◇ジョージ・ロイ・ヒル監督

◆ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、ロバート・ショウ、チャールズ・ダーニング、アイリ-ン・ブレナン、レイ・ウォルストン、ハロルド・グールド

 

 “サスペンスの神様”アルフレッド・ヒッチコック監督は観客を怖がらせたり、あっと驚かせたりするのが好きだったが、一方ではイギリス人らしいユーモア精神の持主だった。

桂米朝の一番弟子で“爆笑王”と言われた故・桂枝雀が高座のマクラでよく言っていた“緊張と緩和”の骨法が身に付いていたのか、映画の中にもそういう精神が生かされていた。が、ヒッチコック先生でも『スティング』のような映画は作れなかっただろう。

「スティング」3『スティング』は遊び心の横溢した作品である。というよりは遊び心自体を映画化したようなクライム・ストーリーである。ヒッチコックが自作映画にいつもちょこっと自ら登場する程度の遊び心ではない。

『スティング』はいわゆるコンフィデンス・ゲームを主題とする映画である。1830年代、ささやかな詐欺で暮らしていたけちな若者ジョニー・フッカー(ロバート・レッドフォード)がシカゴの大賭博組織の売上金をかすめ取ったために仲間の老人をシカゴの組織を運営するギャングに殺され、その復讐のために、騙し屋の名人と言われているヘンリー・ゴンドーフ(ポール・ニューマン)を師と頼んでギャングの大ボス、ドイル・ロネガン(ロバート・ショウ)から大金を騙し取る計画を立ててコンフィデンス・ゲームを仕掛ける。それは実際、あっと驚くような仕掛けだが、同時にジョージ・ロイ・ヒル監督は観客までものの見事に騙してしまう。二度、三度観てそれがよく判っていても、やはり痛快な映画である。

ラスト。ゴンドーフら大勢のスタッフが創り上げた偽の競馬のラジオ中継所兼馬券売り場で、ロネガンがニセ情報を吹きこまれて賭けた馬が負けて50万ドルを巻き上げられ、「返せ」と怒号するうち、FBI捜査官が飛び込んできて全員にホールドアップを命じ、フッカーにだけ帰ってもいいと言う。フッカーがゴンドーフに気まずそうな顔を見せながら店を出ようとする瞬間、ゴンドーフが拳銃で撃ちフッカーが口から血を吹いて倒れる。するとFBI捜査官がゴンドーフを撃ち、ゴンドーフはワイシャツの腹部に血をにじませて斃れる。

「スティング」1ロネガンと癒着しているスナイダー警部は二人がこの場所にいてはまずいとロネガンの腕を取って大急ぎで逃げ出す。するとフッカーもゴンドーフも起き上って全員で呵々大笑する。FBI捜査官も含めて全員が騙し屋(コン・マン)だった。観客までが見事に背負い投げをくらうというわけだ。

時代背景は1930年代の大恐慌時代。映画の内容は小見出しつきで6パートに分けられている。ラグタイム・ピアノ演奏の背景音楽といい、レトロスペクティヴなセットといい、趣味的な映画で、暗い作品が多かったアメリカン・ニュー・シネマ時代の1973年にこんな作品が製作されたのが不思議な気がする。

         ☆☆☆★