2014年06月29日

闇のあとの光

B00NMVPK6S闇のあとの光 [DVD]
2012年 メキシコ/フランス/ドイツ/オランダ
監督:カルロス・レイガダス
出演:アドルフォ・ヒメネス・カストロ
   ナタリア・アセベド
   ルートゥ・レイガダス
   エレアサル・レイガダス
   ウィレバルド・トーレス

by G-Tools


赤い視線とひとすじの光。

ネタバレ有りです。

ファーストシーン、幼子が馬とともに湿地で牛を追っている。
無邪気に動物と戯れる少女を、おもむろに嵐の前のような不穏な暗さが包み込む。
“闇”の到来。
それと呼応するかのように、少女の家に「赤い何か」が現れる。

この「赤いアレ」が凄い。

赤いアレ


見た目が動物の頭と人間の男性器と尻尾を持った悪魔のような形態。
「彼」は忍び足で家族の眠る部屋を覗き込む。
ただそれだけで、これ以降もう一度だけ「彼」は出てくるのだけれど、その存在が何だったのかいっさい説明はない。
なので自分なりの解釈を後述。

その家には、フアンとナタリアという夫婦と、幼い兄妹(妹は冒頭に出てきた少女)が住んでいる。
若干倦怠期気味の夫婦は、小さなことで云い争いをしたり、乱交が行われている浴場に出向いたりもしている。
フアンと知り合いのセブンはアル中で、家族を半ば見捨てて暮らしている。彼はよからぬことに手を染めようとしていた。

そのひとつの家族の一部始終が、ときおり扇情的な映像を挟むものの、淡々と流れていく。

映像は独特で、多くの場面で、真ん中だけにフォーカスが当たり、枠がぼやけるエフェクトが成されている。
それはまるで「赤いアレ」の眼であり、「彼」の一人称カメラのようだと思った。
「彼」が見つめる一組の家族。犬への虐待も乱交も日々の仕事も。ありのままを見つめる姿なき者の目線。


その「赤いアレ」が家族に不幸をもたらしたとは考えにくい。
なぜか道具箱を持つ「彼」は逆に「構築」を司っているようにも見える。

実際には、家族の留守中を狙って空き巣を働こうとしたセブンが、フアンに見つかり、彼を銃殺してしまうという悲劇が起こる。
「赤いアレ」を悪魔と捉えることももちろんできる。

けれど、段階を追って幼かった兄妹の成長していく姿を挿入させているのが興味深い。
それをまた「赤いアレ」の視線は追っている。
この兄妹の成長こそが、闇のあとの「光」なのかもしれない。
それを見守り続ける赤い視線。

最初の方と、ラストシーンに物語とこれまた全く関わりのないラグビーシーンが映し出される。
そこでも空は曇天。
でも選手たちの迸るような若いパワーが力強くそこに息づいている。
そう、漲る生命力のような。
それもまたひとすじの光なんだろう。


感覚を研ぎ澄まされる、圧倒的な映像美。傑作。


トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