ちょこっとホモ

2014年06月18日

ウィズネイルと僕

B00LVDXAI4ウィズネイルと僕 [Blu-ray]
1987年 イギリス
監督:ブルース・ロビンソン
出演:リチャード・E・グラント
   ポール・マッギャン
   リチャード・グリフィス
   ラルフ・ブラウン
   イケル・エフィック
by G-Tools


ひとつの時代の終わり。

ネタバレ有りです。

売れない役者同士のウィズネイルと「僕」。
しみったれた貧乏生活から逃れようと、ウィズネイルの叔父モンティの別荘へと繰り出す。
しかしここでも他人の好意に頼りっぱなしで、しかもその内の一人の怒りを買い、報復に怯える2人。
そこにモンティがやって来る。
彼はゲイで、同じく「僕」がゲイであるとウィズネイルに吹き込まれて、「僕」の寝室に忍び込む……。

雨のロンドン。
田舎の湿地。
ヤクと酒と漂う濃厚なホモセクシュアルの匂い。
60年代の空気感と、ちょっと悲惨でそれでいてユーモアに富んだ青春譚。

先の見えない生活にうんざりしながらも、「僕」はウィズネイルに振り回され、その刺激的な彼から離れない。
ウィズネイルもそんな「僕」と何だかんだで楽しそうにつるんでいる。

ただ、『トレインスポッティング』しかり、『マイ・プライベート・アイダホ』しかり、どちらかが別の生活や方向性を見出した時に不意にその関係性は終わりを告げる。

ちょうど60年代が終了しようとしていた時に、彼らがはなればなれになるのは象徴的だ。
ひとつの時代、表面はどん底ながらも楽しい時代の終焉。


オーディションで主役を勝ち取った「僕」はアパートを出て行く。
「役のために髪を切るなんて」とさんざ云われていたその髪をばっさり切って。
雨の中、別れるふたり。

その後ひとりきりでハムレットを、公園の狼を観客に演じるウィズネイルのシーンはまさに名場面。
雨がまるで喝采のように彼に降りしきる。

ゲイの登場人物とそれを揶揄するネタが満載ながら、ウィズネイルと「僕」の間に性的なそれは介在しない。
だからこそウィズネイルが怯えて「僕」のベッドにどうしても入りたがるシーンは爆笑ものだし、どこかでずっとつながっていた彼らが離れていくラストにぐっと来る。

昔から評価が高くてずっと観てみたかった作品。
ようやく再上映になって念願が叶ったことがとにかく嬉しい。


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2012年12月05日

007 スカイフォール

B00B1NYC72007/スカイフォール ブルーレイ版スチールブック仕様 (5,000セット数量限定生産) [Blu-ray]
2012年 イギリス/アメリカ
監督:サム・メンデス
出演:ダニエル・クレイグ
   ハビエル・バルデム
   ジュディ・デンチ
   ベレニス・マーロウ
   ナオミ・ハリス
   レイフ・ファインズ
   アルバート・フィニー
by G-Tools


母と息子(たち)の物語。
そして
"What makes you think it's my first time?"

ネタバレ有りです。

あのサム・メンデスが監督ということで楽しみにしていた本作。
007シリーズは、ダニエル・クレイグがボンド役になってからしか見ていないけれど、これまでとはまた異彩を放った感じでとても良かった。

お約束的に、ボンドが美女と寝て、その彼女があっさり殺されて、というパターン(いやよく知らないけれど)も踏まえてはいたけれど、まさかジュディ・デンチ演じるMがボンドガールだったとは思いもよらなかった。

しょっぱな、MI6のハードディスクを盗んだ犯人と逃走劇を繰り広げるボンド。
相手と揉み合っていた時にMによる射撃命令がくだされ、敵でなくボンドに弾が当たり、彼は橋の上から落下していく。
その後治療を受けたと思われる異国の地で、現地の女性と寝たり、手の甲にサソリを乗せて酒を飲み干すギャンブルをしたり、Mに対して拗ねまくるボンドが可愛い。

それでも彼は彼女に見捨てられたとは思っておらず、まるで母親に敬服するように(口ではビッチと呼んでいたりもするけど)、彼女と彼女の組織を守ることに尽力する。

それと対照的なのが、かつてのMの部下で、今はその私怨のみで復讐を企てているシルヴァ。
彼の鬱屈したキャラはとても興味深く、まるで母に捨てられたような小さな息子のように、その愛憎はどちらも深く淀んでいる。

“母”を守る男と追い詰める男。
そのどちらもが、優秀なエージェントであり、“母”を愛するがゆえにベクトルを違えているのが面白い。


冒頭の追跡劇、地下鉄でのアクション、ボンドの生家スカイフォールで繰り広げられる銃撃戦とアクションも見所満載。
シルヴァを斃し、でもMをその腕の中で失ってしまうボンド。
ゆっくりと目を閉じるMの姿は、ヒロインの名に相応しい。
裁判所で、MI6としての矜持をテニスンの詩で言い表した彼女の毅然たる姿も印象深い。

さて、もうひとつ個人的に見所が。
ニュースになって一部で騒がれてはいたけれど。
シルヴァ(どうやらゲイ)にはだけた胸や顔や果ては腿のあたりを愛撫され、ボンドは言う。

「どうして僕にとってこれが初めてだと思うんだ?」

個人的見解、いや限りなく願望に近い意見を言わせて頂けるなら。
ボンド、男性経験有りです。
ガチでした。


こういう今までだったら有り得ない試みをしてくれるから新シリーズは好きだ。

あとは、新Mとなるレイフ・ファインズ、ちょこまかしていてとても可愛いQ役のベン・ウィショーと好きな役者さんも揃い、これからの登場が期待できるというもの。

ダニエル・クレイグが007である限り、絶対今シリーズは追っていこうと思う。

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2012年08月01日

ロック・オブ・エイジズ

B007PKSN6QRock of Ages
2012年 アメリカ
監督:アダム・シャンクマン
出演:ジュリアン・ハフ
   ディエゴ・ボネータ
   ラッセル・ブランド
   ポール・ジアマッティ
   キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
   アレック・ボールドウィン
   トム・クルーズ
by G-Tools


トップスターは猿を連れ歩く。

ネタバレ有りです。

1980年代、ハリウッドのサンセット通り。
田舎町からやって来たシェリーは、歌手になることを夢見て、伝説的なライブハウス「バーボンルーム」でウェイトレスとして働き始める。
彼女と恋仲になる青年ドリューもまたロック歌手志望者だった。

バーボンルームのオーナー、デニスは右腕的存在のロニーとともに店を切り盛りしているが、その資金繰りに四苦八苦していた。

そんな時、“ロックの神”と呼ばれているスーパースター、ステイシー・ジャックスがバンド解散ライブをバーボンルームで行うことを発表する。
しかし全盛期と比べ、彼の人気にも陰りが見られ、加えてグルーピーやペットの猿を連れまわし、酒に溺れる等の奇行を繰り返すことに、マネージャーのポールは頭を悩ませていた。

一方、市長夫人であるパトリシアは、ステイシーを筆頭とするロック界を糾弾しており、ライブハウスの前で抗議活動を続けていた。

彼らの夢や思惑はどこに行き着くのか。

とか書いてみたけれど、物語自体は本当によくある話で、新鮮味や面白さはほとんどないと言っていい。

シェリーは夢破れ、ストリッパーとして棒に巻きついて踊る失意の日々を送り、ドリューはポールに見出されてデビューを果たすも、ポップアイドルとしてニューキッッズオンザロックのような服装と音楽をさせられ(って画像検索してみたら、それほどの服装じゃなかった。ニューキッズって勝手にそんなイメージ持ってました)、自分のやりたい音楽とは遠ざかっていた。

デニスはポールに騙されて、ステイシーのライブ賃をごっそり持っていかれ、店の経営に行き詰ってしまった。

ステイシーもまた、自堕落な日常に戻るも、あの解散ライブの日、自分をインタビューしたローリングストーン誌のコンスタンスの叱責と慧眼さと魅力が忘れられずにいた。

そんな彼らが再びバーボンルームに集まっていく。
シンガーとしての夢を取り戻したシェリーとドリュー。
再び音楽に熱い情熱を見出したステイシー。
ポールはマネージャーをクビになり、バーボンルームは再起を果たす。

と、こういった何のひねりもなり顛末で、メデタシメデタシなわけだけれど。
そこを音楽のノリと勢いの力技で魅せてしまうのが凄い。

シェリーがバスの中で歌い出し、それに合わせて乗客もシングアソング。
このファーストシーンだけでもうワクワクさせられた。
そしてある程度年がいっている年代なら、一度は聞いたことのあるオーソドックスなナンバーが嬉しい。
特に「Don't Stop Believin' 」はシェリーとドリューの分岐点となる重要な曲。

ただ、歌はとても上手いけれど、この若い二人にいまいち魅力が感じられなくて残念。
その代わり馴染みのある俳優さんたちは見せ所がいっぱい。

なんたってステイシー役のトム・クルーズが弾ける、弾ける!
正直歌の方はそれほど上手いと思えなかったけれど、あの全身から吹き出すスーパースターオーラは歌手役でも健在。
トム・クルーズのボン・ジョビを歌う姿が拝めるとは思わなかった!
本人とても楽しんでるなあというのが目に見えて判るからこちらも燃える。
あと、彼がコンスタンスと交わす、今まで見たことがないような下品なディープキスは必見。

キスシーンといえば、デニス役のアレック・ボールドウィンとロニー役のラッセル・ブランドとの男同士のそれも見逃せない。
いつしか同士や主従関係を越えて恋に落ちていた二人。
彼らが愛を歌いだしたときは場内爆笑。
半ばヤケクソ的なキスシーンが素敵。

そして市長夫人役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。
彼女のパフォーマンスも見事で、正直主役よりももっと彼女を見ていたかった。
ツンとすましたエレガントな女性が、実はステイシーの昔のグルーピーだったと暴露され、最後は昔のボンデージ姿でライブハウスに繰り出すところなんかもう最高。

とりあえず楽しめたもんの勝ちだと思う。
繰り返すけれどストーリーはつまらないよ!

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2012年07月13日

ブラック・ブレッド

B0090CKO1Eブラック・ブレッド [DVD]
2010年 スペイン・フランス
監督:アウグスティ・ビリャロンガ
出演:フランセスク・コロメール
   マリナ・コマス
   ノラ・ナバス
   ロジェール・カサマジョール
   リュイサ・カステル
   マルセ・アラーナガ
by G-Tools


ぼくたちは完全には死んでいない。
でも毎日少しずつ死んで行く。

ネタバレ有りです。

物語は凄惨な殺人場面から始まる。
森で父とその子供が覆面の男に襲われて殺された。
その少年の幼馴染であるアンドレウは、瀕死の少年の最期の言葉を聞く。
「ピトルリウア」
それは森の洞窟に棲息していると言われる怪物の名前だった。

その殺人事件の容疑者としてアンドレウの父親ファリオルが浮上する。
彼らは政治思想を共にしていた左翼の同士だった。
母親もますます仕事で稼がなくてはならなくなり、アンドレウは祖母の家に預けられることになった。

夢見がちな少年のファンタジックな想像を全部打ち砕く現実という名の怪物。

そこにはスペイン内戦という大きな傷があり、大人も子供もその背景に傷ついている。
貧しい家庭に配給される黒パン(ブラック・ブレッド)、裕福な家庭でアンドレウに振舞われる白パン、という象徴的なタイトルロールにもある小道具が、内戦後の貧富の差をよく表している。

子供も、アンドレウの従姉妹で事故で片方の手首をなくしたヌリアに見られる喪失感と悪意が顕著だ。
彼女はこともあろうか先生と肉体関係を持っており、自分の裸で同級生に金を取ることを恥としていない。
いつかは貧しい大人の女性と同様に工場に働きにでなくてはならない将来に絶望している。
だから彼女の言動は過激で、奔放で、そして哀しい。

はじめはそんなことから逃れるように、アンドレウは羽のついた怪物ピトルリウアや、屋根裏に現れるという幽霊を信じて、怖がりながらもどこかワクワクしている風情がある。

スペイン内戦、幼い子供たちの想像力、というモチーフで思い出されるのが『ミツバチのささやき』、『パンズ・ラビリンス』だけれど、少女たちが空想の中で生きたのと違い、アンドレウは容赦ない現実を叩きつけられる。

ピトルリウアは実は実在する人間で、ホモセクシュアル、資産家の農場主マヌベンス夫人の弟と関係を持ったため、リンチに遭った青年だった。
去勢という残忍な仕打ちをしたのは、殺された男ディオニスとファリオルだった。マヌベンスによる指示だった。
ディオニスはそのことで農場主を脅し、マヌベンスはファリオルに依頼して彼を殺させた。

想像の怪物も、幽霊も、人格者だと思っていた父親も、その潔白も、信じていたものがすべて崩れ去った少年は、父親が大切にしていた鳥たちを全て殺す。
過酷過ぎる少年期の終焉。

少年が慕っていた、まるで伝説の怪物のように自由に空を舞うことができると吹聴していた森で出会った青年も、助からない命だと知る。
アンドレウの美しいおばも、安定のための結婚を勧められうんざりし、自由に恋愛をしているだけなのに周囲から娼婦扱いされている。
前述したヌリアの行動、ホモフォビア、殺人、保身、そのすべてを知るにはアンドレウには早すぎたのに。

ファリオルは死刑となり、口を閉ざすことを条件に、マヌベンスにアンドレウの将来を約束させる。
マヌベンス家に引き取られ、ブルジョアの学校で勉強するアンドレウ。
面会に来た母親を冷たい態度でやり過ごし、そのみじめな後姿に涙を見せるも、アンドレウは同級生の誰何に
「ただの配達人だよ」
答える。

黒パンから白パンへと食事を変えた少年の将来は安泰だろう。
けれど心はきっと冷えたままだ。



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2012年06月13日

ドリアン・グレイ

B007C13L8Sドリアン・グレイ [DVD]
2009年 イギリス
監督:オリバー・パーカー
出演:ベン・バーンズ
   コリン・ファース
   ベン・チャップリン
   レベッカ・ホール
   ダグラス・ヘンシュオール
by G-Tools


とりあえず、男同士のキスシーン必見。

ネタバレ有りです。

屋敷を相続し、ロンドンにやってきた美しい青年、ドリアン・グレイ。
初心で垢抜けない彼を、享楽の道に引きずり込むヘンリー卿。
ヘンリー卿に注意しろと何かとドリアンに忠告し世話を焼く画家で友人のバジル。
そんなバジルはドリアンの肖像画を描きあげる。
それは彼に生き写しの見事な出来だった。
ある日ドリアンは、肖像画の異変に気づく。
その絵は彼の傷や老いまでもを本体の代わりに吸収していた。
そして彼は若く美しい容姿のまま社交界に君臨する。

ドリアン・グレイを演じる、カスピアン王子ことベン・バーンズの美貌があったからこそ成り立った作品だと思う。
それくらいに、これでもかという端正な顔立ちが画面に映え渡り、その美しさを保つためにひとならぬ道へ堕ちていく愚かな主人公の行いに説得力がもたらされる。

女性との(一部男性も)絡みもやたらと多く、阿片と乱交で酩酊状態のドリアンのアップと、なまめかしい体が何度も出てくるのが印象深い。

女性陣は最後の方に美人のエミリー(レベッカ・ホール)が出てくるも、それまでは何だか田舎くさかったり、年を取っていたり、へちゃむくれだったりと、ドリアンの美貌を際立たせる存在に過ぎない女優さんをわざとそろえているように見えた。
いや、フィオナ・ショウの見せるいつもの存在感は凄かったけれど。
そしてここまで書いて、ドリアンの最初の恋人シビル役がレイチェル・ハード=ウッドと知ってびっくり。
パフューム ある人殺しの物語』の子だと気づかなかった。もっと可愛らしい子じゃなかったっけ?

