日本では「歌う生物学者」本川達雄教授が有名ですね。「歌う生物学」のウェブサイト http://www.motokawa.bio.titech.ac.jp/song.html も作っておられます。
Youtubeには「歌う地球科学者」がいます。アメリカのペンシルバニア州立大学(PSU)のRichard Alley (リチャード・アレイ)教授です。気候変化の専門家としても有名です。グリーンランド氷床のコアサンプルから過去の気候の復元推定をした研究者であり、その話題を一般向けの本(日本語版の題名は『氷に刻まれた地球11万年の記憶』、[わたしの読書ノート])として書いた人でもあります。また、その氷の記録に見られたような急激な気候変化が今後もありうるかについて、2002年に報告書([わたしの読書ノート])を出したアメリカ科学アカデミーの委員会のまとめ役になり、その後も検討や発言を続けています。1年前(2009年12月)のAGU (アメリカ地球物理学連合)大会では、地球の気候変化にとっての二酸化炭素の役割に関する講演をしました。今もAGUのこのウェブサイトにビデオがあります。
しかし、Youtubeに出ている歌のビデオは、専門外の学生のための地質学の一般教育の教材の一部として作られたものなので、話題は(気候ではなく)地球の固体部分に関するものです。これがほんとうのrock musicというわけです。(音楽のジャンルとしてもロックに属するものが多いようですが、わたしにはよくわかりません。) 映像を編集しているのは、奥さんで地質学者のCindy Alleyさんで、Youtubeに psucalley という名前で投稿しているので、この名前で検索すると、いくつも見つかります。
[2010-12-28 追記: PSUの広報サイトでも紹介されていますが(2009年1月30日)、残念ながらリンク先のページはその学期限りだったようです。しかし、John A. Dutton e-Education Instituteのウェブサイトは健在で、その中にAlleyさんの担当の授業の紹介もあります。PSUの地球科学科の仕事の一部として、WWWを利用した授業をしているのです。Duttonさんは今は大学からは引退されていますが、この活動を始めた当時の学科長で、気象学者です。]
ただし、Alleyさんの歌は、すでに有名な曲に歌詞をつけなおした、かえ歌です。アメリカ合衆国の著作権法にはfair use (公正使用)という条項があり、その詳しい意味は判例で決まるわけですが、このようなかえ歌のビデオを無料で公開することはfair useとみなされることが多いようです。日本の著作権制度のもとでは、現代のプロ作曲者による曲のかえ歌を公開することは、原作者自身からの積極的応援がなければ、困難でしょう。本川先生のように、歌詞も曲も自作ならば、もんくはないのですが。
* 歌としてよくできていると思ったのは「GeoMan」です。Billy Joelの「Piano Man」のかえ歌で、46億年の地球の歴史を語るとともに、地球科学を学ぶことを勧めているようです。
* 題名をそのまま使っているのは「Ring of Fire」(もと歌はJohnny Cashによる)です。もと歌の題名の意味をわたしは知りませんが、地学者の間では環太平洋火山帯をさします。
* 「Watch the Line」もJohnny Cashのかえ歌、もとは「I Walk the Line」です。地震計の記録(線)をいつも監視する人がいて、(目立たないが)世の中の役にたっているのだという話になっています。
* 「Rocking Around the Silicates」はBill Haley and the Cometsの「Rock around the Clock」のかえ歌で、岩石を構成するさまざまな珪酸塩鉱物の原子配列の説明になっています(速すぎて、ときどき止めないとついていけませんが)。
* 「Down Doo Bee Doo」はNeil Sedakaの「Breaking Up Is Hard To Do」のかえ歌で、地層を見てもともとどちらが上だったのかはどうやってわかるのかという話です。
* 「Rollin' to the Future」は「Proud Mary」のかえ歌で、化石燃料と更新可能エネルギー資源について歌っています。
Youtubeの別のところには、Alleyさんが踊っているというような見出しのついたビデオもありましたが、これは文字通りの踊りではなく、地球の軌道要素の変化による気候の変化(いわゆるミランコビッチ理論)を説明する道具として自分のからだを使ったパフォーマンスをした、というものでした。
