◇五社英雄監督

◆緒形拳、池上季実子、倍賞美津子、浅野温子、北村和夫、西川峰子、風間杜夫、内田朝雄、成田三樹夫、曾我廼家明蝶、丹波哲郎、佳那晃子、市毛良枝、熊谷真美

 

「陽暉楼」1妻の出奔や娘の交通事故による重傷などに加えて自身の銃刀法違反による逮捕(結果は罰金刑)で失意のどん底にいた五社英雄が、東映の岡田茂社長に救いの手を差し伸べられて撮った『鬼龍院花子の生涯』が興行的に大成功を収めたため、五社は念願していた宮尾登美子の小説を東映で連続的に映画化する機会を得た。

五社が『鬼龍院花子の生涯』に次いで撮ったのが『陽暉楼』(1983)である。このあと『北の蛍』を挟んで撮った『櫂』(1985)の宮尾登美子原作3作品は宮尾登美子の故郷・土佐を舞台にしていることから「高知三部作」と呼ばれている。但し内容には関連性はない。

『陽暉楼』は、昭和8年ごろ、土佐の花柳界で随一と言われた芸者置屋を兼ねた料亭「陽暉楼」を主舞台として、女衒(ぜげん)として生きる父・太田勝造(緒形拳)と、この店で随一の芸者に育った娘・房子(池上季実子)の愛憎物語である。

大正の初め、勝造は娘義太夫の呂鶴と駆け落ちしようとしたが、呂鶴は追っ手に斬り殺され、二人の間に生まれた房子が勝造の手元に遺された。房子は陽暉楼に預けられ、20年後、陽暉楼で随一の人気芸妓桃若となっていた。

陽暉楼の女将・お袖(倍賞美津子)は嘗て呂鶴と勝造をめぐって張り合った仲だが、しこりを残さずに房子を預かり、土佐随一の芸妓に育て上げたのだ。勝造は殺人の前科が二つもある肝の太い強面の男で、女衒となって陽暉楼に出入りし、陽暉楼に来る様々な人物たちとも関係を持つ。

「陽暉楼」2勝造には後添いの正妻と実子で盲目の息子がいるが、最近、大阪に妾・珠子(浅野温子)を囲った。こういう状況の中で勝造と桃若をめぐる様々な事件と人間模様が描かれる。

冒頭に「この作品は宮尾登美子の原作をフィクショナルに描いた云々」という妙な表示が出ると思ったら、実は脚本家の高田宏冶が原作のストーリーを大きく改変したのだという。原作を読んでいないので内容は知らないが、似たような芸妓が大勢出てくる話で、ストーリーを動かす役が不足していたからだそうだ。

原作の勝造は魚屋なのに映画では職業もキャラクターも大きく変わっているし、映画で重要な役割を果たす妾の珠子は原作にはない人物らしい。原作者からのクレームはなかったが、『櫂』公開のあとで宮尾登美子の感情が爆発して新聞紙上で五社と高田を激しく非難したそうだ。

そういう裏話はともかくとして、『陽暉楼』は『鬼龍院花子の生涯』よりずっと女の情念のあふれた作品になっている。地元銀行の若い重役との間に女児を生んだ桃若は間もなく胸を病んで死に、勝造はヤクザとの争いで殺される。桃若は息を引き取る前に娘を陽暉楼のお袖に託す。

☆☆☆