質問箱

この記事のコメント欄で、質問や情報提供を受けつけます。このブログの主題に関連するが、すでに投稿された記事への直接のコメントではないものを想定しております。

ただし、ご質問に必ず答えるという約束はできませんのでどうかご了解ください。また、答えないとしても、その理由は

• だれにも答えられない問題である


• 世の中に答えられる人はいるが、少人数のclimate_writersの能力がおよばない


• 答える能力があるが時間がとれない

などいろいろありえますので、どれかに決めつけないようお願いします。

また、このブログにふさわしくないと判断したコメントは消すことがあります。ご不満のこともあると思いますが、その判断は管理人(climate_writers)におまかせくださいますようお願いします。

***

「このブログの執筆者について」の記事のコメント欄での sf777 さんの質問の話題は、ここに移動して続けたいと思います。

masudako (climate_writersのひとり)

Comments

[1. masudako]

「このブログの執筆者について」へのsf777さんのコメント(12番)へのお返事です。

(地球温暖化関連の文脈で使われる)統合評価モデル(integrated assessment model)は、自然環境と人間社会とを相互作用しあう部分として扱い、人間社会の行動が自然改変を経て人間社会に与えるインパクトを評価するものと言ってよいと思います。

sf777さんの(i)と(ii)はどちらもこの自然環境のほうをさしているように思われるのですが....

代表的な例として、国立環境研究所のAIM (アジア太平洋統合評価モデル)があります。
http://www-iam.nies.go.jp/aim/index_ja.htm が
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/02/02-03.html

Stern Reviewについても、AIMチームによる紹介と批評が参考になると思います。http://www-iam.nies.go.jp/aim/stern/index.htm

[2. sf777]

　忙しい中、返信ありがとうございます。

なるほどー、そういう感じなんですね。
今紹介された内容を熟読しています。

[3. おおくぼ]

質問です。

1　緑が増えると、大気中の二酸化炭素が増えるのでしょうか？減るのでしょうか？

アマゾンでは、二酸化炭素の吸収量と排出量は同じ程度だということを聞いたことがあります。

2　砂漠化すれば、温暖化するのでしょうか？寒冷化するのでしょうか？

砂漠の冬は寒いです。砂漠地帯は保温能力が弱いので熱が逃げやいと思うのですが・・・。

[4. masudako]

おおくぼさんの質問は、なかなかむずかしい問題です。

1. 光合成をする植物の働きだけを考えれば、光合成によって有機物になったぶんだけ、大気中の二酸化炭素は減ります。しかし、有機物は、植物自体や動物や微生物の働きによって分解されます。光合成と分解がつりあえば、大気中の二酸化炭素への正味の影響はありません。結局、光合成でできた有機物が、地中深くなどに隔離されると、それに見合ったぶんだけ大気中の二酸化炭素が減ると言ってよいでしょう。

2. 地球が受け取るエネルギーをふやすか減らすかという意味ならば、まず、砂漠は植生よりも地表面の太陽光反射率が高い(白っぽい)ことが多いので、地球が受け取るエネルギーが減るという意味で寒冷化に働きます。ただし、砂漠化すると雲が減るでしょう。雲には太陽光反射効果と温室効果がありますが、たぶん太陽光反射効果のほうが重要で、砂漠化の雲を介した間接効果は温暖化に働くでしょう。

その場の温度が高くなるか低くなるかならば答えは違ってきます。砂漠では下向き放射で供給された熱が上向き放射と顕熱輸送だけで出て行くので、水の蒸発が可能な植生地に比べて地面温度が高くなります。ただし温度の日変化・季節変化も大きくなるので、とくに夏の昼に暑いわけです。

「保温能力が弱い」の意味はよくわかりませんが、雲と水蒸気によるローカルな温室効果が弱いことをさすのならばもっともです。太陽光反射効果が効かない夜には、雲や水蒸気が少ないところのほうが地面が冷えるはずです。

[5. おおくぼ]

