2012年05月10日

【No.3195】海から電気を作り出せ

原発事故を受けていま、「海洋発電」に注目が集まっている。波や潮流の力を利用する海洋発電は、同じ自然エネルギーである太陽光や風力よりも安定して発電できるとされている。このため欧米では数年前から実用化を目指した開発競争が始まっている。特にイギリスは数々の優遇政策をもうけ開発をリード。試験的に電力供給も始めている。EU全体では2020年までに海洋発電で原発およそ5基分の電気をまかなう計画だ。一方、日本は、まだ国の導入目標はなく、開発環境も整っていない。実用化を目指す日本企業は苦戦を強いられており、その1つ、川崎重工は、日本を離れイギリスで技術開発・実用化を進める決断をした。世界で開発が進む海洋発電の可能性と、日本での導入・実用化への課題を探る。

NHK「クローズアップ現代」番組HPから転載(↓)
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3195.html

今回の番組を見た視聴者の多くは、以下の旨お考えになったに違いありません。

「国は何をやっているんだ!
脱原発を確実にするためにも、国は喫緊に再生エネルギーの戦略を再策定し、雇用にも有効な海洋発電への投資をイギリス以上に行ない、重点推進すべきだ!」

これは、とても自然です。
なぜなら、視聴者がこの旨考えるよう、番組が構成されているからです。(笑)
私は、こうした「社会啓蒙的」ないし「世論誘導的」番組制作を必ずしも否定しませんが、今回は片手落ちに感じます。
たとえば、イギリスが海洋発電を国を挙げて推進している件ですが、本件を私たちに是認させ、国に開発を急かせたければ、少なくとも以下を明らかにすべきです。
【Q1】なぜ、イギリスは、自然エネルギーの重点投資対象に海洋発電を選択した(=自然エネルギーの重点投資対象に海洋発電以外を選択しなかった))のか?

【Q2】イギリスの海洋発電の開発の進捗は、全て計画内か(=計画外が無いか、計画外の問題を引き起こしてはいないか)?

【Q3】↑が「有り」の場合、それは何で、何が原因か?

【Q4】↑を解決する場合、イギリスは何をする必要があるか(=何を強いられ、何を失う可能性が有るか)?

【Q5】なぜ、日本は、15年前、世界的にリードしていた海洋発電の推進をやめた(=自然エネルギーの重点投資対象を太陽光発電へ転換した)のか?

【Q6】それでもなお、なぜ、日本は、今改めて海洋発電を重点推進すべきなのか(→これまでの重点投資対象の太陽光発電をいかに投資回収するのか)?


これはマスメディアに限りませんが、「今ヨソがやっていて、今の所進捗が良い(=悪くない)みたいだから、ウチもやってみるべし!」との浅薄かつ不精緻なロジックで他者、社会を啓蒙、誘導し、持続的に功を奏した試しはありません。
なぜなら、物事の成否は企画と気概で決まるからです。
浅薄かつ不精緻な企画だと、実際のやり手は袋小路に入り易く、気概も続きません。

竹中平蔵先生も仰っているように、「戦略は細部に宿る」のです。
番組制作者におかれましては、本当に「社会啓蒙的」ないし「世論誘導的」な番組を制作したくば、細部をもっと大事にしていただきたく思います。(礼)


★国谷裕子キャスターとゲストの木下健さん(東京大学生産技術研究所教授)、山崎淑行記者(科学文化部)との鼎談

【国谷さん】
日本は、かつてはリードしていたのにこれほど遅れを取ってしまったのはなぜなんですか?

【木下さん】
はい、15年前までは国のプロジェクトがあったんですけれども、それ以降、すっかり止めてしまったということで、その時からですね、日本のエネルギー政策というのが一点集中になって、原子力と、あと自然エネルギーでは太陽光ということで、風力の方も余り進まなくなってしまいまして、それが大きい。
しかし、自然エネルギーというのは、基本的に各所各所の一番適したものを優しく集めていくということですので、そこが非常に大きな失敗点だったと思います。

【国谷さん】
一極集中し過ぎてしまった。

【木下さん】
はい。

【国谷さん】
で、今、具体的にリポートの中では、実験場の確保が難しい、そして、資金も集まらない。
どういう難しさが有るんですか?

