カテゴリ: 隧道/トンネル

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前回アップした梅ヶ瀬渓谷の後、保台古道へ行くには時間が遅すぎたので、七里川温泉から清澄養老ライン(R81)を南下して、四方木不動滝と甚平穴(白岩橋の近くの“穴の口”ではありません)へ向かいました。

不動滝や甚平穴へのアクセスはなかなかの狭路。
離合不可能な箇所もあるので、四方木(よもぎ)ふれあい館の駐車場から徒歩で向かうのが無難です。

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このトンネルの先を左折すると四方木ふれあい館(小さな案内板有り)。

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駐車場から不動滝入口までは約1km、甚平穴までは500mほどです。

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まずは不動滝へ。


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入口にはお不動様を奉るお社とハンドメイドのゲート。


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“よもぎ不動滝自然観察園”
ゲートをくぐって沢まで一気に降ります。

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紅葉がキレイでした。

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滝音が全然聞こえないなぁと思ったら…、

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この日、小櫃(おびつ)川上流の水量は雀の涙でした。
全国的に少雨による渇水傾向が続いています。
房総の滝は天候によって水量の変動が大きく、水がほとんど流れていない時もあります。

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残念でしたが、青光りしている岩壁と滝を包み込む周囲の景観は思っていた以上に素晴らしく、澄んだ水が印象に残りました。
滝前が広々として開放的なのも良いですね。

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沢幅の狭い下流側の雰囲気も良かったです…水量が多い時に再訪してみようと思います。

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駐車場に戻り、今回のメインである川廻しの甚平穴へ。
甚平穴は橋のような尾根道?の真下に掘られています。

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有志によって作られた枕木の急階段を降ると、

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岩壁が巨大なので画像では伝わりにくいのですが、なかなか大きな川廻しです。

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上部にガードレールが見えていますね。

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ここは不動滝の少し下流…水量が少なくてもキレイに澄んでいます。

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洞内はモルタルを吹き付けたように白くつるんとしており、あまり素掘り感がありません。
毎度思いますが、こんな巨大な穴を掘るなんて並々ならぬ執念ですね。

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下流側…右手前の大きな岩がとても違和感…あきらかに岩質が異なります。
どこから飛んできた?流れてきた?崩れ落ちた?のか。

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暖かくなるとヤマビルやマダニが多そうですが、不動滝と同じくここも開放感があって雰囲気が良かったです。

千葉県内だけを流れる川としては最長の小櫃川。
君津・木更津・富津・袖ケ浦、そして市原・千葉市の一部で生活する人々の水道水を賄っているそうです。
その源流域の一つが鴨川市の四方木地区。
そして河口には2022年5月にアップした、東京湾のオアシス“盤洲干潟”があります。
この日のようなせせらぎ程度の流れも、貴重な命の水だと思うと感慨深いものがあります。

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房総には道だけでなく“川”にも素掘りのトンネルがたくさん残っています…川廻しと呼ばれる工法でできた水を通すためのトンネルです。

特に上総地方…養老川・小櫃川・小糸川の中上流域やその支流の蛇行ポイントには、びっくりするほど“穴”が掘られており、そのほとんどが人目に触れず今もひっそりと口を開けています。

国土地理院の地図を見て、川の一部が破線になっている(川なのにトンネル標示になっている)箇所のほとんどが川廻しです。
問題は、その数の多さと現地へのアクセス方法。
どの川廻しへ行けばいいのか?どうやって沢へ降りるのか?。道なき道を行き、川沿いの崖を下る…そもそも沢歩きは素人同然なので、場所によっては大冒険になってしまうのです。

過去にアップした川廻しというと、
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観光スポットとなった“亀岩の洞窟”

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“会所の森 親水広場”

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“開墾場の滝”

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“浦白川のドンドン”など。

他にも印象に残った川廻しがいくつかありますので、今回まとめてアップしてみます。

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養老渓谷観光センターの駐車場奥にある、戸出川の川廻しトンネルでは房総らしい地層を観察できます。
トンネル内に崩落箇所が見つかり、現在はくぐり抜けることはできないみたいですが、亀岩の洞窟のように“近づける川廻し”として整備されたようです。