回答ありがとうございます。

1の質問は陸地だけなのですが、海洋プランクトンによる光合成なら腐敗による二酸化炭素は出にくいのではないかと推測するのですか、どうでしょうか？

★

＞「保温能力が弱い」の意味はよくわかりませんが、雲と水蒸気によるローカルな温室効果が弱いことをさすのならばもっともです。

「保温能力が弱い」は専門的な意味合いで使ったわけではないのですが、 masudakoさんの解釈で納得しました。
砂漠地帯と緑地地帯を比較すると、砂漠地帯の方が昼夜の温度が大きいです。
ということは、緑地地帯の方が保温能力が高いハズと思ったのです。

水には冷却効果がありますが、砂漠地帯は緑地地帯より水が少ないです。
ということは（砂漠地帯と緑地地帯の）温室効果の差の方が、水の冷却する効果の差より大きいということでしょうか？
素朴に考えると、水が少ない方が暑いままという気がするんですが・・・（緑地地帯と比較した場合）。
もちろん熱は上空に逃げますが、それは緑地地帯も同じです。

[6. masudako]

「水の冷却効果」も実際のしくみがしぼりきれない表現です。たとえば発電所の冷却水ならば、蒸気機関の蒸気から冷却水にエネルギーが移って、冷却水があたたまることによって蒸気を冷却するわけですね。

水があることによって、植生地のほうが砂漠よりも地表面温度が低くなるように働く効果をさすとすれば、地表面にある水が蒸発することに伴って地表面にあるエネルギーが大気中に運び出されることです。

保温効果は温度を高めることではなく昼夜の温度差を小さくするという意味で使われていたのでしょうか。それならばむしろ、まず、水自体が熱容量をもっているので地表面付近に一時的にたくわえられるエネルギーの量にが同じでも水がない場合に比べて温度変化が少なめですむこと、次に、太陽から来るエネルギーの日変化に対して、水が蒸発可能な場合のほうが地表面温度の変化量が小さくてすむことをあげるべきかもしれません。

定量的説明はここには書ききれませんが、近藤純正(2000)「地表面に近い大気の科学」(東大出版会)などを見るとよいと思います。

[7. おおくぼ]

＞「水の冷却効果」も実際のしくみがしぼりきれない表現です。

質問している私自身が、よくわかって使っているわけではありません。すいません。
近藤純正さんの「地表面に近い大気の科学」(東大出版会)は持っていて、何度か目を通して大変勉強になったのですが、10％ぐらいしか理解できていません。

砂漠は水分が少ないので、雨は少ないし、雲も少ないです。
雲は温室効果がありますが、太陽光線を遮断する働きもあります。

＞水があることによって、植生地のほうが砂漠よりも地表面温度が低くなるように働く効果をさすとすれば、地表面にある水が蒸発することに伴って地表面にあるエネルギーが大気中に運び出されることです。

この冷却効果は大きいと思うのです。

＞保温効果は温度を高めることではなく昼夜の温度差を小さくするという意味で使われていたのでしょうか。

それもありますが、緑地地帯の方が熱を逃がしにくいのでは？と推測しているのです。

あと同じ砂漠でも緯度による違いや、内陸部と沿岸部で違うと思うのです。

[8. mushi]