【木下さん】
はい。
そうですね。
先ず、場所を見つけるのがとても難しいんですね。
というのは、漁協の方が一人でも反対するとですね、組合長は首を縦に振れないと、そういうことがあります。
そうすると、次の漁協に当たってみる、或いは、どうのこうので2年、3年はあっという間に経ってしまうんですね。

【国谷さん】
合意形成が難しいんですね。

【木下さん】
はい。
もう一つはですね、そこでやったとしても、「2年間、いいですよ」って言われて、2年後に、大枚かけて作った海底電線、電力、送電線ですね、それまた撤去しなきゃいけないということで、効率がとっても悪いわけです。

【国谷さん】
国からの支援はありますか?

【木下さん】
えーと、やっとですね、ぼちぼち始まったという所でして、まだまだ欧米の各国に比べると断然小さいですし、中国や韓国に比べても見劣りするものです。

【国谷さん】
相当見劣りをする・・・

【木下さん】
特にですね、諸外国は、数年先まで中期的な見通しをですね、国として出すと、そういう所が日本には無いものですから、難しいと思います。

【国谷さん】
いつまで資金が出るのかわからない、ということですね。

【木下さん】
そうですね。

【国谷さん】
イギリスは国家戦略として位置づけてやっていることがクッキリと出てましたけれど、しかし、同じような難しい問題、実験場の確保など有ったかと思うんですけども、どうやって乗り越えたんですか?

【山崎さん】
仰る通りです。
イギリスは海洋発電をやると決めた時には、勿論漁業権の問題も日本と同じようにあったんですね。
だからこそ、個人や企業がやるのではなくて、国が「もうこのエリアを使ってください!」ということで権利関係全部処理して作ったのが、あの海洋センター。
だから、どんどん開発が自由にできる、ということなんですね。
あと、資金についてもですね、例えば海洋発電の電気を使うと、電力会社の優遇策があるんですね。
そういう支援策がある。
だからこそ、そこにお金が集まる。
大体官民合わせて500億円以上のお金が集まっている、という風に言われてますね。

(中略)

【国谷さん】
今、原発が止まっている中で、次のエネルギー戦略に作成が正に議論されているわけですけども、自然エネルギー、海洋発電というのは、どう位置づけられていますか?

【山崎さん】
そうですね。
去年の福島の原発事故以降、今の政府は、「脱原発、原発を減らしていく」という風に政策を見直すと言っておるわけですね。
で、今年の夏に向けて抜本的にエネルギー政策を今議論しているんですが、今年のこの12月ですね、予算では原発関連の予算が4000億円、自然エネルギー関連はその半分2000億円なんですね。
政府の方針とその政策の金額とはまだ合っていない。
そして、今の夏に向けた議論もですね、まだ自然エネルギーの、具体的にどれをどういう風に導入するかっていうのが、まだ議論がされていない。
で、海洋発電というのは、そこの中の議論にもまだ挙がっていないという状況なんですね。

【国谷さん】
まだ議論にもあがっていない状況で、国に何を要望されますか?

【木下さん】
そうですね。
再生エネルギー全体のですね国としてのヘッドクオーターを持ってですね、ロードマップを作ってですね、中間的なマーケットが、「この年代にはこの位のマーケットがあるぞ!」ってことで、事業者なり、研究者が進んでいくと思います。

【国谷さん】
「ヘッドクオーター」というのは、大きな戦略本部という所ですか?

【木下さん】
そうですね。

【国谷さん】
そして、具体的な、風力や、太陽光、海洋発電、どういう位置づけにしていくかっていう数値を見せて欲しい・・・

【木下さん】
はい。
「何年までにいくら」、「何と何にいくら」、そういう感じですね。



▼その他の雑感▼
カスタム検索

トップページ2012年5月雑感筆者と会社

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/closeupgendai/4208408
この記事へのトラックバック
1月30日火曜日、某大手生保が主催する企業セミナー竹中平蔵講演会に行ってきた。
【竹中平蔵講演会】戦略は細部に宿る【pinkopaque/weblog】at 2013年07月30日 13:52