気候変動・千夜一話

地球温暖化の研究に真面目に取り組む科学者たちの日記です。

IPCC第5次報告書 第3部会の部

ベルリンで開かれていたIPCCの総会で、第5次評価報告書(AR5)のうち、「緩和策」に関する第3作業部会(WG3)のぶんについて、政策決定者向け要約(SPM)の承認(approve)と、報告書本体の「受諾」(accept)がされました。

この部会の報告書に関するホームページはhttp://mitigation2014.orgです。

政策決定者向け要約は、http://mitigation2014.org/report/summary-for-policy-makersのページにPDFファイル(英語)があります。文章は総会で承認された完成版だそうですが、体裁をととのえるための編集はこれからです。

報告書本体は、[このページ]に最終原稿(final drafts)があります。これから数か月かけて、総会の決定に従って文章の修正をし、それから体裁を整えて完成となります。

報道発表文(press release)などが、[このページ]とそこからのリンク先にあります。

日本語では、環境省の[このページ]に4月14日づけの報道発表があります。

環境省の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)について」のページは順次更新されています。第3部会に関してこれまでに置かれたのは、「 日本語概要資料(報道発表資料の概要)」というPDFファイルですが、これの内容は上記の報道発表のページからリンクされたPDFファイルと同じのようです。今後、関連するいろいろな文書が置かれると思います。

[この記事はひとつ前の記事をcopy and pasteしてデータをさしかえたものです。]

masudako

IPCC第5次報告書 第2部会の部

横浜で開かれていたIPCCの総会で、第5次評価報告書(AR5)のうち、「影響・適応・脆弱性」に関する第2作業部会(WG2)のぶんについて、政策決定者向け要約(SPM)の承認(approve)と、報告書本体の「受諾」(accept)がされました。

この部会の報告書に関するホームページはhttp://ipcc-wg2.gov/AR5/report/です。

政策決定者向け要約は、PDFファイル(英語)があります。文章は総会で承認された完成版だそうですが、体裁をととのえるための編集はこれからです。

報告書本体は、[このページ]に最終原稿(final drafts)があります。これから数か月かけて、総会の決定に従って文章の修正をし、それから体裁を整えて完成となります。

報道発表文(press release)などが、このホームページのDownloadsという枠の中からリンクされています。

日本語では、環境省の[このページ]に3月31日づけの報道発表があります。

環境省の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)について」のページは、今回の総会以後まだ更新されていませんが、今後、関連するいろいろな文書が置かれると思います。

masudako

原子力発電と温暖化問題の関係についての意見書

2013年11月、気候変動の(とくに自然科学面の)専門家であるケン・カルデイラ(Ken Caldeira)さん、ケリー・エマニュエル(Kerry Emanuel)さん、ジェームズ・ハンセン(James Hansen)さん、トム・ウィグリー(Tom Wigley)さんが、地球温暖化の対策として原子力発電は必要という趣旨の意見を述べた手紙を公開しました。

これに対して、2014年1月、明日香壽川さん、朴勝俊さん、西村六善さん、諸富徹さんが、「原子力発電は気候変動問題への答えではない」という意見書を出しました。

明日香さんたちは、この意見書への賛同の署名をつのっています。ただし、これは、あらゆる人にではなく、署名サイトの説明文の表現によれば「国内外の関連する専門知識をお持ちの研究者」に呼びかけています。カルデイラさんたちの意見が気候に関する専門家の意見を代表するものではないことを示すことが必要だという判断なのだと思います。

(わたしは、明日香さんたちの意見書の趣旨のおおすじに賛成なのですが、内容を個別に見ると自分が意見を述べるならばこうは言わないと思うところもあるので、署名するかどうか迷っております。)

ともかく、明日香さんたちの意見書(下の引用からリンクされたPDFファイル)は、多くのかたに知っていただく価値があると思います。

========== 引用 ==========
みなさま <転載関係・重複御免ください>

お世話になります。昨年11月に、気候変動研究のパイオニアであるジェームズ・ハンセン博士(元NASAゴッダー宇宙研究所所長)らが、地球温暖化問題に取り組む世界中の人々に宛てて、原子力発電の利用を推奨する書簡を公開しました。

私たち、明日香壽川(東北大)、朴勝俊(関西学院大)、西村六善(元地球環境問題大使)、諸富徹(京都大)は、この書簡が問題をはらんだものであると考え、日本での福島第一原発事故に関する事実などに基づいた意見書を作成しました。

意見書で取り上げた項目は以下です。

1. 原発事故の確率
2. 死亡者数の比較
3. 原子力発電の発電コスト
4. 日本が回避した最悪シナリオ
5. 石炭火力発電とのセットでの導入
6. 新型原子炉の役割
7. 原子力発電なしでの2度目標達成可能性
8. 結論:“ロシアン・ルーレット”に頼らない政策を

