◇マルコ・ベロッキオ監督

◆ジョヴァンナ・メッソジョルノ、フィリッポ・ティーミ、ファウスト・ルッソ・アレシ、ミケーラ・チェスコン、ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ

 

 20世紀前半、アドルフ・ヒトラーと並ぶ独裁者としてファシズムを推進したムッソリーニ(正式にはベニート・アミルカル・アンドレア・ムッソリーニ、1883-1945年)は青年時代にイタリア社会党に入党し、党機関紙の編集長にまでなった。

愛の勝利を1しかし、第一次世界大戦が勃発すると、当初は党の方針に従って中立論を支持したものの、やがて戦争がイタリア国民の民族意識を高めると考えるようになり、独自に「ポポロ・ディタリア(イタリア人民)」という新聞を発刊、協商国側への参戦熱を煽るキャンペーンを張ったため社会党から除名された。

その後も「革命的参戦運動ファッショ」という組織を立ち上げて参戦運動を展開、イタリアが参戦すると自らも志願兵となって従軍し、手榴弾の爆発事故に巻き込まれて負傷した。戦後の1919年にムッソリーニはミラノで「戦闘者ファッショ」(ファッショfascioは束とか結束という意味)を組織し、黒シャツ隊と呼ばれる行動隊を駆使して1922年に政権を奪取した。

以後第二次世界大戦中の1943年7月に失脚するまで約20年間、独自に構築したファシズム理論に基づき、ドーチェ(日本語では統帥と訳される)という称号の下に独裁統治を続けた。

『愛の勝利を/ムッソリーニを愛した女』(2009年、イタリア・フランス共同製作)は、若き日のムッソリーニと愛し合い、一児を儲けたが、彼が権力の座に就くと同時に棄てられ、その存在さえ抹殺されようとした実在の女性イーダ・ダルセルの闘いを描いた映画である。日本では「イタリア映画祭2010年」で、2010年4月29日と5月3日に「勝利を」の邦題で上映された後、2011年5月に『愛の勝利を/ムッソリーニを愛した女』に改題されて一般公開された。

イーダ(ジョヴァンナ・メッゾジョルノ)は官憲に追われるムッソリーニ(フィリッポ・ティーミ)を匿ったことから運命的な恋に落ち、全財産を貢いで彼の政治運動を助けた。

身も心もムッソリーニに捧げたイーダはやがて男児を生んだが、ムッソリーニには妻子があることが判った。あくまでもムッソリーニの妻だと主張するイーダは精神病院に強制的に収容された。それでもイーダは屈しない。

愛の勝利を3彼女の自己と息子の存在証明を賭けた闘争は偏執狂的にさえ見えるが、結局はムッソリーニの勢力によって歴史から抹殺され彼女の存在は闇に埋もれてしまった。

イーダを演じたジョヴァンナ・メッゾジョルノの演技は鬼気迫るものがある。

イーダを棄てて以後のムッソリーニの映像は俳優ではなく、本物のムッソリーニになる。マルコ・ベロッキオ監督はプロパガンダ的なニュース映像を使っているのである。

こういう手法を含め、ドキュメンタリー・タッチと言ってもいいぐらいの作り方になっているが、意味不明もしくは無意味なショットがかなり多く挿入されていて、ちょっと独りよがりではないかという印象を受けた。

         ☆☆☆