こんにちは、じゅんきちです。
地球温暖化関連の用語で、日本語としてイマイチと思う言葉がいくつかあります。

例えば、新聞記事で「温暖化ガス」という用語が用いられることがあります。たぶん京都議定書の対象となっている6種類のガス(CO2, CH4, N2O, HFCs, PFC, SF6)を主として念頭においた表現なのだろうと思いますが、定義がよく分からないので、私としてはちょっと気持ちの悪い言葉だと感じています。気象学の業界で古くから使われている「温室効果ガス (greenhouse gas)」という用語ならば、温室効果をもたらす気体をすべて含むということで定義は明確です。しかし、代表的な温室効果ガスである水蒸気については(対流圏では)基本的に自然界の水循環によって濃度が増減しますので、「温暖化ガス」という人為的な温暖化の直接的な原因というイメージのある言葉で表現するのは無理があるでしょう。人間活動(フロン放出など)によって減少してきた成層圏オゾンについては、むしろ「寒冷化ガス」と呼んでみたい気にもなります(でも、変な表現ですね)。

最近は、研究者が書く文章にまで「温暖化ガス」という言葉が登場することがあって驚かされますが、なるべくこのような不明確な用語は使ってほしくないと思います。新聞や雑誌の見出しでは、1字分でも2字分でもスペースを節約したいという場合があるのでしょうが、すでに一部の新聞で使われている「温室ガス」という略が適切だと思います。英語表現 greenhouse gas を直訳したことになり、すっきりしますよね。

最近かなり広く使われるようになった「低炭素社会」という言葉にも違和感が残ります。英語の low-carbon society という表現はとてもカッコいいと感じますし、それが意味する社会のあり方も必然的なことだとは思うのですが、日本語で「炭素」と言うとどうしても真っ黒な「炭」をイメージしてしまいます。実際、石炭はそのイメージですが、石油製品や天然ガスまで含めるというのはちょっと不自然な感じがします。英文等の翻訳であれば、あえて「低炭素社会」と直訳するのも良いでしょうが、最初から日本語で表現するのであれば、例えば、「低炭素」を「脱化石燃料」といった表現に置き換えてみるのが良いだろうと思っています。

では、みなさま、良いお年を。

吉村じゅんきち