私たちの意見書の本文は、下記ページをご参照ください。

日本語版:
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/china/asuka/_src/2014/nuclear_power-climate_change_jp.pdf
英語版:
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/china/asuka/_src/2014/nuclear_power-climate_change_enver2.pdf

ハンセン氏らの書簡については、下記のページをご参照ください。

日本語版:
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/china/asuka/_src/2014/Hansen_letter_japanese.pdf
英語版:
https://plus.google.com/104173268819779064135/posts/Vs6Csiv1xYr

私たちは、国内外で温暖化問題の研究に従事、あるいは強い関心を持つ方々にも、本文の主旨と内容に賛同して頂ける場合には、名前を連ねていただければと考えております。ご賛同頂ける方は、下記ページにアクセスして、英語で姓、名、研究分野、所属を記入していただけると自動的に賛同者リストに登録されます

https://ssl.form-mailer.jp/fms/ffb5047d284413

なお、2014年1月30日に、ハンセン氏らへまず意見書のみを送付いたしました。皆様のご署名は、後日まとめてハンセン氏らへ再送および公開をさせていただきます。

ご協力を何とぞよろしくお願いいたします。

2014年1月31日

明日香壽川(東北大学 東北アジア研究センター/環境科学研究科 教授)
朴勝俊(関西学院大学 総合政策学部 准教授)
西村六善(元外務省地球環境問題大使)
諸富徹(京都大学 経済学研究科・経済学部 教授)
========== 引用 ここまで ==========

masudako

IPCC第5次報告書 第1部会の部が完成

IPCCの第5次評価報告書のうち第1作業部会のぶんが発表されたことは[2013年10月17日の記事]で紹介しましたが、その時点では、まだ未完成版でした。2014年1月30日に、完成版がウェブサイトに置かれました。ひとまず、どのように置かれているかを見ましたので紹介します。

IPCCのウェブサイトhttp://www.ipcc.ch (2014年1月31日現在)で「Fifth Assessment Report (AR5)」を選択して開くと、「Climate Change 2013: The Physical Science Basis」の本の表紙のようなものと、右に3つの枠があります。

この本の表紙が、第1作業部会報告書のページへのリンクです。そこへ進むと、「Summary for Policymakers」「AR5」の2つのオレンジ色の四角があります。「Summary for Policymakers」のリンク先は政策決定者向け要約(SPM)のPDFファイルです。「AR5」のリンクはひとつ前にもどってしまいます。

オレンジ色の四角の下には「Quick Links」という水色の四角があり、その下(外)に次のリンクがならんでいます。
- SPM Errata ... (PDFへのリンク) 「政策決定者向け要約」の正誤表。
- Full Report (375MB) ... (PDFへのリンク) 報告書全体をまとめたファイル(完成版)。ファイルサイズが大きいので、次に述べる章別のファイルのほうが扱いやすいと思います。
- Background on AR5 ... (別のウェブページへのリンク) 第5次報告書作成過程の説明や関連資料があります。
- More on Working Group I (WGI) report ... 次に述べる第1部会のウェブサイトへのリンクです。

また右側には「Report by Chapters」という枠があって、報告書本体の章別のPDFファイルがあります。その内容が1月30日に「FinalDraft」(2013年6月7日現在の原稿)から「FINAL」(完成版)にかわりました。技術的要約(TS)や付録(Annex)もあります。報告書全体をまとめたファイルはこの枠にはなくなりました。なお、9月の総会で求められた修正点が書かれた「Changes to the Underlying Scientific/Technical Assessment (IPCC-XXVI/Doc.4) 」というファイルは残されていますが、これまでの作業過程を知りたい場合以外は必要ありません。

別にhttp://www.climatechange2013.orgというウェブサイトがありますが、これはIPCC第1部会のサイトです。上記の「More ...」からもここに来ます。
Reportのページに進み、さらにChapter/Annex Downloadに進むと、各章別のPDFファイルがあります(IPCC本部のウェブサイトにあるのと同じです)。また、各章の補足材料(Supplementary Material)のPDFファイルとデータファイルのzipアーカイブもあります(これは本部のほうにはないようです)。またGraphicsというところには報告書で使われた図のファイルがあります(本部にはSPMの図だけがあるようです)。

左側に「REPORT」という水色の四角があり、その下に箇条書きがあります。その下に列挙されたうち、Drafts and Review Materialsというもののリンク先のページを開いてみます。すると注意書きがあって合意を求められるのでそれに応じて進むと、その先のページには6月7日現在のFinal Draftがあります。List of Substantive Edits (interim document, 30 January 2014)というファイルが新しく、Final Draftから完成版までの変更の要点が書かれているようです。

ここでまたDrafts and Review Materialsのリンクの先を見にいくと、Final Draftよりも前の段階の第1次、第2次の原稿と、それに対して寄せられたコメント、それへの応答のファイルがあります。

