■ sunny days

2017年06月24日

必殺めろめろぱ~んち、オスカー様!

#33 sunny days


おはようございます!水城です。


なんだか今年はカラ梅雨のようです。
全然って言っていいほど降ってないです。
そんで陽が落ちると肌寒くて まだファンヒーターが頑張ってます。
だから風邪っぽくなってヤになりますよ。

Makizzo様!いつもコメントありがとうございますo(^-^)o

今度はそこまでお待たせしてないかな、と。
頑張って書いて行きますので今度ともヨロシクお願いします~う
ところで、本編では特に無かったと思うんですが、聖地の皆さんって病気知らず
なんですかね。
女王の おわす聖地なんだから無菌状態はアリかもですが、ストレスとか食生活とか
生活習慣病にはなるんじゃないかなあと。

なので、こんなことを妄想したりして。
と、書いてたら1本のお話になっちゃったです。

よろしかったら、sunny days をどうぞです。

ちなみに今日は京都にお出かけしていて、サンダーバードの中で仕上げてます。
お天気もつかな。行って来ま~す



□ sunny days □


「うお、なんだ?」


神鳥の宇宙に現れたアリオスは常にない聖地の様子に思わず声が出てしまった。

オスカーの私邸に行く前にレイチェルからの頼まれ事を片付けに王立研究に向かった
アリオスは、いつもは静かな院内が人で溢れ返っているのを見て驚いたのだ。
土の曜日だと云うのに制服を着ている者から私服の者まで。
しかも よく見ると…

「………あいつ、何してやがるんだ?」
人混みから頭ひとつ飛び出している男は見間違えようもない自分の恋人だ。
見ればラフな服装で相変わらず女達に囲まれ、手に持った紙を見ながら何やら
話しているようだ。

「………」
正直、オスカーと知り合い 身体を重ねる関係になってからの自分は どうにも
冷静になれない。
オスカーのことに いちいち反応してしまう。
それは主に苛立ちやハラがたつとか かなりマイナスの感情だ。
普通なら そんな感情を自分に抱かせる相手とは疲れて、傍にいるなど御免被りたい
ところだ。

「……あいつは、相変わらず……マジで病気だぜ。いっそ尊敬するわ」
ぶつぶつと文句を言いながら近づいていくと向こうがアリオスに気づいて顔を上げた。
「……アリオス。どうした、何か用事だったのか?」
「…………レイチェルの頼まれ事だ。…何の騒ぎだ?」

自分を見た瞬間のオスカーの表情は、何の後ろめたさも無く柔らかく笑っていた。
人間、咄嗟の瞬間は素の感情が顔に出るモノだろう。
なら、オスカーは自分に対して後ろ暗いことは何もない、と云うことだ。
だが そこが厄介でもあるのだが。

「言ってなかったか?健康診断の日だ」
「………ああ、何か言ってたな」
一年に一度、聖地で働く者達の為に健康診断が行われる。
人数が人数なので日を分けて行われるが、どうやら今日がオスカー達の番だったらしい。
研究院の職員やら聖地内の職員、看護婦、と有象無象がわらわらといて それだけでも
鬱陶しいのにオスカーのまわりを女達が当然のように取り囲んでいた。
不機嫌にもなろうというものだ。

「………お前、まだ終わってないのか?」
砂糖に群がる蟻だな、と女達が聞いたら反論間違い無しなことを思いながらじろりと
見下ろす。
その冷たい眼差しに、オスカーのまわりにいた女達は皆一斉に怯えたように
オスカーにすりよるから、アリオスの眼差しはますます険しくなるばかりだ。

「そうだな。あと半分だ。お前のところは終わったのか」
「あ?めんどくせえ。やらねえよ」
「何?………アリオス」
「…………」

心底 面倒くさそうに吐き捨てた後、しまったと思ったがもう遅い。
明らかに驚いた声の後に呆れたような声が続き、アリオスは内心 ため息をつく。
案の定、オスカーは こんこんと説教を始めた。

「お前、日頃から忙しくしてるんだから ちゃんと診て貰え。自分の身体でも案外
わからないものなんだぞ。大丈夫だからと タカをくくって大病になった人間は
山ほどいるんだ。病気になってからじゃ遅いんだぞ」
「……別に、どこも何とも…」
「アリオス。お前に何かあったらどうするんだ。面倒くさいじゃすまないんだぞ」
「……………」
「………まあ、オスカー様がこんな…こんなオスカー様 初めて…」
「いつもは お優しいのに…」
「……でも やっぱり お優しいわ。お友達を心配なすって…」

