2018年01月25日

2018年01月25日

その鳩は気付くといつもそこにいる。道の駅の喫煙所、灰皿とベンチが置いてあるところ。おそらく休憩中の観光客やドライバーがエサをやるのであろう、人が近づいても逃げない。それどころかよく猫がする香箱座りのような感じで、丸く蹲って微動だにしない。痩せてはおらず、そのことからも人間から餌をもらうことに慣れているようなのがわかる。鳩は他にもたくさんいるのだが、そんなふうに居座る鳩は他にはいなかった。

その道の駅に併設されている貸しホールで数日間の講座が開かれた。講師として招かれたので、毎日そこへ通った。片道1時間半ほどの距離だが、やはり遅れてはならないと、少し早めに家を出る。家を出てから高速の入り口にたどり着くまでが微妙なのだ。少し家を出るタイミングが遅れると、信号の連結が悪いせいで渋滞が始まる。10分で高速に乗れることもあれば30分近くかかることもある。それが嫌で、やはり早めに家を出るということにしている。幸い毎日の開講時刻は遅めなので、そんなに慌てる必要はないのだが、渋滞にかかるよりは早めについてコーヒーでも飲んでた方がよっぽどいいと思ってしまうのだ。

講義は夕方まで続く。合間に当然休憩をはさむことになる。どんなに上手に講義をすすめても、受講生の方々の集中が続くのは1時間程度だ。なので50分ほどしゃべったら、10分休憩という原則で講義をする。まあ、自分自身が喫煙欲求に耐えられなくなるから、という理由のほうが大きいのだが、受講生のためにもなっているのは確かだ。手前味噌だが、講義の評判は別に悪くは無い。

休憩時間は喫煙所で過ごす。休憩に入ると誰よりも早く喫煙所に直行する。どうせ講師が戻るまで講座は再開されぬのであるから、たっぷりと時間いっぱい煙を吸い込む。まさにこれこそチェーンスモークという具合だ。なんなら吸い終わりの火種で次の煙草に火をつける、なんでこともやる。我慢した後の煙草は美味いのだ。

そしてその鳩は、いつもそこにいる。

講義をしていた数日間、何度も訪れた喫煙所で、何度もその鳩と同席した。そのうち気付いたのだが、その鳩は片足だった。最初は寒いから足を1本隠しているのかと思った。フラミンゴじゃあるまいし、鳩はそんなことしないだろうと思い直し、良く見直してみると片足が根元から無かった。なぜ無いのかはわからない。ああ、片足だから地面を歩くのはつらいのか、それで動かないのか、香箱座りなのかと、なんとなく理解した。

講座の最終日、その日はとても風の強い日だった。いつものように喫煙所でベンチに座り、煙草をふかしながら空を見ていたら、その強い風に乗って空の高い所を滑空する鳥を数羽見つけた。翼を広げたまま、ほとんど羽ばたかずに風に乗っている。羽根の端の形を見ると猛禽類のようだった。サイズはそんなに大きくなかったので、隼かノスリか、そんな感じなのだろうと思ったが、あまり低く飛んではいないのでよくわからない。風の強弱に合わせて上昇下降を繰り返しながら旋回している姿を、なんとなく眺めていた、そのとき、傍らにあたりまえのようにいた件の鳩が突然勢いよく飛び立った。そんなに素早く動けるとは思っていなかった。目で追う暇もなく、鳩はどこかに飛び去ってしまった。

猛禽類は上空から急降下して地上にいるものを襲うんだったと思う。そこまで詳しいわけではないが、多分そんな感じだ。鳩はその危険を察知して飛び立ったのだと思う。あんなにいつも泰然としていた鳩の、その一度きりの急変ぶりに驚いた。そしてその後、1時間毎の煙草休憩のとき、その鳩の姿は一度も見なかった。


saxでした、


なんかちょっとどっかのエッセイみたいのを意識して書いてみようと思ったけど失敗した。めんどいので書き直さないw

(12:00)