実質同じことを、表現を変えて、なん度も書くことになります。くどいと感じるかたには申しわけありません。
菊池誠さんのKikulogの「地球温暖化問題つづき」の記事へのコメントとして、つぶやさんが次のように書いていました。
これに対してわたしはこう書きました。
これだけではわかりにくかったかもしれません。2010年11月10日の「ふろおけモデル -- たまりと流れのあるシステムの準定常状態」で述べたような、「流れ」と「たまり」の関係が、地球温暖化の因果関係のうちで、二重にかかわっているのです。
まず、二酸化炭素排出量と、二酸化炭素濃度の関係です。空気全体の質量に比べて二酸化炭素はわずかな量で、空気全体の質量はほぼ一定なので、世界平均の二酸化炭素濃度は大気中の二酸化炭素の総量に比例するとみなせます。排出された二酸化炭素が「流れ」で、大気中の二酸化炭素の総量は「たまり」です。したがって、二酸化炭素の総量の時系列は、過去の二酸化炭素排出量を累積したものと似たものになります。もちろん実際には大気から出ていく(海や陸に吸収される)二酸化炭素もあるので、単なる累積ではありませんが。
次に、二酸化炭素がふえると、電磁波の吸収と射出の差による(単位時間あたりの)正味の加熱量がふえます。これは同時現象でためこみはありません。
この加熱によって、地球にはエネルギーがたまっていきます。エネルギーがたまるところは海洋、そのうちでは表層の部分ですが、それにしても大気の50倍ほどの質量があるので熱容量が大きく、その温度の上昇のしかたは、過去数十年の加熱量を累積したものに似ています。
* * *
ひと組の流れとたまりの関係について、たとえ話を試みます。わたしはスポーツをあまりよく知らないので現実みがありませんが。
あるスポーツ(たとえばサッカー)で、A高校の選手の実力と、A高校出身のプロ選手の活躍ぶりとは、関係があるでしょうか? 因果関係はありそうですが、1年刻みの時系列どうしを比べて、高校生が強い年に出身者が活躍するという相関はあるでしょうか? (この場合、人の行動なので、高校生の活躍が先輩のはげみになったり、その逆向きのことがあるかもしれませんが、たとえ話としてはそういうことはないとします。)
数量がまぎれなく決められる例に変えます。毎年のA高校から新しくプロ入りする選手の数(x)の時系列と、A高校出身でプロの現役としてプレイしている選手の数(y)の時系列との間には、どんな関係があるでしょうか?
プロの選手が現役でいられる期間の長さが一定、たとえば10年だったら話は簡単です。ある年のyの値は、それまでの過去10年間のxの値を累積したものになるはずです。そして、xとyの直接の散布図をかいても、たぶんきれいな相関はないでしょう。
実際には、選手が現役を続ける年数にはかなりの個人差があるでしょう。それでも、その平均値が1年よりもだいぶ長いならば、xの時系列が年々のゆらぎが大きいものでも、yの時系列はそれよりはだいぶなめらかなものになるでしょう。
masudako
菊池誠さんのKikulogの「地球温暖化問題つづき」の記事へのコメントとして、つぶやさんが次のように書いていました。
156. つぶや ― October 15, 2011 @13:14:22
最高を記録した1998年以降のここ10年ほど、気温がさらに高くなることはなくなってきているようですが、大気中CO2濃度の年増幅もそれに追随して、じんわりと落ち着いてきているようですね。1998年のCO2濃度増は2.5ppm強ほどでしたが、その後は2ppm前後になってきているようです。
一方、人為CO2排出量の増加は1998年に3ppm程度相当であったのが、最近は4ppm程度にまで高まっているようです。人為CO2の大気中への供給力はますます強力になり、その温室効果も強まっているはずですが、その作用が気温変化に現れている様子はあまりなさそうに見えます。
http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/cdrom/report/html/2_1.html
(図2.1.3 人為起源による排出量から想定される二酸化炭素濃度年増加量(棒の高さ)と実際の観測による大気中CO2濃度年増加量(黄色部分)と自然による二酸化炭素年吸収量(緑部分)の経年変動。)
これに対してわたしはこう書きました。
