2014年12月16日

ゴーン・ガール

B00NLZRZ4Aゴーン・ガール [Blu-ray]
>2014年 アメリカ
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ベン・アフレック
   ロザムンド・パイク
   ニール・パトリック・ハリス
   タイラー・ペリー
   キャリー・クーン
   キム・ディケンズ
by G-Tools


愛しきエイミーはすべて去りゆく。

ネタバレ有りです。

レボリューショナリー・ロード』のラストシーンは印象的だった。
周囲のゴシップを喋りたおす妻の傍らで、夫は補聴器のボリュームを絞る。それが結婚生活を保つコツだとでもいうように。
それを見て「結婚って何だろう?」と思いを馳せずにはいられなかった。
『ゴーン・ガール』にもその答えの一片が示されている。

エイミーは聡明で美人でユーモアも解す「完璧な」女性でありながら、彼女をモデルとして書かれた著書『アメージング・エイミー』の「アメージング」さには及ばなかった。
それは理想の相手と結婚したと思っていたのに、月日が経つにつれてその生活と夫に失望していく彼女にとって、またまざまざと現実を叩きつけられた辛い瞬間だったろう。

彼女はあらゆる場面で「みんなに好かれるエイミー」を演じつづけてきた。

その最たるものが、彼女が失踪を自作自演するために綴ってきた日記の中のエイミーだ。
そこでの彼女は、傷つきやすく、思いやりがあって、どんなことがあっても夫を愛していて、でも彼の暴力に怯え、彼が望まないから妊娠もできない、守ってやりたくなる存在。
でも事実は、夫のDVなど皆無で、子供も彼女の意思で作ることをせず、夫の浮気現場を見て逆上した「どこにでもいる存在」だった。

ただその「よくあること」に対しての復讐の仕方、その後の心の移り変わり、最後の驚くべき行動が、彼女の自己愛の強さとプライドの高さの表れであり、それはモンスター並みに強烈な存在となった。

夫を殺人犯に仕立てるために、自ら多量出血し、ありとあらゆるところに罠を張る。
逃亡先で髪を染め、わざと太り、自分の存在を隠す。
金を取られてしまい、高校時代の自分の絶対的な崇拝者であり恋人だったデビーと連絡をとって彼の別荘に匿われる。
夫が心を入れ替えると懇願する姿を見て「やり直そう」と心変わり。
邪魔なデビーを殺し、彼に誘拐されてレイプされたので正当防衛で彼を殺して逃げてきたのだと警察とマスコミを信じ込ませ、夫の元へ帰る。
そんな妻を受け入れられず、真実を公表しようとする夫に、以前不妊治療のために持っていた彼の精液を使ってまんまと妊娠。夫との結婚生活を維持。

と、こう書き出してみるだけでエイミーの行動はもの凄すぎる。

前半は殺人犯と疑われる夫ニックの受難と、エイミーの偽日記エピソードが交互に語られ、途中からこの「真の」エイミーの視点が挿入されていく。
わたしは原作を読んでから観たので、その時はエイミーに対して嫌悪感しかなかったのだけど、映画で観ると、ここまでやり遂げられる凄さに軽く尊敬の念を抱いてしまいそうになった。

デビーの家の監視カメラの前でレイプされた後を演じてみたり。
やっぱりレイプされた痕をのこすために瓶を使って(!)性器を傷つけたり。
哀れな姿でよろよろと夫の前に現れ、周囲の目を意識して腕の中にバタッと倒れてみたり。

いやもうここは笑うところでしょう。
まさかこの映画でこんなに笑えるとは思わなかったよ。


そして最後の行動、決定的な妊娠。
それがニックに全てを諦めさせた彼女の最大の罠。

繰り返しになるけれど、彼女はずっと演じ続けていた。
みんなが大好きなエイミーを。
どうやったら愛されるか熟知しているエイミーを。
あの本の中のような。
でも本当は彼女はいなかった。
エイミーは、少女はいなくなってしまった。
それもとっくの昔に。
けれど彼女は「アメージング・エイミー」でこれからもあり続ける。


原作では、ニックがそんな彼女に対して
「きみが気の毒だからさ。毎朝目を覚ますたびに、きみにならなきゃならないから」
と云うシーンがあって、この言葉がすべてを表している。

エイミー役のロザムンド・パイクがとにかくお見事。
ファーストシーンとラストシーンが同じながらも、彼女の表情の変化にぞっとする。
ニック役のベン・アフレックのハンサムだけどどこかまぬけな感じもハマっていた。
他のキャストも原作のイメージ通り。(特にマーゴ)
フィンチャー、今回も凄い作品を撮ってくれた。


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