※映画の予告編が見つけられなかったので冒頭一分の動画をどうぞ。(まだ鶴田浩二でてこないけど)



評価:★★★☆☆ 静と動!


70年代東映が好きな人には酷な知らせが続いている。


今年に入ってから松方弘樹、渡瀬恒彦というスターの相次いだ逝去だ。


当然、各名画座では追悼企画が行われており、お馴染みシネマヴェーラ渋谷では今月から 『 抗争と流血 -東映実録路線の時代- 』 と銘打って、実際に起きた事件や抗争に題材を取ったヤクザ映画を上映している。


東映実録路線は、主に73年の『 仁義なき戦い 』を皮切りに77年の『 北陸代理戦争 』までの5年間で作られており、今回観てきた『 日本暴力団 組長 』は、69年公開ということと、監督が『 仁義~ 』の深作欣二であること、山口組の関東進出を下敷きにしていることなどから、実録路線の先駆けともいえる作品だ。
物語は鶴田浩二が刑期を終えて出所、横浜に帰ってくるところから始まる。

関西最大の暴力団である淡野組の関東進出に対抗し、横浜の暴力団は大同団結して関東連合を結成。

淡野組は地元ヤクザを抱き込んで関東連合に代理戦争を仕掛けており、鶴田浩二は出所早々その渦に巻き込まれてしまう……。



淡野組とも関東連合とも組まない弱小組を率いることになった鶴田浩二。


基本的に鶴田浩二は好戦的なことはせず大人しくしているのだが、ヤクザをやらせておくには情に厚すぎるので、仁義を通そうとしたり、組織を追われたはぐれ者を匿ったりして結局は火の粉をかぶってしまう。


本作では、そこで生まれる3者との関係が美しい。



まずは弟分である菅原文太との関係。


子分たちに内緒で単独で仇の親分の首を獲りに行こうとする鶴田浩二の気持ちを察し、先回りして命を落としてしまう。


映画が始まってわりとすぐ菅原文太が死ぬのでここで結構びっくりする。



2人目は、淡野組組長を狙うも失敗し、味方だった関東連合から見捨てられた安藤昇。


安藤昇は、以前に淡野組との抗争で片腕を切られた片腕の殺し屋。


安藤昇が片腕の殺し屋なんてそれだけで一本作れそうな魅力的なネタだが、登場時間は結構短い。



3人目は若山富三郎。


淡野組に鉄砲玉として使われる暴れん坊の地元暴力団組長を演じていて、はっきりいって鶴田浩二との関係では若山富三郎が一番相性がいい。


鶴田浩二はその風貌も含めてどうしても受け身になることが多いので、物語が動きにくい。


その点、若山富三郎演じる地元暴力団組長は、ヤクやりまくりの、銃撃ちまくりで暴れまくり。


その暴れん坊が鶴田浩二との初対面でいきなり顔を斬りつける。


面白いことに、そこでの堂々たる態度に気圧されたのをきっかけとして若山富三郎が鶴田浩二に惚れ込んでしまうのだ。


もちろん表立って好き好きとは言えないのだが、(暴れん坊の常として最終的に孤立無援になり)もう死ぬしかないと覚悟を決めたときに最後に電話で話すのが鶴田浩二で、それはもう愛の告白以外のなにものでもない。


また静の鶴田浩二と動の若山富三郎という個性の違いがありながら、互いにどこかしら通じ合う美学を持っているというあたり感じ取れるので、惹かれ合うのにも説得力がある。



鶴田浩二との関係性という意味では、3人の中で若山富三郎との関係が一番面白い。


傑作任侠映画『 博打打ち 総長賭博 』でもこの2人の関係で話が進んでいくが、結局相性がいいのだろう。


個人的には、若山富三郎との関係性を主軸にして、そこに菅原文太や安藤昇が枝として関わるような構造にした方が、焦点がはっきりしたように思う。


焦点が絞りきれていないという意味では、前に感想を書いた韓国ノワールの『 アシュラ 』とも共通しているといえる。


最後に若山富三郎をよく知らない人もいると思い、念のために参考動画を貼っておくので興味のある方はどうぞ。



2017年04月16日
P・カチハヤ・理想さんの日記