2010年05月26日

パーマネント野ばら

B00457W03Eパーマネント野ばら [DVD]
2010年 日本
監督:吉田大八
原作:西原理恵子
出演:菅野美穂  小池栄子
   池脇千鶴  宇崎竜童
   夏木マリ  江口洋介
by G-Tools


 好きやずっとはどこにもないから
   私はまいにちうそをつく

ネタバレ有りです。

なおこは離婚して一人娘のももを連れて実家に戻っていた。
母親が経営するのは漁村で唯一の美容院「パーマネント野ばら」。
そこはヤギのクソくらいに固くあてたパンチパーマのおばちゃんたち、フィリピンバーを営むみっちゃん、暴力を振るったりギャンブルにハマったりとロクでもない男とばかり縁のあるともちゃん等が訪れる場所だった。
高校教師のカシマとひそかにつきあっているなおこは、なぜか判らない淋しさをいつも感じていた。

西原さんの原作が大好きだったので、映画はハマりきれなかった。

一番違和感があったのが、映画のウェットさ。
なおこの肩の傷にまつわる母親の再婚エピソード、ももとしっくりいかない描写(離婚した父親と会う日にかわいいアクセサリーが見つからずにぐずるもものエピソードは『ヒート』でのナタリー・ポートマンまんまだね)、そして後述するけれど、肝心のなおこの恋の秘密をメランコリックに描きすぎだと思った。

で、逆に新しい男をホテルに叩き込んだパンチのおばちゃん(原作ではゆきママ)のエピではただのコミカルな恋愛模様に終始し、「好きな男のいなくなったあとのふとんは 砂をまいたみたいだ」の哀愁が描かれないときた。

流れるようなモノローグ多用の原作からそれを取り除いてしまったため、ひとつひとつの物語がブツ切れで且つテンポが悪いのも気になるところ。

そしてラストのどんでん返し。
なおこの恋人カシマが、実は付き合っていた高校時代に既に死亡しており、今の彼はなおこの幻にすぎないというところ。
原作ではカシマは初老のおじさんであり、なおこの妄想の中の人物であり、実在してはいなかった。
でも映画では設定を変え、なおこのトラウマをはっきりとさせている。
ここも是か非か分かれるところだと思う。
わたしは、はっきりとした心の傷を描かないために、登場人物の中で一番まともに見えながら「くるって」いるなおこのモノローグに涙が止まらなかった。


 あなたがどんどんうすれてゆく。

 すきな人を
 忘れてしまったのに

 恋をしている私は
 
 もうだいぶん
 狂っているのかもしれない。


いつものことながらやっぱり原作への思い入れが強すぎる作品は、比較することに集中してしまってよくないなあ。

ゴミ屋敷の二人の老人とか、木の電柱をチェーンソーで切りまくるみっちゃんの父親とか、ちんこを連呼するおばちゃんたちとか、実写で見せてくれて嬉しかった部分は大きいのだけど。

なおこ役の菅野美穂は、二重のくっきりした瞳がとにかく可愛くて、それが歪む電話ボックスのシーンは胸を打たれた。
カシマ役の江口洋介は、相変わらずかっこよく、相変わらず演技が軽い。
ハマリ役だったのはみっちゃん役の小池栄子。破天荒で激情型で、でもなおこのすべてを判って見守る包容力のある女性にうってつけ。
夏木マリも池脇千鶴も、本人は垢抜けた容姿なのに田舎のおばちゃんになりきっていて良。

最後にももがなおこを迎えに行く映画オリジナルのラストシーンはとても良かった。
恋人の手を掴むつもりでそれが一握の砂でしかないなおこを呼ぶもも。
それに振り返ったなおこの笑顔は、カシマに向けていた愛情深いそれだった。
これからカシマの代わりにきっとももがなおこを癒してくれるだろう。
そんな希望を感じさせた終わり方に拍手。

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ずーと好きはどこにもないから私は毎日小さな嘘をつく 娘を連れて出戻ったなおこ(菅野美穂)と、その母まさこ(夏木マリ)が営む町に一つ??.

この記事へのコメント

1. Posted by 真紅   2010年05月28日 15:01
リュカさん、こんにちは。
そうなのね〜、リュカさんはいま一つだったのかな。
確かに、原作に思い入れが強過ぎる映画っていまいちノレないことありますよね。
私は、あまり原作を理解できていなかったせいかどうなのか、物凄くよかったです。
今年の邦画のベスト作かもしれません、気が早い?
ところで、今度サイバラさんの『この世でいちばん大事な「カネ」の話』がドラマになるんだって。
山田優主演で。それって、、、どうよ?!(笑)
2. Posted by リュカ   2010年05月30日 06:25
真紅さん、こんにちは〜♪

わたしはちょっと微妙でした…。
一番はなおこの恋人の設定を変えてしまったこと。
原作のアレがベストだったので。

でもキャストは主要キャラから脇キャラまでよく再現されていて良かったです!
あのゴミ屋敷に住むおばあちゃんとおじいちゃんがもう最高です。で、最後おじいちゃんの顛末もブラックだし。

真紅さんの邦画暫定1位なんですね。
わたしはまだ邦画では今年のベストは出ていないかも〜…
あ、今年公開じゃなかったら『腑抜けども〜』が突き抜けてましたが(笑)。

それとドラマ情報ありがとうございます。
でも何がどう間違って山田優?!これは…けっこう冒険ですよねえ…(笑)。

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