2009年01月30日

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで

B0024DGMUIレボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで スペシャル・エディション [DVD]
レオナルド・ディカプリオ, ケイト・ウィンスレット, キャシー・ベイツ, マイケル・シャノン, サム・メンデス
角川エンタテインメント 2009-06-05

by G-Tools


「彼らは理想の夫婦よ」
そう呼ばれた一組のカップル。
レボリューショナリー・ロードという閑静な住宅街に住み、子供にも恵まれ、夫は日々稼ぎに出、妻は専業主婦としての役割を果たす。
そんなウィーラー夫妻はある日人生の賭けに出た。

ネタバレ有りです。

大体が夫婦愛を描いたラブストーリーだとパターンは決まっている。
最初出会いがあって、結婚して暫くはラブラブな生活が続き、そして何かしらの絆を揺るがす事件があって、そして最後は元の愛情を取り戻す。
『男が女を愛する時』しかり、『幸福の条件』しかり最近では『ぐるりのこと。』しかり。
ところがこの作品では、出会った二人がちょっと会話をするシーンを入れただけで、次はもう時系列が結婚後に移行し、いきなり車の中で激しい口論を開始する。
それから終わりまで、この夫婦喧嘩が延々延々と続く。凄い。

女優の夢を諦めた妻エイプリル。彼女は毎日うんざりして働いている夫フランクに、仕事を辞めてパリに住もうと言い出す。
妻が働き、夫が自由な時間を持って生き甲斐を見つければよいのだと。
このメチャクチャな提案に、当然最初は笑っていたフランクが、いつの間にかその提案に引き込まれてしまう。
もうこの時点で
「あー、ダメだ、バカ夫婦だこりゃ」
と呆れてしまった。
何しろ仕事がダルいフランクは同僚の女性とちょこっと浮気しちゃってるし、エイプリルの固執するパリも、昔夫が行ったことがある=その時輝いていた彼=パリに行けば新しい人生が拓けるという短絡且つ非現実的なものだったから。

ただ皮肉なもので、周りの人にパリ行きを話し、着々と準備を進めている時に、フランクはやっつけ仕事が認められて昇給と昇進が確約。そしてエイプリルは三人目を妊娠してしまう。
パリ行きが頓挫してしまったことから、また二人はすれ違っていく。

今現在の平凡を嫌う妻。
そこからの脱却に失敗した彼女は、次第に夫への憎しみを募らせていく。
夫の方は、そんな妻を全身で愛し、かつての彼女を取り戻そうとする。
だからわたしにはエイプリルにどうしても同情というか感情移入できなかった。

特別な人たちなんてごく僅か。
平凡に生きることの何がそんなに辛いの?
今そこにある幸せでは満足できないの?


何度も何度も、夫を詰って叫び、哄笑し、我を忘れる彼女に、そう問いかけていた。
衝動的に隣の旦那と関係を結び、すべて自暴自棄になった妻は、夫が浮気していたという告白にももはや何も感じていない。
それほどまでに彼女を追い詰めていたのは何なんだろう?

女優への夢が絶たれるまで、きっと彼女は希望に溢れていたに違いない。
美しい容姿を称える人も多かったろう。
そしてやはり美男な夫と結婚し、家を紹介してくれたヘレンにもさんざん「特別なカップル」と吹聴され、普通の人と同じラインを踏んでいることに気づかなくなっていたのかもしれない。

そんな彼女たちに容赦のない現実を突きつけるのは、ヘレンの息子で心を病んでいるジョン。
人との距離がとれず、言ってはいけないことがもはや区別がつかなくなっている彼は、誰もが思っていても言わなかったことをずばりと刺してくる。

それによって徹底的に破壊されたかに見えた夫婦の絆。
フランクは衝動的に「子供は本当は堕ろしてほしかった」とこれだけは言ってはならなかったことを叫び、エイプリルは夫を憎んでいると告白する。

でもその翌日、夫婦二人だけの朝。
ひどく穏やかで、慈しみに溢れた朝食の席。
妻は夫のリクエストを聞いてから卵を調理し、夫は慈愛あふれる目で妻を見て、キスをして出社する。
このひとときが、完璧すぎて、そこに二人の愛がたしかに感じられたにも関わらず、それが確実に何かの終焉を迎える前の静けさであることをひりひりと感じ取って、恐ろしくて仕方がなかった。

出掛けにフランクが
「僕を憎んでいるのかい?」
と聞いて、
「いいえ。まさか」
と答えるエイプリル。
そのときの彼女はたしかに彼を憎んではいなかったのだと思いたい。
その後に自分で堕胎を試みるような真似をしても。
人間ってそんな単純じゃないもの。
ずっと一緒に暮らしてきた相手を、愛するか憎むか、そんな白黒はっきり分けられるわけがない。
ただ、彼女は結局自己愛が強すぎたのだと思う。

夫よりも、子供よりも、理想を追い求めた妻をやっぱりわたしは理解できない。
その理想の中に“家庭”が内包されていようと。

彼らを取り巻くほかの二組の家族の描き方も等閑にしていないところが凄い。
隣の夫婦シェップとミリー。
彼らがフランクたちのパリ行きのことを聞き、その夜それを批判する夫の前で泣き崩れるミリーの姿が印象的。
あれは特別でない自分たちの“今の幸せ”を夫も感じてくれた安堵と、でも心の奥底で感じている不満(子供たちは父親が話しかけてもテレビを見ていて返事さえしない)を呼び起こし、彼らに嫉妬したための涙だろうか。
シェップがエイプリルと浮気したこと、彼が彼女を愛しているということ、それをずっと知らずにミリーは生きていく。
それでいいのかもしれない。
小さな爆弾を抱えながら、でもそれが爆発することなく、平凡な家庭を守っていく彼女ら夫婦の在り方はごく一般的だと思う。

