2014年11月11日

トム・アット・ザ・ファーム

B00T77LBAKトム・アット・ザ・ファーム [Blu-ray]
2013年 カナダ/フランス
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:グザヴィエ・ドラン
   ピエール=イヴ・カルディナル
   リズ・ロワ
   エヴリーヌ・ブロシュ

by G-Tools


捕らわれたのは僕。囚われにいったのも僕。

ネタバレ有りです。

紙ナプキンにトムが亡き恋人への思いを綴るファーストシーン。
青いインクが、まるで彼が流せない涙を吸収したかのように滲むところから始まる呪縛。
やがてそれが恋人の兄フランシスの暴力的な縛めによる歪な恍惚に変わるストックホルム症候群と共依存。

閉鎖的な田舎の保守的な世界。
そこで生きていくことを選びながらもうんざりしている兄フランシス。
そこから逃れた弟ギョーム。
弟を溺愛していた、閉じた世界で暮らしてきた母親。
そこでは同性愛など命取りであり、だからトムも彼らの母親に自分の素性を明かせない。

この同性愛が非常に大きなネックとなっている作品。

そこに大きく介在しているのはダンスシーン。
実際に踊るシーンはトムとフランシスのタンゴのワンシーンしかない。
けれどその後の会話で出てくるダンスのエピソードはすべて同性愛絡みだ。

トムとフランシスのタンゴ。
お互いがお互いにギョームを投影しているのは間違いない。
ここでのひとときの安寧と恍惚感がすばらしい。

「踊れるんだな」と云われ曖昧に微笑むトム。ギョームに習ったのだというのは明白。

そしてフランシスが弟のダンスの相手にひどい暴力を振るったエピソード。
弟がホモであることを仄めかされたからだ。

このダンス=同性愛要素として捉えると、フランシスとギョームの近親相姦の可能性も見えてくる。

でも物語はすべてをはっきりとはさせない。
トムの心情も行動も同じ。

最初は粗野なフランシスからどうにか逃れようとしていたトム。
けれど彼はどうしようもない引力に牽かれるようにして戻ってきてしまう。

引き摺られる牛、横臥する子牛の死体がそれぞれトムとギョームの姿のようで、農場を統べるフランシスの狭い世界にトムが囚われていくのが見てとれるようだ。画面のアスペクト比が変化するのは、そのまま彼の視野狭窄、そして迷いや惑いのように見える。

そして弾圧されるセクシュアリティとその秘匿、母親への責任の重圧さに押し潰されそうになっているフランシス視点で見ると凄くせつない。

トムとフランシスの間に濃密な親愛さがそこかしこに漂うもの見逃せない。
実際にキスひとつ交わさないにも関わらず。


最初は間隔を空けて置かれていたそれぞれのベッドが、数日が経過したあとにはぴったり横づけされていたり。
前述のタンゴシーンだったり。
首絞めのシーンもひどくエロティックだ。

そんなフランシスの元をようやく去るトム。
けれどエンドロールが終わるまで彼は迷う。
最後の最後まで。
握り締めたハンドルを彼は農場に向けてきるのか。それとも。
観客の予想に委ねたラストがにくい。

とにかく『マイ・マザー』 『胸騒ぎの恋人』 『わたしはロランス』と恐ろしい才覚をもって作品を作り続けているドランの傑作。
これは見逃す手はないよ!


cocoroblue at 04:08│Comments(0)TrackBack(0)││ホモ 

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