リンク構成がわかりにくくなっていますが、おそらくこれは暫定的構成で、今後修正されて少し変わると思います。

masudako

台風と地球温暖化の関係はなくはないが単純ではない

2013年台風30号、国際名Haiyan (ハイエン)、フィリピン名Yolanda (ヨランダ)は、フィリピン中部に大きな被害をもたらしました。共同通信の「47ニュース」(2013-11-14 10:57)によれば「フィリピンの国家災害対策本部は、台風30号により2357人の死亡を確認と発表」したとのことです。この台風に関する情報はあちこちで整理されている途上と思います。わたしがこれまでに見た範囲では、国立情報学研究所の北本 朝展さんによる「デジタル台風」の中の「2013年台風30号(ハイエン|HAIYAN)」のページの情報がしっかりしていると思いました。ただしこれは、そこに書かれた日時(わたしが見た時点では2013年11月10日18時)までに得られた気象情報と報道をもとに北本さんが考えたこととして理解する必要があります。

11月11日から、気候変動枠組み条約締約国会議が、ポーランドのワルシャワで開かれています。その会議でのこの台風の件にふれた演説が話題になりました。最初に見た英語の記事で講演者の名まえが「Sano」とあったので「佐野さん?」と思ったのですが、フィリピン政府のこの会議への代表のSaño (サニョ)さんでした。検索してみると、フィリピン政府のClimate Change CommissionのCommissioner (国の行政委員会として「気候変動委員会」があってその委員長なのでしょう)で、紹介ウェブページが見つかりました。環境・天然資源保護のNGO活動歴のあるかたで、自然科学者ではないようです。今回の報道によれば親族に被災者がいるそうで、感情のこもった演説になったのも無理もないと思います。

こういう話題が出てくると「今度の強い台風は地球温暖化のせいなのか?」という議論がよく起こります。残念ながら、この問いはYesともNoとも答えようがない問いです。気候の変動には、人間がいなくても起こる自然の変動に、人間活動が排出した二酸化炭素そのほかの影響が重なっています。個別の台風について、人間活動由来の気候変動がどれだけきいているかをよりわけて論じることは残念ながら不可能です。(次に述べる統計的関係から確率的推測はできる可能性がありますが。)

科学的に答えられる可能性があるのは、「地球温暖化が進むと、このような強い台風の頻度がふえるか?」という構造の問いについてです。たとえば、ある強さ以上の台風がくる確率が、これまでは「60年に1回」だったが、これからは「30年に1回」に高まる、というような構造のことが言えるかもしれません。(ここに示した数値は単なる例で、実際にそうだと主張するものではありません。)

これまでの観測事実の統計によって、因果関係の論証はできませんが、推測はできる可能性があります。幸い、フィリピンに達する台風に関しては、約百年間の質のそろった観測データがあります。イエズス会が、19世紀末のスペイン領だったころにマニラ天文気象台(Manila Observatory)で観測を始め、アメリカ領の時代には植民地政府の公認を得て当時の「フィリピン気象局」(Philippine Weather Bureau)を運営していたのです。このフィリピン気象局のデータ報告書を再発見した海洋研究開発機構の久保田尚之(ひさゆき)さんの研究(Kubota and Chan, 2009)によれば、2005年までの約百年間に、台風の明確な増加・減少傾向は見られません。自然変動と考えられているENSO (エルニーニョ・南方振動)およびPDO (太平洋十年規模振動)に関連する振動的変化は見えています。この百年間に全球平均地上気温は上昇しているのですが、台風はそれに明確に応答した変化をしていないのです。(ただし、注目する地域を変えると何かの関係が見られる可能性は残っています。)

では将来についてはどうか。これは理論とシミュレーションに頼るしかないので不確かさが大きいですが、IPCC第5次報告書(第1部会、暫定版)を見ると、全世界規模で見て、温暖化に伴って、熱帯低気圧の極大の風速や降雨強度は強まる可能性が高いという見通しが示されています。ただし、弱いものまで含めた総数は、変わらないか、むしろ減る可能性が高いとされています(TS 5.8.4節、図TS.26)。

わたしはまだサニョさんの演説の内容を詳しく確認していないのですが、報道を見る限り、(今度の台風を直接的に温暖化と関連づけるのではなく)「温暖化が進むとこのような災害をもたらしうる台風がふえるので、温暖化をくいとめるべきだ」という趣旨のようです。それならば、まだ科学的確信度が高くはありませんが、理屈はもっともだと思います。

文献

  • Hisayuki Kubota and Johnny C. L. Chan, 2009: Interdecadal variability of tropical cyclone landfall in the Philippines from 1902 to 2005, Geophysical Research Letters, 36, L12802, doi:10.1029/2009GL038108.


masudako
記事検索
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

Recent Comments
  • ライブドアブログ