2008年11月30日
週間ノベログ 三個目
僕には恐ろしい幼馴染の女の子がいるんだ。
この話を聞き終わる頃にはその恐ろしさが理解できると思うから聞いてくれ。
もうどうにかなりそうなんだ。
お、そうか! 聞いてくれるか! ありがとう!
幼馴染は黄泉(ヨミ)というのだが、まず名前からして怖い。
考えただけでも……え? 手短に話せと? わかった。
では、もっと具体的に僕の恐れた三大エピソードを話すとしよう。
まずは、朝、必ず起こしてくれるということから。
低血圧な僕としては毎朝遅刻しないように起こしてくれるのは、むしろありがたいことなのはわかっている。
わかっているのだが、僕は寝起きが最悪なのだ。起きてすぐの記憶がないんだよ。
だから、僕が覚醒するまでの間にあの恐ろしい黄泉のことだ。
恥ずかしい写真でも撮って
「これをばら撒かれたくなかったらあたしの言うことを聞きな!」
って脅迫してくるに違いないんだ!
いや、もしかすると、寝ぼけている隙に怪しげな契約を結んで僕に莫大な借金をさせようと暗躍しているのかもしれない。
あぁ、恐ろしい!
……すまない。思い出したら頭がクラクラしてきたよ。続きを早く話してしまおう。
次は、昼のお弁当だ。
そう。確かに昼にお弁当を作ってもらうのは昼飯代が浮くからいいかもしれない。
でも、タダより高いものなんてないんだよ!
だって、このお弁当が全て手作りだとは限らないからさ。
もしかすると、弁当全てが冷凍食品だってありえる。
そうだとすると、黄泉は恐ろしいことをしていることになる。
販売前の冷凍食品の試食のアルバイトを
僕が騙されて食べることによって消化し、黄泉の懐にがっぽり現金が入るって寸法さ!
え? そんなわけないだろって? その考えも一理あったさ。
ある日、黄泉が「自信作なんだぁ」と言って、ハンバーグを弁当に詰めてきたことがあったんだ。
手は絆創膏で切り傷を隠していて、これは手作りだろうと思った。
んで。そのハンバーグを口にした。その時、恐ろしいことに気づいたんだ!
ハンバーグの底が黒く焦げていた。コゲっていうのはガンの温床になるんだ!
黄泉は僕の保険金まで騙し取るつもりか!
さらに、中身は生焼けだった。
食中毒で僕をどうしようって言うんだ!
た、たぶん、絆創膏の下に傷なんかなくて実は芝居で、
「まずかったらまずいって言っていいよ?」なんて言ってそんな良心に訴えるやり方で僕を陥れるんだ!
うぅぅ……恐ろしい。
なに? 考えすぎだっていうのか!
そんなことはないよ。最後に話すことを聞いたら180度変わるはずさ。
最後は、市立図書館での勉強さ。
まず、あの市立図書館というところでもうすでに恐ろしい。
もしかすると、黄泉のテリトリーかもしれなかったのに僕は迂闊だった。
黄泉の父親が市長であることをちゃんと覚えておくべきだったんだ!
そして、向かった読書室にあるテーブルが一つしか空いてなかったのも黄泉の策略のはずだ。
円卓に座っているおじさんに対して、見たこともないほどの行儀良さそうな笑顔を振りまいたのが証拠だ!
「あのおじさん、国会議員だから仲良くしておきなさいってパパが言ってた」っていうのも真っ赤な嘘だ!
はぁはぁ……すまない、水を一杯くれないか。――ありがとう。
さて、どこまで。あぁそうかテーブルに着いたところか。
またそのテーブルは二人で充分に縮こまれば使える大きさなのに。
黄泉は、僕に体を寄せてくるんだ! 「狭いけどちょうどいいね」って狭くない!
どうせ、そうやって体を寄せることで女性の必殺技「セクハラ」という一言で慰謝料を請求するつもりなんだ!
まだこれだけじゃない。目的を忘れてはいないさ。勉強さ。期末試験が近かったからね。
黄泉の方が頭が良かったから教えてもらうのはとても感謝している。
だけど、やけに丁寧に教えてくれるのはおかしい。こんなの恐ろしい黄泉じゃない。
ふと、黄泉がトイレに席を立ったとき、それは見えたんだ。
駅前にできたストーンアイス屋のチラシが! 見返りはこれか!
優しく教えて従順になったところをこのチラシを見せて、催眠商法の要領でおごらせるつもりなんだ!
なんてことだ! ぼ、僕は黄泉の手の平で弄ばれていたんだ!
そう気づいた時にはもう遅かった。
かなりのところまで教えてもらっていたから自分から誘うことで、
わずかでも黄泉の思惑を崩したかったんだ!
ど、どうだい。恐ろしいだろ? ん? なに? 後ろで「深ちゃん!」と女の子が呼んでるって?
あぁ、黄泉だ。早くしろって急かしているんだ。
急がないと命があぶないな。
えっと、とりあえず注文はここから選べばいいのかな?
黄泉は確かストロベリーが好きだから……これとこれで。
ふぅ、なぁ、君は優しい彼女が欲しいと思わないかい?
