1月31日の記事の続きです。
全球平均地上気温の上昇傾向をすなおに見ると、1998年ごろ以後、それ以前に比べて上昇が弱まっていると言えるでしょう。
しかし、多くの気候専門家は、地球温暖化が止まったとは考えていません。それは、大気中の二酸化炭素の増加が減っておらず、したがって、温暖化を起こす原因が弱まったとは考えがたいからです。
気温のデータについても、「明らかに」とは言えないものの、温暖化が止まったわけではないという見かたもできます。
RealClimateというブログには12月6日にGlobal Temperature Newsという記事が出ています。
その後半でふれられているのは、WMO (世界気象機関)が、2011年11月が終わったところで出した、2011年の天候に関する暫定版の報告Provisional Statement on the Status of the Global Climateです。この中に、全球平均地上気温(年平均値)のグラフがあります(RealClimateの記事でも引用されています)が、そこではラニーニャ年を青で、その他の年を赤で色分けしています。ラニーニャ年に限ると、2011年の気温は観測史上最高であり、1970年代以後の傾向は(サンプル数があまり多くないので強く言えませんが)継続した上昇のように見えます。他方、ラニーニャ以外の年について見ると、2000年以後も、それ以前よりはにぶいかもしれませんが、上昇傾向はあります。(長期的な変化傾向を見るには、1998年のような山だけでなく1999年のような谷も含めて、棒の上端の点の分布を見るべきです。)
RealClimateの記事の前半で紹介されているのは、最近学術雑誌に掲載が決まった次の論文です。
実は、1月31日の記事で紹介したTaminoというブロガーがGrant Fosterさんで、その解析結果をドイツの研究者Rahmstorfさんといっしょに検討して論文にしたのです。もう少し詳しい解説がTaminoさんの個人ブログOpen Mindに12月6日にThe Real Global Warming Signalという記事として出ています。
この論文では、1979年から2010年までの全球平均地上気温の時系列から、太陽活動(いわゆる太陽定数の変化)、火山活動(成層圏にはいったエーロゾル)、エルニーニョ・南方振動(海面水温の分布にもとづくMEIという指標)の影響をとり除く試みをしています。この3つの要因を除いた気温変化には明確な上昇傾向があり、その勢いは2000年以後もおとろえていません。
ブログには引用されていませんが論文の第7図に3つの要因それぞれの寄与が示されています。これを見ると、2000年以後の実際の気温の上昇がにぶっているおもな理由は、2003年以後、太陽からくる放射が弱くなっていることのようです。
太陽からくる放射の強さは、伝統的に「太陽定数」と呼ばれてきましたが、定数ではないので、最近は英語ではTSI (total solar irradiance)と呼ばれています。SORCEという衛星プロジェクトのコロラド大学にあるウェブサイトにSorce Total Solar Irradianceの観測データのグラフがあります。これを見ると、TSIは2008-2009年は小さい値を保っており、2010年中もあまり上がらなかったのですが、2011年になってから上昇し、12月にはSORCE観測の始まった2003年と同じレベルに達しています。[2011-12-24改訂: 最近の太陽活動の極大は2000-2002年ごろで、2003年はその後TSIが下がりはじめた時期です。]
したがって、もしFosterさんたちの気温変化の原因の分析が正しいとすれば、気温上昇がおさえられていた要因がなくなったので、これからかなり激しい気温上昇が起こるだろうと予想されます。
ただし、気候専門家の、この統計的分析の正しさに関する確信度は、大気中の二酸化炭素がふえることが温暖化をもたらすしくみに関する確信度ほどは高くありません。
masudako
全球平均地上気温の上昇傾向をすなおに見ると、1998年ごろ以後、それ以前に比べて上昇が弱まっていると言えるでしょう。
しかし、多くの気候専門家は、地球温暖化が止まったとは考えていません。それは、大気中の二酸化炭素の増加が減っておらず、したがって、温暖化を起こす原因が弱まったとは考えがたいからです。
気温のデータについても、「明らかに」とは言えないものの、温暖化が止まったわけではないという見かたもできます。
RealClimateというブログには12月6日にGlobal Temperature Newsという記事が出ています。
その後半でふれられているのは、WMO (世界気象機関)が、2011年11月が終わったところで出した、2011年の天候に関する暫定版の報告Provisional Statement on the Status of the Global Climateです。この中に、全球平均地上気温(年平均値)のグラフがあります(RealClimateの記事でも引用されています)が、そこではラニーニャ年を青で、その他の年を赤で色分けしています。ラニーニャ年に限ると、2011年の気温は観測史上最高であり、1970年代以後の傾向は(サンプル数があまり多くないので強く言えませんが)継続した上昇のように見えます。他方、ラニーニャ以外の年について見ると、2000年以後も、それ以前よりはにぶいかもしれませんが、上昇傾向はあります。(長期的な変化傾向を見るには、1998年のような山だけでなく1999年のような谷も含めて、棒の上端の点の分布を見るべきです。)
RealClimateの記事の前半で紹介されているのは、最近学術雑誌に掲載が決まった次の論文です。
- Grant Foster and Stefan Rahmstorf, 2011: Global temperature evolution 1979–2010. Environmental Research Letters, 6, 044022, doi:10.1088/1748-9326/6/4/044022 . [要旨、PDFファイル(無料)へのリンク].
実は、1月31日の記事で紹介したTaminoというブロガーがGrant Fosterさんで、その解析結果をドイツの研究者Rahmstorfさんといっしょに検討して論文にしたのです。もう少し詳しい解説がTaminoさんの個人ブログOpen Mindに12月6日にThe Real Global Warming Signalという記事として出ています。
この論文では、1979年から2010年までの全球平均地上気温の時系列から、太陽活動(いわゆる太陽定数の変化)、火山活動(成層圏にはいったエーロゾル)、エルニーニョ・南方振動(海面水温の分布にもとづくMEIという指標)の影響をとり除く試みをしています。この3つの要因を除いた気温変化には明確な上昇傾向があり、その勢いは2000年以後もおとろえていません。
ブログには引用されていませんが論文の第7図に3つの要因それぞれの寄与が示されています。これを見ると、2000年以後の実際の気温の上昇がにぶっているおもな理由は、2003年以後、太陽からくる放射が弱くなっていることのようです。
太陽からくる放射の強さは、伝統的に「太陽定数」と呼ばれてきましたが、定数ではないので、最近は英語ではTSI (total solar irradiance)と呼ばれています。SORCEという衛星プロジェクトのコロラド大学にあるウェブサイトにSorce Total Solar Irradianceの観測データのグラフがあります。これを見ると、TSIは2008-2009年は小さい値を保っており、2010年中もあまり上がらなかったのですが、2011年になってから上昇し、12月にはSORCE観測の始まった2003年と同じレベルに達しています。[2011-12-24改訂: 最近の太陽活動の極大は2000-2002年ごろで、2003年はその後TSIが下がりはじめた時期です。]
したがって、もしFosterさんたちの気温変化の原因の分析が正しいとすれば、気温上昇がおさえられていた要因がなくなったので、これからかなり激しい気温上昇が起こるだろうと予想されます。
ただし、気候専門家の、この統計的分析の正しさに関する確信度は、大気中の二酸化炭素がふえることが温暖化をもたらすしくみに関する確信度ほどは高くありません。
masudako