同じように、他人の悪口を延々と垂れる妻の話を聞いているふりをして、そっと補聴器のボリュームを絞るヘレンの夫。
人はそうやって生きる術を見つける。

観た後はどっと疲れが押し寄せた映画だった。
でも秀作であることには間違いがない。
主演のディカプリオとケイト・ウィンスレットは神懸り的な巧さ。
作品賞にも監督賞にも主演賞にもオスカーノミネートがないのが甚だ疑問。


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この記事へのコメント

1. Posted by latifa   2009年01月31日 11:27
リュカさん、こんにちは!

>ただ、彼女は結局自己愛が強すぎたのだと思う。
ほんと、一言これ↑ですわ。うん。

で、隣人のミリーの処なんだけど、私は勝手に、ミリーはちゃんとシェップがエイプリルと浮気したこと、彼が彼女を愛しているということに、気がつきつつ、知らない顔して暮らしてる・・・と、思って見てました(^^ゞ

今一度、そこらへんを見直してみたいんだけど、もう一回見たい映画ではないな・・・^^
2. Posted by mig   2009年01月31日 17:39
リュカさんこんばんは★
コメントありがとうございました♪

本当、疲れる作品でしたよね。
夫婦喧嘩、お互いあんなにののしり合って最後にはバッドエンド。。。
相変わらずサムメンデスの映画は重たいですー。
3. Posted by 真紅   2009年01月31日 23:46
リュカさん、こんにちは! コメント&TBをありがとうございました。
自己愛、うんうん、そうだね〜。
で、ミリーが泣いたシーン! あの場面については私もちょっと考えたんですよ。
私は、ミリーはフランクのことが秘かに好きで、パリに行ったら会えなくなる・・と思って泣いていたのかと早合点してました(笑)。
で、エイプリルの妊娠がわかって、ミリーがクラブではしゃいで気分悪くなってフランクと先に帰ったでしょう?
あの時、フランクとミリーも何かあるのでは・・と勘ぐったけど何もなし(爆)。
でもあの涙は、やっぱり羨望も入ってたと思うな〜。
人間の感情って複雑だもんね。いろんな思いが混在しての涙だったんでしょうね〜。
う〜ん、好きな映画じゃないけど秀作でした。
ではでは、また来ます〜。
4. Posted by みみこ   2009年02月02日 09:37
お邪魔します〜〜
フランクがパリ行きを承諾したところ・・・
私も呆れてしまったわ・・・
その辺りから嫌な予感がしたのよね・
浮気もしちゃうし・(まあお互い様だったけど)
夫も夫で、やや奥さんに流される傾向にあったよね。<小さな爆弾を抱えながら、でもそれが爆発することなく、平凡な家庭を守っていく>
そうだよね・・・。時代は違うけれど、夫婦のあり方を考えさせられる映画でもあったわ。再見はしないけど・・笑
5. Posted by リュカ   2009年02月03日 05:53
★latifaさん
エイプリルの行動には疑問符が多すぎなんですよねえ〜…。本当にわたしには自己愛にしか感じられませんでした。
それからミリーが夫の浮気に気づいていたというのは面白い見方ですね。
そういえば、シェップはエイプリルに「愛してる」なんて情事のときのリップサービスとは思えない真剣さで告白していましたね。そんな本気度が高かったら、ミリーも薄々気づいていてもおかしくない…。なるほど。わたしはまったく彼女が勘付いていないと思っていたのですが考えさせられます。
でもやっぱりわたしも同じく二度見る気はおきないのですが(笑)。
6. Posted by リュカ   2009年02月03日 05:56
★migさん
こちらこそTBとコメントをありがとうございました。
心底疲れる映画でした…。罵り合いの場面は迫力があって痛くて仕方なかったです。
それもこれもすべて演技派の二人によってもたらさられる感情ですね。やっぱり上手いな〜…。
サム・メンデスは『アメリカン・ビューティー』ではシニカルな中に可笑しさを混ぜてくれてましたが、今回はシリアス直球でしたね。
でもやっぱり秀作には違いないですね。
7. Posted by リュカ   2009年02月03日 06:02
★真紅さん
ミリーは深い描写がなかった分、いろいろ想像に委ねられる場面がありますよね(それでいてあの涙のシーンだけ印象的です)。
フランクに想いを寄せていたとしたら、またドロ沼状態ですね。でもそれももしかしたらアリだな…と。
ミリーの泣いたところは色んな解釈があって面白いです。こういう脇役の思惑まで考えさせられるドラマは良いですね〜。
わたしも秀作だと思います。でも好きか嫌いかと問われたらちょっと迷っちゃいます。そんなサム・メンデス作品次回作も期待していたりして。
8. Posted by リュカ   2009年02月03日 06:07
★みみこさん
本当にはじめはこの夫婦のしょーもなさにハラハラしながらも呆れていました…。
でも途中から現実をみつめたフランクにがんばってほしくて。あれはすごく良い旦那だと思うのですが…。まあ堕胎については絶対言ってはいけないことを口に出した罪は大きいのですけどね。
夫婦ってなんだろう、家庭ってなんだろう、夢を追うことの意義はなんだろうってぐるぐると考えがめぐりました。
で、やっぱり二度見る気にはなりませんよね(笑)。
すごい出来とは思うのですが、重すぎる、つらすぎる…。疲れきった作品でした。

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