＞おおくぼさん
　横から失礼します。
　海洋プランクトンは陸上の植物に比べると腐敗しにくい（≒固定されやすい）かと言うと、そうは言い切れないかなと思います。
　陸上植物は、リグニンなど微生物による分解に対し強い耐性を持つ物質を多く含みます。これに対し、海洋プランクトンは比較的分解されやすい物質を多く含みます。むしろ海洋プランクトン由来の有機物の方が微生物による分解に弱いと言っていいでしょう（もちろん周辺環境よって大きく変化しますが）。
　有孔虫など炭酸カルシウムとして炭素を固定するプランクトンもいます。もちろん腐敗はしませんが、海底に到達する前に炭酸カルシウムの補償深度に達し、分解してしまうこともあります。
　そもそも、一般に海洋プランクトンは陸上の植物より大型化しない（≒炭素固定量は少ない）ことも考える必要がありそうです。陸上植物の炭素量は600Gtくらいと見積もられているのに対し、海洋生物の炭素量は3Gtくらいと見積もられているようです。
　結局、
・海洋プランクトンが分解されず海底に固定されれば大気中の二酸化炭素は減る。ただし、陸上植物同様、海洋プランクトンも分解されてしまう量が相当に多い。
・バイオマスとしては陸上植物の方が圧倒的に多いので、大気中の二酸化炭素量に与える影響という観点なら、プランクトンの影響は陸上植物の影響に比べると限定的
という感じになるのかなあ、と思います。
　とはいえ、これらはあくまで数十年程度の短期的な話です。長い視野で見るのなら、プランクトンの沈降による炭素固定（生物ポンプ）の影響も相当に大きくなりそうです。
　
　プランクトン繁殖による海洋アルべドの変化とか、栄養塩との関係とか、関係してくる要因は他にも無数にありそうですね。

[9. おおくぼ]

mushiさんへ

コメントありがとうございます。
私の書き方が悪かったのですが・・・・

＞海洋プランクトンによる光合成なら腐敗による二酸化炭素は出にくいのでは・・・・

私が植物性の海洋プランクトンを出した理由は、腐敗しにくいということではなく、二酸化炭素が大気中に出にくいということです。
陸上で腐敗した場合は、二酸化炭素は大気中に出ますが、海で腐敗すると大気中に出にくいと思ったのです。
発生した二酸化炭素が、海の中で固定されやすいということです。

★

＞とはいえ、これらはあくまで数十年程度の短期的な話です。長い視野で見るのなら、プランクトンの沈降による炭素固定（生物ポンプ）の影響も相当に大きくなりそうです。

私が植物性の海洋プランクトンに注目した理由は、地球の歴史からです。
数億年前まで大気中の二酸化炭素は高かったのですが、現在は0.04％ぐらいにまで激減しました。
その理由は、大気中の二酸化炭素が石灰岩などになったわけですが、海洋プランクトンの影響も大きいと思うのです。

[10. mushi]

　なるほど、了解しました。
　海水はすでにかなりの量の二酸化炭素（炭酸イオン、重炭酸イオン含む）を保持していることを考える必要はあるでしょう。
　大気中の二酸化炭素と海水中の二酸化炭素は、大局的には平衡に達していると言えます（産業革命以降、その平衡は傾いていますが）。海中で腐敗等によって生じた二酸化炭素は、ある程度は大気に放出されてしまいます。そして、大気で増加した二酸化炭素はふたたび海に戻ってきます。
　結局は、「何らかの方法で『海底に』固定されない限り、植物プランクトンが増加しても大気と海の間での炭素交換速度が増すだけ」なのかもしれません（プランクトンのバイオマス分は二酸化炭素が除去されますが微々たる量でしょう）。
　
　数億年単位なら、まちがいなく海洋プランクトンによる炭素固定は重要でしょう。そもそも、植物が陸上に進出する古生代前半までは、光合成や生物的な炭酸塩固定はすべて植物プランクトンが担っていたと言っていいわけですので。
　それ以降でも、たとえば、氷期には植物プランクトンが正のフィードバックとして作用したとする仮説があります。
　氷期は風化作用が活発です。そのため栄養塩が海洋に多量にもたらされ、植物プランクトンが大量に発生、これにより大気中の二酸化炭素が固定されさらなる寒冷化を招いた、というものです（反対意見もあるそうです）。
　長い目で見るなら、植物プランクトンによる炭素固定が気候を左右することもあり得るのでしょうね。

[11. mushi]

　ちょっと訂正です。２段落目、
　「すべて植物プランクトンが担っていた...」の部分、「植物プランクトン」を「海洋プランクトン」にしたほうがいいですね。
　失礼しました。

