コンピュータの性能が1年半ごとに倍になる、というムーアの法則で、レイ・カーツワイル氏は2045年にはコンピュータが人間の知性を超える技術的特異点( Singularity )に達する、と述べて、物理学者のホーキング博士もAI(人工知能)の進化で人類が終わる、と警告しました。
しかし日本の人工知能の専門家はこれに否定的な見方の人も多いようです。

松尾豊さんの書いた「人工知能は人間を超えるか   ディープラーニングの先にあるもの」では「知能と生命は別の話であり、人工知能が人類を脅かす未来は来ない。それは「自己再生産」という仕組みの難しさを理解していない人の意見だ。」と断言されています。
やはり特定の目的に特化された「弱い AI」の問題を当面は心配した方がよさそうですね。
(人工知能が兵器に使われたり、ビッグデータ保有会社がAIを利用する企業を独占支配する可能性など)

目的特化型の「弱い AI」には知識型(東大に合格)、探索型(チェスのチャンピオン)、計測型(車の自動運転)に分類されるそうです。
ところでこれらのいずれとも異なるコンピュータを使ったアルゴリズム作曲法というジャンルがあるようです。
具体的には過去の作曲家の大量のデータをデータベース化してスタイルを分析し、それでたとえば「バッハ風」の新しい曲を作るというものです。
以下はデイビッド・コープ氏(作曲家)が Emmy(エミー) というプログラムで作曲したそうですが、なかなか良くできている曲もあってプロの音楽家でもコンピュータの作曲と見破れなかったといわれています。

ショパン風ノクターン

これは明らかにOp.72 のホ短調ノクターンが原型になっていますが、ときどき Op.9の変ロ短調のフレーズなども出てきます。  ショパンのノクターン・コラージュ、といった感じですが、ショパンの特徴をよく捕えて組み立てているのは間違いありません。


david cope emmy bach like fugue

この曲もインベンションや平均律曲集のフーガで聞いた旋律が次々登場します。
すこしつなぎ目に不自然さがあるのと機械的な終わり方に不満が残りますが、それにしてもコンピュータの演算だけで過去の音楽データを元に組み立てているとしたら画期的なアルゴリズムだと思います。
しょせん人間の「創造性」というものも、過去の偉人に学んで、すこし何か付け足すのがやっとですから、コンピュータに創造性を持たせることが不可能とは言い切れないでしょう。

Emmy はバッハが得意なようで(というか、バッハのデータが圧倒的に多いのでしょう)下の参考に書いた5000曲?のバッハ風コラールについては素人の私にはバッハの作曲と区別がつきませんでした。(ただし1曲通して完成したものではないので、音楽作品としての評価はできないのですが)

将来、ビッグデータの解析で演奏スタイルまで模倣してグールド風のバッハとかエンゲラー風のショパンとかできたら人を感動させるコンピュータ音楽も現れるかもしれません?

[ 参考 ]
David Cope 氏のサイト
http://artsites.ucsc.edu/faculty/cope/

下記からバッハ風のコラールのバリエーションが5000種類ダウンロードできます。
http://artsites.ucsc.edu/faculty/cope/5000.html
ZIP ファイルをダウンロードして解凍した状態で拡張子がついてないので各ファイル名に拡張子".mid" を付加して再生してください。


コンピュータモデルの説明によると Emmy はLisp 言語で書かれていて、ソースの一部が ZIP ファイルで公開されているようです。
http://artsites.ucsc.edu/faculty/cope/cmmc.html