大学入学直前。
お世話になっていたピアノの先生に「あなたはソリストになりたいんでしょ?」と訊かれ、
私は即座に答えた。「いえ、オケピットに入ってミュージカルとかの伴奏したいんです」
先生、吹き出してからおっしゃった「あなた、わざわざそんな暗闇に入らなくたって」

今考えれば、先生が困惑するのも無理はない。
せっかく大学のピアノ科に受かったばかりなのに、
先生からすれば、ソリストを目指してます、位の勢いがあってほしかったのだと思う。

でも、私は本気だったのだ。
ソロが嫌、と言うわけではなく、今よりももっとミュージカルに夢中で
ピアノと両方生かすにはそういうところだ、と思っていた。

が、実際ミュージカルの舞台に立ったり、暗闇で弾くことも経験するようになって気づいたのは、
ピアノを人前で弾くことや、舞台に出ること、そうやって暗闇??で演奏することよりも何よりも好きなのが、
舞台に出る直前の楽屋の雰囲気、においだ、ということだった。
時にはものすごい緊張に襲われて怖いこともあるけど、
それでも終わってみれば、あの怖さがミョーに心地よかったりする。
本番独特の緊張感あふれるあの暗闇がたまらない(フェチ?笑)。

以前、オペラのケータリングのバイトをやったときは
楽屋のそばにいろ、と言われたのをすっかりもう一人のバイトの子に押し付け、
袖にかぶりつきになっていた(笑)

できれば、大きなホールがいい。
いかにも舞台袖です、と言うように、
袖幕やバトンがたくさんある、そんな袖が好き。

暗い袖で、袖幕の間から漏れる舞台の明かりの方をドキドキしながら見つめる、
それが至福の時。

やっぱりフェチかな、これ(笑)