[12. おおくぼ]

mushiさんへ

＞氷期は風化作用が活発です。そのため栄養塩が海洋に多量にもたらされ、植物プランクトンが大量に発生、これにより大気中の二酸化炭素が固定されさらなる寒冷化を招いた、というものです（反対意見もあるそうです）。

似たような説で、鉄仮説があるみたいですね。

http://www.hokudai.ac.jp/bureau/populi/edition15/P04_P05_u.htm

[13. mushi]

　似たような説というか、ほぼ同一の物だと思います。
　10.で紹介した仮説も、鉄イオン量がプランクトン増殖の律速であるとする説を念頭に置いたものだったと記憶しています。
　ひとつ補足すると、鉄散布実験により植物プランクトンは確かに増加しましたが、沈降量は増加しなかったという報告もあるようです。これでは炭素固定にはつながりません。
　以前私のブログでも紹介したことがあるので、いちおうリンクを貼っておきます。
http://ameblo.jp/mushimushi9/entry-10451464403.html

[14. おおくぼ]

mushiさんへ

＞似たような説というか、ほぼ同一の物だと思います。

「塩分」と書いてあったので、ベルト・コンベア説の方かな？と思ったりもしました。

http://www.geolab.jp/ms-science/science16.html

リンクしてあった記事は拝読しました。
僭越ながら考え方は私と似ていると思いました。
二酸化炭素と関係ありませんが、コメント欄のクジラについての意見も似ている気がしました。

[15. おおくぼ]

屋上の緑化は、温暖化防止効果が高いことは実証されていると思います。
でも太陽光線の反射だと考えると、コンクリートに白いペンキを塗った方が効果があります。
緑の方が黒に近いので、太陽光線を多く吸収してしまいます。
測定すれば、屋上を緑化した方が温度の上昇を防いでいることがわかります。
これは蒸散の効果が大きいと思うのですが？

★

砂漠地帯は緑地地帯と比べると、空気が停滞しやすいと思うのですが？

★

砂漠で植物が育ちにくい理由はいろいろありますが、冬の寒さも大きな原因です。
砂漠で土が凍ると、植物は死んでしまいます。
冬の砂漠地帯は緑地地帯と比べて、土中の温度が低くなりやすいのでしょうか？

[16. masudako]

わたしは専門的に調べていませんが、屋上緑化で温度が下がるおもな原因は蒸散の効果でしょう。太陽放射に関しても、葉緑素が太陽光の近赤外線部分をよく反射する効果があるので、植生の太陽光反射率は思いのほか高い、ということはありますが。

現状として同じ緯度帯ならば砂漠のほうが冬の地温が低いという相関はありそうですが(未確認)、それは地表面状態が砂漠だから冬の地温が低いという因果関係とは限りません。海から遠い大陸の内陸部では、水蒸気が得にくいので砂漠になりやすく、また大気によるエネルギー輸送によっても海の影響を少ししか受けないので冬の地温が低い、という間接的因果関係が主だろうと思います。

砂漠のほうが空気が停滞しやすい、という相関もあるかもしれませんが、いつもそうではないと思います。アジアの内陸ではとくに春に強風が吹いて黄砂をまきあげます。相関があるとすれば、大気大循環の下降域は、砂漠になりやすく、またそういうところでは積乱雲を伴うような大気擾乱ができにくいという間接的因果関係だと思います。

[17. masudako]

なお「屋上緑化に温暖化防止効果がある」というときの「温暖化」はローカルな気温または建物温度が高くなることです。全地球規模での気温変化やCO2収支に対する効果は測定不可能な微量でしょう。CO2排出削減策としては、ローカルな温度調節効果によりエアコンのための電力消費が減らせるという期待があるのでしょう。

[18. おおくぼ]

マウンダー極小期と呼ばれる時期は、地球の平均気温は低かったですが、原因は何でしょうか？

太陽から来る可視光線の影響は小さいと思うのですが・・・。

[19. mushi]