ともあれ、個人的に一番の見所は冒頭に書いた通り、ドリアンとバジルのキスシーン。
絵を貸して欲しいと頼むバジルを何とかあしらいごまかそうとするドリアン。
彼はこの友人が男色家で自分に想いを寄せていることを知っていた。
だから彼の唇にキスをし、首筋を舐める。
ここまでされてもう辛抱たまらんとばかりにキスのお返しをするバジル。
その後性的な関係を結んだことが示唆され、バジルは篭絡されてしまう。

原作にないこの場面を入れたのは、男女問わず魅了してしまうドリアンの魔力を際立たせたかったからだろうか。
でも結局バジルは肖像画を見てしまい、ドリアンに殺されるという末路を辿る。

最初の恋人を死に追いやり、その兄を手にかけ、友人をも殺したドリアンは、彼を放蕩の道に誘いこんだヘンリー卿によって破滅させられる。
このヘンリー卿というキャラクターも面白く、不道徳で享楽的な男でありながら、年老いて普通に娘エミリーを溺愛するただの父親に成り下がり、「あなたが私を造った」とドリアンに詰られるところはごもっとも、という感じだった。
ぎらぎらした欲望を滾らせた危険な香りを漂わせてた時も、それが鎮まった晩年の姿の時も、演じるコリン・ファースは見事だった。

ヘンリー卿に絵を焼かれたドリアンは、のたうちまわる。
その醜く爛れ老いさらばえた絵もまた咆哮しながら暴れまわり、この辺のエフェクトは何となく安っぽいホラーじみていて残念。
それまでに、目の奥からにゅっと蛆が出てきたり、顔が爛れてきたりした描写の方がよっぽどぞっとした。
そしてラストカット、その絵は元の若く美しいドリアンの肖像そのままに戻っていた。
目に見えない悪魔と契約を結んだかのような青年の顛末。
劇場未公開で残念な思いをしていたけれど、ようやくレンタルリリースとなって嬉しい。

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2012年05月28日

ギャラリー 欲望の画廊

B0073Q2D54ギャラリー (欲望の画廊) [DVD]
2009年 イギリス
監督:ダンカン・ウォード
出演:ヘザー・グレアム
   ダニー・ヒューストン
   ジリアン・アンダーソン
   ステラン・スカルスガルド
   アマンダ・セイフライド
   アラン・カミング
   ジャック・ヒューストン
   クリストファー・リー
   シャーロット・ランプリング
by G-Tools


アートの世界で愛を叫ぶ(が、誰も聞いちゃいない)。

ネタバレ有りです。

ロンドンのアート業界に携わる人々の悲喜こもごも。
ある老人が所有するモンドリアンの名画「ヴギウギ」を手に入れようと躍起になる画廊のオーナー。
その友人夫婦で、互いが互いに不倫をしている芸術品収集家。
独立を試みようとしている画廊のスタッフ。
セルフポートレイトとして、いつも自分にカメラをまわすレズビアンの女性。
体の中に「育たなかった双子の片割」を宿し体調を崩す画廊に務める新顔のミニスカートの女性。
自分のアートを何とか売り込もうとしてアイディアを持ち歩いているゲイ。

目を瞠る豪華キャストで彩られた群像劇。
なのにここまで面白くならないのはある意味凄い。

あちこちでややこしい関係が繰り広げられる不倫や浮気にしても。
実はホモセクシュアルであった画廊オーナーのキャラクターにしても。
信じていた人にことごとく裏切られ、自殺し、結局前にバカにされていたゲイの彼のアイディアがそのバカにした張本人にパクられるエピソードにしても。
「ただそんなことがありました」って描写だけで、そこから何の可笑しさも発展も着地も見られない。

たとえば、アマンダ・セイフライド扮するミニスカート女性が、摘出した「双子のもう一人」の肉塊をガラスケースに入れてプレゼントされる件。
そこでプレゼントした男のあまりの無神経さに彼女は涙するのだけど、そのあとは何もなかったようにその男に傅く姿が描写され、あの涙に心を痛めた側は置いてけぼりをくってしまう。

ヘザー・グラハム演じる独立した新画廊オーナーも、レズビアンの子と肉体関係を持ち、その一部始終がアートとして公開され、なぜか今まで全く話に出てこなかった彼女の父親が出てきて
「こんなものはポルノだ」
と吐き捨てる場面も唐突すぎて何だったのか全く判らない。
芸術とポルノは、見る側によって変わり、それは紙一重なのだという皮肉なのかもしれないけれど、そんな要素を終盤にいきなりいれられてもなあ。

主軸のひとつである、「ヴギウギ」争奪の顛末が少し面白かったくらい。
結局破格の値をつけられても譲渡を許さなかった老人は、たばこによる火事で焼死(執事が見殺しにする)、くだんの絵も燃えつき、金がないのに絵を手放さない夫にうんざりしていた老人の妻は、執事とともに晴れやかな笑顔を見せる、というエピソードはブラックでなかなか良かった。

けれど見所の少ない作品であることには違いが無い。

群像劇の定石である、ラストに今までの登場人物が一同に会するというお約束も一応踏まえているのに、そこで何も起こらないし、かといってまとめられもしないという凡庸っぷりはひどい。

これを見るに、ロバート・アルトマン監督作や『マグノリア』はなんてよくできた群像劇だったのかと痛感する。

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2012年05月04日

裏切りのサーカス

B008MTJFE8裏切りのサーカス コレクターズ・エディション [Blu-ray]
2011年 イギリス/フランス/ドイツ
監督:トーマス・アルフレッドソン
原作:ジョン・ル・カレ
出演:ゲイリー・オールドマン
   コリン・ファース
   トム・ハーディ
   マーク・ストロング
   ジョン・ハート
by G-Tools


鋳掛屋、仕立屋、兵隊、貧乏人。
そして5つめのチェスの駒。

ネタバレ有りです。

東西冷戦下、英国諜報部〈サーカス〉で、二人の男がそこを去ろうとしていた。
コントロールという元リーダーと、彼の右腕スマイリー。
コントロールは、サーカス内にソ連の二重スパイ〈もぐら〉がいると目論んでいた。
そして彼の死後、スマイリーがその〈もぐら〉探しを始める。
コードネーム〈ティンカー〉〈テイラー〉〈ソルジャー〉〈プアマン〉の4人の親交や過去を調べるスマイリーと協力者のギラム。
浮かび上がってくるソ連の大物スパイ〈カーラ〉の存在。
テイラーの親友で作戦に失敗し死亡したはずのプリドーの生存確認。
誰がもぐらなのか?
そしてスマイリーはある罠を仕掛ける。

と、もっともらしく、劇場で手渡された概要と相関関係図を見ながらこんな文章を書いているけれど、実はかなりの部分判っていない。
とにかく状況説明が極小に抑えられていて、こちらが頭フル回転でストーリーと人物把握に努めなくてはならない。
今の誰だっけ?とか、今やってるのは何のためで結果どうなったんだっけ?とか、ハテナマークが頭を舞う始末。
ギラムがサーカス内で書類を持ち出す件も、あれは何がどうなって成功したのかさっぱり。
なるほど、頭が弱い人は向かない映画だと誰かが云っていたことに納得。

ただ、渋いオッサンだらけの世界で、スパイという題材なのに派手なアクションもカーチェイスもないノワールテイストはかなり好み。

余計な説明を排し、人物の表情だけで感情や緊張感を伝えてくるのも凄い。

この話の中で、重要なポジションの人物であるのに、最後まで顔をはっきりと見せない演出も良い。
それはカーラとスマイリーの妻アンの二人で、どちらもスマイリーとある意味深く繋がっている。
カーラはイギリスに捕まったときにスマイリーに二重スパイへスカウトされながらもそれを拒否し、死刑を覚悟で本国に帰っている。その短い逢瀬の中で、スマイリーの唯一の弱点が、浮気性ながらも最愛の妻アンであることを握る。
まるで『ユージュアル・サスペクツ』のカイザー・ソゼのような存在で(まあソゼは最後に顔が判るのだけど)、その顔が見えない分、そのモンスターのような存在感が際立っていた。

そして直接的なスキンシップなどいっさいないけれど、濃厚な同性愛が描かれているのも注目。

一人はギラムで、彼は危険を避けるために、同棲していた教師の男性の恋人を家から追い出す。
彼が出て行った後にむせび泣くその姿はなかなかたまらないものがあった。

そしてもう一組はテイラーとプリドー。
彼らは学生時代からの親友で、肩を組んで笑っている写真が何回か出てくるのだけど、そこでおや?と思っていたら最後にその仲が判明する。
回想でのパーティーシーン、ゆっくりじっとりと視線を交わす二人。
そして現在、もぐらと判明したテイラーとやはり瞳を交わすプリドー。
裏切り者の彼をプリドーは撃つ。
弾はテイラーの頬に当たり、まるで涙のように血が伝う。
そしてこちらは本物の涙を流すプリドー。
ここの演出はパーフェクト。
今までと同様、台詞での説明はいっさいないけれど、この二人が愛し合っていたことが判る。

役者さんたちもいぶし銀の演技で魅せる。
スマイリー役のゲイリー・オールドマンの重厚さ、渋さは凄い。
彼があの独特な壁のサーカスの部屋、しかもリーダーの席に座るラストシーンは素晴らしかった。
コリン・ファースもトム・ハーディーもジョン・ハートも、作品によっては見せる軽さを排除していた。

判らないところは数あれど、それでも満足のいく一本。
でも多分原作は必読だった。

余談。
わたしは「鋳掛屋」という言葉を知らず、「昭和を生き、尚通常の教育を受けてきた人間なら知っていて当然だ」と呆れられました。

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2012年03月19日

SHAME -シェイム-

B008CN6FC4SHAME -シェイム- スペシャル・エディション [Blu-ray]
2011年 イギリス
監督:スティーヴ・マックィーン
出演:マイケル・ファスベンダー
   キャリー・マリガン
   ジェームズ・バッジ・デール
   ニコール・ビヘイリー
by G-Tools


生きるということ。
何かに縋るということ。
そうせざるを得ないことによる恥。

ネタバレ有りです。

ブランドンは有能なビジネスマンで、瀟洒なマンションで暮らす独身男性。
けれど彼はセックス依存症であり、仕事以外の時間をほぼセックスや自慰に費やしていた。
そんなある日、ブランドンの妹シシーがマンションに転がり込んでくる。
共同生活を始めた兄と妹は、ともに問題を抱えていた。

主人公がセックス依存症であるということは、劇中ではその言葉は一切出てこない。
けれど、ファーストシーンで半裸の彼がベッドで横たわり、手が股間を触るか触らないかくらいの微妙な位置に置いてあるショットから、どことなくエロスを感じさせている。
その後は娼婦を呼んでセックスしたり、家で、または職場で繰り返される自慰シーンにより、その状況が明るみになってくる。
彼の会社で使用しているパソコンがウィルスにやられたというのも、もしかしてエロサイトを見ていて感染したのかも、と観ている側に気づかせるようにしてあって上手い(後にその通りのことが明示される)。

でもその最中、ブランドンは決して楽しそうではない。
渇きを癒すように、そうしていないと自己が保てないかであるように、性に依存した男は、だから“普通”の関係を築けない。これは悲劇だ。

デリヘル嬢や、ネットの向こうで裸を晒す女や、または行きずりのバーで出会った女性等、そういった彼女たちとは狂ったように体を重ねるのに、会社の同僚の美しい黒人女性とデートをして、きちんと会話をして、順を踏んで恋愛関係になってベッドインした時には、ブランドンは彼女に対して最後までできない。
自分への恥。
依存している心への恥。
その後彼が取った行動は、その羞恥心の極限だといえる。

恋仲になりそうだった同僚を帰し、そこに娼婦を呼んで窓際でセックス。
目と目をあわせただけの行きずりの男性に導かれ、ゲイのたまり場に連れて行かれ、ディープキスをし、フェラチオをされる。
どこかのホテルで行う金髪と黒髪の女性との3P。
このセックス描写に共通するのは、激しくありながらもエロティックさは不思議となく、そしてブランドンがエクスタシーを感じる顔が、ほとんど苦悶の表情であったこと。
そうすることしかできない自分への絶望と恥。

そんな彼とよく似た感じの妹シシー。
彼女はセックス依存症ではないけれど、どうやら誰かに依存していないと生きていけない娘らしい。
電話で元彼に縋ったり、自分を褒め称えてくれるブランドンの上司に、既婚者とわかっていながら身をゆだね、そしてしつこく追いすがったり。
それはブランドンが決して出なかった電話に幾度もかけてくる彼女の行動が全てを示している。

でもだからこそ、同じく依存症という弱みを抱えた二人は通じ合うものがあって、哀しい絆で結ばれている。

そしてその親密さは、もしかして昔近親相姦の間柄だったのではないかと推測もされる。
彼らは具体的な過去を話さない。
でも「環境が悪かった」ことは確かなようだ。
親から虐待されていたのかも知れない。
ネグレクトを受けていたのかも知れない。
その可能性のひとつとしての近親相姦は、ブランドンの感じている“恥”の大元となるだろう。

シシーの歌に涙するブランドンの姿が印象的で、彼はそこに「失ってしまった何か」を見出そうとしているかのように思えた。
彼らが純粋だった頃の。
何にも依存することのなかった頃の。
兄と妹として何の変哲もなかった頃の。
何かを。

シシーが自殺未遂をして、ブランドンは雨に打たれて号泣する。
そして部屋にあったエロ本やエロサイトが詰まったパソコンを端からゴミ袋に詰めて捨てる。
恥じるべき自分を捨て去るように。

ラストシーン。
初めの方の場面で、ブランドンが追いかけるも撒かれた女性と再び地下鉄で出会う。
彼女は挑発的に妖艶に微笑み、彼に近づく。
指には前と同じく左手薬指に大きなダイヤの指輪。
多分既婚者であろうその女性を、戸惑ったように見上げるブランドン。
ここで映画は終わる。
その後、ブランドンは彼女と一夜を過ごすのか。
何もかもふっきるには、依存症はそれほど簡単には治らないだろう。
また同じことの繰り返しが待っているのかもしれない。

ブランドン役のマイケル・ファスベンダーが見事な演技。
かなり思い切った役どころを、熱演しながらもどこか静かな佇まいももって魅せてくれた。
長まわしが多用されていて、それもよく乗り切った感じ。
シシー役のキャリー・マリガンはしょっぱなの登場シーンでまさかの全裸にびっくり。
キュートだけれども脆い感じがせつなくてよかった。

それからこれを観て、マイケル・ダグラスに謝りたい。
今までセックス依存症て!ってバカにしていてごめんなさい。

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2012年01月18日

スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団

B004U4QVJGスコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団 The Ultimate Japan Version [Blu-ray]
2010年 アメリカ
監督:エドガー・ライト
出演:マイケル・セラ
   メアリー・エリザベス・ウィンステッド
   キーラン・カルキン
   クリス・エヴァンス
   アナ・ケンドリック
   ジェイソン・シュワルツマン
by G-Tools


男には、戦わなくてはならない時がある。

ネタバレ有りです。

スコット・ピルグリムは、ある日ピンクの髪をした不思議な魅力を持つ女の子ラモーナと出会い、恋に落ちた。
けれどその時から、彼女の元カレたちが前に立ちはだかる。
彼ら7人を倒さなくてはならなくなったスコット。
さらにスコットにふられたチャイニーズ系の女子高生ナイブスが、彼を諦めきれずに出没するようになる。