常にないオスカーの剣幕に 皆 一様に驚きに目を見開く。
アリオスは オスカーが暗に自分を心配してくれているのがわかって正直、満更でも
ないのだが如何せん、女達に囲まれた状態で言われても、と小さく舌打ちする。

それをどう思ったか、オスカーにまた強く名を呼ばれてアリオスは腹をくくる。
「アリオス」
「…わかったよ。受けりゃいいんだろ。帰ったらレイチェルに…」
「ここで受けていけ」
「はあ?」
「いいから来い。…失礼するぜ、お嬢ちゃん達。行くぞ アリオス」

ええ~ッと驚き、引き留める娘達をいなして オスカーは研究院の中へと歩いていく。
正直 めんどくせえ、と思わないでもなかったが敢えて強く反発する気にもなれず
黙って付いていく。
「お前、このあと何か予定が入ってるのか?」
「いや、別に。お前がいるなら飲んでくか、くらいだな」

歩く先々ですれ違う者達が微笑みながら挨拶をしていく。
優しげな視線の先には炎の守護聖がいる。

軍人として鍛えられた身体は均整が取れ、ただ普通に歩いているだけなのに、
しなやかな獣のようだ。
その彫刻のように整った顔も燃えるような赤い髪も。
凍りつくようで熱く力強い輝きを秘めた眼差しも誰よりも魅力的だ。
守護聖と云うある意味 特殊な立場にいる筈なのに、遠巻きにされるどころか
姿や声が聞こえただけで走ってくる者までいる始末だ。

あの旅の間は そんなオスカーが嫌いだった。
真っ直ぐに前を向き、後ろ暗いことも人を妬むことも無いとばかりにふんぞり返って
いるヤツだと思っていた。
光に包まれている自分の人生を疑いもせず、後悔など鼻で笑い飛ばすオスカーを
傲慢だとすら思っていた。


「オスカー様、もう終わったんですか?」
「いや、まだだ」
「綺麗どころに囲まれてちゃ大して進まんでしょうなあ」
オスカーの姿を見つけたメディカルセンターの職員がにこやかに問いかける。
「ジャン。ちょっと段取りが悪いぞ。受診者のバランスを見て空いてる所へ誘導しろ。
待ち疲れてしまうし、時間の効率も悪い」
「え?ホントすか?それはマイリーのヤツが指示してた筈なのに……申し訳ない、
すぐ見てきます」
オスカーに頼む、と言われて職員は大きく頷くと検診フロアへ足早に向かって行った。

「教えて頂いてありがとうございます、オスカー様。ちゃんと出来ていなくて
恥ずかしいです」
「今日は一番人数が多いそうじゃないか。完全に把握しきれるものじゃないだろう。
皆でフォローしあわないとな」
「そう言って頂けると助かります。女性陣から文句が出てました?」
「いや、大丈夫だ」
「…………」
端から見ていればとても守護聖に対する態度には見えず、砕けた雰囲気で話している。

恋人ではあるが、オスカーは時に自分を堪らなくさせる。
炎に人が集まるように彼は人を惹き付ける。
そしてその熱で人々を暖め、笑顔にする。

自分には出来ないことだ、と苦く笑いながら二人を見ていたら いきなりオスカーが
アリオスの方を向いた。
「サイラス、悪いが一人 追加して欲しいんだ」
「え、……あ、この方を、ですか?」

神鳥の宇宙の者達はアリオスを聖獣の魔天使と知っているが、守護聖達とは違い
職員達とはそこまで親密ではない。
明らかに剣呑なオーラを放つアリオスを、サイラスは戸惑いながら見つめる。
そんな目線には今さらなアリオスをオスカーは親指を立てて指差した。

「普段 健康のけの字も気にしないヤツだからな。徹底的に調べてやってくれ」
「…おい」
「はあ、徹底的って…MRiから、その…直腸検査までのフルコース、ですか?」
「ああ、頼む」
「ちょっと待て、こら!」

