2010年01月19日

(500)日のサマー

B003I3QO4M(500)日のサマー [DVD]
2009年 アメリカ
監督:マーク・ウェブ
出演:ズーイー・デシャネル
   ジョセフ・ゴードン=レヴィット
   クラーク・グレッグ
   ミンカ・ケリー
by G-Tools


夏が去り、そして秋がやって来た。

ネタバレ有りです。

と、序文から既にネタバレしていますが。
物語は“ボーイ・ミーツ・ガール”。
でも恋の話ではないという但し書きに疑問を持ちつつ鑑賞を始めると、すっかりトムとサマーとの過ごした日々に取り込まれてしまった。

彼女との500日。
ファーストシーンは488日目。
ベンチに腰掛ける男女。サマーの薬指には輝くダイヤの指輪が。
そこに手を重ねて微笑んでいるトム。
なるほど、この映画は彼らが結婚に辿り着くまでを描いた作品なんだなという先入観が植えつけられる。

そして1日目。
建築家の夢が叶わずグリーティングカード会社で働くトムのオフィスにサマーが新しく入社する。
恋を信じる男と運命を信じない女。
恋愛について対照的な価値観を持つ二人は、音楽の趣味が合うことから次第に距離を縮めていく。
28日目、カラオケバーで時を過ごし、サマーがトムにキスをした。

34日目、IKEAではしゃぐ二人。キッチンで新婚ごっこ、ベッドルームで他のお客に呆れられながらいちゃつき。
でも恋人のように過ごし、セックスだって一緒に見たAVと同じプレイまで試み、楽しい日々を過ごしながらも恋人同士という枠に収まろうとしないサマー。

そうして時系列順にストーリーが進むわけでなく、例えば34日目の仲睦まじく時を過ごす二人のチャプターの前には、200日を過ぎたくらいのちょっと関係が冷めてきて同じくIKEAでかつてと同じおどけ方をしてもサマーは冷たくあしらう…といったギャップが練りこまれている。

恋の進行を描きながら、同時にその停滞と退行を織り交ぜる構成が面白い。

サマーとうまくいかなくなって一人でキッチンで延々お皿を割っている次のシーンでは、そのトムが初めてサマーとベッドインした朝、何もかもがハッピーに思える浮かれポンチぶりがミュージカル調で描かれたりする。
カートゥーンの青い鳥が飛び、道行く人々が花を撒いて祝福を投げ、窓をのぞきこむと自分の顔がハリソン・フォードに見える!

そんなギャップがせつなくて、でも一度ダメになったかに思える彼らの仲も500日が近くなれば結ばれるのだから、と見ているとこれがきれいに裏切られる。

何とサマーはトムと別れた後、カフェで読んでいた『ドリアン・グレイの肖像』について話しかけてきた男性と恋に落ち、結婚まで決めてしまう。
そのことをまだ知らずに、共通の知り合いの結婚式で再会し、よりが戻ることを夢見るトムの「理想」と「現実」の場面が二分割されて同時進行する構成はひどく世知辛い。

こうして巡ってきた488日目のファーストシーン。
そう、サマーがはめていたのは別の男性と結婚した証。
彼女との訣別の場面というからくりだった。

このサマーがとっても魅力的。
青い瞳に呼応したように、彼女のファッションにはいつもブルーが使われている。
水色のワンピースだったり、アーガイルのセーターだったり、タイトなブラウスだったり、髪留めやカチューシャにもその爽やかさが印象的に映し出されていた。
翻弄しながらもむかつくワガママさはなく、『卒業』を観て涙の止まらない繊細さを持っていて、誰のものにもならない筈だったのに結局彼女も普通の女の子よろしく運命の男性と結ばれる。

この「運命」の扱われ方が面白い。
サマーの心変わり、主義の変換はさっきも云ったように運命の人と出会ったから。
トムがその後カード会社を辞めて建設会社に就職活動を始めたのもサマーを失った経緯があったから。
そして運命なんてこの世にはない、と悟ったその直後にデートの約束をとりつけた女の子の名前がなんと「オータム」。
このラストシーンに思わずニヤリ。

サマー役のズーイー・デシャネルの魅力はもちろん、トム役のジョセフ・ゴードン=レヴィットが等身大の男性を、可笑しく、情けなく、人間味あふれる演技でとても素敵だった。
自らの体験談を取り入れたリアルな脚本も面白い。

