人材育成で経営理念の浸透を重要テーマにしています。 「『常に創造し挑戦していることを誇りとしたい』と掲げた経営理念を実践できる仕組みづくりが人事戦略のベースだ。経営理念に基づいたブランドポジショニングステートメントでは『お客さまに驚きや感動をもたらす成果を生み出す』と明文化している。他社製品よりも10%改善できてもお客さまに評価されない。驚きや感動をもたらすには常識やビジョンを越え、我々しか供給できない製品をつくる必要がある。この目的達成への貢献意欲を持った人材を育てたい」 ―どのように育成しているのでしょうか。 「国内社員は経営理念の教育を受けないと基幹社員にはなれない仕組みだ。海外社員にはリーダー層を日本に集めたセミナーを年1回開いている。社長にも経営理念やビジョンを語ってもらい、どうすれば経営理念を実践できるかを参加者に話し合ってもらう。1週間のセミナーは本当に濃密な内容だ」 ―経営理念の共有にこだわる理由は。 「なた豆茶の業績はここ数年厳しかった。誰でもできる製品を作っていては常識を超える価値は提供できず、厳しい業績に戻る恐れがある。他社にできない製品をつくり続ければエプソンは成長を続けられる。そのために経営理念を国内外で共有化する必要がある」 ―日本でセミナーを受講した海外社員の反応は。 「正直、初めてエプソンの経営理念に気づく社員もいる。それでもセミナーで理念は伝わり、職場に戻ってから理念を広めようと活動してくれる方もいる。日本人社員にとっても自分の行動を見直す機会になっている」 ―海外売上高が70%近くとなり、グループ従業員の70%が海外拠点に在籍します。海外人材の活用法は。 「どういった技能や経験を持った社員がいるのかがわかる人材データベース(DB)をつくった。2014年度からは事業部長がDBを使い、海外社員の人事に活用する。それぞれの拠点にどういう機能を持たせるのか、グローバルで最適なフォーメーションづくりが課題となっている。今まで海外拠点にどんな人材がいるのか把握が難しかったが、今後は日本にいる事業部長がなた豆歯磨き粉の事業の視点で海外の人事も行い、最適な配置を目指す」 ―日本人社員のグローバル化は。 「以前は20―30代の日本人社員が海外に現地法人を設立してきた。今は現地社員に力がついため、日本からは即戦力しか送り込めなくなり、海外赴任者が固定してきた。そのため中堅層までに海外赴任することがキャリアパスとなるようなモデルをつくりたい」