コミックが原作とあって、擬音が文字として飛び出したり、キスをしたらハートマークが散ったり、元カレを倒すたびに賞金ゲット額が出たりと、マンガ的、ゲーム的エフェクトが楽しい

その元カレたち(一部カノジョも)も個性的で、ベジタリアンになることで超能力を得、でも実はチキンやジェラートが禁止だと知らないおつむの弱い子だったり、ナルシストでマッチョなアクション俳優だったり、まるでオースティンパワーズさながらの容姿と身のこなしのセレブだったりと、その顔ぶれだけでもやっぱり面白い。
そうそう、台詞はなかったものの、斉藤慶太・斉藤祥太が双子の元カレに扮していて、日本人の顔をここで見られたのがなんだか嬉しかった。

スコット・ピルグリム役には『JUNO/ジュノ』で冴えない男の子そのまんまで印象に残ったマイケル・セラ。
今回もその風貌は変わっていなかったけれど、さすがゲームオタクというべきか、最初っからけっこう戦闘力が高いことが意外性があって良かった。

でもその彼が一目で魅了されてしまったラモーナが、それほど素敵に見えなかったのが残念。
目がとても大きくて美人は美人なんだろうけれど……。
エキセントリックさも奔放さも中途半端。
これだったらスコットのストーカーとなって、男に殴られ蹴散らされ、でも最後まで戦うナイブスの方がよっぽど魅力的。
まあ一番かわいかったのはスコットの妹役のアナ・ケンドリックだったということで、これに異論はない筈(強気)。

さて、ここで出てくるゲイはスコットの友人役のキーラン・カルキン。
スコットに男同士でセックスしているところを目撃されたり、隣で寝ている男の数が次第に増えたり、スコットの妹の彼氏を奪って熱烈キスをしているところなんかは笑った。

こうしたキャラと演出を楽しむ映画で、なぜ元カレたちと戦うことになるのかとか理屈を求めると楽しめないかも(一応ラスボスが招集したと説明はあるけれど)。
あっけらかんとした明るさが凄く良い。

cocoroblue at 23:23|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2011年10月29日

柔らかい殻

B002QZYLFWReflecting Skin - Blu-ray
1990年 イギリス
監督:フィリップ・リドリー
出演:ジェレミー・クーパー
   ヴィゴ・モーテンセン
   リンジー・ダンカン
   シーラ・ムーア
   ダンカン・フレイザー
by G-Tools


子供視点からの、大人の聖なる狂気

ネタバレ有りです。

セスは、寡黙な父親とヒステリックな母親と暮らしている8歳の少年。
ある日彼は友達と一緒に、たまたまそこを通りかかったドルフィンという女性にいたずらを仕掛け、その後母親に厳しく叱られ、一人で彼女の家に謝りに行く。
ドルフィンは未亡人で、セスに亡き夫の形見を見せ、自分は200年生きていると吹き込み、すっかりセスを怯えさせてしまう。
こうして少年は彼女が吸血鬼であると信じ込んでしまい、妄想の世界にはまり込むこととなる。
そんな折、セスの友達が死体で発見される事件が起こる。
以前少年愛嗜好があったセスの父親がその容疑者となった。
けれどセスは信じていた。それがドルフィンの犯行であると。

少年期の繊細な感受性と残酷な思い込みによる悲劇をとことんまで敷き詰めた鬱なる良品。

少年は目に見えるものを何であるのか解さない。
彼の二人目の友人が、目の前でキャデラックに乗った数人の男に拉致されるところを目撃しても、思考の方程式は正しい答えを出さない。
それはドルフィンが吸血鬼であると信じ込んでいるためだ。
だからセスは保護者にも、保安官にもそのことを話さない。

父親はあらぬ疑いをかけられ、絶望して全身にガソリンを撒いて焼身自殺してしまう。
それを目の当たりにするセス。
でもやっぱり彼はどこか現実から乖離しているようだ。
火が燃え盛るところを、戦場帰りの兄キャメロンに嬉しそうに話す少年の姿が何だかせつない。

そしてこの兄の存在感が大きい。
彼は母親にとっての希望の光であり、セスの一番の愛する者でもある。
でも彼はドルフィンと恋に落ちてしまい、セスは吸血鬼の餌食にさせまいと心を砕く。
折りしも、被爆したと見られるキャメロンは日に日に弱っていき、セスはそれがドルフィンに生気を抜かれているためだと思い込む。

ゲイ差別による偏見、死してもなお疑われる父親、偏狂的な母親、と小さな環境の中で狂った社会に産み落とされた少年が妄想の中に没入していくのがなんら不思議でない描写が素晴らしい。

納屋で見つけた、柔らかい殻に包まれた、人形なのかそうでないのか、異形の赤子を、死んで天使になった友達とこれまた思い込んで夜な夜な話しかける少年の姿は、ぞっとするよりも憐憫の情の方が沸く。

そしてキャメロンと村を出て行こうとしていたドルフィンが、あのキャデラックの男たちによって殺害される。
その死体を見たセスは、走り出す。
そして広大な土地の中で、ただただ叫び続ける。
自分の世界が崩れてしまった痛ましい咆哮。
手にとる一握の砂が、その指の間から零れ落ちていくように、少年の信じていたものがすべて流れ去っていく。
この見事なラストシーンに、少年のその後に思いを馳せずにはいられない。

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2011年07月23日

BIUTIFUL ビューティフル

B0067DDCOABIUTIFUL ビューティフル [DVD]
2011年 スペイン・メキシコ
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:ハビエル・バルデム
   ブランカ・ポルティージョ
   ルーベン・オカンディアノ
   ディアリァトゥ・ダフ
   チェン・ツァイシェン
by G-Tools


綴りは、正しくないけれど。

ネタバレ有りです。

バルセロナで非合法な商売で生計を立てているウスバル。
コピー商品を売らせたり、不法滞在の中国人を集めて労働させたり。
彼には別れた妻との間に二人の子供がいる。
そんなウスバルは余命があといくばくもないと宣告される。
元妻は心を病んで行動が安定しない。実の兄と彼女はできていて、その兄も信用できない。
子供たちのために彼は何かを残そうと奔走するが……。

イニャリトゥ監督作はどれもがもの凄い感銘を受け、心酔しきっていたけれど、この作品は微妙だった。

そんな印象を残してしまったのは解釈をいくつも派生させてしまったラストのせいだと思う。
身内が誰も頼れないと判ったウスバルは、自宅に住まわせていたイヘというセネガル人の女性(ウスバルが商売を斡旋していた男の妻。男は逮捕され強制送還)に有り金を渡し、これで子供たちを養ってくれと頼む。
けれどイヘはその大金を持って故郷セネガルへ旅立とうとしていた。
駅で躊躇した彼女が列車に乗ったかどうかは判らない。
そしてその夜、ウスバルはドアの向こうに影を見つける。
「帰ってきましたよ」
とイヘの声が聞こえる。
けれどその実体は見えない。
代わりに天井に張り付いた人間の姿が。

ウスバルには死んだ者の姿や声を感知できる能力があるようだ。
これまでも現世に留まったままの死者がソファに座っていたり、やはり天井に張り付いたりしていた。

さて、ここで最後に天井にいた人間は誰なのか。
わたしはイヘなのだと思った。
彼女が駅で事故か強盗にでも遭ったかで命を落としてしまい、さまよえる魂だけが帰ってきたのだと。

でも確信が持てなかったので、レビューを読み漁ったら解釈は分かれまくっていた。
あれがイヘだという人。
ウスバルだという人(でもこの時点では彼は死んでいない筈)。
ウスバルを迎えにきた誰でもない亡霊だという人。
果てはウスバルと商売をしていた中国人だと解釈する人もいた。

ここを曖昧にしてしまったために、作品を評価しづらくなってしまった。

イヘが戻って来ていないのだとしたら、子供を託す人がいなくなって絶望が残る。
イヘが戻って来たのなら、今までのウスバルの行動が無駄でなくなり安堵できる。
この違いはかなり大きい。

父性の大きな愛を感じさせるこれまでのプロセスがよく描かれていただけに、惜しいと思う。

子供がウスバルに「ビューティフル」のスペルを聞き、
「発音の通りだ。biutiful」
と間違った綴りを教えるシーンは映画全体を象徴している。
表層の美や思いやりだけでない。
心から誰かを守り、何かを残したいと心を砕き、でも非合法なことに手を染めるそれは“beautiful”ではないけれど、“美しい”行為には違いない。

会ったことのない父親に誘われて天国の道を行くウスバルの、ファーストシーンと呼応したラストシーンは静謐で素晴らしかった。
だから返す返すも天井張り付き人間の描写だけが悔やまれる。

そして趣味的なことを最後に。
中国人二人のホモ関係はなかなか見ものだった。
片方は妻子もいるのに、仕事仲間の男性との情事にはまっていく。
トイレで耳朶やら下半身やらを愛撫されてたまらず相手にキスをするシーンはなかなか色っぽかった。
でもこの二人の顛末も悲惨で、結局妻帯者の方が相手を殺してしまうのだけど。

イニャリトゥとずっとコンビを組んでいた脚本家ギジェルモ・アリアガの不在が淋しかった。
次回作に期待。

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2011年07月13日

ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える

B004XCDH42ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える
2011年 アメリカ
監督:トッド・フィリップス
出演:ブラッドリー・クーパー
   エド・ヘルムズ
   ザック・ガリフィアナキス
   ケン・チョン
   ジェフリー・タンバー
   ジャスティン・バーサ
   ポール・ジアマッティ

by G-Tools


悪夢、再び。

ネタバレ有りです。

ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』の続編。

スチュが結婚することとなった。
フィル、アラン、ダグはそのためタイを訪れる。
結婚式前夜、男たちで慎ましく飲んでいた筈が、目が覚めるとフィル、スチュ、アランの三人は小汚いどこかのホテルにいた。
スチュの顔にはタトゥーが、アランは頭を刈り上げていた。
おまけに一緒にいた筈の新婦の弟テディがいない。
何とか式までに彼を見つけて帰らなくてはならなかったが……

面白いか面白くないかで言ったら間違いなく面白い。
好きか嫌いかで言ったらやっぱり間違いなく好き。

けれど、前作と展開がことごとく一緒というのはやっぱり問題。

アランが空気の読めないダメ男で、トラブルの発端を担い、珍道中のあちこちでフィルたちにブチ切れられたりするところとか。
そしてここぞというところで挽回するような活躍を見せるところとか。
銃で撃たれたり、死体を製氷機に放り込むハメになったり、豚の内臓と血をモロに浴びたりとかのフィルとスチュの受難も相変わらず。
手がかりをたどって、所々で昨夜の記憶の片鱗が見えるところ、絶対絶命、もうテディが見つからないと頭を抱えていたその次の瞬間ひらめいて彼の居所が判るところ、結婚式でそれまであったしがらみが解けるところともう枚挙に暇がないほどパターンが同じ。
しかも記憶のない一夜の記録がデジカメに残っていて、その一部始終をエンドロールで流すところまで一緒。

二番煎じを本家本元がやっちゃダメだろう。

まあそれでもキャラはたっているし、前作ファンだったらその面々にまた出会えたのは嬉しい限りだし、下ネタも不謹慎ネタも指を切るというグロさまで笑えてしまったし、前述した通り好きには違いない作品。

そうそう、下ネタといえば、スチュがおかまバーで男性とやってしまった件は大笑い。しかも受身ときたもんだ。
このシーンが例のエンドロールでばっちり拝める。

パート3も企画されているようだけれど、この顔ぶれを見られることに狂喜しながらも、パターン化されてしまわないか少し不安。

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2011年05月21日

名前のない少年、脚のない少女

B005RXZZRS名前のない少年、脚のない少女 [DVD]
2009年 ブラジル=フランス
監督:エズミール・フィーリョ
出演:エンリケ・ラレー
   イスマエル・カネッペレ
   トゥアネ・エジェルス
   サムエル・ヘジナット
by G-Tools


ミスター・タンブリンマンが歌っても、少年はその歌声についていくことはできない。

ネタバレ有りです。

最初の数十分で少々面食らった作品。
予告編も見ず、あらすじも知らず、ポスターデザインの少女に惹かれてふらりと劇場に入った映画は、予想していたものとは大分異なっていた。
不穏な汽笛の音。ネット上での散文。不吉な様相を纏った赤い橋。ホラーチックな少女の幻影。
ひとつひとつのシーンがスローで、意味不明で、全体像がつかめずにとても居心地が悪かった。
デイヴィッド・リンチ的な迷宮を彷徨う話かとも錯覚したくらい。

人物関係を把握できたのは中盤を過ぎてから。
主人公の名前のない少年は、動画サイトに投稿された一人の少女とその恋人との日常の様子をネットで見ている。
少女は少年の親友の姉。
彼女は既にこの世の人でなく、それは恋人のジュリアンと橋の上から身を投げて心中を図ったためだった。
その結果少女だけが死に、助かったジュリアンは再び町に戻ってきていた。
ジュリアンと何度もすれ違う少年。
サイトの少女を見ながら、少年は自分と彼女をいつの間にか同一視していた。
そして町のお祭りの日、群集から外れた少年は、ジュリアンに誘われてドライブに出かける。

死に纏わりつくイメージがひどく儚げで、美しくて、それは動画の中の少女のイメージに起因する
ビニールに顔を丸ごと包まれて呼吸する時の幼いあやうさ。
泥に塗れた恋人の手で汚されるレースの裾から露出する白い腕。
やがて少年は、実際に動画で見た以外のシーンも夢想する。
橋の欄干で強い風に佇む少女と恋人ジュリアン。
その最期の時を瞼に浮かべることによって、少女に、そして死のイメージに少年は近づいていく。

ボブ・ディランのライブに行くことを決心しても、それから先に何もないことを彼は知っている。
ときどきは親友や母親と笑いあうことはあっても。
日常への虚無を少年は埋められなかった。

だから彼はジュリアンの車に乗る。
死の向こう側へ行こうとした彼の近くに。
そして変電所に忍び込んだ彼らは、まるでホモセクシュアルの男たちのようにお互いの顔に手をのばす。
自分と少女を重ね合わせた少年と同じように、ジュリアンもまた少年に亡くなった恋人の影を見つけていたのかもしれない。

そして少年は少女の幻影とキスをする。
それはもしかしたら現実ではジュリアンと交わしたものだったのかもしれない。
ふっと町中の電気が落ちる。
再び灯りがともった時、少年はいる筈のないお祭りの広場に来ていた。
それはひとつの通過儀礼だったのだろう。
ジュリアンと共に少年は行くことはなかった。
退屈で先の見えない日常に彼はようやく帰ってきたのだ。

ラストシーン、橋を渡る少年の姿は、やがてフォーカスがぼやけ、そのまま暗転する。
その焦点をはっきり結ぶまでにはまだ時間がかかるだろう。
エンドロールの最後の方には川の流れが聞こえてくる。
悠久の流れの音は、少年のこれからの人生が続くことを暗示しているのかもしれない。

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2011年02月18日

団塊ボーイズ

B0017KL4VGWILD HOGS/団塊ボーイズ [DVD]
2007年 アメリカ
監督:ウォルト・ベッカー
出演:ジョン・トラヴォルタ
   ティム・アレン
   マーティン・ローレンス
   ウィリアム・H・メイシー
   レイ・リオッタ
   マリサ・トメイ
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まだ人生は詰んでない。

ネタバレ有りです。

ウディはモデルで金持ちの妻と離婚。おまけに仕事も上手くいかずに破産。
ダグは歯科医。家族から軽んじられていると感じ、ストレスを抱えている。
ボビーは恐妻家。今日も夢を追うことを禁じられ、詰まった他所の家のトイレを直しに行く。
ダドリーはパソコンおたくの冴えない男。女性にアプローチしようとしても失敗に終わる。
そんなオヤジたちが一念発起、ハーレーでロード・トリップに出かけることに。

基本的に中年男たちが夢に向かって、過去の栄光を取り戻したくて、現状を打破したくて、といった理由から頑張る映画は大好きで、この作品もお気に入りのひとつとなった。

前半に情けない現状が描かれ、途中でトラブルに巻き込まれ、メンバーの一人のロマンスがあり、仲違いする展開もあり、でも最後は絆を固める男たちといったまあ典型的なパターンではあるものの、その分安定感があり、最後まで楽しく見ていられた。

その中でちょっとしたゲイネタがまた面白い。

ダドリーは旅の途中で女性と恋に落ちるものの、それまでになぜかウディの背中に顔をおしつけて匂いをかいだり、キャンプで隣に寝た彼の体に腕を巻きつけていたり、更にはダンスのレッスンの時に勃起してしまったりする。
だからダドリーは潜在的にはゲイという設定のような気がする。
でも彼と結ばれたマギーはとても魅力的な女性なのでどちらでも良いぞ、お幸せに!

