直前の記事でもふれた雑誌『パリティ』には「ニュースダイジェスト」という欄があります。これはアメリカのPhysics Todayの記事の翻訳だそうです。対象分野は広い意味の物理科学で、地球物理を含みます。
2012年7月号31ページに「二酸化炭素と最後の氷河期の終わり」という記事があります。これは次の論文の紹介です。
わたしはまだ原論文を読んでいませんが、Skeptical Scienceというblogのdana1981さんの2012年4月10日の記事Shakun et al. Clarify the CO2-Temperature Lagと、RealClimateというblogのChris Coloseさんの2012年4月28日の記事Unlocking the secrets to ending an Ice Ageを見ました。
過去の気候の記録を見ると、寒暖と大気中二酸化炭素濃度とが関連して変動していますが、どちらが先かについてはいろいろな論争がありました。
この論文は、「最終氷期の終わり」つまり約2万年前から約1万年前にかけての時期について、南極氷床コアをはじめとする世界多地点の証拠を総合して、その順序を検討しています。結果を簡単に言うと、
の順で起こったということです (Skeptical Scienceの記事に引用されているShakunほかの図3参照)。
「パリティ」の紹介記事の中の「南極の気温のほうが先に上昇しているという誤解を招きそうな現象の原因は」という日本語表現は、誤解を招きそうです。dana1981さんの説明と照らし合わせてみると、「南極の気温のほうが先に上昇しているという現象」は(Shakunほかの解析結果に従えば)実際あるのです。どんな誤解を招きやすいと言いたかったのかはわかりませんが、たぶん、南極ではなく全球平均を想定して「気温が先で二酸化炭素があと」という解釈が誤解だと言いたかったのだと思います。 (この日本語文を「南極の気温のほうが先に上昇しているという誤解」で切るのは誤解なのですが日本語だけ読む限りではそれを判断するのはむずかしいです。)
masudako
2012年7月号31ページに「二酸化炭素と最後の氷河期の終わり」という記事があります。これは次の論文の紹介です。
- J.D. Shakun, P.U. Clark, F. He, S.A. Marcott, A.C. Mix, Z. Liu, B. Otto-Bliesner, A. Schmittner, and E. Bard, 2012: Global warming preceded by increasing carbon dioxide concentrations during the last deglaciation. Nature, 484, 49-54. [要旨と、購読者向けの本文へのリンク]
わたしはまだ原論文を読んでいませんが、Skeptical Scienceというblogのdana1981さんの2012年4月10日の記事Shakun et al. Clarify the CO2-Temperature Lagと、RealClimateというblogのChris Coloseさんの2012年4月28日の記事Unlocking the secrets to ending an Ice Ageを見ました。
過去の気候の記録を見ると、寒暖と大気中二酸化炭素濃度とが関連して変動していますが、どちらが先かについてはいろいろな論争がありました。
この論文は、「最終氷期の終わり」つまり約2万年前から約1万年前にかけての時期について、南極氷床コアをはじめとする世界多地点の証拠を総合して、その順序を検討しています。結果を簡単に言うと、
南半球の温度上昇→二酸化炭素濃度上昇→北半球の温度上昇
の順で起こったということです (Skeptical Scienceの記事に引用されているShakunほかの図3参照)。
「パリティ」の紹介記事の中の「南極の気温のほうが先に上昇しているという誤解を招きそうな現象の原因は」という日本語表現は、誤解を招きそうです。dana1981さんの説明と照らし合わせてみると、「南極の気温のほうが先に上昇しているという現象」は(Shakunほかの解析結果に従えば)実際あるのです。どんな誤解を招きやすいと言いたかったのかはわかりませんが、たぶん、南極ではなく全球平均を想定して「気温が先で二酸化炭素があと」という解釈が誤解だと言いたかったのだと思います。 (この日本語文を「南極の気温のほうが先に上昇しているという誤解」で切るのは誤解なのですが日本語だけ読む限りではそれを判断するのはむずかしいです。)
masudako