2010年01月30日

ラブリーボーン

B0030IM8OAラブリーボーン[DVD]
2009年 アメリカ=イギリス=ニュージーランド
監督:ピーター・ジャクソン
原作:アリス・シーボルド
出演:シアーシャ・ローナン
   マーク・ウォールバーグ
   レイチェル・ワイズ
   スーザン・サランドン
   スタンリー・トゥッチ
by G-Tools


彼女の願いは届くのか。

ネタバレ有りです。

恋人との初キスを夢見て、仲の良い家族と日々を満喫していたスージー。
それがある日、ドールハウスを作るのが趣味の男ハーヴィに目をつけられ、14歳の若さで殺されてしまう。
スージーは天国に行くも、残された家族が哀しみのため壊れていくこと、自分を殺した男が今度は妹を狙っていることを知り、心を痛めていた。
そんな彼女の生前の同級生に、死者を見ることができるという風変わりな女の子ルースがいた。

と、こんなあらすじであり、色々な伏線を敷いておきながら、これが見事に物語りに作用しない。

特にシックスセンスな才能を持つルースの存在が早くから描かれ、彼女を通してスージーの気持ちやら警告やらの何らかのメッセンジャーとなるんだろうという予測がきれいに裏切られる。
ラスト近く、ハーヴィがスージーの死体の入った金庫を埋めるシーン、そこに居合わせたルースがそれを見透かしたような意味深なアップが続き、ようやくここで彼女の役割が果たされると思いきや、ただ気絶するという肩透かしな展開に。
でもその後にスージーの本当の願いが果たされるのに一役買うことになるけれど…
これは後述。

そのルースがダメならどうやって死者は現世の人にコンタクトを取るのか。
これが実に曖昧。
一応、ろうそくの炎の揺れを通してスージーの父ジャックが娘の存在を感じ取るような場面や、手の中で枯れた筈の花が活き活きと開花するファンタジックな場面もあるものの、基本的にスージーは愛する人々に何も伝えたり与えたりはできない。

というのも、それぞれのシーンは天界からのスージーの視点であり、それが必ずしも現世に起こっているわけではないかもしれないからだ。

先述したルースが気絶するシーン。
そこでスージーは彼女に憑依し、何と恋人だった男の子(今はルースの彼氏)と夢の初キスを果たすこととなる。
これも実はただ男の子がルースと普通にキスしているだけだったのかもしれない。
でもあくまでもスージーの視点からは夢が成就されたことになっているだけで。
そうでないと、今まで彼女が思いつづけてきた父親があんな目に遭うわけはない。
妹が九死に一生を得てどうにか犯人宅から殺人の証拠を盗んできたときも、スージーの力は何も働いてはいない。

だからろうそくの炎も、枯れた花も、実はそのまま何も変わらず在る様に在っただけなのではないかとわたしは思う。

父親が偏狂的にハーヴィを追い詰めるのも、妹も疑惑がまるで確証であるように振舞ったことも、結果合致していただけで、それがスージーからの何らかのメッセージを受け取った、あるいは感じたという描写はわたしは読み取れなかった。

だからこれは憐れな犠牲者が天国に行ったのだとするファンタジックな世界を用意しながら、現実の辛さ・醜さ・理不尽さを徹底的に描いたかなりのレベルの鬱映画だ。

何しろ生前のスージーの14歳ならではのきらきらした日々を存分に描き、時には弟の命を救う勇敢な行動を起こし、あのきれいな青い瞳でくるくるよく笑うとびきりチャーミングな姿を目に灼きつかせておきながら、容赦のない展開になるのだから、初めから救いようがあるはずがない。

殺人シーンは直接描かれないものの、その後血だらけの刃物やら血溜りの洗面所やらを見ると、スージーの顛末が予想できてかなり落ち込む。
そして多分レイプもされているだろうことが、犯人の所作(スージーにきれいだと言ったり頬を撫でようとしたり)から窺えてまた気分が悪くなる。

そのハーヴィ役のスタンリー・トゥッチが完璧な演技。
気味が悪く、表向きの笑顔さえも怖い性犯罪者をねっとりと演じていた。
スージー役のシアーシャ・ローナンも、彼女に感情移入すること必至な可憐さが光っていた。

ラスト、家族は再出発し、スージーは自分の美しい骨の発見よりも恋人とのキスを選んでそれを果たした。
でもそれで少しはハッピーな気分になれたかというとわたしは上記のことから全く無理で。
ただただかわいそうなスージーに心が痛んだ。
感動作と謳うには少し疑問の残る作品。要注意。

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この記事へのコメント

1. Posted by latifa   2010年02月01日 10:20
リュカさん、こんにちは〜!
>色々な伏線を敷いておきながら、これが見事に物語りに作用しない。
 ぶふっ!まさに、そうなんですよねー(^^ゞ

私もスージーが可哀想過ぎて、明るい気持ちになんて全然なれませんでした・・・。
映画の中では、レイ○シーンとか変な事や残虐な事してるシーンが無かったからこそ、そのあたりぼわ〜っとしてますが、レイ○は知らないけど、残虐なことは絶対してるわけだから。映像で無くても、私の頭の中では「ユルセン!!ひどい!!」ってのが最後までぐるぐる渦巻いてました。
2. Posted by jester   2010年02月01日 16:32
リュカさん、お久しぶり。
ご無沙汰したわたくしをお許しください。

わたし、この作品、まったくだめでした。
もう思い出したくないって感じ。
なんでこんな作品を作ったのか、意図不明だとおもいました。
3. Posted by リュカ   2010年02月02日 20:14
★latifaさん、こんにちは。
も〜、本当に詐欺です、CMのつくりは…
ただただ落ち込んでしまった作品でした。
殺害シーンは描かれなかったけれど、なんにせよ14歳のあんなにいい子が無残に殺されちゃったという前提が重過ぎて、救いにはなりませんでしたね。
あの犯人許せない!
…のに、あの顛末ですし。
スッキリしないことこの上ないです。
作品としてのクオリティは高いと思いますが、好き嫌いは分かれそうな作品ですね。
4. Posted by リュカ   2010年02月02日 20:18
★jesterさんだ!おかえりなさい♪
いや、全然謝る必要ないですよ〜。
多忙だったり体の調子がすぐれなかったり色々事情があって当然ですし。
でもまたお話できてうれしいです。

わたしもこれはかなり重くのしかかった作品でした。
なんか救いがまったくないわけではないけれど、スージーがあんな風に理不尽に無残に殺されてしまったという事実は変えられないわけで。
わたしもあんまり思い出したくないかもです…。
原作はもうちょっと違うのでしょうか。
彼女の青い瞳を思い出すとまた泣いてしまいそうです。

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