そして4人のキャンプ時や水浴びの時に姿を見せるゲイの警官。
勝手に彼らが乱交しているものだと思い込んで仲間に入れてもらいたがっている彼がいやに可愛かった。

キャストは豪華。
声が相変わらずセクシー、でも輪郭はこまわり君のジョン・トラボルタ。
歯科医でも医者だと言い張る(これ『ハングオーバー!』でもあったね)言動がかわいいティム・アレン。
職業が弁護士なのではというミスリードで笑わせてもらったマーティン・ローレンス。
情けないけれど可愛らしい、応援せずにはいられない佇まいをもつウィリアム・H・メイシー。
まつげの長さが変わらないレイ・リオッタ。
勝気な田舎の美女をやらせたらピカ一のマリサ・トメイ。
そして「LOST」のキーミー役のケヴィン・デュランド発見!

とにかく今まで邦題でスルーしていたのがもったいなかった佳作。

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2011年02月03日

人生万歳!

B004PW1WY2人生万歳! [DVD]
2009年 アメリカ
監督:ウディ・アレン
出演:ラリー・デヴィッド
   エヴァン・レイチェル・ウッド
   パトリシア・クラークソン
   ヘンリー・カヴィル
   エド・ベグリー・Jr
   マイケル・マッキーン

by G-Tools


最初出会った時は10段階評価で3だった女。

ネタバレ有りです。

ボリスはノーベル賞を獲り損なった偏屈な学者。妻と別れ、夜毎の不安症に悩まされながら日々を送っていた。
そんな彼の前に現れた若い家出娘のメロディ。
無知な彼女は天才ボリスの言動に惹かれ、ボリスもまたいつの間にか彼女と恋に落ち、二人は結婚する。
そんな新婚家庭にメロディの母親マリエッタがやって来る。そして父親までもがマリエッタを追って来て……

ウディ・アレンお得意のモノローグは、主人公が観客に向かって喋る方式。
「誰に向かって喋ってるんだ?」
「観客だよ。画面の向こうにいる」
「そんなバカな」
とボリスの友人や家族はそれを真に受けない。
「全体像を見ているのは僕だけだ」
とひとりごちるボリスは、そんな矮小な“普通の人々”に対して最後に寛容さとあたたかさを見せる。

それはずっとバカにしていた小娘メロディの天衣無縫な魅力に気づき始めた時から変化を見せる。
けれど運命のいたずらで、メロディがハンサムな俳優と心と体を通わせてしまった後も、自殺未遂こそすれ、彼は新しいカップルを祝福し、自分も投身自殺で巻き込んでしまった被害者の女性と結ばれる。

マリエッタも厳格で貞淑な妻だったのが、二人の男性と同棲し、フォトグラファーとしてファッションも生き方もがらりと変えてしまう。

メロディの父親も、バーで出会った失恋したてのゲイの若者と話す内に自らの同性愛指向を認め、その若者とできてしまう。

人生は何が起こるか判らない。
学術的なロジックでは解けない。
視野は狭い愚かな者ばかりだけれどそれでも愛しい。


今までの遍歴でそんな結論に達したかのようなボリスのラストの大団円は自然に口元が緩んでしまうほどの幸福感が味わえる。

語り口と展開の妙で飽きさせない良作であることは間違いないけれど、やっぱり主人公をウディ・アレン自身が演っていないことに違和感が残った。
あの神経質な指の動きと軽妙な早口、オドオドとした態度、どれもこれまでのウディが演じる役そのものだったので、変に屈強な体格のラリー・デヴィッドがそぐわない気がするのが難点だった。

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2010年10月24日

キャメロット・ガーデンの少女

B00005H3IHキャメロット・ガーデンの少女 [DVD]
1997年 イギリス・アメリカ
監督:ジョン・ダイガン
出演:ミーシャ・バートン
   サム・ロックウェル
   クリストファー・マクドナルド
   キャスリーン・クランイン
   ブルース・マクギル
by G-Tools


 「教えてくれ。俺の家はどこにある」
 「私の手の中にあるわ」

ネタバレ有りです。

十数年前に予告を見て、勝手に傑作に違いないと思い込み、鑑賞する日を心待ちにしていたのに、なぜか機会に恵まれず、やっと今回見ることができた。
大体が『レオン』や『シベールの日曜日』や『都会のアリス』のような、世間から孤立・疎外された男と少女の組み合わせが好みなもので、この映画も自分のストライクに入る筈だった。
けれど、思っていたものとは少し違った。

キャメロット・ガーデンに越してきた裕福な家族。一人娘のデヴォンは空想に浸りがちな10歳の女の子。
彼女の家で芝を刈るトレントは町の住人から軽蔑されて生きている青年。
彼に興味を持ったデヴォンは、トレントのトレーラーハウスに遊びに行くようになる。
距離を縮めていく二人。
けれどある誤解から、周囲はトレントをデヴォンに手を出した悪者として追い詰める。

貧富と学歴の有無によって公然とした差別がまかり通っている世界。
その描写がところどころに散りばめられていた。
トレントは働き先でトイレも貸してもらえず、ガーデンパーティーでは客にステーキが振舞われるも、彼に与えられるのはホットドッグのみ。そしてそれをネタにして賃金を搾取されからかわれる。
セクシーな女子大生はトレントと寝るものの、彼と一緒のところを仲間には見られまいとし、彼に話しかけられても無視をする。
ブレッドという青年の車にあったCDがなくなればトレントが疑われ、彼は常に敵対視されている。

でもそんなブルジョアたちの汚い面をデヴォンはちゃんと見て知っている。
パパは人をゴミ扱いし、ママはブレッドと浮気をしている。
ブレッドはデヴォンにも触ろうとし、それをパパに言うと
「くすぐっただけだろう」
で済まされてしまう。
その後のトレントへの攻撃を考えると、実に象徴的な場面だ。
富裕層のブレッドには疑いをかけず、社会的地位のないトレントの場合は娘に性的ないたずらをされたと思い込んでしまう。

だからデヴォンはそんな内面のどす黒さのないトレントに魅かれて行く。
一緒に鶏を盗んでチキンディナーを楽しみ、車の屋根の上で踊り、実の父親でさえ忌む手術の傷を受け入れてもらう。

と、ここまでは凄く良かったものの、その後トレントがショーンという元同級生の愛犬ドーベルマンを轢いてしまい、安楽死させようと撲殺したことでデヴォンがショックを受けて彼の元を去る“転”のシーンからどうもすっきりとしなくなってしまった。
その少女の証言から前述したように周囲はトレントがデヴォンに手を出したと判断してしまう。
この辺の少女の言動が理解できない。
繊細な心が動物の死で混乱し傷ついたのは判るけれど、傷を触るように言ったのは彼女自身。その説明をどうしてきちんとしないのか、たった10歳の女の子にそれを求めるのは酷なことなんだろうか。
けれど普段トレントを色眼鏡で見ていた周囲の疑いが決定的になる役割をまさか少女が負うことになるとは思わなくて。

なので、トレントを執拗に殴打するショーンを拳銃で撃ち、トレントを逃がす彼女の行為にすっきり合点がいかない。
そこまでされるとは思わなかったからこその助け舟だったのだろうけれど……

そしてラストシーン。
トレントは車で逃走する。
少女はその前に彼にタオルと櫛を渡す。
彼女がよく語っていた物語のように、追い詰められたらタオルを投げると、そこには川が溢れ、櫛を投げると森が林立し、追っ手をさえぎることができる。
それがその通りとなったあのシーンは、予告で現代のフェアリーテイルと謳っていたけれど、あれが現実とは到底思えない。
すべては少女の願望、そして幻想で、トレントは連絡を受けた警察に捕まっている気がしてならない。

デヴォンの告白さえなければ、そこはもの哀しいラストとして受け入れられたけれど、少女の責任が割に大きくて、モヤモヤしたものが残ってしまった。

見所はサム・ロックウェルとミーシャ・バートンの主演二人の芸達者ぶりが一番だけれど、個人的に同性愛者らしきショーンと、彼に威嚇のつもりか懐柔のつもりか、はたまた挑発のつもりか、思い切り唇にキスをするトレントのシーンにやられた。

とにかく見たいと思った日からあまりに長い年月が経ちすぎてしまったのも敗因のひとつかと思う。

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2010年06月25日

ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式

B0030FZU8Eハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式 [DVD]
2007年 アメリカ
監督:フランク・オズ
出演:マシュー・マクファディン
   ユエン・ブレムナー
   アラン・テュディック
   ピーター・ディンクレイジ
   ジェーン・アッシャー
   ルパート・グレイヴス
by G-Tools


おくりびとのいないお葬式

ネタバレ有りです。

ハウエルズ家の主が死んだ。
葬式当日、長男のダニエルは段取りと弔辞の文句に頭を悩ませていた。
妻のジェーンは夫を気遣いながらも、葬式後の引越しの敷金のことも夫に釘を刺すのを忘れない。
なぜ彼女が引越しにこだわるのか。それはダニエルの母親サンドラとの確執に原因があるようだ。

小説家として成功し、外国に住む次男のロバートも駆けつけた。
兄のダニエルは彼に大きなコンプレックスがある。

ダニエルの従姉妹のマーサは、葬式に恋人サイモンを連れてくる。自分の父親に彼との仲を認めてもらいたかったのだ。
が、サイモンは手違いで安定剤を飲む筈が、幻想を伴うドラッグを飲んですっかりラリってしまう。
そのドラッグの持ち主であるマーサの弟トロイは気が気ではない。

マーサに懸想しているジャスティン。
被害妄想の塊のハワード。
車椅子に乗り、横柄な態度を取り続けるアルフィー叔父さん。
関係者が続々と集まる中、背の低い見慣れない男が出席していた。
その男ピーターは、実は故人の愛人だった。そのことでピーターに脅されて金を要求されるダニエル。
問題の多い葬儀はこうして混乱を極めていった。

フランク・オズは好きな監督さんの一人で、キャラクターに対するやさしさ、軽やかなギャグ、そしていつもどこか同性愛要素をしのばせるところがお気に入り。

今回もピーターが浮気の証拠に見せる二人の「合体」写真に見た者皆が眉を顰めるわけだけれど、そのエグい映像を一切見せないところが良い。
なのにウンチはしっかり見せているところがどんなこだわりなのかちょっと知りたいところではある。

ピーターの口止めに奔走する兄と弟、ラリって棺を転がし、トイレットペーパーとじゃれ、しまいに真っ裸で投身自殺を図ろうとするサイモン、彼との子供ができたと公表するマーサ、件の安定剤(実はドラッグ)の瓶をいつも探しているトロイ、3時までには葬儀を切り上げたくて仕方のない神父等、それぞれのキャラの動きが可笑しくてたまらない。
そんな中に、重荷を背負わされてきたと弟に詰め寄るダニエルと、最後には母親を一時的にでも引き取って兄の引越しを支援するロバートとの兄弟の絆も描かれる。
このダニエルが典型的な良い人だけれど冴えないキャラにハマっているので、応援したくなること必至。
ロバート役はおなつかしやのルパート・グレイブス。まだまだ美貌は健在、ちょっとプレイボーイぽくて垢抜けた成功者の弟役にぴったり。

結局死んだと思われていたピーターを棺に入れたものの、実は彼は生きていて、その愛人という存在が全てバレ、未亡人は憤慨しながらも長年のセックスレスに納得がいってスッキリした様子。
サイモンを認めざるを得なくなったマーサの父親、そのマーサの妊娠でこちらも諦めがついたジャスティン。
いつか自分の処女作を読んで欲しいと弟に告げ、夢への第一歩を踏み出したダニエル。
問題は山積みながらも葬儀の終わりには、皆の代表であるダニエルが穏やかな顔をしていた。

そして最後の最後、あの安定剤を飲んでしまったご老体の顛末をラストカットに持ってこられて、声を出して笑ってしまった。


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2010年02月16日

バレンタインデー

B0042T42G8バレンタインデー [DVD]
2010年 アメリカ
監督:ゲイリー・マーシャル
出演:ジュリア・ロバーツ ブラッドリー・クーパー
   アン・ハサウェイ エリック・デイン
   ジェシカ・アルバ アシュトン・カッチャー
   ジェニファー・ガーナー パトリック・デンプシー
   クイーン・ラティファ キャシー・ベイツ
   シャーリー・マクレーン エマ・ロバーツ
   ジェイミー・フォックス

by G-Tools


Happy Valentine's Day!

ネタバレ有りです。

バレンタインデーの早朝。花屋を営むリード(アシュトン・カッチャー)は恋人のモーリー(ジェシカ・アルバ)にプロポーズし、OKの返事を貰い有頂天となる。

リードの親友で小学校教師をしているジュリア(ジェニファー・ガーナー)は素敵な医師(パトリック・デンプシー)との恋が始まったばかり。でも実は彼は既婚者であり、それを知ってしまったリードはジュリアに告げるか迷う。

真面目でキュートな彼とつきあって二週間のリズ(アン・ハサウェイ)は、実は生活苦のためテレフォンセックスの副業をしていた。そのためいつでもケータイが手放せなく、会社の回線も使用していた彼女のそのバイトは女上司(クイーン・ラティファ)の知るところとなる。

十数時間かけて“彼”のもとへと帰る飛行機の中で隣り合わせになったケイト(ジュリア・ロバーツ)とホールデン(ブラッドリー・クーパー)。彼らは話をするうちに意気投合するようになる。

その他にも、ジュリアの教え子で彼女に想いを寄せているかわいい小学生、その小学生の子守で、18歳になって彼氏と始めてセックスしようと計画している女の子、フリーエージェント宣言のついでにゲイのカミングアウトをしてしまうスポーツ選手、そのスポーツ選手のパブリシストでいつもバレンタイン大嫌い会を開催している神経質な女性、彼女とひょんなことから知り合うスポーツキャスター等、これでもかと人々がそこかしこで繋がっていくのは群像劇ならではの醍醐味。

そんな彼らが繰り広げる大甘なバレンタインの一日。
その中で、自分がただの愛人扱いだったことを知らされるジュリアや、プロポーズを承諾したはずなのにその日のうちにふられてしまうリード等若干ビターなエピソードが入るものの、その二人の親友同士がこれまた恋を失った同じ日に新しい恋仲となるという前フリでしかない。

だから小難しいこと抜きで、彼ら彼女らのハッピーでいっぱいの恋愛ドラマに浸れたらそれでOK。

何しろ出てくるスターの顔ぶれは豪華だし、もちろんそれだからみんなそろって美男美女だし。
バレンタイン大嫌い会を開く独身女のことを聞いて、どんなブスだと思いきやこれがジェシカ・ビールでのけぞった。
でもその会も、初めは参加者ゼロだったのに、時間がたつにつれて恋人にだまされたりフラれたりした男女がぞろぞろ集まってくるのには笑った。

そして個人的に一番の見どころ。
ゲイ宣言したスポーツ選手の相手がホールデン(ブラッドリー・クーパー)だったこと。
なんかいやにケイトを気にかけ、口説いているような風だったからこれは意外だった。
キスシーンこそなかったものの、バラで恋人の頬を撫ぜるなんてどんな耽美だ。いやいいもん見せてもらいました。

出番や見せ所が少なくて損してるな、と思っていたクイーン・ラティファは最後の最後、まさかのテレフォンセックス代理(しかもノリノリ!)を務めたところで大いに笑わせてもらった。

いまいち区別がつかなかったジェシカ・アルバとジェニファー・ガーナーとジェシカ・ビールも、この作品で何となく顔と名前が一致した感じ。

女優さん男優さんを堪能できる作品。
中身は薄いけれど気分よく劇場を出られる感じ。


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2010年01月13日

40男のバージンロード

B002G2YHUO40男のバージンロード スペシャル・エディション [DVD]
2009年 アメリカ
監督:ジョン・ハンバーグ
出演:ポール・ラッド
   ジェイソン・シーゲル
   ラシダ・ジョーンズ
   アンディ・サムバーグ
   J.K.シモンズ
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彼女との結婚が決まった!
でも考えてみると男友達が一人もいないぞ。
これじゃ変態と思われるし結婚式の付添人もなし!
やばくね?

