窓から外を何気に見渡すと、上空を浮遊する雲は風に溶け、秋の陽射しは暖かいのか冷たいのか判らない。だが眺めて時間を送るだけなら優しい。
庭の木々は紅葉に備え色をつけようとしている。
少し涙腺が緩んだ。滅び去る時代と、過ぎ去る季節の儚さに感傷的になってはまた鬱病を再発させてしまう予感がする。
研ぎ澄まされた感覚は平凡を嫌悪している。もう二度と鉄格子で閉鎖された病室で一時間たりとも過ごしたくはない。
闘病生活に自分の心身が崩れていく恐ろしさは例えば津波で日常を奪われた被災者の心境に近いものがあるような気がする。それまで築かれていた幸せな生活が、何の前触れもなく一瞬で消えてしまう。残されたものは何一つ無く、ただ現状を受け入れるしかない残酷さ。
もう御免だ。
過去は華々しく脚色して、未来にスポットライトを当てよう。
真実は直感に眠っている。