◇ルネ・クレマン監督

◆マリア・シェル、フランソワ・ペリエ、シュジー・ドレール、アルマン・メストラル、マチルド・カサドジュ、ジャック・アルダン、リュシアン・ユベール

 

 エミール・ゾラの代表作「居酒屋」は1931年にアメリカで“THE STRUGGLE”というタイトルで映画化され、本国フランスでも1933年にガストン・ルーデス監督により映画化されているらしいので調べてみたが、そのデータが見つけられなかった。日本で劇場公開されたかどうかも含めて内容などが全く判らない。(ちなみに、インターネットで「居酒屋」というキーワードで検索すると、高倉健主演の『居酒屋兆次』の情報がドカッと出てくる。)

ルネ・クレマン「居酒屋」ともあれルネ・クレマン監督の『居酒屋』(1956年。原題“GERVAISE”)は三度目の映画化ということになるが、この作品は世界的に高い評価を受けたようで、ヒロインのジェルヴェーズを演じたドイツの女優マリア・シェルはヴェネツィア国際映画祭で主演女優賞を受賞、作品自体も第29回アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた。

ゾラの原作は相当な長編で、タイトルは“Lassommoir”(この小説の中に頻繁に登場する居酒屋の名前)だが、ゾラ自身は当初、「ジェルヴェーズ・マッカールのありふれた人生」というようなタイトルを考えていたらしい。19世紀パリの下層社会の洗濯女ジェルヴェーズを中心に物語が展開するので、映画はその点に忠実に脚色され、貧しい環境に暮らす女性の哀れさが浮き彫りになって引き締まった作品になっている。

ジェルヴェーズ(マリア・シェル)は愛人のランチエ(アルマン・メストラル)、息子二人と四人でパリの下町で暮らしていたが、漁色家のランチエはジェルヴェーズが必死の思いで稼ぎ貯めた金を持って別の女と失踪してしまった。

ジェルヴェーズは貧苦にあえぐ身となったが、屋根葺き職人のクーポー(フランソワ・ペリエ)と知り合い、正式に結婚する。クーポーも真面目に働き、二人の間に娘ナナが生まれた。貯えもできたのでジェルヴェーズは洗濯屋の店を開くことにしたが、その矢先にクーポーが屋根から落ちて足が不自由になり、酒浸りになった。

貯えもクーポーの治療費に消えたが、ジェルヴェーズに好意を持つ鍛冶職人グジェが金を貸してくれたのでジェルヴェーズは店を持つことができた。ところがランチエが唐突に戻ってきたので、ジェルヴェーズの人生が狂い始める。

クーポーが妙な男気を出してランチエに部屋を貸し、結果的に三人の奇妙な同棲生活が始まったのだ。これを地域住民が不快に思ったため店は寂れ、クーポーはアルコール中毒になって発作を起こした挙句に死んでしまう。

店を手放したジェルヴェーズは嘗て夫が入り浸っていた居酒屋で酒浸りの生活に陥ってしまう。暗い内容だが、フランス自然主義文学の代表作が映像化で蘇った観がある。原作と相違する点は、ジェルヴェーズの独白で物語が展開することである。

この映画は日本初公開後、優れた作品にもかかわらずリバイバル上映の機会が少なくとも関西では殆どなかったので、再見する機会に遭遇できなかったが、ごく最近,DVDとしてリリースされたらしいのを書店のDVDCD販売コーナーで見つけて購入した。

                            ☆☆☆★