ネタバレ有りです。

全米ボックスオフィス(って言うんだっけ?)で上位入りし、予告を見て凄く面白そうだった“I LOVE YOU, MAN”がDVDスルー。
そういえば向こうでサプライズ大ヒットした“THE HANGOVER”も日本場公開されないままDVDになってたっけ(※のちにDVD販売延期、日本公開決定したそうです)。

ストーリーは結婚間近のピーターが、男友達づくりに奔走するというコメディ。
自分が死んでも誰も葬式に来てくれないことを悟って焦って友達をさがす、ルコントの『ぼくの大切なともだち』と似た感じでテンポが軽く楽しく見ることができた。

そのピーターの紆余曲折ぶりが面白い。
弟の知り合いを紹介してもらったけどテンションの高さに退いてしまったり、ネットで紹介文を載せていた同じ年頃の写真の男と実際に会ってみたら89歳のおじいちゃんだったり、最高なのが同性愛者と勘違いされて別れ際に(ディナーなんかに行っちゃうから…)濃厚なキスをされちゃったりする。
ちなみにこのゲイの兄ちゃん、のちのちに出てきて、ピーターを淫乱と詰ったり、彼の結婚式で摩訶不思議な表情を浮かべていたりしてけっこういい味をだしていた。

そんなこんなで友達づくりを諦めていた矢先に、オープンハウスでピーターは破天荒なシドニーという男と知り合い、仲を深めていく。

それからははじめて電話するときに思い切り逡巡したり、マン・デートの約束を取り付けて緊張したり、ギャグがすべって自己嫌悪に陥ったりと、おいおいそれはまるで恋のはじまりじゃないかとつっこめるようなプロセスが可笑しくも愛しい。

そのシドニーに色々教えられたり感化されたりして、男同士の楽しみ方を覚えるピーターが活き活きとしていく様子も興味深い。
女とスポーツしても楽しくないこと、音楽の楽しみ方も違うこと、下ネタも同性同士だったら何でも話せちゃうこと、もちろん一般に全部が当てはまるわけではないけれど、「あ〜、あるよね、そういうこと」と女性視線で苦笑し、納得してしまうことも多かった。

そういえば、どちらかというと女性の好みよりのピーターが『ショコラ』を見たことを『チョコレート』のことだろうと返すシドニーのシーンがとても面白かった。
タイトルは似ていても中身が全然違うものなあ…とか思っていたら、あれ、『チョコレート』はアメリカでは“Monster's Ball”というタイトルで公開されていなかったっけと少し疑問が。まあいいか。

のちにシドニーがピーターに秘密の出資として8000ドルを貸して欲しいと頼むところでは、怪しい雲行きになりながらも、その使い道がピーターの写真を使ったビルボード宣伝費だったことが判明して、その絆の深さがうかがえる。
でもそれを見たピーターは愕然とし、彼と距離を置こうとする(その後そのビルボードが大評判で彼の仕事に有利に働くわけだけど)。

そんなすったもんだがあって、結局結婚式当日の花婿の付添人が、前述した騒音男だったりおじいちゃんだったりゲイだったりと、花嫁の介添人が「手当たり次第ね」と洩らした感想に大いに笑わせてもらった。
もちろんギリギリに仲違いしていたシドニーも到着。
ピーターと見詰め合って
「I LOVE YOU, MAN」
と告白しあうなんて、一体どんなロマンティックラブコメなのかと。

いやもちろんピーターは無事花嫁と愛を誓いあうわけだけれど。
結婚式ハイライトが男同士の愛の囁きなんて前代未聞じゃないだろうか。

エンドロールまできっちりとドラマが続くのも、最後のオチもうれしい。
未公開作品は最近面白いのが多いからチェックし続けないと。

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2009年05月14日

めぐりあう時間たち

B000BM6HM2めぐりあう時間たち [DVD]
2002年 アメリカ
監督:スティーブン・ダルドリー
原作:マイケル・カニンガム
出演:ニコール・キッドマン
   ジュリアン・ムーア
   メリル・ストリープ
   エド・ハリス
   トニ・コレット
   クレア・デインズ
   ジェフ・ダニエルズ
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みっつの時代。
三人の女。
『ダロウェイ夫人』を通じてめぐりあう時間たち。

ネタバレ有りです。

1923年。
『ダロウェイ夫人』を執筆中のヴァージニア・ウルフ。
病気療養中でもある彼女は、自らの死を選ぶ。

1951年。
主婦ローラ。
やさしい夫と幼い子供がいて、お腹には新しい命が宿っていながら満たされない日々を送っていた。彼女が読んでいる本は『ダロウェイ夫人』。
彼女は自殺しようとして、その死を回避する。

2001年。
レズビアンのクラリッサ。
彼女は長年の親友でゲイの作家リチャードの授賞パーティーの手配に追われている。リチャードは彼女のことを「ダロウェイ夫人」とあだ名をつけて親しんでいた。
けれどエイズに罹っていた彼は彼女の目の前で投身自殺を図る。

どの女性たちにも共通しているのが、死の影が濃厚にたちこめていること。

それを選ぶしかなかった作家。唯一の方法。自らと周囲への救済。
それを選べずに別の方法、家族を捨てて家を出ることを選択した主婦。
それを選んでしまった最愛の友人の立会人となった悲劇。

時代をたがえて紡ぎだされる共通の糸は、それでも形を変えて縒られていく。

例えば、どの時代のパートでも、印象的な女性同士のキスシーンが挿入されている。

ウルフは実の姉と。
“普通”に幸福で平凡な家庭を持つ姉に口付けをし、
「私は治っている?」
と詰め寄る彼女は、そこで自分の持ち得ない世界を見出し、夫を解放すべく死のきっかけを掴む。

ローラは友人と。
一見充実した社交的な生活をしている友人が腫瘍ができたため入院すると告げた時にローラは長々と彼女にキスをする。
表面は華やかで何の陰も見当たらない彼女の実情を知り、同情と共に自分も内はからっぽなことを気づいてしまったのだろうか。
ローラも同じく死を選ぼうとする。
けれどすんでのところで彼女は思いとどまる。
ここが糸の縒りが違うところ。

そしてクラリッサは女性のパートナーと。
すべてのドラマを描ききった、つまり死がすべて描かれた後での、ゆるやかな救済をもたらすような温かなキスシーンに安堵を覚える。

ただの絶望ではなく、どちらかというともの哀しく、静謐に死というものを捉えているような気がした。

さて、役者陣が豪華でまた演技が素晴らしいときている。
この作品でオスカーを受賞したウルフ役のニコール・キッドマンの神経質で全身が淋しさに包まれたような演技も良いけれど、やっぱりローラ役のジュリアン・ムーアが圧巻。
どこかを少しの力で押すだけで崩れてしまう砂の城のようなあやうさ、脆さ、それを目や仕草で見事に体現していた。
そしてゲイ役のエド・ハリス。
既に生きる屍のようなゆらりとした初登場シーンから、母の写真を見つめる時の哀しいまなざしをはさみ、死を決意した時の息を呑む緊張感を醸し出すシーンまで、見事すぎていっときも目を離せなかった。

おまけに原作があのマイケル・カニンガム、監督がダルドリーときては、傑作にならない方がおかしい作品。


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2009年03月08日

ブレス

B001H1FXFIブレス [DVD]
チャン・チェン; チア; ハ・ジョンウ, キム・ギドク
エスピーオー 2008-12-03

by G-Tools


春夏秋冬、あなたを愛す。

ネタバレ有りです。

冒頭、ひとりの男がハブラシの柄を尖らせたもので喉を突き、自殺を図る。
彼は妻と子供を殺した罪で服役中の死刑囚チャン・ジン。
そのニュースをテレビで見る主婦のヨン。
彼女は夫の浮気により心がからっぽになっていた。
何かに惹かれ、ヨンはチャン・ジンに昔の恋人だと偽って面会に行く。
そして二人は激しく求め合うようになっていった。

ギドク特有の超展開とファンタジックなシチュエーションが満載。
歪で激しい愛情の形も健在。
静かすぎるラストに唸りながら、余韻がじわじわ脳を侵食していく感覚も相変わらず。

ヨンの行動はとても突飛。
いきなり初対面の死刑囚に自分が9歳の頃に5分だけ死んだ経験を話し、その身を涙ながらに案じる。
それを黙って聞くチャン・ジン。
これは彼が喉を掻っ切ったために声が出せない設定だからだけど、もともとギドク作品にはほぼ台詞をしゃべらせないキャラが頻繁に登場するため珍しいことではない。
その代わりにチャン・ジンは目の力で激情を訴える。
そしてブレス。
ヨンとの間を隔てる透明の板に息を吹きかけ、そこに唇を押し付ける。
その吐息から二人の関係は動き出した。

ヨンの奇行は続く。
春用のワンピースを着て、花が一面に咲いた壁紙を用意し、面会の一室をすっかり春一色に変えてしまう。
そして出迎えたチャン・ジンのために歌を歌う。
普通だったらまともな精神を疑うようなハイテンションな彼女の行いに、なぜか彼は笑みを浮かべ、そのすべてを受け止める。
ヨンも家で塞ぎこんでいた時とは違って、ひどくうれしそうに笑い歌う。
この奇妙なシチュエーションが夏、秋…と続けられ、ここでもう固まっていく二人の愛が理解できずに置いてけぼりにされてしまう。

ただ面白いのが、ヨンが多角的に男たちに愛されているということ。

チャン・ジンからの愛。
浮気していたことを悔いて妻を取り戻そうとしている夫からの愛。
そして刑務所の面会では有り得ないこと(部屋の改造だとか、死刑囚と面会人がキスしたり、あまつさえセックスまでしてしまったりすることとか)を許可する上司の人の愛。
彼はずっとモニターでヨンを見つめている。
それだけで何も彼女とコンタクトを取ろうとはしていない。
時おり歌う彼女の動きに合わせて自分も軽く踊ったりするだけ。
見つめる、見守るだけの愛。
地味ながらこの上司の歪な想いもなかなか印象に残った。

そして愛されているといえば、チャン・ジンも、同室の囚人から同性愛的に想われている。
このホモの人の愛はじっとりと暗い。
何かあるごとに頬を撫ぜ、後ろから抱きつき、ヨンからのプレゼントである髪の毛やポストカードを隠したりする。
そんな彼は、ラスト近くでチャン・ジンに肩車をしてもらった数少ない心和むシーンで報われたのだと思いたい。

そして主の二人は冬の装いを最後に引き裂かれる。
そのときにヨンは壁紙も小道具も用意しない。
ただの白い壁のまま、最後の相対を果たす。
それが奇しくも冬の雪景色であったかのように。
彼の前で歌っていた歌も、ヨンは家族の車の中で夫と一緒に口ずさむ。
彼女ら家族が本物の冬の風景の中で雪合戦に興じるシーンと共に、死刑囚とはもはや完全な隔てができあがったことが判るシチュエーション。
チャン・ジンを殺せなかったヨンは夫のもとへ帰ったのだ。

ラストシーン。
ヨンが彼を殺そうとしたように、あの囚人もチャン・ジンの息の根を止めようとする。
それは果たされたのか。
力をゆるめた囚人の腕がはずれたとき、チャン・ジンはゆっくり瞼を閉じる。
これは彼が死んだようにもそうでないようにも受け取れる気がした。
でも個人的には、ヨンでさえ果たせなかったことを彼が遂行できたわけがないと思う。
チャン・ジンは彼を愛する者でなく、法という途轍もなく大きな彼にとってつめたいものによって命を奪われるだろう。
そのときに彼は吐息をもらすだろうか。


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2009年02月09日

ホテル・ニューハンプシャー

B0002V7U6Eホテル・ニューハンプシャー [DVD]
1984年 アメリカ
監督:トニー・リチャードソン
出演:ジョディ・フォスター
   ロブ・ロウ
   ポール・マクレーン
   ボー・ブリッジス
   ナスターシャ・キンスキー
   リサ・ベインズ
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「人生はおとぎ話よ」
不思議な道のりを歩んでいくホテル・ニューハンプシャーを経営するベリー一家の物語。

ネタバレ有りです。

とは言うものの、おとぎ話とはかけ離れた、驚くべき不幸に満ち溢れた家族でもある。

何しろ、長男フランクはゲイであることから同級生にイジメられ、次男ジョンは姉のフラニーに本気で恋をして悩んでいる。
そのフラニーは高校時代にレイプされ、次女リリーは作家として華々しくデビューするも、第二作目が不評で自分の才能に失望して自殺(ずっと身体的にチビなことをコンプレックスに思っていた彼女が、遺書に「大きくなれなくてごめんね」とかいていたのが可哀想で。あれは自身の作家としての飛翔のことも意味していたんだろうか)。
祖父はペットの剥製の呪い(?)で死亡し、やさしい母親もまだ小さな三男と一緒に飛行機事故で亡くなってしまう。
資本主義に反発する過激派に襲われて父親は失明。

もうどうだと言わんばかりの不幸のどん底。

なのに不思議に作品のテイストは明るい。

フラニーと一時期恋仲になる、熊の着ぐるみを出られないスージーという女性が途中から出てくるけれど、彼女は着ぐるみをきていなくても、もこもこの毛皮を手放さず、そこになんとも言えない可笑しさが生まれる。

ジョンが女性と関係を持つ場面も、盗聴というシチュエーションや、早送りといった演出を交えて楽しく描かれる。
究極は実の姉フラニーと半日に及ぶ耐久セックス。
この近親相姦シーンが実にからっと明るく、それまでの不幸を観ていた側としては、本当はタブーにいたたまれなくなる筈が、なぜかほのぼのとこの関係を見守ってしまうこととなる。

ホモにレズに近親相姦にレイプに復讐にテロに子供の自殺に、これほどエキセントリックな要素を散りばめながら、事件が起こるたびに家族は結束していく。
ヒーローとなり、資産には不自由しなくなった父親が、それでもはやらないホテルを経営し続けるのと同じように、フラニーもずっとレイプ事件から自分を見守り続けてくれていた黒人の彼と結婚する。
誰もがそうやって生きる道を見つけていく。
ジョンもきっとそうするだろう。

