2005年11月05日

『あなたのことが、いちばんだいじ』 盛田 隆二

stars 34年のアルバム!

hReview by ☆すぅ☆ , 2005/11/05

photo
あなたのことが、いちばんだいじ
盛田 隆二
作品社 2005-09




 

 

日本語は美しいと思うことがよくある。
そして、優しいとも。

特にひらがなが好きだ。

『貴方の事が、一番大事』
ではなく、
『あなたのことが、いちばんだいじ』
このタイトルはとても魅力的だと思う。


 閑話休題。

本書は男性作家の6編からなる短編集である。
読了し、どうもひとりの作家の作品とは思えなかったのだが、初出一覧を見て納得した。
1971.12〜2005.09までの作品が収められていたのだ。
なるほど、まるでアルバムのようだ。

ひらひら
18年編集者を勤めてきた男の退職した初日の物語。
今までの多忙な毎日から突然の365日24時間の自由に慣れず、街へ繰り出し、AV男優になりかけ、女子高生の愛人なりかけ、酒を飲み、妙な男に派手に殴られ――。
地の文は淡々と進む。
「あなた」「あなた」と語りかけてくるので、ずっと違和感があった。
最後に、妻の目線かと合点が行くのだが、しかし、そのことがかえって怖い・・・。

あなたのことが、いちばんだいじ
タイトルどおり優しい愛情物語――ではなく、高校生の愛娘を捜す私立探偵の物語。
2003の作品らしく、今の世相を大きく反映している。
事件の最後は意外な結末で、ミステリーを思わせる。
「あなたのことが、いちばんだいじ」
その意味をもう1度考えることになる。

折り紙のように
勘当をいいことに30年も故郷を顧みない長男である主人公が、父の危篤を機に戻って来る話。
父と15歳、自分とも15歳離れた、ちょうど折り紙のように重なる“父の不倫相手”に淡い恋心を抱いた少年の話も含まれるが、わずか10ページとは思えない濃さがある。2005作。

穴の中の獣
高度経済成長、最後の年、1973年が舞台。
父のタバコの火の不始末により、左腕を失った主人公の心の闇と社会の歪みを描く。
劣悪な環境で、来る日も来る日もベルトコンベアを流れる電話機のダイヤルひとつひとつ回して確かめる作業が続くさまは、胸が悪くなる。
日々、人間らしさや覇気を失い、若者が闇に沈んで行く。
読んでいる間中ずっと、深い絶望と諦念に付きまとわれ、湿りきった重たい空気を吸い、外は暗い雨が降り続いているような錯覚を覚えた。

糠星
オビで「幻のデビュー作」と謳われている作品。
1971年に旺文社の雑誌「高二時代」の懸賞小説で一等を取ったもの。
当時何と16歳。
“学生運動”“マスプロ教育”“階級闘争”など血気盛んな時代を伺わせる。
少年ふたりの青春小説。
若々しさゆえに、ふたりに流れる友情が眩しい。


他1編『エーテル密造計画』含む。

 

ところで、この装丁。
佐内正史『安部なつみ写真集 出逢い』。
そう、なっちの脚!
アイドルの写真だと思うと、やや興ざめだが、この写真はタイトルとよく合っていて美しい彩りを添える。



 な、何と盛田先生のサイトにリンクを貼って頂きました

『あなたのことがいちばんだいじ』

[書評・その他]
「◎2005.11.5  未知の読者の「読書日記
。 各短篇の紹介文がじつに簡潔明瞭なのでリンクを」

を見て下さいね。

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citrusbergamia2005 at 15:35│Comments(8)clip!盛田隆二 

この記事へのコメント

1. Posted by rio   2005年11月05日 16:09
あなたのことが、いちばんだいじ
うんうん。やっぱり平仮名の方が心にす〜っと沁みこんでいくなぁ。
この前の、「そっと、手をつなごう」も今回の本も題名がとても素敵です。
2. Posted by Rue   2005年11月06日 13:31
こんにちは^^

ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット・・・
日本にはこんなにもたくさんの文字が溢れてて
同じ文字を書いてもそれごとに
微妙にニュアンスが変わるし
それらを表現でき、感じることのできる
日本人の感性は世界に誇れるほど素晴らしいものですよね。

3. Posted by ☆すぅ☆<管理人>   2005年11月06日 21:59
 rioさん、こんばんは。
ひらがなの持つ優しさって、本当に素敵ですよね。
絵本が放つ優しさも、そのせいでしょうか。(^-^)
4. Posted by ☆すぅ☆<管理人>   2005年11月06日 22:03
 Rueさん、こんばんは。
同感です。
日本語の持つ美しさを見るたび、日本人でよかったと思います。
(英語ができない言い訳かな、へへ)
5. Posted by 本人です   2006年02月19日 17:51
はじめまして。
事後報告になりますが、HPの[書評・その他] にリンクさせていただきました。
すぅさんの簡潔明瞭な紹介文に感服しきりです。
どうもありがとうございます。
6. Posted by ☆すぅ☆<管理人>   2006年02月19日 21:15
 ・・・え、えええええええええっ!!!

盛田先生ですか?
私の拙文にコメントをくださるなんて感激ですっ!!
ありがとうございます!!
しかも、リンクまで。

ひゃー、夢みたいです。
本当にありがとうございます!!
(あ、汗と震えが止まりません・・・。)(^^;;ゞ
7. Posted by viaje   2006年02月20日 23:55
自分の書いた書評が作者自身の目に留まりその上褒めてくださるなんて感激ですね!blog という媒体の威力、また魅力を思い知りました。
8. Posted by ☆すぅ☆<管理人>   2006年02月21日 00:57
 viajeさん、こんばんは。

本当に大感激でした。
先生のHPのゲストブックへもお邪魔したんですが、温かなお返事を下さいました。
さらに感激「倍率ドン!」(古い)です。

今まで私の中で「本を読む」という行為は、あくまで「ひとり」でしたが、blogで友達ができ、作家の方から声を掛けて頂けるなんて、読書における最高の贅沢ではないでしょうか。

ますます読書の虜です!

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