不安げに問うサイラスに あっさり頷くオスカーを、アリオスは思わず蹴りつける。
「痛いだろ、アリオス」
「何が痛いだ!てめえ、人の身体だと思いやがってふざけんな!なんでケツの穴まで
見せなきゃなんねえんだよ!」
「検査だろう。心配するな。検査医師はベテランの…」
「ベテランだろうが何だろうが やらねえって言ってんだろうが!アホか」
「だから、何かあってからじゃ遅いんだぞ?素直に…」
「てめえ、俺で遊ぶな!顔が笑ってんだよ!ぜってえやらねえからな!」
「……………ぷ、…」

目の前で守護聖と魔天使が子供のように言い争う姿に、サイラスは思わず吹き出して
しまい、じろりとアリオスに睨まれ首をすくめた。
「てめえ、フルコースなんぞ手配すんなよ。適当でいいんだからよ」
「は、はあ…」
「だから、いい機会だから診てもらえ。サイラス、入れていいぞ」
「は、はい…」
「てめ、オスカー!遊ぶなっつってるだろうが!」
「……ッ、く…ぷふッ、あはははは!」

今や完全に笑っているオスカーに、サイラスも堪えきれずに笑い出してしまった。
今までアリオスのことを知ってはいたが、纏う雰囲気のせいで遠巻きに見ていた
くらいで、ろくに声を聞いたことも無い。
こんな風に感情を出しているアリオスは初めて見たのだ。

「……アリオス様、実は私も検査を受けたんですが上手でしたよ?リラックスさえ
してれば」
「ほら、サイラスもこう言ってるんだし。安心じゃないか。受けろって」
「だから遊ぶな!てめえも調子に乗るな!何がリラックスだ!」

地団駄を踏む勢いのアリオスに、オスカーとサイラスは顔を見合わせ吹き出して
笑い合う。
「じゃあ、スタンダードコースで」
「そうだな、仕方ない。また次の機会だな」
「次なんてあるか!」
「あはは、了解しました」
笑いながらパソコンに向かうサイラスを見て、アリオスはようやく肩の力を抜くが
オスカーの言葉にまた目を吊り上げる。

「しょうがない。なら今夜 奢れよ?サイラス、お前も行くか?」
「ええ?」
「……な、ん、で、俺が奢らなきゃなんねえんだよ」
「検査費用は聖地もちだぞ?サイラスも今日 頑張ってるわけだし。ジャンも呼ぶか」
「…………好きにしろ」
観念したように ぶすくれるアリオスに、サイラスは苦笑いしながらホントに
いいんですか?と問いかける。
「ああ。ただし、検査結果次第だがな」
「あはは、ホントですね。じゃあ少々お待ち下さい。書類を出して来ます」

身軽く走り出すサイラスの後ろ姿に、アリオスは鼻息を吹く。
「てめえ、遊ぶな。調子に乗りやがって」
「…久しぶりだな、アリオス。元気だったか?ケガとかしてないだろうな」
「……してねえよ。久しぶりだな、オスカー。お前こそ、変わったことはねえのかよ?」

「特には無いが、まあ、酒のツマミになる話ならあるぞ」
「……明日は休みだろ。……泊まってくぜ」
「好きにしろ。先に言っておくが、サイラスは泣き上戸だからな」
「なんだそりゃ。………やれやれ。お前も物好きだよな」
「楽しいだろ?大勢の方が」
「……お前と二人の方がいい」

オスカーのもとに来ると誰かと飲むことが多い。
この お人好しはしょっちゅう余計な気をまわす。
おかげで少しずつ知り合いが増えた。
そのことがイヤなわけではないが、二人でいる方がいいのは本音だ。

「…夜は一緒だろ。付き合え」
光の中にいる恋人は お前も来いと無理矢理 自分の手を引っ張ってくる。
正直 戸惑うが、オスカーと一緒なら結局は行って良かったと思うのだ。

「…しょうがねえなあ。付き合ってやるか」
「さて。お前の奢りなら高い酒を飲むかな」
「てめ、ちったあ遠慮しやがれ!」

また、その長い足を振りまわしてくる恋人に、オスカーは楽しそうに笑う。

「お、泣き上戸が戻って来た」
「……そんなにひでえのか?」
「ま、見てのお楽しみだ」
「…楽しめるのかねえ…」


向こうから駆けてくるサイラスの笑顔に、二人は顔を見合わせると小さく笑い合った。








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