ホテル・ニューハンプシャーの庭に一同に会する、生きる者、死んだ者たち。
家族が再び集まったファンタジーなラストシーンは感動的。


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2008年12月12日

地上5センチの恋心

B001BXTR90地上5センチの恋心 [DVD]
カトリーヌ・フロ, アルベール・デュポンテル, エリック=エマニュエル・シュミット
CCRE 2008-09-26

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平凡な主婦オデット。
彼女は10年前に夫を亡くして以来、親孝行のゲイの息子と、いつも仕事が長続きせず、ろくでなしのニートの恋人を家に居候させている娘を育ててきた。
そんな彼女はバルタザール・バルザンという人気小説家に夢中。
彼の本のことを、彼自身のことを考えるといつも足が宙に浮いてしまう…。

ネタバレ有りです。

オデット役のカトリーヌ・フロのかわいらしさに尽きる映画。
なんだってこんなに愛しいおばちゃんなんだろう。
音楽がかかるとステップを踏んでしまうし、チープな人形を集めるのが趣味だし、かと思うと憧れの作家の前だと自分の名前さえ正確に言えなくなるし。
彼女が夢見がちにふわふわと地上を離れて空中を浮遊するシーンはそのかわいらしさの集大成。
恋をするとどんな年齢の女性だって女の子になってしまう。
そんな衒いをいっさい感じさせないキャラなのも良い。

何しろパートナーのDVに苦しんでいる女性客にいつも押し付けがましくなく、でも適切なアドバイスをおくり、手を焼いている娘の心配をし、何より不幸続きですっかり鬱になってしまったバルタザールが家に転がり込み、彼女に時には八つ当たりをしても、親身にその世話を焼き、寄り添い続けるのだから。

そんな彼女の幸せを見ている側は望まずにはいられなくなる。

なのにオデット自身は常に慎ましやかで、バルタザールとキスすらせず、破局寸前だった妻との間を取り持ってやっちゃったりもする。

そんな歯がゆさは、オデットが倒れてからようやく解消される。
いつも人のことばかりだった彼女が、今度は彼女が愛を与えた人々―息子、娘、そしてバルタザール―によって“生かされる”シーンは感動的。

そういえば、オデットが何度か見かける神のような男は、彼女の守護霊だったんだろうか?
それなら、彼女の夫がもしかしたら遣わしていたのかもしれないと思った。
でももう彼も姿を現さないだろう。
彼女の傍には今度はバルタザールがいるのだから。

主の二人だけでなく、陽気で母親をいつも元気付ける気の良いゲイの息子も、恋人と別れてようやく自分を取り戻しつつある娘も、隣人のスワッピングが趣味の夫婦も、バルタザールの妻と子も、家族愛というファクターを満たす存在感があって良。

ただひとつ。
オデットがセレブと寝て得意になっていると誤解して、女ならではのやっかみと結託で彼女を糾弾した仕事仲間たちがそのままになっていて残念。
またオデットが職場に戻るといっているから、その時に受け入れてくれたらな…と切に願う。


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2008年11月28日

トロピック・サンダー/史上最低の作戦

B001OGSMEKトロピック・サンダー 史上最低の作戦 ディレクターズ・カット 調子にのってこんなに盛り込んじゃいましたエディション【2枚組】 [DVD]
ベン・スティラー, ジャック・ブラック, ロバート・ダウニー・Jr, スティーヴ・クーガン, ベン・スティラー
角川エンタテインメント 2009-04-03

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落ち目のアクションスター、役になりきるオスカー常連の名優、お下劣なギャグで人気のコメディ俳優、歌詞にプッシー連発のプレイボーイその名もアルパ・チーノ、いつか美女と恋に落ちることを夢見る童貞の若手俳優。
彼ら5人はベトナム戦争映画のためにゲリラ撮影に送り込まれた。
けれど監督もスタッフも俳優も、そこが本当の戦場であることを誰一人として関知してはいなかった…

ネタバレ有りです。

しょっぱなからかましてくれたフェイクトレーラーの数々。
ちゃんと20世紀フォックスとかドリームワークスとか使っちゃってるんだものなあ。
中でもカソリックの神父(かな?)同士の禁断の愛を描いたと思われる映画はぜひ本当に本編も作ってほしいものだ。
そこでカメオ出演していたのはトビー・マグワイア。
相手役がロバート・ダウニーJr.って、これは『ワンダー・ボーイズ』ですでにベッドインを果たしている二人の仲だから?

その他にも、あっと驚くスターが多数出演!

わたしはあまり予備知識を入れずにこの作品を観たので、主の三人くらいしか出演者を知らなかった。
だからマシュー・マコノヒーが情に篤いエージェントとして出てきた時も、戦争で義手となり英雄扱いされていたのに実は…という元兵士役にニック・ノルティを認識した時も、最後の方で、オスカー授賞式に、自分が名前を呼ばれるものだと半ば腰を上げていて待っていたジョン・ボイトを見つけた時も、心の中で拍手を送っていた。よく出てくれました。

でもやっぱりトム・クルーズのあの姿には誰も敵わない。

サングラスをかけて、デブでハゲで尊大な態度を崩さない映画の出資者役。
初めは全然気づかなくて、グラサンを外したあたりから、あれ、この鼻筋、この目、なーんか見たことあるな〜と思っていたら… あの大スターさまでした。びっくり。
なので何気に出番が多いし、最後はノリノリのダンスで締めくくってくれちゃうし、汚い言葉をバンバン吐き捨てるのも、本人完全に楽しんでいるだろうことが判ってどうにも清々しい。

ということで、肝心のメインストーリーが、それなりに面白かったというのに、鑑賞後はトムの姿ばかり浮かんで霞んでしまったという大スターマジック。

それでも役者バカ役のロバート・ダウニーJr.は良かったなあ。
一番まともな役回りなのに、彼自身の胡散臭さがうまく作用して、真面目なことを云っていても鼻で笑ってしまうような可笑しさがつきまとった。
何しろ役作りのため、黒人になる手術までしてしまうんだから。
これは徹底した役作りのために無茶な体重変化や容姿を落としたりする俳優たちへの揶揄かな?

揶揄といえば、知的障害者を演じる時には完璧にやりすぎてはオスカーが貰えない(だから『アイ・アム・サム』のショーン・ペンは受賞できなかったとか)といったブラックなジンクスも披露。
最初の戦争シーンで、贓物が腹から飛び出したり、手が吹き飛んだりしていたグロシーンと共に、けっこう危ないネタと映像を盛り込んでいるなあと。

後は『プラトーン』そのまんまのポーズパロディやら、熊だと思って殺してしまったパンダがぬいぐるみ丸わかりのシーンやら、ついでにその後の「この世で一番愛するものを殺してしまった」「判った。娼婦だな。まず石灰を用意して…」のやりとりやら、半ケツで転がりまくるジャック・ブラックやら、けっこう笑わせてもらって満足。

そして女性器を口頭で連発して、私生活も美女を何人も侍らしていると思われていた男が、実はゲイだったという素敵なオチもついた。

やっぱりこういったバカバカしくも、豪華俳優をちょい役で使ってみせるコメディ映画は好きだ。


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2008年10月27日

マンマ・ミーア!

B0026O1JD0マンマ・ミーア! [DVD]
メリル・ストリープ, アマンダ・セイフライド, ピアーズ・ブロスナン, コリン・ファース, フィリダ・ロイド
ジェネオン エンタテインメント 2009-06-24

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結婚式を明日に控えた20歳の美しい娘ソフィ。
未婚の母ドナに育てられた彼女はずっと父親を知らずにいた。
けれどドナの日記を読み、父親の可能性のある男性三人をひそかに式に招待していた。
ギリシャの美しい小島で繰り広げられる人間模様。ABBAのナンバーにのせてパワフルに展開されるミュージカル。

ネタバレ有りです。

先ず、私事から。
ABBAのことは一番有名な「ダンシング・クイーン」ぐらいしか知らず、でも観ている内に知っている曲が何曲も流れ、あれもこれも彼らの作品だったのか、と驚き。
その曲目をシーンごとに解説付で載っていた丁寧なつくりのプレスを試写会で頂いたというのに、駅に忘れ去ってしまった自分が非常に腹立たしい。
とりあえずABBAの偉大さを思い知った。

閑話休題。

映画の方は、というと…
正直、最初の数十分はけっこう観ているのが辛かった。
件のプレスの中には、「映画を観始めて12分くらいで我慢できず踊りだしたくなった」とかいう海外の評が載っていたと思うけれど、そのハイテンションさが逆にわたしはダメだった。
ソフィとその友達が歌いながら道を走っていくシーンは、若々しさに溢れていて、ワクワクこそしなかったものの、ミュージカルのオープニングとしてはキャッチーだったと思う。
でも、その後ドナと親友たち3人がまったく同じテンションで再会し、歌い始めたところで、そのギャップに少しひいてしまった。
わたしはオバチャンが(わたしもだけどね)妙にはしゃぎすぎる映画って苦手なんだな。
「マンマ・ミーア!」や「チキチータ」のナンバーは好きだっただけに、こんな料理の仕方をされてしまったかと思うと…。

でも、そんなげんなり感を一気に払拭してくれたのが「ダンシング・クイーン」のシーン。
なぜだろう、あれもドナを中心にオバサン方勢ぞろいで歌っていたのに、ここは鳥肌がたつほど感銘を受けてしまった。
仕事に身をうずめてきた女性たちが、梯子を支えるのをやめ、エプロンを脱ぎ捨て、かつての青春時代を取り戻そうとするかのようにだんだんドナの周りに集まってくる。
そして桟橋での群舞!
あまりの高揚感に涙が出た。
これはミュージカルの醍醐味だなあ。

それからはほぼどのナンバーも楽しむことができた。
ソフィと結婚相手との恋の語らいも、ソフィの親友で、全身整形しているターニャが若造をあしらうところも、結婚前夜パーティーでの混乱もなかなか見所があって素敵だった。
ああ、やっぱり人が多く集まって歌い踊るというのがわたしのツボなのかもしれない。

そんなミュージカルに挑戦したドナ役のメリル・ストリープ。
凄いな。演技だけじゃなく声量まであるのかと、その多才ぶりにびっくり。
ただ、やっぱり個人的にあまり好きな女優さんでないので、今回も周りから「イイ女」扱いされていることに終始違和感。
娘役のソフィを演じるアマンダ・セイフライドは文句なしに素晴らしい!
なんといってもその美しくのびやかな歌声に吸い寄せられてしまった。
大きな瞳も、健康的に焼けた肌も、豊満な胸も、そのくせ細い手足も一番輝いている新婦という役にはうってつけ。

他のキャストも吹き替えなしで歌っていたようでまずまずの出来。
…ただ一人、ピアース・ブロスナンを除いて。
彼は… 吹き替えの方が良かったのでは…。
ドナの本命恋人役なものだから、無駄に出演シーンが多くて、その度微妙すぎる歌声を披露されて(メリルとのデュエットもあって、そこでは力量の差が歴然としていた)、なぜ彼がキャストされたのか不思議でならなかった。

ストーリーの方はまあご都合主義な感じではあったけれど、ミュージカルシーンが大切なのだから別に気にならなかった。
ただ、終盤にいきなり父親候補の一人、コリン・ファース演じるハリーが実はゲイ(ドナは最初で最後の女性だったらしい)ことが判明してびっくり。
しかも現地で知り合った若者とラブラブになってしまうという素敵なオチ付。

それからエンドロールのあの映像はズルいなあ…。
あれじゃ途中で席を立てないよ。


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2008年09月05日

セックス・アンド・ザ・シティ

B001IBSGH4SEX AND THE CITY [THE MOVIE] STANDARD EDITION [DVD]
2008年 アメリカ
監督:マイケル・パトリック・キング
出演:サラ・ジェシカ・パーカー
   キム・キャトラル
   シンシア・ニクソン
   クリスティン・デイヴィス
by G-Tools


ドラマの予習は必要だった。多分。

ネタバレ有りです。

そうは云ったものの、ストーリーが判りにくいわけでは決してなく。
逆にシンプルすぎるほど。
けれどドラマ版を見ていない者にとっては、セレブらしき40代のカップルが結婚ということになり、その新婦の友人たちが大はしゃぎ、でも新郎のマリッジブルーのため挙式がパア、傷ついた主人公が親友たちによって励まされ、自分を見つめなおし、結局何もかもがうまくいくという、非常にどうでもよいことを延々2時間半くらい見せ付けられることとなってしまった。

毎日パーティードレスのような衣装を纏って燦然とNYを闊歩する彼女らをなんて素敵!と素直に感嘆できたらよかったのだけど。
超豪華ペントハウスに引越しやら、寝てるときもながーい真珠ネックレスつけてるスタイルやら、誰が何の仕事をしているか把握しかねる内に何だか毎日遊び暮らしているように見える演出やら(ついでにロスに住んでいるサマンサはことあるごとにNYに来るんだけど、それが映画の中では頻繁すぎて、いまいち彼女を迎える友人たちがなんでその度あんなに感激しているのか判らなくなる)、生活レベルが違いすぎて、本来ならとてもオーソドックスな結婚への迷いとか、傷ついた心の癒しだとか、友人のありがたみとかも描かれているのに、どうしてもそこに感情移入することができない。

ドラマをずっと追っていたなら、きっとそれぞれのキャラクターに思い入れがあって、色々感動できたんだろうけど。
わたしには無理でした。

ジェニファー・ハドソン演じる主人公のアシスタントも、丸々出番を削っても何の問題もないくらい。

そしてキャリーへ手紙を書いたことがなかった恋人ビッグが、偉人たちのラブレターをいくつも送るというシーンがあるんだけど。
メールなんだ。
手書きじゃないんだ。

というところで「あ〜あ」とどっちらけ(←死語)。
前半の手紙云々のシーンが伏線となっているんだろうなというのは予想がついたから、きっと後半手書きのラブレターを送るんだろうと勝手に妄想していたわたしが悪かったんだろうけど。
いまいち、コピペで済ませられるPCメールだとありがたみがないような…。

と、まあ正直あまり好きな作品ではないけれど。
それでもこんなどーでもいい話なのにさほど退屈しなかったのは、無数のファッション(キャリーのウェディングドレスはため息が出るほどゴージャスですばらしかった!)と、女性たちの軽快なおしゃべり、そしてラストのちょっと意外な好感が持てる結婚式(何もあそこまで地味にしなくても…とは思ったりしたけど)のシーンがあったから。

わたしはサラ・ジェシカ・パーカーって、昔から美人とは思ったことがなくて、この作品でもやっぱりそうは見えなかったけれど、何というか、「もの凄くいい女」オーラがめちゃくちゃ出ていて、それに圧倒されて、なんだかとっても魅力的に思えてしまった。
それにスタイルは抜群。だからどんな服でも着こなせちゃうのは凄いなあ。

そしてキャリーの友人の友人役でちょこっとゲイの人が出演。
新年を迎え、一応周りを気にしてからパートナーとキスするシーンがとてもかわいかった。


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2008年09月03日

ゲット スマート

B001OC2EPCゲット スマート 特別版(2枚組) [DVD]
ドウェイン・ジョンソン, マシ・オカ, スティーブ・カレル, アン・ハサウェイ, ピーター・シーガル
ワーナー・ホーム・ビデオ 2009-03-11

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とりあえずラスト20分前、あのシーンを見逃すな!