《タイトル》 深ちゃんです! 黄泉です! 二人合わせて 深読みです!
この話を聞き終わる頃にはその恐ろしさが理解できると思うから聞いてくれ。
もうどうにかなりそうなんだ。
お、そうか! 聞いてくれるか! ありがとう!
幼馴染は黄泉(ヨミ)というのだが、まず名前からして怖い。
考えただけでも……え? 手短に話せと? わかった。
では、もっと具体的に僕の恐れた三大エピソードを話すとしよう。
まずは、朝、必ず起こしてくれるということから。
低血圧な僕としては毎朝遅刻しないように起こしてくれるのは、むしろありがたいことなのはわかっている。
わかっているのだが、僕は寝起きが最悪なのだ。起きてすぐの記憶がないんだよ。
だから、僕が覚醒するまでの間にあの恐ろしい黄泉のことだ。
恥ずかしい写真でも撮って
「これをばら撒かれたくなかったらあたしの言うことを聞きな!」
って脅迫してくるに違いないんだ!
いや、もしかすると、寝ぼけている隙に怪しげな契約を結んで僕に莫大な借金をさせようと暗躍しているのかもしれない。
あぁ、恐ろしい!
……すまない。思い出したら頭がクラクラしてきたよ。続きを早く話してしまおう。
次は、昼のお弁当だ。
そう。確かに昼にお弁当を作ってもらうのは昼飯代が浮くからいいかもしれない。
でも、タダより高いものなんてないんだよ!
だって、このお弁当が全て手作りだとは限らないからさ。
もしかすると、弁当全てが冷凍食品だってありえる。
そうだとすると、黄泉は恐ろしいことをしていることになる。
販売前の冷凍食品の試食のアルバイトを
僕が騙されて食べることによって消化し、黄泉の懐にがっぽり現金が入るって寸法さ!
え? そんなわけないだろって? その考えも一理あったさ。
ある日、黄泉が「自信作なんだぁ」と言って、ハンバーグを弁当に詰めてきたことがあったんだ。
手は絆創膏で切り傷を隠していて、これは手作りだろうと思った。
んで。そのハンバーグを口にした。その時、恐ろしいことに気づいたんだ!
ハンバーグの底が黒く焦げていた。コゲっていうのはガンの温床になるんだ!
黄泉は僕の保険金まで騙し取るつもりか!
さらに、中身は生焼けだった。
食中毒で僕をどうしようって言うんだ!
た、たぶん、絆創膏の下に傷なんかなくて実は芝居で、
「まずかったらまずいって言っていいよ?」なんて言ってそんな良心に訴えるやり方で僕を陥れるんだ!
うぅぅ……恐ろしい。
なに? 考えすぎだっていうのか!
そんなことはないよ。最後に話すことを聞いたら180度変わるはずさ。
最後は、市立図書館での勉強さ。
まず、あの市立図書館というところでもうすでに恐ろしい。
もしかすると、黄泉のテリトリーかもしれなかったのに僕は迂闊だった。
黄泉の父親が市長であることをちゃんと覚えておくべきだったんだ!
そして、向かった読書室にあるテーブルが一つしか空いてなかったのも黄泉の策略のはずだ。
円卓に座っているおじさんに対して、見たこともないほどの行儀良さそうな笑顔を振りまいたのが証拠だ!
「あのおじさん、国会議員だから仲良くしておきなさいってパパが言ってた」っていうのも真っ赤な嘘だ!
はぁはぁ……すまない、水を一杯くれないか。――ありがとう。
さて、どこまで。あぁそうかテーブルに着いたところか。
またそのテーブルは二人で充分に縮こまれば使える大きさなのに。
黄泉は、僕に体を寄せてくるんだ! 「狭いけどちょうどいいね」って狭くない!
どうせ、そうやって体を寄せることで女性の必殺技「セクハラ」という一言で慰謝料を請求するつもりなんだ!
まだこれだけじゃない。目的を忘れてはいないさ。勉強さ。期末試験が近かったからね。
黄泉の方が頭が良かったから教えてもらうのはとても感謝している。
だけど、やけに丁寧に教えてくれるのはおかしい。こんなの恐ろしい黄泉じゃない。
ふと、黄泉がトイレに席を立ったとき、それは見えたんだ。
駅前にできたストーンアイス屋のチラシが! 見返りはこれか!
優しく教えて従順になったところをこのチラシを見せて、催眠商法の要領でおごらせるつもりなんだ!
なんてことだ! ぼ、僕は黄泉の手の平で弄ばれていたんだ!
そう気づいた時にはもう遅かった。
かなりのところまで教えてもらっていたから自分から誘うことで、
わずかでも黄泉の思惑を崩したかったんだ!
ど、どうだい。恐ろしいだろ? ん? なに? 後ろで「深ちゃん!」と女の子が呼んでるって?
あぁ、黄泉だ。早くしろって急かしているんだ。
急がないと命があぶないな。
えっと、とりあえず注文はここから選べばいいのかな?
黄泉は確かストロベリーが好きだから……これとこれで。
ふぅ、なぁ、君は優しい彼女が欲しいと思わないかい?
《タイトル》 深ちゃんです! 黄泉です! 二人合わせて 深読みです!