ある老人が、
峠の茶屋でお茶を飲みながら
町を見下ろしていました。


そこに、
山の向こうからやってきた若者が足を止め、
老人い問いかけました。


「おじいさん、ちょっと聞いていいですか?」
「うん?なんですかな?」


「おじいさんは、あの町の住人ですか?」
「そうじゃ」


「僕は今日から、あの町に住むんですよ」
「おぉ、そうかい」


「あの町はどんな所ですか?どんな人が住んでいるのでしょう?」



おじいさんは、少し考えて、
若者にたずねました。


「あんたが昨日まで住んでいた町は、どんな所だった?」


若者は瞬時に顔色を変え、
苦虫を噛みつぶしたような表情で答えました。


「昨日まで住んでいた町は…とてもイヤな町でした」
「ほう!イヤな町だったか!」


「そうです!イヤな人ばかりの町でした。良い事なんかひとつもなかった」
「そうかそうか…」


「だから、こちらに引っ越すことにしたんです」
「なるほどのう…」


「おじいさん、おじいさんの町はどんな所なんですか?」


老人はため息をつきながら答えました。


「残念ながら、わしの住む町も同じような町じゃ」
「…えっ、そうなんですか?」


「イヤな人だらけの、住みにくい町じゃ…」
「・・・・・・・・・」


「まぁ、気をつけて行きなはれ」
「…分かりました…」


若者は、肩を落としながら
峠を下って行きました。




小一時間ほどすると、

また別の若者が山の向こうからやってきて
老人に声をかけました。


「おじいさん、ちょっと聞いていいですか?」
「うん?なんですかな?」


「おじいさんは、あの町の人ですか?」
「そうじゃよ」


「僕は今日から、あの町に住むんです!」
「おぉ、そうかい」


「あの町はどんな所ですか?どんな人が住んでいるのでしょう?」



老人は、さっきの人の時と同じように
若者に問いかけました。


「あんたが昨日まで住んでいた町は、どんな所だった?」


若者は答えてこう言いました。


「とても良い町でした!良い人ばかりの住みやすい町でした!」
「ほう!良い町だったか!」


「あっ、そりゃね、イヤなこともありましたよ」
「ふむふむ」


「でもね、それも人生の勉強っていうか…自分のためになりました」
「ほうほう、ほうほう」


「おじいさん、おじいさんの町はどんな所なんですか?」


老人はニッコリ笑って答えました。


「とても良い町じゃよ。良い人ばかりじゃ」
「あぁ!良かった!」


「心配などいらぬ。さぁ行きなはれ」
「ありがとうございます!」


若者は意気揚々と
峠を下って行きました。



さて、

このやりとりを見ていた人物がいました。

それはまだ幼い男の子。
老人の孫でした。


少年は老人のもとに来て叫びました。


「おじいちゃんのウソつき!」


老人は微笑んで答えました。


「ワシはウソなどついてないぞ」


少年は顔を紅潮させてさらに叫びました。


「最初の人にはこの町はイヤな人ばかりだって言ったのに、
次の人には、この町は良い人ばかりだって言った!
おじいちゃんはウソつきだ!」


老人は落ち着き払った声で言いました。


「最初の若者は、人のイヤな部分ばかりを見る人じゃ。
彼はワシらの町に住んでも、人のイヤなところばかりを捜すじゃろう」


少年は首をかしげながら話の続きを待ちました。


「だけどな、さっきの若者は、人の良いところを見つけることのできる男じゃ」
「人の良いところ?」


「そうじゃ。彼はきっと、ワシらの町の良い部分に気づき、町を気に入ってくれるじゃろう」



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欠けた部分に焦点を当てて見るか、
足りている部分に焦点を当てるか…


これは人生において
とても大切な課題です。


「欠けた部分を見つけ、修正するのが上昇志向ってもんでしょ」
そう思っている人は多いでしょうが、


足りている部分に気づけない人は
今より幸せにはなれないのです。


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