンプッシュのクロノグラフ。ベースの機械は今までの3針時計と同じものです。続きを読む

ci_netzach at 04:51|PermalinkComments(3)TrackBack(0)

2005年12月20日

SEIKO 68系ムーブメント

 今現在セイコーで唯一高級品と呼べる機械式ムーブメント。それが68系です。
 68系のはしりは1969年に発売された6800。高級な機械=薄型という図式が根強く残っていた時代ですから、天文台コンクールに45系を持ち込んだ状況と前後してセイコー開発陣が精度だけでなく見た目にも高級なドレスウォッチを作ろうとしたのは肯ける話です。その後クォーツショックにより一度は姿を消したものの、セイコー創業110周年の記念モデルとして再び採用され、以降薄型ドレスウォッチの基幹ムーブメントとして現在まで生産されることになります。続きを読む

ci_netzach at 17:42|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2005年12月14日

現行複雑・特殊系腕時計5選

 最終第3弾。世に言うグランドコンプリケーションというヤツです。

5 IWC Portuguese Perpetual Calendar

 時計の基本構造に全く関わりが無い上、定向に進むだけの永久カレンダー機構はあまり好きではないのですが、これは値段と品質のバランスが取れています。自社開発のCal.5000はやや複雑に過ぎるものの、大きいテンワとペラトン巻上げ機構は審美性信頼性ともに優れており自社ムーブと呼ばれるものの中ではかなり真っ当な機械と言えます。分厚い機械ということで手巻きも問題無くできるところも、一度止めてしまうと調整が面倒な永久カレンダーには嬉しい付加価値です。載せられるモジュールは一日一回転する歯車に年表示付きのカレンダー機構を接いだもので、世界で一番売れた永久カレンダーDa Vinciで培われた技術が余すところ無く受け継がれています。
 外装は特筆するところはありませんが、18KRGのケースで300万という値段はかなりリーズナブルと言えるでしょう。続きを読む

ci_netzach at 01:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年12月06日

現行自動巻き腕時計5選

 第2弾。今回は自動巻き腕時計です。自動巻きは自動巻きというだけで価値がある。腕に載せる以上そこに在る理由も欲しいですしね。

5 Vianney Halter Classic

 究極の変態時計であるOpus 3で有名なHalter氏ですが、このモデルは付加機構の無い自動巻き3針時計です。当然単なるシンプルな時計で終わらしてはいないわけで、裏を向けるとローター真は見えるのにローター自体が見えない不思議なデザインになっています。なんのことは無くサファイアクリスタルで外周のウェイトを接いでいるだけなのですが、機構の複雑さ云々ではなく視覚的効果を狙っているのが氏らしいと言えばらしい。ベースムーブメントはLemaniaのCal.8810ですが、受け板を全て自製し歯車もピカピカに磨き上げていますので見た目はかなり別物となっています。何気に緩急針もトリオビスを採用したりと細部まで気を使った設計。ですが。この時計の本質はムーブメントでは無くガワの素晴らしさにあります。潜水艦をモチーフにしたらしいケースは奇抜ですが、決してデザインのみに終始しておらず細かいところまで仕上げが行き届いています。文字盤が一段深くなっているのも素晴らしい。金無垢の文字盤には手書きのアラビアインデックス。そして群を抜いて存在感のある指示針。これほど美しい針は国産を除けばそうそうお目にかかれません。文字盤のデザインも含めてこれだけ金無垢の似合うケースも珍しいですよ。ピンクゴールドケースにホワイトゴールド文字盤の組み合わせなどは溜息ものです。この順位なのは、この時計自体金無垢以外に価値が無いため値段が張るということ、そして実用性が皆無ということに尽きます。竜頭のデザインも素晴らしいですが使っているうちに突起が無くなってしまいそうなほど繊細でして……。とても普段使うために買う時計ではないですね。続きを読む

ci_netzach at 16:17|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年12月02日

Seiko Diver's SKX781

 Angle view Dial
 一家に一台7S系。
 というわけで買ってしまいましたSeiko Diver's。欧米や中東向けに販売されているシリーズで逆輸入品という形になります。買ったモデルはSKX781。海外ではOrange Monsterの愛称で親しまれている……らしい。続きを読む

ci_netzach at 16:00|PermalinkComments(0)TrackBack(2)

2005年11月30日

現行手巻き腕時計5選

 たまには俗っぽい企画でも。3部構成の予定で今回は手巻きの腕時計。例によって画像や詳細は各自検索していただくということで。

番外 Philippe Dufour Simplicity

 5選と言っておきながらいきなり番外で申し訳ないですが、このカテゴリでこの時計に触れないわけには参りません。
 というわけで皆大好きSimplicity。現行でアンティークPatekに肉薄できる時計はSimplicityただひとつです。Dufour氏も言っているとおり機械の意匠はAudemars PiguetのCal.VZSSにそっくりですね。Cal.VZSSはValjouxのクロノグラフCal.VZの地板を使った薄型のムーブメントですが、Simplicityは仕上げと言う点でそれを凌駕しています。昔の高級機と比較できるだけでも驚くべきことですから、それだけでSimplicityの凄さが分かろうかというものです。ただケースや文字盤の外装は至って普通。外注ということもあってか機械に比べるとあまりに面白味がありません。500万という値段を考えると素直にRef.96を買ったほうが幸せになれるような気もします。あれは外装も飛び抜けて良いですから……。
 あと文句を付けるとすればこの時計、どこがSimplicityなんですかDufourさん。シングルバレルのマスロット付きフリースプラングってそう簡単に調整できるとは思えないんですが。輪列にしたって、こんな超絶歯車は氏にしか切れないでしょう。
 値段を含めて色々言いたいことはありますが、現代にこの時計が存在すると言う事実だけで価値がある時計とは言えるでしょうね。続きを読む

ci_netzach at 16:29|PermalinkComments(8)TrackBack(3)

2005年11月22日

NOMOSという時計

 余程の付加価値が無い限り手巻きの腕時計には魅力を感じないというのは以前も触れたとおり。しかしこのNOMOSという時計は、私にとって数少ない欲しいと思える手巻き時計のひとつです。続きを読む

ci_netzach at 19:08|PermalinkComments(0)TrackBack(0)