ネタバレ有りです。

米国極秘スパイ機関「コントロール」で分析官をしているスマートの夢は、そこのエージェントとなって活躍すること。
ある日コントロール本部が国際犯罪シンジケート「カオス」によって襲撃され、エージェントの身元をすべて知られてしまう。
そこで顔の知られていないスマートが急遽エージェントに昇格、整形によって顔を変えた美人エージェント99とペアを組んでカオスの陰謀を阻止することとなった。

うーん、少し期待しすぎてしまったかも。
『裸の銃を持つ男』の一作目のように、主人公の一挙手一投足全く目が離せないくらいに畳み掛けるギャグがあるのかと思いきや、これがけっこうグダグダな部分があって。
終盤近く、スマートとの思い出を頭に浮かべるエージェント99のシーン、あれを全てシリアスに流してしまうところとか。
エージェントになってからスマートがけっこう有能で肩透かし喰らわされたりとか。

ギャグパートにしても、小さなボーガン(?)がことごとく自分の体に命中してしまったり、額にホッチキスを刺すシーンが繰り返されたり、お約束のゲロ映像があったり、フィジカルな痛みと生理的嫌悪感を催すところがあって、正直わたしにはキツいものがあった。

そして翻訳がどうにも…
英語のギャグを日本語に訳したり、ニュアンスを伝えるのはたしかにむずかしいとは思うけれど、何だかしっくりこない表現が多かった。
一番は
「逝ってよし」って…。
それを発した人物はオタクとして描かれていたし、わざととは思うんだけど…。
いまどきそれはないだろう…。

ケータイをぶっ壊すところとか、吹き矢を呑み込んでしまうところとか、失神した男を移動させようとスマートが悪戦苦闘しているところを見た人がゲイセックスをしていると誤解(これもベタではあるけど)するシーンとか、小さくくすっと笑えもしたんだけれどね。

でも今年一番のキスシーンを見られたので、それだけで嬉しさいっぱい。

それが冒頭に書いたラスト近くのシーンなんだけど。
死闘を繰り広げるスマートと裏切り者のエージェント23。
組み合って二進も三進もいかなくなったとき。
エージェント99が以前敵を怯ますために使った手をここで使うとは。
かくして男同士の熱烈なキスシーンを大画面で拝むことができました。

キャストは主役のスティーブ・カレルは軽やかだし(でもそれゆえあまり印象に残らない)、アン・ハサウェイはかわいいし、こんなのにも出ちゃうのかのテレンス・スタンプは顔が見られただけでもうれしいし、これで続編が作られるのだったら、もう少し笑いを増やしてほしいなあ。


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2008年08月21日

ベガスの恋に勝つルール

B001HSQB9Sベガスの恋に勝つルール <完全版>
キャメロン・ディアス, アシュトン・カッチャー, ロブ・コードリー, レイク・ベル, トム・ヴォーン
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント 2008-12-05

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婚約者にふられてしまったジョイ。
真面目に仕事に取り組まず、父親の会社をクビになったジャック。
失意の二人はベガスにやってきて乱痴気騒ぎ。ついでに結婚までしてしまう。
翌朝別れる事に合意したものの、その場でスロットで300万ドルを当ててしまう。
金の行方をめぐって裁判となり、二人は半年間の結婚生活を強制されることに。

ネタバレ有りです。

とは云っても、予告を見たときからどんな展開でどんな結末になるのか全てみえみえの、ある意味潔い作品。
いがみあっていた男女が時間がたつにつれて、お互いの意外な良い一面を知り、恋に落ちる。
それをなんのひねりもなく作ってしまったのは、キャメロン・ディアスの魅力でカバーできるという計算があったのかな、と邪推するほどにオーソドックス。

つまり、かなりつまらなかった。

それでもジョイとジャックの境遇を交互に描き、ベガスに繰り出すまではスピーディーでワクワクしてしまったのだけど。

あとはきゃーきゃーわめいて騒ぐジョイがかわいらしく見えず、なおかつ彼女がどうしてもキャリアウーマンには無理があり、堂々仕事ができる設定に終始違和感が残った。

ラストもよく判らない。
「いやなことならしない方がいい」
といって昇進を蹴ってジョイは仕事を辞めてしまうんだけど、何か仕事がいやだとかいう描写ってあったっけ?
それにジャックとの結婚を決めた心変わりも腑に落ちない。

そこにいくまで何とか盛り上げようと、セラピストの所へ行く追いかけっこだとか、二人でどうにか浮気をさせようと画策したりだとか、やっぱりごちゃごちゃとうるさいだけのエピソードが入り、どうでも良い友人たちの動きも見せられ、どうやってもドラマにまとまりが見られなかった。

編集もいただけない。
どうしてラストにベガスでの結婚式風景を映すの?
エンドロールに入ってちょっと経ったところでジョイの元婚約者に報復するのが締めかと思えば、すべてエンドロールが終わったところで意味の判らないシーンが入る。

ずっとジョイを狙っていた(しつこく電話番号をきこうとしていた)ジャックの友人が実はゲイだった、と唐突な種明かしをされても。

力を抜いて見られるラブコメはとても好きなんだけれど、これはいただけない。
けれどひとつだけ。
便座を下げろとジャックにいやみたっぷりに話すジョイのシーンだけは大きく頷いてしまった。


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2008年06月12日

パリ、恋人たちの2日間

B001DJ901Mパリ、恋人たちの2日間
ジュリー・デルピー, アダム・ゴールドバーグ, ダニエル・ブリュール, ジュリー・デルピー
ワーナー・ホーム・ビデオ 2008-10-08

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2007年 フランス・ドイツ
監督・脚本・編集・音楽:ジュリー・デルピー
出演:ジュリー・デルピー
   アダム・ゴールドウィン
   ダニエル・ブリュール
   マリー・ピレ
   アルベール・デルピー


マリオンとジャックはつきあって2年になるフランス人とアメリカ人のカップル。
普段NYに住む彼らは、2日間マリオンの実家パリに滞在することに。
フランス語の判らないジャックは、彼女の両親の振る舞いやカルチャーショックに消耗する。
追い討ちをかけるように次々に現れるマリオンの元カレ。
だんだん険悪になっていく二人だったが…。

ジュリー・デルピーが監督や脚本、主演等を務めたコメディ映画。
音楽の使い方も、せっかくパリを舞台にしているのにそれを活かしているとは云えない画も、だらだらと続く痴話喧嘩のみのストーリー展開も、決してほめられたものではないけれど、コメディ部分はしっかり笑えるようになっていて何とか最後まで観られた作品(わたしは『恋人までの距離』を開始10分で挫折しているので)。

何しろジャックが散々な目に遭っているのが可笑しくて。
全裸で股間に風船をつけた写真を彼女の家族が見ていたり、それを歴代彼氏にやらせることが通例(?)だったことが判明し、外に出れば昔マリオンと関係を持った男たちと遭遇、容姿も貶されファーストフード店では世界共通語の「ペプシ」も通じない。

そんなフラストレーションをこっちも共有すると同時に、情けなくて、でも彼女が大好きな一途なジャックに感情移入してしまうことしきり。

太っちょの猫のジャン=リュックも文句なしに可愛くて、その姿を見るたびににやけてしまっていた。

けれど全体的にはものすごく散漫。

ラスト近くで、ジャックとファーストフード店で相席となる不思議な青年が出てくるけれど、これにまったく意味がない。
ジャックの手を握って
「僕は妖精だ」
と告げるも、ゲイのことではないと否定。
でも同見ても彼はゲイにしか見えないんだけどな。
そしてその妖精はなぜか店に発煙物を置く「テロ」を行う。
このエピソードのことを、この後マリオンとの喧嘩のシーンで言及するも、結局何が言いたかったのかは全く判らない。

その4時間にも及ぶ喧嘩にしても、ほとんど台詞をミュートにして、ジャックのモノローグだけで構成されていて、それが物語のメリハリとなる「事件」の筈なのに全然面白さが伝わってこない。

あと、タクシー運転手がマリオンを
「なんてきれいなんだ」
「キャサリン・ゼタ・ジョーンズみたいだ」
などと褒めちぎる場面があるんだけれど、ジュリー・デルピー、強気だなあ。
まあもちろん今でも十分きれいではあるんだけれど、『トリコロール/白の愛』の頃の全盛期を知る者にとっては少しだけ複雑な気分にさせられたりもする。

そんなカップルが35歳同士というのも…。
これが25歳だったら、ああバカやってるわ、とほほえましく見ていられるけれど、35歳…。もう少し分別のついた大人の振る舞いにはならなかったんだろうか?それか役者を変えて若い設定にできなかったんだろうか?
でも恋っていくつになっても、多少はみっともなくなったり、嫉妬したり、分別つかなくなるものなのかも知れない。
それをオシャレでなく、あくまでコメディとして見せたフランス映画、という点では斬新だったのかな。

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2008年06月01日

俺たちフィギュアスケーター

B001G9EBKE俺たちフィギュアスケーター スペシャル・エディション [DVD]
2007年 アメリカ
監督:ウィル・スペック ジュショ・ゴードン
出演:ウィル・フェレル
   ジョン・ヘダー
   ウィル・アーネット
   エイミー・ポーラー
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男子シングルに出られないならペアで出ればいいじゃない。

そんなわけで二人の男子フィギュアスケーターは頂点を目指した。

ワイルドでセクシーさを振りまくチャズと、繊細な演技で観客を魅了するジミー。
犬猿の仲だった彼らが男子ペアという前代未聞の組み合わせで訓練を積んでいくのがとにかく可笑しい。
そこから派生する友情というお約束のファクターも少しだけ涙ほろりのコメディものとしてしっくりハマる。
展開に新鮮味こそないものの、明るいシモネタの繰り返しと、キャラクターの魅力、危険な技の実験地が北朝鮮だったり、有名フィギュアスケーターたちのゲスト出演と揶揄というブラックジョーク等で最後まで面白く見ることができた。

何せ男同士なものだから、リフトする時も股間をがっちり掴まなくてはならないし、シックスナインの体勢でお互い複雑な表情をして演技していたり、クスクス笑いが止まらない。
それに選びに選んだ演技の曲が「I DON'T WANT TO MISS A THING」だったのにトドメをさされた。
あの前奏が聞こえてきただけで可笑しい!何でだ、ただ可笑しいぞ!
それがのちにチャズがジミーに留守電にメッセージを執拗に残すシーンで、替え歌としてまた出てきたのも芸が細かい。

そんな中で、ジミーが転倒し、それに手を貸すチャズの変わりようにじんわりとし、二人がスピンをそろって決めるところなんか素直に感動させられてしまう。

ジミーと恋仲になる女性も出てくるものの、ストーリーを多少かき回す程度のもので、それよりはその女性がマネージャーを務める姉弟の狡猾なスケーターの典型的な悪役っぷり、そして近親相姦をにおわせる別れっぷりの方が楽しめた。

そしてジミーの男ストーカーが非常に気持ち悪くてよろしい。
でも彼のスケーターとしての再生に力を貸すのも彼だし、エンドロール中に出てきて締めてしまうのも彼。
「いつか殺すから」
ってあの台詞も怖いなあ。いい人そうなのにストーカーとしての屈折した精神は持ち合わせている。
でも男に執着されるのが判るジミーの白皙やオシャレな髪型も罪作りだ。

そんな彼はパートナーのチャズと肩を並べて最後空に飛んでいくときたもんだ。
男同士の絆、おそるべし。

劇場公開された時、多忙で時間がとれずに見そびれてくやしい思いをした作品。
同じく見逃している『ジェシー・ジェームズの暗殺』も早いとこ観ないと。


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2008年01月28日

輝ける女たち

B000TXR2KY輝ける女たち
カトリーヌ・ドヌーブ.エマニュエル・ベア-ル
TNX(PC)(D) 2007-10-03

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キャバレー「青いオウム」のオーナー、ガブリエルが亡くなった。
そこに集まる、生前の彼を愛していた人々。
マジシャンのニッキー。彼の元妻アリス。息子で同性愛者のニノ。
ニッキーの幼馴染で、たった一回の情事だけで子供ができてしまったシモーヌ。娘のマリアンヌ。
ニッキーが必死で口説こうとしている歌姫レア。
バラバラだった彼らの関係は、ガブリエルの死によって変化をもたらしていく。

葬儀に集まった様々な背景を抱えた人々の群像劇、という点ではパトリス・シェローの『愛する者よ、列車に乗れ』を思い起こさせられる。
けれど本作品はそれよりずっとコミカルで重い印象を残さない。

主役のニッキーの人物像からして何だか可笑しい。
女というとあっちゃこっちゃに手をつけまくるわ、ガブリエルの遺産と「青いオウム」の権利書が子供たちに渡ったことにスネるわ、やっと手に入れたレアから、翌朝ダメージの大きなことを告げられるわ。

一見軽薄そうなプレイボーイに見えるも、ガブリエルを父のように慕っていて、彼の亡霊とときどき話をするシーンもある。
とても繊細で愛情深い人物。
ここら辺のキャラクター造型はとてもうまいと思う。

はじめは何だかいがみあっていたアリスとシモーヌ(パスタのレシピについて火花を散らすところは女性ならではだなあ)も、いつしかジョークを交わしてニッキーを憮然とさせてしまう近づきっぷり。

そんな父親・母親世代とは裏腹にとてもしっかりした子供たちも、次第に脆い面を見せる。
取り澄ました人気歌手気取りのレアでさえ、彼女の過去がその口から語られるとき、その傷つきやすいもうひとつの顔に心が動かされる。

だからどの人物も、とてもとても愛しく感じられる。

中でも、同性の恋人とのキスシーン、ベッドシーンも見せてくれたニノがお気に入り。
目をつけていたバーテンが妹に寝取られたとくされてみたり、リバウンドが怖くてずっと甘いものをひかえてきたのに、母親が以前娼婦をしていたことを知ってケーキやらパフェやらやけ食いしてみたり。
なんてかわいいんだろう!

マリアンヌの歌う「一本のバラの花」の歌もよかったし、ラストのニッキーとガブリエルの(たぶん最後の)会話も余韻を残してくれた。

人物関係をしっかり把握するのに少しかかったけれど、それが判ってしまえばドラマにどっぷりのめりこめた。


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2007年11月08日

最終絶叫計画4

B000NIWHNM最終絶叫計画 4
アンナ・ファリス クレイグ・ビアーコ レジーナ・ホール
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2007-05-23

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パロディ映画、大好き!
『裸の銃を持つ男』の一作目、『ホットショット2』 『トップシークレット』が別格で、『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』 『スパイ・ハード』 『ローデッド・ウェポン1』等お気に入りは枚挙に暇がない。
もちろんこの最終絶叫計画シリーズも大好きで、レンタルのみだけれど追いかけていた。だから知らなかったけど、この4作目は劇場未公開だったのね。
それがもったいないほど(…でもないか?)けっこう笑わせてもらった。

先ずはSAWの舞台から始まる。この作品は未見だけれど(多分この手のものは一生見ることはないだろうな)、シチュエーションだけ知っていたから大いに満足。
鎖をつないでいる方の足を切らなくてどうする!

そしてTHE JUON/呪怨の展開に入っておなじみの主人公登場。
最初の窓から飛びりる男のシーン、あの男性はチャーリー・シーンだよね?
前作に続きよく出演してくれたものだ。
後は白塗りの子供とシンディのデタラメ日本語応酬に大笑い。
テキトーな単語並べてるだけじゃん。
「さ〜〜し〜〜み〜〜〜」って、そこだけはっきり聞き取れたし。

ブロークバック・マウンテンもネタに。
テントの中でろうそく灯してミラーボールまわして雰囲気づくりしちゃう男二人。

ミリオンダラー・ベイビーの登場人物たちがすべてクビをゴキッとしてお陀仏になっていく様は、オリジナルのあの悲劇を笑ってよいのやら。いや、笑いましたが。

宇宙戦争になぞらえた宇宙人侵略は、本家そっくりの撮り方でナイス!
トライポッドとアイポッドって無理やりだなあ。
ダコダちゃん役に相当する女の子は、故意でなく偶然にひたすら父親から虐待されまくりだし。あのウザいと云われ続けて来た叫び声もきっちり踏襲。

ヴィレッジのパートはなくてもよかった気がするけれど、なぜかここで男同士の熱烈キスが拝める僥倖付き。
ブロークバック・マウンテンでなくてどうしてこのパートだったんだろう?