　私ではなくmasudakoさんにお聞きしていると分かってはいるのですが、やっぱり書きたくなったので書いてしまいます、ごめんなさい。

　太陽活動と気温に相関が無いのかというと、全く無いわけではないと思います。マウンダー極小期はやはり地球の平均気温を下げる方向に働いた可能性はあると思います。
　ただ、その影響はかなり限定的・局所的だったのではないかとする意見が多いようです。私のブログにも書いたことがあるので宣伝しておきます。
http://ameblo.jp/mushimushi9/entry-10510060368.html

　なお、小氷期には、火山活動が活発だった可能性は示唆されています。火山からのエアロゾルが日傘効果をもたらしたというものですね。異論もあるそうですが。
http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/rika-b/htmls/global_warming/4.html
　最後に、masudakoさんのページにも考察がありますので、こちらもぜひ。
http://web.sfc.keio.ac.jp/~masudako/publ/geosci/liac/text.html
　ただ、これは1992年とかなり以前のもののようですので、よければ新しい知見をお聞きしたいなと私も思います。

[20. おおくぼ]

mushiさんへ

コメントありがとうございます。
私としては納得できる回答なら、どなたでも歓迎です。

イギリスなどの西ヨーロッパと日本などの東アジアでは、気候変化にズレがあると思います。

今回のマウンダー極小期と平均気温の相関性については自分のブログに書いたのですが、世間で言われるほど相関性は良くないのでは？ということです。

マウンダー極小期は1650年頃からですが、寒冷期は1600年より前から始まっています。
またマウンダー極小期が終わらない内に平均気温は上がっています（累積効果を考えると説明がつきません）。

べリリム10と炭素14の相関性は良いのですが、平均気温との相関性は良くありません。

またマウンダー極小期の前のシュペーラー極小期と平均気温の相関性も悪いです。

[21. masudako]

機器観測の始まる前の気候についての議論は、気温の復元推定にも、原因の候補となるものの復元推定にも不確かさが大きいので、特定のデータを信頼しすぎないで考える必要があります。また、外因としては太陽と火山の両方がありますし、十年から数十年の周期帯には気候システム内部変動にちがいない変動もあるので、気温の時系列が原因の候補のうちひとつだけときれいな相関を示すことはあまり期待できません。

太陽からの放射エネルギー総量の変動は、黒点が見られなかった時代も、復元の不確かさが大きいですが、おそらく今と比べて小さいとは思われるものの違いは総量自体の0.1%の桁(たとえば0.2%)だろうと思われます。これが小氷期と呼ばれる寒冷期の主原因になったことは考えにくいです。(もしそうだとすれば、気候システムはこれまで思われていたよりもずっと外因に対して敏感だということになります。)

しかし、紫外線部分は黒点周期に伴ってその波長帯の放射エネルギー量の数%の変動をしています。紫外線の変動→成層圏の温度分布の違い→対流圏に原因のある大気の力学的波動がどう伝わっていくかの違い→対流圏の気圧の谷・峰の分布の違い→高温・低温偏差の分布の違い、という因果連鎖はあるようです。地域ごとの高温と低温の偏差が大部分打ち消しあうと思われますが、全球平均気温にも多少は見えてくるかもしれません。

もうひとつ、太陽活動に伴って雲が変動し気温に影響を与える可能性はありますが、因果関係から見てどのような大きさの影響があるべきかという定量的な評価はまだないと思います。

[22. おおくぼ]

masudakoさんへ

＞しかし、紫外線部分は黒点周期に伴ってその波長帯の放射エネルギー量の数%の変動をしています。

とても興味ふかいです。
北極振動の原因と関係あるのでしょうか？

[23. クロップサイエンス]

気象研究所の黒田氏、小寺氏が太陽活動と成層圏の紫外線の変動、北極振動、北大西洋振動の関連を示唆しています。
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/cl/kuroda/kokuten/kokuten%20frame.html
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/cl/cl5/etc/solar/solar-sjis%5B1%5D.html
http://www.dpac.dpri.kyoto-u.ac.jp/mukou/meeting/Report/05/kodera.pdf

[24. おおくぼ]