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訪れた当時、“やまびこの滝”と呼ばれていたと記憶してますが、この小さな段差のことをいうのか

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下流側の大きな流れのことなのか…いまだに不明です。
観光地化されてからは、遠見の滝と名付けられているそうです。

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トンネルを抜けて右手が戸出川の本流。

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正面の小さな沢はヌメヌメぬるぬる…長靴でも滑りまくりでした。左手奥の水路隧道を覗きたかったのですが断念しました。

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“源氏ぼたるの里”で知られる、いすみ市山田五区の川廻しは、大小二つのアーチがフォトジェニックな巨大トンネルです(左手に二五穴も見えています)。

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画像ではスケール感が伝わりにくいのですが、左の穴の高さは8m〜10m近くあります…何故こんな大きな穴を二つも掘ったのだろう。

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高宕山自然動物園の近く、湊川の川廻し。
オーソドックスな穴かと思いきや、

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見上げると、とんでもないことになっています…。

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反対側から…ここの河床ですっ転んだ苦い思い出があります。

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そして平蔵川の川廻しトンネル。
地域のイベント時にしか近づけないのが残念です。

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長い年月をかけて浸食された、ツルんと丸みを帯びた川沿いの岩肌がとても印象的です。
二五穴もありますね。

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ぽっかり開いた穴は一直線で長さは60m以上、坑口の高さは4m近くありそうです。

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煉瓦やコンクリートではなく、岩肌剥き出しのトンネル内に響き渡る水音は何ものにも例えようがなく新鮮で、吹き抜ける風も妙に心地よかった記憶があります。

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闇の中でもはっきりとわかる、人と水がつくりだした造形美。


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坑口から入った光が水面に反射してトンネル内を照らします。


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見事な職人技…手掘りとは思えないほど緻密で丁寧な仕事っぷりです。


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上流側の坑口。
やはり大きい…軽トラなら楽に通れそうです。

いずれも場所さえわかれば誰でも行ける川廻しです。
人が掘り水が削り続ける川廻しのトンネル…時を経て年々姿を変えていきます。
養老渓谷の弘文洞のように、いつ崩壊してもおかしくないような川廻しのトンネルもあるので注意が必要です。

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房総で見慣れた素掘りの隧道とは明らかに異なるゴツゴツした岩肌…秩父地方特有の石灰岩をくり抜いた手掘りの隧道です。
長さ約40m×高さ約5m…1921年(大正10)に国道(現在のR140)ができるまでは三峯神社への参詣道として重要な役割を果たしました。
秩父のジオサイトにもなっている、秩父往還の貴重な遺構の一つです。

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大達原(おおだはら)バス停前にあるWC…三峯参拝渋滞の救済として設置された休憩場所で、駐車スペースは6台程あります。
ここから山側へ入り、大達原の集落へ向かいます。
隧道までは車両で行けないので、稲荷神社の駐車場を利用します。

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集落に残る大達原高札場…甲州街道と中山道を結ぶ秩父往還の史跡です。
高札場(こうさつば)は今日でいう“官報掲示板”で、幕府や藩が庶民に対し、禁制や法度等(法令)を示したものです。お上のご威光そのままに、人々を見おろすように高札が掲げられています。
多くの人々の目に触れるように、村の中心や宿場など、人の往来が盛んな場所に設置されました。

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参考までに、秩父往還の史跡というと栃本関所が有名です。


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関所前から雁坂峠方面…荒川上流の深く削られたV字の谷…秘境感のある美しい山岳集落です。

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八坂神社の横の舗装路を進み、最初の二股を右側の林道へ(舗装路をそのまま進むと民家です)。
石垣沿いに数十m進むと、道は再び二股となります。

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ここを右側…強石(こわいし)方面へ。

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この付近の秩父往還を簡単に表すとこんな感じです。
三峰口駅の対岸にある贄川(にえかわ)宿は、秩父往還の宿場町…秩父ジオグラビティパークの近くと言った方がわかりやすいかもしれません。
強石〜落合間は2つのルートが有り、杉ノ峠越えの距離は短いけど急峻な道と、荒川沿いに三峰道も兼ねている大達原経由の道があります。

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ひっそりとした三峰道…かつては三峯神社への参拝客で賑わった道です。


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数分で谷側が開け、荒川の支流、大皿川の採石場がよく見えてきます。

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左へ直角に曲がるとポッカリと口を開けていました…南側の坑口です。
豪快な岩肌…もともと三峰道は、この岩山の上だったのだろうか?

