2012年11月18日

桐島、部活やめるってよ

B00ANFT8R8桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]
2012年 日本
監督:吉田大八
出演:神木隆之介
   橋本愛
   大後寿々花
   東出昌大
   清水くるみ
   山本美月
   松岡茉優
   落合モトキ
by G-Tools


映画小僧はゾンビを撮る。

ネタバレ有りです。

金曜日。
バレー部のエース、桐島が部活をやめる。
そのニュースが高校中を駆け巡る。

動揺するバレー部員たち。
野球部なのにサボってばかりの宏樹は桐島の親友ながら何も聞いていない。
桐島の彼女で校内でも美人で有名なの梨沙は、彼と連絡がつかないことに苛立つ。
宏樹の彼女・沙奈は友人の梨沙を案じる。
無神経な沙奈に静かに憤りを感じているバトミントン部の実果。
同じくバトミントン部で実果の友達かすみはいつも謝ってその場を凌いでいる。
宏樹に想いを寄せている吹奏楽部の沢島。
学校でゾンビ映画を撮っている映画部の前田。

この中で、桐島のことで騒いでいるのが運動部の連中とその取り巻き(友人だったり恋人だったり)であり、そんなことを全く意に介していないのが文化部という描写が面白い。

運動部は容姿が端麗なリア充たち、文化部は人にバカにされがち、あるいは地味な非リア充たち、というスクールカーストが確立されているのが凄くリアルだ。

でもそこに共通するのは、皆何かに一所懸命であるということ。

バレー部はエースが抜けた穴を埋めようと練習に励み。
実果とかすみも部活をサボらない。
沢島は屋外練習にかこつけて、いつも宏樹を見つめている。
性格に難ありの梨沙と沙奈だって恋愛に夢中だ。
前田を監督に据えて『生徒会・オブ・ザ・デッド』を撮る映画部の情熱もあつい。

一人だけ、宏樹を除いては。

彼の立ち位置がとても印象深かった。
野球部ではそれなりに活躍していたらしいのに、全く部に出なくなり、それでも3年のキャプテンに怒られるわけでもなく、見学だけでもと誘われたりしている。
桐島ほどオールマイティに何でもこなせるわけでなく、でも彼の二番手くらいにはいる人気者。
顔だけはかわいい彼女がいても、別にそれほど夢中になっている様子もない。

桐島の件で、皆が右往左往し、関係の無い文化部まで巻き込まれ、怒涛のクライマックスを迎えた後に、彼は自分に何もないことに気づく。

野球部キャプテンが望みが殆ど無いドラフトを待って、今でも引退せずに練習に励んでいること。
自分の限界を知り、映画監督にはなれないだろうけれど、でも今自分の撮りたいものを撮っている前田の姿。
そんな夢中になれるものがない自分に涙するシーンはとても印象深かった。

学校のヒエラルキーの上部に属する人間の哀しさをこんな風に表現できるなんて、凄い。

さて、その序列で下層にいる映画部の面子は、その誰もが見事に冴えない奴ばっかりで笑えると共に親近感がわいて仕方なかった。
だから彼らがロケーションにこだわったり、リアルでないと先生にこき下ろされながらも脚本を変えなかったりといったエピソードがとても愛しい。
特に前田は、『鉄男』を偶然観に来ていたかすみに恋をし、夢中でマイナーな映画の話をふったり、その後思わせぶりな態度にメロメロになり、でも実は彼女がクラスのチャラい男とつきあっているのを知って傷心したりと、その言動がたまらないものがあった。

そして少し前述したけれど、屋上でのクライマックス、ドキュメンタリータッチでリア充たちをゾンビに襲わせ、カメラをまわすシーンは最高に気分が高揚した。
彼らの撮るシーンが、時折ロメロの作品とリンクする。
好きだったかすみが首を噛み千切られて絶命するイメージは、彼の失恋の終着点だったのかもしれない。

さて、彼らを振り回すだけ振り回した桐島は、最後まで姿を現さない。
これは『レベッカ』や『シルビアのいる街で』と同じ手法かな。
どれもタイトルロールにありながら、その名前だけしか出てこない、それが逆に存在感を増すというミステリアスな感じがとても効果的だった。

「金曜日」がだんだん遡って全体を把握していく構成も面白いし、せつないラストカットも良いし、ここでいきなり今年のマイベストに食い込んできた作品だった。

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1. 文化部 × 運動部 × 帰宅部 〜『桐島、部活やめるってよ』  [ 真紅のthinkingdays ]   2012年11月20日 08:45
 バレー部キャプテンにして学校の中心人物「桐島」が部活を辞める−−。金曜日 の放課後、そのニュースが校内を駆け巡る。桐島の親友・宏樹(東出昌大)や恋人 の梨紗(山本美月)はもちろん、彼らとは最...
2. 映画「桐島、部活やめるってよ」感想  [ ポコアポコヤ 映画倉庫 ]   2013年04月18日 17:13
原作は、数年前に面白く読みました。

この記事へのコメント

1. Posted by latifa   2013年04月18日 17:19
リュカさん、こんにちは!
やっとこれ見ることが出来ました。
私は以前原作の小説を読んでいたので、登場人物とか、だいたいの流れは知っていたので、沢山人が出て来ても今回は混乱せずに済みました。

小説ではね、橋本愛さんと神木君は、中学時代(もしかしたら小学校だったかも、忘れちゃってすいません)、映画に一緒に行くような、かなり恋人に近い関係だったんですよ。ところが高校に行ってから彼女はリア充で、神木君はカースト下な感じになっちゃって、凄く距離が出来てしまって、すれ違っても挨拶も交わさない様な関係になってしまっている。って設定だったんです。

彼の方は、久しぶりに映画館で(それもマニアックな映画で)ばったり会って、話が出来て嬉しかったんでしょうね。
彼女は、偶然、鉄男を見に行ったわけじゃなくて、結構マニアックな映画も好きな人だったから、ちゃんと見たいという意志を持ってあの映画を見に行ったはずです^^

ところで、2月の記事ですが、恒例の劇場プレゼント品、とても羨ましく、楽しく拝見しました!
インド風のお弁当箱みたいなやつ。あれ、いいですねー。よく旅行番組なんか見てると、インドの現地の人があれをぶら下げて歩いてたりするので、興味津々でした。
2. Posted by リュカ   2013年04月21日 23:56
latifaさん、こんにちは。
返信が遅れてすみません。

うわ〜、やっぱり原作を読んでいる方の情報は貴重ですね!
愛ちゃんと神木くんは昔そんな仲だったんですか。これは意外でした。
『鉄男』も、あれは彼女の趣味だった、いや単に偶然何も考えずに観に行った、と公開当時周囲で論争(?)していたのですが、これではっきりしました。
なるほどね〜。神木くんが有頂天になるのも判るわ。

インドのお弁当箱、あれは当たりの特典だったと思います。インドではポピュラーな形なんですね。
入手できてラッキーでした♪

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