クロップサイエンスさんへ

クロップサイエンスのリンクしたpdfファイルに・・・

＞熱帯の対流圏には相関は見られないが、成層圏の気温と太陽活動の間には良い正の相関が見
られる（図4a）。
＞一方、冬半球の南半球６０度付近では負の相関になっている。
＞この温度変化のパターンは熱帯域の沈降、冬極域の上昇流により生成されていることを示唆している。
＞これはまたモデル実験の北半球の冬の結果と良い対応を示している。
＞この成層圏の気温の変化に対応して、対流圏で上昇流の変化がやはり認められる。
＞赤道域で上昇が抑えられ、逆にモンスーン域の北緯10−20 度帯では上昇がより促進されている様子がうかがえる（図4b）。
＞インド洋域の500-hPa のωとF10.7 の相関をみると（図4c）大陸上で上昇傾向、インド洋上赤道の南で下降の傾向にある事がわかる。
＞この、赤道の北と南での上昇流のシーソーの結果はソマリージェットの強さの変動としても現れていることが地上の南北風とF10.7 の相関から判る（図4d）。

と書いてあります。
pdfファイルにある図を見てもピンとこないのですが・・・。
特に「成層圏の気温と太陽活動の間には良い正の相関」が、よくわかりません。

[25. 綾波シンジ]

数年周期の振動と、長期の変動の違いをまず把握しておいた方が良いと思います。

[26. クロップサイエンス]

おおくぽさんへ

「成層圏の気温と太陽活動の間には良い正の相関」について
11年周期の太陽活動の変化で可視光はわずか0.1%しか変化しませんが、成層圏の紫外線は数%も変化します。太陽活動が活発になると成層圏に届く紫外線が増えて、成層圏上部のオゾンに吸収され、成層圏の温度を上昇させます。その結果として、太陽活動と成層圏の温度に正の相関が生じると考えられています。

その他の部分については難しくてよくわかりません。
成層圏の変化は対流圏にも波及するようです。

[27. クロップサイエンス]

おおくぼさんへ　追伸

F10.7というのが良く出てきますが、太陽から届く波長10.7cmの電波の強度のことで、紫外線強度の代理指標と考えられています。また、太陽活動の強さの目安になっています。
従って、F10.7は紫外線、あるいは太陽活動に読み替えながら読んで行くと理解しやすいと思います。

[28. おおくぼ]

クロップサイエンスさんへ

1日ごとに相関しているのか、1年ごとに相関しているのか、11年周期ごとに相関しているのでしょうか？

[29. クロップサイエンス]

おおくぼさんへ

太陽活動の変化の大きさで比較するとわかりやすいと思います。
1日の中では地球側に向いている黒点とコロナホールの位置は大きく変わらず、大した変化はありません。
1年の中でも27日周期の自転に伴って、同じコロナホールや黒点が戻ってくることによる周期的変動がありますがこれもそれほど大きな変動ではありません。
11年でみると黒点がほとんどなくなる極小期から黒点数がピークに達する極大期まで含んでおり、1日や1年と比べてはるかに大きな変動幅になります。

従って、11年周期の中での相関ということになります。報告の中に極大期、極小期が出てきますが、これは11年周期の中の話です。

[30. おおくぼ]

南極圏の内陸部は、温暖化の傾向が緩やかですが、何故でしょうか？

また南極大陸の沿岸部は、温暖化の激しい場所とそうでない場所があります。
違いの原因はなんでしょうか？

[31. mushi]

　南極の件は、オゾンホールとの関連が指摘されています。
http://ameblo.jp/mushimushi9/entry-10445061835.html
　標高も関係しているのかもしれません。南極大陸の平均標高は2000mを超えます。他の大陸や海洋と同列には論じられないかもしれません。

　沿岸部の温暖化度合いのばらつきについては、大雑把に言って西南極で昇温が著しいです。
　根拠があるわけではありませんが、東南極奥地の冷気（東南極奥地は特に標高が高く、昇温もゆるやか）が沿岸部に吹き降ろしてくるため、東南極沿岸部では昇温が小さいのではないでしょうか。

