2012年3月11日夜10時から、NHK教育テレビの「ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図(5) 埋もれた初期被ばくを追え」を、たまたま見ました。

ここで問題になっているのは、福島第1原子力発電所の事故で出た放射性物質のうち、ヨウ素131でした。この核種は半減期約8日で崩壊するので、もはやこの事故による新たな危険はないと言えますが、すでに被ばくしてしまったと思われる人はいます。核種別の放射線量の地理的分布を見ると、福島第1の北西側ではおもに放射性セシウムが多いのですが、南側ではヨウ素の割合が大きくなっています。したがって南側に住んでいた人たちがどれだけの被ばくをしたかが心配ですが、詳しいことがわかっていません。

海洋研究開発機構横浜研究所の滝川雅之さんと東京大学大気海洋研究所の鶴田治雄さんが、このヨウ素131の大気による輸送のシミュレーションをしていることが、番組の中で紹介されていました。ふだんは光化学スモッグなどの大気汚染を研究しているかたがたです。

そのシミュレーション結果を、放射線被ばくの健康影響の専門家が見て、住民に対する助言の材料にすることになります。

もちろん、シミュレーションの入力として、発生量を推定しなければなりません。環境放射線の観測機器のうち、いくつかは地震・津波あるいは停電で止まりました。機器は動いていたものの事故のあと避難区域となったためにデータが取り出せなかったところもありました。そのうち、福島県原子力センターにある大野モニタリングポスト (同センターによる地図参照、ただしこの地図の数値は最近のある時刻の線量)のデータがまず使えるようになりました。時系列でみると、2011年3月12日から放射性ヨウ素が届いており、15日の午前にとくに大きな値を示していました。

さらに福島第1の南1.5kmの夫沢モニタリングポストのデータも使えるようになった、という話もありました。福島県の人が機器から取り出したデータを、放射線計測の専門家の岡野眞治博士が解析して使えるようにした、ということでした。どんな解析が必要だったのかは聞きもらしました。番組の中で紹介されたシミュレーションに対しては、入力ではなく結果の比較対象として使われていたようです。

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