158. masudako ― October 15, 2011 @21:30:18
気象庁の図2.1.3の黄色の棒は濃度の年ごとの増加量で、常に0より大きい値ですから、濃度はふえ続けているわけです。増加量の増加傾向つまり濃度の時間による2回微分の議論は微妙になりますが、図の全期間つまり1984年から2007年までの全体の傾向は、人為起源の排出量ほどではないものの、増加に見えます。大気と陸や海の間の炭素交換量の年々変動の原因は全部はわかっていませんが、年々変動があることは驚くにあたらず、その変動幅が最近小さくなっているようには見えません。
二酸化炭素濃度の時系列と気温の時系列は、1年ごとではもちろん、10年ごとに見てもあまりよい対応がありません。海の熱容量が大きく、数十年ぶんのエネルギーをためこめるので、対応がよくないのはあたりまえです。気象学者は二酸化炭素がふえれば温室効果が強まることには自信をもっているので、太陽光反射の変動について不確かなところは残っていますが、地上気温はあまり上がらなくても海がたくわえているエネルギーがふえているという意味では温暖化は進行していると考えています。
全球平均地上気温の時系列の解釈として言えば、Skeptical Scienceというサイトの最近の記事http://www.skepticalscience.com/Ocean-Heat-Poised-To-Come-Back-And-Haunt-Us-.htmlの図2にあるように、上昇傾向(温室効果の強化による)と、振動型の変動(自然変動と考えらえれる)が重なっていると見られます。合計は、上昇が遅くなることや一時的に下降することもありますが、速く上昇することもあります。
これだけではわかりにくかったかもしれません。2010年11月10日の「ふろおけモデル -- たまりと流れのあるシステムの準定常状態」で述べたような、「流れ」と「たまり」の関係が、地球温暖化の因果関係のうちで、二重にかかわっているのです。
まず、二酸化炭素排出量と、二酸化炭素濃度の関係です。空気全体の質量に比べて二酸化炭素はわずかな量で、空気全体の質量はほぼ一定なので、世界平均の二酸化炭素濃度は大気中の二酸化炭素の総量に比例するとみなせます。排出された二酸化炭素が「流れ」で、大気中の二酸化炭素の総量は「たまり」です。したがって、二酸化炭素の総量の時系列は、過去の二酸化炭素排出量を累積したものと似たものになります。もちろん実際には大気から出ていく(海や陸に吸収される)二酸化炭素もあるので、単なる累積ではありませんが。
次に、二酸化炭素がふえると、電磁波の吸収と射出の差による(単位時間あたりの)正味の加熱量がふえます。これは同時現象でためこみはありません。
この加熱によって、地球にはエネルギーがたまっていきます。エネルギーがたまるところは海洋、そのうちでは表層の部分ですが、それにしても大気の50倍ほどの質量があるので熱容量が大きく、その温度の上昇のしかたは、過去数十年の加熱量を累積したものに似ています。
* * *
ひと組の流れとたまりの関係について、たとえ話を試みます。わたしはスポーツをあまりよく知らないので現実みがありませんが。
あるスポーツ(たとえばサッカー)で、A高校の選手の実力と、A高校出身のプロ選手の活躍ぶりとは、関係があるでしょうか? 因果関係はありそうですが、1年刻みの時系列どうしを比べて、高校生が強い年に出身者が活躍するという相関はあるでしょうか? (この場合、人の行動なので、高校生の活躍が先輩のはげみになったり、その逆向きのことがあるかもしれませんが、たとえ話としてはそういうことはないとします。)
数量がまぎれなく決められる例に変えます。毎年のA高校から新しくプロ入りする選手の数(x)の時系列と、A高校出身でプロの現役としてプレイしている選手の数(y)の時系列との間には、どんな関係があるでしょうか?
プロの選手が現役でいられる期間の長さが一定、たとえば10年だったら話は簡単です。ある年のyの値は、それまでの過去10年間のxの値を累積したものになるはずです。そして、xとyの直接の散布図をかいても、たぶんきれいな相関はないでしょう。
実際には、選手が現役を続ける年数にはかなりの個人差があるでしょう。それでも、その平均値が1年よりもだいぶ長いならば、xの時系列が年々のゆらぎが大きいものでも、yの時系列はそれよりはだいぶなめらかなものになるでしょう。
masudako