コペンハーゲンで開かれていたIPCCの総会で、第5次評価報告書(AR5)の統合報告書が承認されました。

今のところ、IPCCウェブサイトhttp://www.ipcc.chのトップページからも、Fifth Assessment Report (AR5)のSynthesis Reportの下に、Summary for Policymakers (政策決定者向け要約)と、Synthesis Report - Longer Report (統合報告書本体)の、それぞれのPDFファイルへのリンクがあります。(報告書本体も部会別報告書のように長くはなく、1個のPDFファイルです。) まだ体裁をととのえる編集がされていませんが、内容は最終版のようです。

この統合報告書についてのウェブページはhttp://www.ipcc.ch/report/ar5/syr/ で、これは長期にわたって維持されると思います。

日本語では、環境省の[このページ]に11月4日づけの報道発表があります。

環境省の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)について」のページは順次更新されています。統合報告書に関してこれまでに置かれたのは、「 日本語概要資料(報道発表資料の概要)」というPDFファイルですが、これの内容は上記の報道発表のページからリンクされたPDFファイルと同じのようです。「政策決定者向け要約」のところにあるのは今のところ英語版へのリンクですが、今後、日本語訳が置かれると思います。

余談ですが、IPCCウェブサイトの統合報告書についてのウェブページのPresentationというリンクの先にPowerPointファイルがあります。ファイルサイズが48メガバイトもありますが、さし絵のように使われた写真でかさばっているだけのようです。3つの部会の報告書の要約を見た人にとって、とくに新しい情報はないように思われました。これのダウンロードはおすすめしません。

ただし、パワーポイントの17ページめの図(報告書にはない図のようですが)の「2℃目標達成を可能とする炭素排出の65%をすでに使ってしまった」は不確かさを含む見積もりを単純化しすぎた表現だし、IPCCの立場を誤解させかねないので、困ったものだと思います。(今回、IPCCは2℃目標が達成可能な条件を論じていますが、それは気候変動枠組み条約締約国会議が2℃目標をかかげたのでそのような問いが生じたからであって、IPCC自身の意志として2℃目標を主張しているわけではないのです。しかし、おそらく議長・副議長などのIPCC執行部の人々の個人的感覚として2℃目標が自明であるために、混乱が生じているのだと思います。)

(しかも、この追加の図は、グラフの形式がいわゆる3次元円グラフ(3D pie chart)というもので、まずいと思います。円グラフそのものがまずいという人もいますが、わたしは、全体に対するひとつの数量の割合を示すのには円グラフはよいと思います(個人ブログの[2012-08-12の記事][2012-08-15の記事]で論じました)。しかし、立体もどきの見かけにするための変形で、図の中心角も面積も、数量の割合を正確に伝えるものでなくなっているのです。IPCC報告書本体のグラフ表現は、複数の人がレビューしているので、たぶんこのようにひどいものはないと思います。)

masudako