安倍派のキックバックを巡って次のような報道がある。

自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティー収入の一部を裏金化していたとされる事件で、同派事務総長ら幹部が2022年のパーティー開催前、議員側へのキックバック(還流)の廃止を決定していたことが24日、関係者への取材で分かった。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023122400188&g=pol

安倍応援団として名をはせた岩田明子記者のような提灯持ちは、こうした事実関係を捉えて、安倍氏が不正を嫌い不正をやめさせたかのように伝えるが、私はそうではないと思っている。彼は確かにキックバックの仕組みが気に入らなかったのでやめさせたが、その動機はそれが不正行為だったからではない。

安倍氏の政治手法は、人事を握り、金を差配することで、自らに臣従させるやり方である。言ってみれば生殺与奪の権を握ってしまうわけだ。

広島の溝手顕正氏のように、自分にまつろわない存在に対しては、金の力で徹底的に叩きにかかる。溝手氏に党から選挙資金として渡ったのは1500万円。それに対して溝手氏とは対抗馬の関係に立つ河井陣営には10倍の1億5000万円が渡された。

かつて問題になった桜を見る会にしても、支援者たちを饗応して懐柔しようという安倍氏の資金力にものを言わせたやり口だった。

こういう安倍氏の政治手法からすると、キックバックをやめさせたのは自らが差配できる金を増やすためだったと見た方が整合性がある。

キックバックは個々の議員に渡る金である。しかも基準は明快でノルマの超過分が渡る。つまりそこに安倍氏の差配は及ばない。それが取りやめになるということは、派閥にそのカネはプールされるわけだ。そして会長が安倍氏であれば、そのカネをどのように分配するか比較的自由度を持って決定できるようになる。

自分への忠誠の程度を基準にして選挙資金を融通し、派閥議員をグリップしようと考えたのであろう。キックバックをやめた後に議員たちから不満の声が上がったという事実関係も、会長である安倍氏と所属議員の間の利益相反を物語っている。

安倍氏にとってしてみれば、派閥の金はオレの金であったろう。所属議員がノルマを超えて金を集めるのも、派閥のためであり安倍氏自身のためである。そのカネを各議員が己の懐に入れるなどもってのほかだったのだ。

安倍氏が遵法意識に目覚めてやめさせたなどという見立ては、まるで荒唐無稽である。安倍氏の性格や政治手法からすれば、上記のように解釈した方がよほど自然だ。だいたい、森友や加計問題に見るように、彼に遵法意識などあるわけないではないか。

彼は単にノルマをこなしたからといって自動的に議員に金が手渡るような、自分の意向と無関係に動く派閥の仕組みが気に入らなかったのである。