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馬車を通すために明治中期頃に掘ったそうです。

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入った瞬間は粘土質?と思いましたが…。

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凄いなぁ…南から陽が射すので、地層がくっきりと確認できます。

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高さがあるので圧迫感もありません。

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中間地点から南北の坑口を見比べてみると北側は日陰で薄暗くちょっと不気味、

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南側は太陽が燦々で猫が日向ぼっこしていそう。

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北側へ抜けて振り返るとびっくりしました…石灰岩の切り立った岩壁…。

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しかもオーバーハングしていて、押し潰されてしまいそう…そして石仏や馬頭尊も建てらています。

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こんなにも対照的な坑口を持つ隧道は珍しい…短いトンネルをくぐったらタイムスリップしたような感覚になりました。

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強石方面へ続く三峰道。
この先歩いたことはありませんが、途中、通行不能箇所があるようです。

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参考までに、秩父の素掘り隧道というと武州日野駅近くにある矢通反(やとおそり)隧道…通称“坂トンネル”もありますが、崩落の危険があるため通り抜け禁止になっています。

明治の中頃から大正の初めまで、三峯神社への参詣客や秩父礼所めぐりの巡礼者たちで賑わった隧道。
それを思うと感慨深いものがあります。

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ここの親水公園は、養老渓谷の中瀬遊歩道や粟又の滝自然遊歩道をとてもコンパクトにしたような感じ。
養老川の源流のひとつである小さなナメ沢沿いに整備された遊歩道をのんびりと散策できます。
しかし限りなくひと気がないので、好みが分かれる場所かもしれません。
南房総市の沢山不動滝や黒滝のような雰囲気が好きな方なら、気に入っていただけると思います。

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養老渓谷からだとR178(小田代勝浦線)を粟又の滝方面へ南下し、会所トンネル手前を麻綿原高原方面(会所麻綿原線=会所林道)へ右折します。
廃校をリノベーションしたお蕎麦屋さん(もみの木庵=土日祝のみ営業)を右手に林道を進んで行くと、右側に広い駐車場(材木置場)があります。
麻綿原高原のアジサイが見頃の時期は、ここが臨時駐車場にもなります。

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案内板と、

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入口。
2月上旬の午後3時前…日が傾きはじめて、だいぶ薄暗くなってきました。

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最初に眼に飛び込んでくるのは、飛び石の先の岩壁上部にぽっかり開いている穴…房総の旅で何度かアップしている川廻しの跡です。

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どこにどう繋がっているのか不明ですが、大雨の後に訪れると穴から水が滝となって流れてきます。
房総では珍しくない光景です。

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振り返って下流側…穏やかなナメ沢が続いており、長靴を履いていればちょっとした沢歩きができそうですが…
夏場はヤマビルやマダニ対策をきちんとする必要があります。

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遊歩道を歩いて上流側へ向かいます。

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沢床の色は映えませんけど養老川の源流の一つだけあって水はとてもキレイ。

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房総の沢は小さくてもゴルジュを形成している箇所が多いので、海底から隆起したと思われる地層の壁を間近に観察できるのはとても楽しいですね。

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ただ岩壁の上部は、薄く根をはって生えている木々が多く、今後も台風などによる風水害が続くと崩落してしまう可能性があります。

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『チチチチ』というさえずりとともに姿を見せてくれたのは、黄色いお腹がぷっくりした“キセキレイ”。


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なんとなく孤独から解放された感じです。


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飛び石が続くこの辺りは、子どもたちの沢遊びに最適な場所。


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ところがここ数年急に落石や流木が多くなったような気がします…沢が塞がれないか心配です。