新年になってまだ日が浅いものの、いきなり素晴らしい恋愛映画に出会ってしまった。

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 (500) DAYS OF SUMMER  グリーティングカード会社で働く草食系男子トム(ジョセフ・ゴードン=レヴィ ット)は、社長秘書として入社して??.
2. 『(500)日のサマー』 (500) DAYS OF SUMMER  [ かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]   2010年01月23日 04:09
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3. 運命じゃない人〜「(500)日のサマー」  [ 気まぐれ映画日記 ]   2010年03月03日 00:16
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この記事へのコメント

1. Posted by 真紅   2010年01月21日 22:49
リュカさ〜ん、こんにちは! コメント&TBありがとう〜。
これ、すっごいよかったですよね〜♪
しかし、リュカさん何日目、っていっぱい憶えててすごいな。。
最初の488日目、あれで「うまくいくのかな?」と思わせてるようで、その前に「これは恋愛映画ではない」ってナレーションされるよね?
だから、これはミスリードで、やっぱりうまく行かないんだろうな、と思いながら観てました、思いっきりトム目線で。
主演の二人が、普通っぽいんだけど魅力たっぷりで、最高でしたね。
特にJGLは、今後も要チェックですね!
2. Posted by リュカ   2010年01月24日 18:41
真紅さん、こんにちは♪
ホントにこれは凄く良かったです。いきなり今年のマイベスト1候補が飛び出しちゃいました。

あ、日にちについては、488日というのはテキトーに書きました(←!)。たしかそのくらいだったよなあ、くらいのノリで…。すみません、こういうとこに性格出ますよね(笑)。
あとの日付はパンフレットを見て書いています。

>これはミスリードで、やっぱりうまく行かないんだろうな、と

そうなんですね〜。ああ、わたしはミスリードに思いっきりひっかかってしまいました。
「恋物語ではない」というのも、きっとあの二人が結婚して、夫婦というよりは強い友情で結ばれた同士になったから、とかいう解釈にでもなるのかなと勝手に想像してまして…。

トム役は良いですねえ。真紅さんの記事を見て、ヒース・レジャーに似ていることに気づきました。
これから楽しみな俳優さんですね。
3. Posted by リカ   2010年03月03日 00:27
こんばんは♪

最後の最後でサマーの次がオータムというのは、なかなか嬉しい驚きでしたよね。オータムの名前を聞いたときの、トムの一瞬の狼狽が微笑ましかったです。

人は変わるんだな、ていうのがよく現れていて、最初と最後のベンチでの二人の会話が好きでした。
時系列がぐちゃぐちゃだと混乱しちゃいそうですけど、この映画はあえてその手法だったからこそ、人物の心境の変化がよくわかって面白いのかもしれませんね〜。
4. Posted by リュカ   2010年03月04日 21:37
リカさん、こんばんは♪

このひねったラストは好きですね〜。そうきたか!って感じで。
サマーが信念を変えてしまうほどの恋をしたというのが驚きでした。
でも男性から見たら、愛しさがあったからこそ「このビッチ!」と罵りたくもなるのでしょうね(笑)。
時系列をいじった作品は秀作が多いですが、その仲間入りとなった気がします。
5. Posted by みみこ   2010年09月14日 14:15
お邪魔します〜〜
この映画観ながら、「恋人たちの予感」思いだしていて、なんだかんだいっても元のさやに戻るのよね〜〜と楽観していたところありましたよ。うらぎられちゃったわ。
あんなにいちゃいちゃしていても別れちゃう結果は
なかなか彼、受け入れられないよね・・・・笑
彼氏がサマーに過去男性遍歴聞いていましたけれど、、ああいう彼氏あまり好きでないわ。
もっと自信もって付き合っていれば良かったのに。
会話中のシド&ナンシーのネタも面白かったですよね。
6. Posted by リュカ   2010年09月16日 23:10
みみこさん、こんにちは〜♪
わたしもファーストシーンの仲睦まじい二人の佇まいにすっかり騙されてしまいました。
本当にあんなに幸せそうだったのに……
女って判らないものですね。
シド&ナンシーの件もヒドイ!(でも笑ってしまった)と思っちゃいました。

>もっと自信もって付き合っていれば良かったのに。

あはは、みみこさんはああいう彼氏はだめですか〜。
なんかわたしは情けないところにツボを押されてしまいました(笑)。
とにかく良い作品でしたね。

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