masudako
Youtubeには「歌う地球科学者」がいます。アメリカのペンシルバニア州立大学(PSU)のRichard Alley (リチャード・アレイ)教授です。気候変化の専門家としても有名です。グリーンランド氷床のコアサンプルから過去の気候の復元推定をした研究者であり、その話題を一般向けの本(日本語版の題名は『氷に刻まれた地球11万年の記憶』、[わたしの読書ノート])として書いた人でもあります。また、その氷の記録に見られたような急激な気候変化が今後もありうるかについて、2002年に報告書([わたしの読書ノート])を出したアメリカ科学アカデミーの委員会のまとめ役になり、その後も検討や発言を続けています。1年前(2009年12月)のAGU (アメリカ地球物理学連合)大会では、地球の気候変化にとっての二酸化炭素の役割に関する講演をしました。今もAGUのこのウェブサイトにビデオがあります。
しかし、Youtubeに出ている歌のビデオは、専門外の学生のための地質学の一般教育の教材の一部として作られたものなので、話題は(気候ではなく)地球の固体部分に関するものです。これがほんとうのrock musicというわけです。(音楽のジャンルとしてもロックに属するものが多いようですが、わたしにはよくわかりません。) 映像を編集しているのは、奥さんで地質学者のCindy Alleyさんで、Youtubeに psucalley という名前で投稿しているので、この名前で検索すると、いくつも見つかります。
[2010-12-28 追記: PSUの広報サイトでも紹介されていますが(2009年1月30日)、残念ながらリンク先のページはその学期限りだったようです。しかし、John A. Dutton e-Education Instituteのウェブサイトは健在で、その中にAlleyさんの担当の授業の紹介もあります。PSUの地球科学科の仕事の一部として、WWWを利用した授業をしているのです。Duttonさんは今は大学からは引退されていますが、この活動を始めた当時の学科長で、気象学者です。]
ただし、Alleyさんの歌は、すでに有名な曲に歌詞をつけなおした、かえ歌です。アメリカ合衆国の著作権法にはfair use (公正使用)という条項があり、その詳しい意味は判例で決まるわけですが、このようなかえ歌のビデオを無料で公開することはfair useとみなされることが多いようです。日本の著作権制度のもとでは、現代のプロ作曲者による曲のかえ歌を公開することは、原作者自身からの積極的応援がなければ、困難でしょう。本川先生のように、歌詞も曲も自作ならば、もんくはないのですが。
* 歌としてよくできていると思ったのは「GeoMan」です。Billy Joelの「Piano Man」のかえ歌で、46億年の地球の歴史を語るとともに、地球科学を学ぶことを勧めているようです。
* 題名をそのまま使っているのは「Ring of Fire」(もと歌はJohnny Cashによる)です。もと歌の題名の意味をわたしは知りませんが、地学者の間では環太平洋火山帯をさします。
* 「Watch the Line」もJohnny Cashのかえ歌、もとは「I Walk the Line」です。地震計の記録(線)をいつも監視する人がいて、(目立たないが)世の中の役にたっているのだという話になっています。
* 「Rocking Around the Silicates」はBill Haley and the Cometsの「Rock around the Clock」のかえ歌で、岩石を構成するさまざまな珪酸塩鉱物の原子配列の説明になっています(速すぎて、ときどき止めないとついていけませんが)。
* 「Down Doo Bee Doo」はNeil Sedakaの「Breaking Up Is Hard To Do」のかえ歌で、地層を見てもともとどちらが上だったのかはどうやってわかるのかという話です。
* 「Rollin' to the Future」は「Proud Mary」のかえ歌で、化石燃料と更新可能エネルギー資源について歌っています。
Youtubeの別のところには、Alleyさんが踊っているというような見出しのついたビデオもありましたが、これは文字通りの踊りではなく、地球の軌道要素の変化による気候の変化(いわゆるミランコビッチ理論)を説明する道具として自分のからだを使ったパフォーマンスをした、というものでした。
masudako