丸善出版から出ている物理の雑誌『パリティ』の企画「温暖化問題、討論のすすめ」が、毎号ではありませんが、続いています。2012年12月号(56-59ページ)に、河宮未知生さんによる「気候モデルの『しつけ』に関する説明と考察」という文章が出ました。河宮さんは気候モデルに生物地球化学サイクルの表現を組みこんだ「地球システムモデル」とそれを利用した研究にかかわっているかたです。

「しつけ」という表現は、2011年12月号(わたしによる紹介は[2011年11月28日の記事])で安井至さんが温暖化懐疑論者の主張として紹介した「気候モデルはすべて温暖化が算出されるようにしつけられている」という議論に由来するようです。その号での安井さんは「研究者をばかにしている」と怒っただけで内容的な反論をしていませんでした。

気候モデルは大まかに分けて2種類の部分があるのです。物理法則をすなおに数値計算に置きかえている部分と、経験式を使っている部分です。経験式を使っている部分を「パラメータ化」あるいは「パラメタリゼーション」と呼んでいます。パラメータというのは大まかにいうと経験式の係数のようなものです。パラメータの値は過去の経験によって決めますので、この部分についてモデルが「しつけられている」という表現はもっともなところがあります。ただし、そこで使われている過去の経験はそれぞれの部分の動作を確認するのに適したものであって、気候全体のふるまいを観測値に合わせているわけではありません。

モデルとパラメタリゼーションに関しては、わたしも別のブログの記事として説明を試みました。

masudako