[32. おおくぼ]

mushiさんへ

オゾンホールの大きさと南極の平均気温に相関性はあるのでしょうか？

標高の高い場所は、平均気温が変化しにくいのでしょうか？

[33. masudako]

地域ごとの気候変化の原因の説明は全球平均の場合に比べてむずかしいです。南極の場合も納得がゆく説明をできる人はまだいないのではないかと思います。
確かなことは、南極大陸の海岸線や等高線が緯線に平行に近いために、地表近くから成層圏までにわたって緯線に平行な循環、いわゆる「極渦」が持続しやすく、その内側と外側の空気が混ざりにくいことです。(もちろんまったく出入りがないわけではなく、たとえばmushiさん(31番)もふれておられる斜面下降を伴う吹き出しがあり、それを補う流れがどこかにあるはずです。)
また、南極大陸の周辺の海流も緯線に平行に近い形で東西にまわってしまい、そのあたりの海洋の南北・鉛直の循環は海の深層におよびます。したがって、全球の温暖化に伴って南極のまわりの海へのエネルギーの蓄積も進行している間にも、南極のまわりの海面水温はなかなか上がらなくてもふしぎはないです。
しかし、南極大陸の周辺部の南極半島で地上気温の上昇が大きいです。これは海陸分布が緯線に平行からずれていることに関係するにちがいないですが、わたしはまだ説明を持っていません。
オゾンが減ると成層圏の大気による太陽光の紫外線部分の吸収が減るので正味で冷却に働きます。ただしこれが成層圏の温度を下げるように働くことは確かですが、地上気温にどう効くかはそれほど確かではありません。

[34. おおくぼ]

温室効果は昼の時間帯の方が夜より強いと思うのですが（雲がない場合）、「昼と夜の温室効果の差」は計測できるのでしょうか？
昼の場合は、「太陽からの赤外線」と「大気からの赤外線」の区別が難しいと思うのですが・・・。

[35. masudako]

温室効果の強さはエネルギーの出入りがつりあっていると近似して決まるのですが、昼と夜に分けたそれぞれについては大気(や陸面)のエネルギー収支がつりあっていないので、温室効果の強さの差を議論することはむずかしいです。

人為起源の温室効果強化が地上気温に及ぼす影響の強さという意味であれば、昼よりも夜のほうが大きいと言ってよいと思います。地上での下向き赤外放射の増加量は昼も夜もほぼ同じですが、それが地表面エネルギー収支にしめる重みは夜のほうが大きいので、温暖化は夜のほうが大きくなりやすいのです。(これは正確な説明ではないかもしれません。)

なお太陽からも赤外線は来ていますが、地球上で約4μmよりも長い波長帯に注目した場合には太陽放射の寄与は相対的に無視できます。観測では波長でぴったり分けることはむずかしく、いくらか混ざってしまいますが。

[36. おおくぼ]

夜は太陽光線がないので、影響の割合という意味では温室効果は、昼よりも夜の方が大きいと思います。
でも昼の方が「地表から上向きの赤外線放射」は多いと思います。
赤外線放射の強さは表面温度に比例しますので。
そうすると昼の方が、大気が赤外線を多く吸収して、下向きの赤外線放射も多くなると思うんですが？

★

昼間、車を閉めきると熱くなります。
赤外線を遮断するフィルムや赤外線を遮断するガラスが売っていて、ネットの宣伝情報を見ますと、使用すると、かなり効果がそうです。
この場合、遮断されている赤外線は、「温室効果からの赤外線」がほとんどなのでしょうか？

[37. クロップサイエンス]

