2014年06月22日

サード・パーソン

B00NLW6L7Aサード・パーソン [Blu-ray]
2013年 イギリス/アメリカ/ドイツ/ベルギー
監督:ポール・ハギス
出演:リーアム・ニーソン
   ミラ・クニス
   エイドリアン・ブロディ
   オリヴィア・ワイルド
   ジェームズ・フランコ
   マリア・ベロ
   キム・ベイシンガー
   モラン・アティアス

by G-Tools


三人称の“彼”

ネタバレ有りです。

パリ。
作家のマイケル(リーアム・ニーソン)はホテルで新作を執筆中。そこに奔放で魅力的な愛人アンナ(オリヴィア・ワイルド)が訪ねてくる。

ローマ。
アメリカ人のスコット(エイドリアン・ブロディ)は、ひょんなことから知り合った現地の美女モニカの娘の救出を助けることとなる。

ニューヨーク。
元夫リック(ジェームズ・フランコ)と、子どもの親権問題で争うジュリア(ミラ・クニス)。彼女は生活のためにホテルの客室係として働き始める。

マイケルが三人称で小説を書いている、という時点で、ああこれはローマ編とニューヨーク編は彼の小説の中のできごとなんだなと予想はできてしまった(ドヤ顔)けれど、それでも構成の妙に唸る。

現実で起こった出来事は、マイケルが愛人からの電話にかまけたほんのわずかな時間で、目を離した幼い息子がプール(多分)で死んでしまう。そのことから立ち直れない彼と、その妻エレイン(キム・ベイシンガー)。
マイケルの日記で、自分にその死因があったことを知ってショックで去っていく愛人アンナ。彼女は実の父親と近親相姦関係にあった。

多分これが実在する人物たち。
彼らの抱えた傷、罪悪感、そして愛がその他のキャラクター(=マイケルの小説の創作人物)に投影されていく。

息子を自分の不注意(ビジネスの電話に出て子どもから目を離して死なせてしまった)スコットは、そのままマイケルと繋がる。だから彼は紆余曲折しながらも、もうひとりの子供(モニカの娘)を取り戻すことに身を挺し、有り金も全部はたく。
この娘が本当にいるのかどうか、その姿が最後まで見せない、マクガフィン手法は、とても小説的だと思う。

それからこれは公式サイトのレビューで判ったことだけれど、NYのリックとジュリアのエピソードは、アンナの両親を描いていたのではないかということ。これは目から鱗だった。
彼らの子供は息子だけれど、これはフィクションとして置き換えられた。息子なのに名前が「ジェシー」でおかしいなとは思ったけれど、この説を読んで納得。
子供を過剰に庇護するリックが、ことが過ぎて近親相姦に及んだという背景の描写。

「白。それは信頼の色」とマイケルが小説に書くと、登場人物たちはこぞって白を身に纏う。アンナの部屋に飾られた白いバラも。でもそれは同じく登場人物によって破壊され、あるいはスコットのように白いシャツを脱ぎ捨てて新しい柄ものシャツに変えられる。
それは欺瞞と韜晦であることの象徴のようでもある。


そして交わるはずのない彼らが出会い、言動がリンクしていく様子は圧巻。
ホテルのメモ、水没させた時計(子供の水の事故と帰ってこない時間の暗喩?)、トラウマを乗り越えてのプールへのダイヴ、やがて彼らはふっとその場面から姿を消す。物語の終わりを告げるように。

そうしてひとり、マイケルだけが部屋に残される。
いくら自分を“彼”と呼び、三人称に仕立て上げても。
現実は罪を背負い、激しい愛にもやぶれた作家がそこにいるだけ。


「見ていてね」
という最後の息子のつぶやきをずっと聞き続ける彼は、また作家として成功を収めるだろうけれど、罪悪感と孤独感からは決して逃れられない。

今までハズレなしのポール・ハギス。今回も素晴らしい作品を作ってくれた。


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