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サワガニが歩いている遊歩道をさらに上流に向かって歩いていきます。

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画像ではまったく伝わりませんが、落ち葉が沈んでいるあたりにはハヤやドジョウが泳いでおり、カワニナ(巻貝)もたくさんいました。

カワニナは、比較的水のきれいな水域に生息する巻貝で、ゲンジボタルの幼虫はカワニナしか食べません。
カワニナの生息環境はゲンジボタルの生息条件とほぼ一致しているそうです。
ちなみに、2016年に公開された有村架純さん主演の映画“夏美のホタル”では、大多喜町を中心に撮影が行われ、タイトル通りホタルが重要なモチーフとして登場します。
大多喜町でホタルというと、平沢たけのこ村が知られていますが、実はここ“会所の森 親水広場”が撮影のロケ地の一つになっています。
もしかしたら、知る人ぞ知るホタルの生息地…初夏にはホタルが舞っているのかもしれませんね。

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やがて素掘りの水路隧道が見えてきました。
沢のトンネル内に遊歩道が整備されているというユニークな仕掛けです。
ちなみに隧道の上には林道(会所麻綿原線=会所林道)が通っています。

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オブジェのように剥き出しとなった岩は地層の跡。

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沢床を薄くながれる水に西陽が反射し、その光が間接照明となって隧道内を照らしていました。

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遊歩道は隧道の先にある堰堤まで続いていますが、倒木があったり、落石などによって沢が覆われてしまっていたり… ここで折り返すことにします。

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右側の沢は水量が少なく、降水時以外は涸れ沢のようになっています。

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下流側より坑口がぱっくりと拡がっており、かなり大規模な水路隧道だということがわかります。

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左手には古い涸れ沢。

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房総へ訪れるのは、海岸部を除いてもっぱら晩秋から春先にかけて(ヤマビル・マダニ・スズメバチのリスクを回避する為)なので、暖かい季節の様子はわかりませんが、ここで人に出会ったことないなぁ…いつ訪れても無人で貸し切り状態です。

大多喜町のFacebookには、
《2017年以降、林野庁の“レクリエーションの森”としては廃止されたとのことです。
廃止に伴い、立入禁止になったり整備が行き届かなくなることが予想されますのでご注意下さい》
とアップされていました。
それでも、荒れてる状態の時もあれば、清掃された形跡もあったりと…今現在も人の手が入っているのはたしかです。
ひと気がなく静かで、限りなく自然に近い親水広場…好みが分かれると思いますが、個人的には心も体もリラックスできるお気に入りの場所の一つです。

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地層が剥き出しの素掘りの隧道は、見る角度や光のあたり具合で岩肌が変化し、歩いてみると同じ隧道でも全く違う表情を見せてくれます。
坑口を含めて完全素掘りのこの隧道は、長さ100m弱でほぼ一直線。
坑内に自然光が入り、岩肌の変化をじっくりと観察することが出来ました。

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災害により廃道状態となっている林道竹岡線(通行止め)の起点にあたる大釜戸隧道。
富津竹岡ICのすぐ近くということで、房総で一番アクセスしやすい素掘り隧道かもしれません。

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農業用溜池の先に突如現われる坑口…はっきりとした竣工時期は不明です。

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タイヤ跡を見ると軽トラ1台ギリギリという感じ。いつものようにライトやフラッシュを使わず、手振れしないよう息を止めて撮影してみます。

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いきなり地層が変化します…水分が一切無いカラカラの坑内。

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さらに変化…吸い込まれてしまいそうな渦巻く地層。

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人間の手によって掘られたとは到底思えません。

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光源が少なくなり闇が深くなると、まるで龍の巣穴のよう。

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そして鱗のような落石が至るところに…。

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これは酷い…。

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植生で覆われた反対側の坑口。

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崩落で坑口が拡がってしまったようですね…息を潜めながら戻ります。

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これらの岩を外に出すのは一苦労です。

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龍が掘った獣道…大きな岩が龍の爪のように見えるから怖い。
光の陰と陽でこれだけ表情が変わる完全素掘り隧道は珍しいと思います。

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