おおくぼさんへ
絶対温度6000度の太陽表面から出て、地表に届く下向きの太陽放射と絶対温度288度(15℃)の上向き地球放射・下向き大気放射はどちらも赤外線ではありますが波長が全く違うので、区別する必要があります。太陽放射の波長は0.15μm〜6μmで、地球放射と大気放射は4μm〜100μmです。
http://www.cr.chiba-u.jp/edu/2004/RSandEV/Takamura2004.pdf　
(太陽スペクトルと大気の吸収の図参照)
昼の方が夜よりも地表温度が高いので、「昼の方が「地表から上向きの赤外線放射は多い」というのは合っています。「昼の方が、大気が赤外線を多く吸収して、下向きの赤外線放射も多くなる」というのも合っています。
温室効果を地表からの地球放射に対する下向き大気放射の割合とすると、昼と夜とで大差ありませんが、大気放射の絶対値でみるならば、昼の方が大きくなります。

赤外線を遮断するフィルムは太陽放射の波長の短い赤外線を遮断するように作られていて、温室効果を生じる波長が長い大気放射の赤外線の遮断を想定していません。

[38. mushi]

36.
上向き・下向きの赤外放射測定結果については、
http://www.pref.osaka.jp/attach/1144/00004750/hsksiryou3_1.pdf
の図10,11が見やすいでしょうか。
上向き放射は昼夜であきらかに差があります。下向き放射も昼間のほうが多く見えますね。ただ、35.のコメントにあるように、太陽からの放射との区別は厳密にはできないと思います。

赤外フィルムに関しては37.のコメントの通りだと思います。そもそも、普通のガラスは3μm程度より長い波長の赤外線に対しては不透明ですから。

[39. おおくぼ]

クロップサイエンスさん、mushiさんへ

こちらのサイトだと・・・

http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2007/pr20070625/pr20070625.html

引用

＞光と熱の源である日射のエネルギーは幅広い波長領域に分布しており、紫外線が約6%、可視光が約46%、赤外線が約48%を占める（図４）。

＞さらに長波長までの測定結果によれば、日射中の熱線エネルギーに対する反射率はおよそ50％（波長750nm〜2000nmの熱線に対する平均値）と概算された。

と書いてあります。

[40. mushi]

　産総研のHPでは、波長が短い赤外線（近赤外領域）の話しかしていません。具体的には、図４では2000nmの波長までしかグラフに書いていませんよね？さらに長い波長の赤外線（中赤外・遠赤外領域）は記述していません。
　なぜかというと、言及する必要がなからです。普通のガラスは元から中赤外・遠赤外領域の光は透過しないからです。

　箇条書きにしましょうか。
・普通のガラスは近赤外光（≒太陽からの入射）は透過し、中赤外・遠赤外領域の光は透過しない。近赤外光はガラスを透過して室内に入射し、室温を上げる効果がある。
・普通のガラスに赤外線カットフィルムを張るか、産総研が新開発したガラスを用いるかすれば、近赤外領域の光も透過しなくなるので、室温上昇の抑制になる。
・「赤外線カットで室内温度上昇を防ぐことができます」などと言う場合、特に言及が無くても、赤外線とは近赤外線のことを指す。

　「遮断されている赤外線は、「温室効果からの赤外線」がほとんどなのでしょうか？」という質問に対する答えは、「いいえ、太陽からの赤外線がほとんどです」になるでしょうね。

[41. おおくぼ]

mushiさんへ

＞「遮断されている赤外線は、「温室効果からの赤外線」がほとんどなのでしょうか？」という質問に対する答えは、「いいえ、太陽からの赤外線がほとんどです」になるでしょうね。

わかりました。ありがとうございます。

[42. おおくぼ]

追記

赤外線の単位「μm」と「nm」の違いを無視してしまったために、みなさんの答えを誤解してました。

[43. masudako]

mushiさんのコメント(19番)にある、小氷期に関するわたしの文章は次のところに移動しました。
http://macroscope.world.coocan.jp/ja/text/geosci/liac/text.html
残念ながら、新しい文章を書いていませんが、この主題に関するわたしの基本的な考えは変わっていません。

[44. mushi]

わざわざ連絡していただき、ありがとうございます。
ＨＰの大規模リニューアルお疲れ様でした。いろいろ助かりました。