◇山田洋次監督

◆渥美清、木の実ナナ、倍賞千恵子、前田吟、武田鉄矢、下條正巳、三崎千恵子、太宰久雄、竜雷太、杉山とく子、小月冴子、梓しのぶ、佐山俊二、笠智衆

 

シリーズ第21作目の『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』は1978年8月5日に公開された。「とらや」の裏のタコ社長(太宰久雄)は相変わらず不況で資金繰りがままならないことをパターン化された嘆き節でぼやいている。確かに1970年代は二度のオイルショックと二度の円高ショックを経験して日本経済は混乱していた。そんな時代を背景にした物語だが、寅次郎は相変わらず気楽な、しかし内心では己のふがいなさを多少は自省している気配も見せながら渡世人生活を送っている。

今回は寅次郎が妹さくらの小学校時代の親友で今は浅草国際劇場のショー・ダンサーをしている紅奈々子(木の実ナナ=写真左)に対する俄かな恋と失恋が主題だが、シリーズの中では前にも中学校時代の恩師の娘のチェロ奏者(佐藤オリエ)に対する恋と失恋、小学校時代の同級生だった幼馴染の美容院経営者(八千草薫)への恋と失恋など似たような趣向があった。これもパターン化である。

寅次郎わが道をゆく3今回は寅次郎の雛型のような田舎青年が登場するのが新味と言えようか。

『──寅次郎わが道をゆく』公開の前年、197712月にアイドル歌手、ピンク・レディの「UFO」がリリースされて大ヒットした。早速このヒット曲が映画の中に取り入れられている。さすがは山田洋次と感じさせる。

タイトル・クレジットの前の例の寅次郎の夢のシーンでは、寅次郎がいつもかぶっている帽子の形をしたUFOが葛飾柴又へ接近中という緊急ニュースとその映像をテレビが伝えているので「とらや」一同大慌て。騒ぎの音声で寅次郎が目覚めると、自分は田舎の無人駅のプラットホームでうたた寝していて、傍で列車待ちをしていた若者たちがラジオ・カセットでピンク・レディの「UFO」を大音声でかけていたという設定である。

寅次郎は熊本県の田舎で失恋青年の後藤留吉(武田鉄矢)を慰めてやったことから慕われるようになったのはいいが、泊まった宿の宿賃が無くて困ってしまい、今回はその代償に宿屋の臨時番頭をするというパターンはなく、SOSの速達を「とらや」へ寄越したので、さくらが迎えに行って連れ帰る。なぜか留吉も付いてくる。そんな中へ、紅奈々子がさくらに重大な相談があると言って訪ねて来て、寅次郎が彼女に一目惚れするという展開になる。留吉も故郷へ帰るのも忘れて安食堂で出前持ちとして働きながら国際劇場の新人ダンサーに熱を上げる。二人とも失恋するのはお決まりの結末だが、今回は松竹歌劇団(SKD)のダンス・ショーのシーンが多く、それはそれなりの彩りにはなっている。しかし、『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』は全体的に展開が緩く間が抜けた感じがある。一年に2本もシリーズを製作していた時代だから、原作者の山田洋次も息切れ気味だったのかも知れない。

                               ☆☆☆