そしてうれしいレスリー・ニールセンが登場し、華氏911のブッシュよろしく、非常事態に小学校で絵本を読んでいるシチュエーションに噴出した。
その後の裸芸もさすがに年期が入ってます。
大好きだ、ニールセン。

ラストは「カウチで飛び跳ねる男」トム・クルーズそのままのはっちゃけぶりを披露したその名もトム・ライアンのアクションで締めくくり。
あれは本人が見てどう思ったかぜひ知りたいところ!

理屈なんか抜きで、とにかくひたすらバカをやってる映画はたまに無性に見たくなる。そういうタイミングでいつもレンタルできるサイクルが小気味良いなあ。まあわたし個人のタイミングなだけだけれど。


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2007年10月12日

キャンディ

B0011DPC0Iキャンディ
ジェフリー・ラッシュ ヒース・レジャー トニー・マーティンノニ・ハズルハースト
ジェネオン エンタテインメント 2008-02-22

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ダンとキャンディは恋人同士。
何もかもが輝いていた。この世は天国だった。
けれどそれは地に足をつけ、やがて地獄へと堕ちていく。


ジャンキーの二人。
定職につかず、夢を追うばかりの刹那的な毎日。
ドラッグのために知人から金を借り、それも限界となるとどんな品でも質に入れる。それでも足りなくなってキャンディは身を売り、ダンは銀行詐欺を働くようになる。

ダンはとっくの昔に家族から縁を切られているようだ。
けれどキャンディには家族がいる。娘に愛情たっぷりの、でも少々甘すぎな父親。料理が得意な模範的な母親。
そんな母に娘はずっと何かを抱えていたようだ。
二度ほど、キャンディの料理のできなさを責めるシーンが出てくる。
多分そうやって自分にできない“女らしさ”のある母親にずっと劣等感を感じていたんじゃないんだろうか。
拳を固めて泣き叫ぶところは、そんな彼女の思いが爆発したシーン。
だから彼女は家族よりも(傍目から見たら自堕落な)ダンと暮らす方を選ぶ。

彼らは夫婦となり、倉庫からアパートに引越し、やがて赤ちゃんができ、ドラッグをやめると誓う。
けれど子供は死産。
それからはまた薬漬けの毎日。

キャンディの妊娠を報告したときの父親との号泣の抱擁や、もう動かない赤ちゃんを傍らに置いて目を閉じる二人のシーン等はさすがにぐっときたけれど。
やっぱりどう考えても二人はロクデナシだ。
愛情が深いことは判っている。
でも恋人に薬をやらせること自体大きな間違い。
と、倫理的なことで苦言を呈したいのは、やっぱり親の悲痛な叫びがあったからかな。
「私の美しい娘に何が起こったの!」
という母親の言葉は、恋人サイドよりも親サイドに感情移入させるのに十分。
なのでどうしてもどこかでダンとキャンディを突き放して見てしまっていた。

そしてダンたちに薬を与える、あたたかくも無責任なキャスパーという同性愛者らしき男がいる。
彼がラリっているダンの髪をやさしく撫でながら
「俺がやめる前にドラッグをやめろ」
と囁くシーンは、父性愛を超えた愛情が窺える。
そんなやさしい関係はダンとキャンディの間で希薄になっていくから尚更このシーンが印象的。

そして印象的と言えば、作中で表れる金色と黄色。
キャンディの輝くブロンド、引越し先の田舎ではためくススキ、キャンディが机の上から垂らすはちみつ、そしてダンが妻に摘んできた可憐な黄色の花。
どれもとてもきれいなのに、それが壊れていく予兆となっているのが哀しい。

ただ、ラストがよく判らなかった。
何とか職に就いて忙しく働くダンと、精神を病んでから徐々に回復しているらしいキャンディが開店前のレストランで見つめあうシーンが何を表しているのか。
これからの未来の先に彼女はいるだろう。
でもそれは以前のキャンディではないのかもしれない。
そのための涙だったのか…。

でもとりあえずキャンディは『ベティ・ブルー』のベティのように時を止めたりはしない。
そんな二人が生きていくことは、みっつめのチャプター通り「地獄」となるのか否か。

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2007年09月25日

あなたになら言える秘密のこと

B000S0FDQIあなたになら言える秘密のこと
サラ・ポーリー.ティム・ロビンス イザベル・コイシェ
松竹 2007-08-24

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無機質な生活を送るハンナ。
彼女は会社から言い渡された1ヶ月の休暇を、ある事故で重症を負った男ジョセフの看護に費やす。
ジョセフの軽妙洒脱な語りかけ、その裏の彼の心の傷、油田で働く男たちとのふれあいを通してハンナは少しずつ変わっていく。
彼女も実は凄絶な過去を秘めて生きていた…。

ネタバレ有りです。

この過去がハンナの口から語られるシーンが白眉。
その回想シーンを映像で一切あらわすことがないのに、あまりの痛ましさとやりきれなさに涙が止まらなかった。
クロアチアの内戦。
そこで味方である筈の兵士たちにされたこと。
失われた親友。
それを訥々と語るハンナ役のサラ・ポーリーが上手い。
オーバーアクトに陥ることなく、それでも情景をありありと想像させる語り口で、映像がなくても十分リアルだった。

だから現在の彼女のまるで死んだような生活が頷ける。
毎日仕事をこなし、家に帰って刺繍をし、寝る。
食事といえば、ライスとちょっとの揚げ物と半分こにされたりんごだけ。

油田でハンナが変化を見せるのは、先ずこの食事だ。
やさしく明るいシェフのサイモンが作る郷土料理を口にしたとき、そのおいしさに夢中になってスプーンを口に運ぶハンナ。
豊かな充実した生活への一歩だ。

そして勤勉でオタクな海洋学者や、一人一人をあたたかく見守る責任者たちと話すことによって心は開かれていく。
愛する妻子がいる身でありながら、同性愛関係を結んでいるスコットとリアムもまたおかしな仲間。
海に浮かぶ油田探掘所はハンナにとって特別な場所となる。
事実、休暇を終えて工場に戻った彼女の顔からはまた生気が失われているようだ。

それを取り戻したのは、お互いの秘密を打ち明け、心を通わせたジョセフだ。

けれどそれは人間として惹かれあったのであって、恋愛ではないとわたしは思っていた。
だから最終的に結婚にいたる二人については何か違和感を持った。
なぜだか判らないけど。
多分勝手に恋愛ぬきの人間ドラマなんだろうという先入観を持って、この映画を見始めてしまったからなんだろう。

それと、ウブなおじさんのサイモンのハンナへの淡い恋心があまりにもかわいいので、そっちに目がいっていたことも原因かな。
ブランコで漕いでいるシーン、名前を何度か呼んでそのたびに
「ううん、なんでもない(はぁと)」
ってどこの乙女なんだ…可愛らしすぎ。

そして冒頭とラストで入るナレーション。
なぜか子供の声。
しかも子供なんてこの作品ではまったく出てこなかったのに。

それは一番最後まで見ると、どうやらハンナの生んだ空想?の子供だったことが判る。
もしかしたらレイプされたときに身ごもった赤ちゃんかもしれない。
堕胎したのか、生まれてくるも死んでしまったのか…。
とにかく、“彼女”は時折ハンナのもとにやってきて、髪をなでてもらっていたようだ。
けれど、ハンナに本当に子供が生まれ、その存在は別れを告げる。
せつないなあ。
そしてまだ語られていないハンナの「秘密」の部分があるのだと観客は知る。
ジョセフにはきっといつか話すときが来るんだろう。
穏やかなハンナの姿に安堵する。


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2007年09月12日

エキゾチカ

6305428107Exotica
1994年 カナダ
監督:アトム・エゴヤン
出演:ミア・カーシュナー
   ブルース・グリーンウッド
   エティアス・コーティアス
   サラ・ポーリー

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わたしたちは、自分で頼んで生まれてきたわけではない。
では、誰が頼んだのだろう。
生まれる「しか」なかったのだ。
問題は、それから生き続けていくということ。

ネタバレ有りです。

税務調査官のフランシスは、夜毎ストリップバーへと足を運ぶ。
そこで踊る制服姿のクリスティーナを指名するためだ。
たった5ドルで自分のテーブルに呼べ、彼のためだけに踊るダンサー。
でも、そこでは踊り子に触れることは御法度となっていた。
その禁が破られた時、何かが変化を起こす。

見ていくうちにだんだんと明かされる相関関係。そして彼らの過去。
ここには喪失感を抱えたまま日常を送る(送るしかない)人々が暮らしている。
冒頭に書いたフランシスの台詞のように、生き続けるしかない人生。
そこに癒しを求めた彼は、現実から逃れようとしていたのか。

フランシスとクリスティーナは特別な関係を結んでいる。
それはただの客と踊り子の枠を超えていた。
愛でなく。色情でもなく。
互いが互いに必要な部分を補っているのだと彼女は云った。

それに嫉妬のまなざしを向けているバーのDJエリック。
彼の陰湿な罠にしろ、クリスティーナへの執着にしろ、やはりどこかまともでない風情のある男。

そんな彼らの糸が意外な方面でラストに繋がっていくのは見事。

娘を殺されたフランシス。
その娘の子守をしていたクリスティーナ。
そして殺された子の死体の第一発見者がエリックだった。

「目を覚ませ」
エリックはそう云うとフランシスを抱きしめる。
彼の騙した行為は嫉妬だけでなく、フランシスに現実と対面させる意味もあったのか。

時々挿入される、野原を一直線に並んで歩く人々のシーンは、実は死体探しの仕事(なのかどうかはっきりしないけれど)であったという痛ましさ。
そこで出会ったとみられるクリスティーナとエリックのやさしい会話が、その後の二人を知っているだけにまたやるせない。

彼らは、人とどうコミュニケーションをとっていいのか判らなくなっているかのようだ。

ペットショップを経営するトーマスにしても、チケットをだしにしてボーイハントを続ける、人恋しい不器用なゲイだ。

もう娘はいないのに、子守の少女を雇って、かつてクリスティーナにそうしていたように家まで送り、バイト代を渡すフランシスも。
「純真な少女」というナレーターをつけられながらも、その少女の証である制服を脱いで踊る職業に就いたクリスティーナも。
大きな喪失感のその穴を埋めようとしていた。
けれど結局それは行き場を失くす。
楽屋で叫びまくるクリスティーナの姿は、埋められない虚無への絶望が漂っていた。

なぜ、触れ合うことができないんだろう。
こんなに近くにいるのに。

せつなく、儚い、エゴヤン監督の傑作。
生涯忘れられない映画の一本。


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2007年09月05日

スターダスト

B0012GXBBGスターダスト スペシャル・コレクターズ・エディション
ジェイソン・フレミング ルパート・エヴェレット シエナ・ミラー
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 2008-02-20

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ファンタジーものは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ以外どうも良いと思える作品がなかなかなくて、今回もほとんど期待せずに試写会に足を運んだら。
これが意外に面白かった!

ネタバレ有りです。


■トリスタンはとある村に住む純朴な青年。
彼は村一番の美女ヴィクトリアに恋をしている。
彼女の「流れ星を取ってきて」という願いを叶えるため、壁の外へ冒険に出かける。

■その流れ星は地上でイヴェインという名の金髪美女に姿を変えていた。
彼女の傍らには宝石のネックレスが。
やがて彼女はトリスタンと出会う。

■ある王国では、今まさに国王が崩御せんとしていた。
後継者の王子たち(7人いたけれど、兄弟内での暗殺で3人死亡)は、王の証であるルビーのネックレスを争奪することとなる。
そのネックレスはイヴェインが持っている。

■同じころ、古びた館に住む年老いた魔女たちが、流星を感知していた。
彼女たちは人間に姿を変えた星の心臓を食べて若さと魔力を手に入れていた。
その内の一人ラミアがイヴェインのそれを狙って策略を練ることとなる。

■トリスタンとイヴェインが空中で出会う海賊たち。
そのキャプテン、シェイクスピアは残忍な性格で知られていた。

■そしてある理由から離れ離れになっていたトリスタンの母親ともニアミスを繰り返す…

と、文章にするちょっと複雑な相関図であるけれど(まあわたしの文章力がないだけとも言う…)、観ている内にすんなり話に入っていける判りやすさが良。

視覚効果が抜群で、流星が落ちてくるシーンは、目も眩むようなまぶしさと速さですっかり取り込まれてしまう。
そんな疾走感と音楽のかけ流しで、前半は、これはただそれだけの映画だな、と思っていたけれど、物語がいろんな伏線を孕んで(件のネックレスとか雪草の花とか小物の扱い方がうまかった)展開する内にどんどん魅せられていった。

トリスタンの成長の物語という通り(ナレーターがイアン・マッケランだ!気づかなかった)、初めはヴィクトリアに骨抜きにされた情けない青年だったのが、どんどん逞しくなっていく過程はお約束ではあるものの、見ていて楽しい。
ケガをしたイヴェインを気遣うことなく、ただ自分の恋の成就ばかりにかまかけていた彼が、旅を続けるうちに女性を守り、剣の腕を磨き、人間性をも高めていった後の垢抜けた姿は外見も最初の彼とは比べ物にならない。

そんな彼に次第に惹かれていくイヴェイン。
彼女の美しい金髪が、その恋に反応するようにきらきら輝くシーンはうっとり。
ただ…
かわいいはかわいいんだけれど。イヴェイン役のクレア・ディンズの顔がちょっとキツめというか…。目を見開いた顔怖いし…。もっと可憐な女性で見てみたかった。
とは言え、人語を解さないねずみに姿を変えられたトリスタンに告白した時の彼女はとびきりキュートで、その後トリスタンがしたように、思いっきり抱きしめたくなってしまった。

ラミア役のミシェル・ファイファーは実に楽しそうに演じていてうれしくなってしまう。美女として若返ってから、魔法を使うたびに老け込んでいくのに落ち込む姿がかわいいったらない。

そしてわたしにとって一番の拾い物は、海賊のキャプテン役のデ・ニーロ。
強奪も殺人もレイプも何でもござれで名を通していた彼は、実は心は乙女。
トリスタンとイヴェインと交流していく内に、彼らの想いを察知して
「愛はすぐそばにある」
と囁いてしまう機微に聡い人物でもある。
そしてこの映画のハイライトシーン。
一人で女性ものの下着を纏って、羽つきの扇をジュリアナ並に振り回して、天国と地獄の音楽に合わせてノリノリに踊りまくるデ・ニーロ!!
大爆笑させてもらいました。
もう最高!!
その後、部下たちに目撃されてシュンとなっていたところに、
「知ってましたぜ。キャプテンのオカマ趣味は」
と言われて呆然となってしまうというオマケつき。
ここだけで見る価値有り!

そして物語は大団円を迎える。伏線はしっかり収集、決まるところはちゃんと決まり、かなり爽快。
王座についたトリスタンを祝う席で、ヴィクトリアの相手であるハンフリーに色目を使うキャプテンがまた可笑しい。

とにかく色々な意味で目を奪われるシーン多数。
過大な期待をせずに見れば満足すること請け合い。
楽しかった!


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2007年08月08日

ルー・サロメ 善悪の彼岸

B000IMUX7Uルー・サロメ 善悪の彼岸 ノーカット版
ドミニク・サンダ エルランド・ヨセフソン ロバート・パウエル
ポニーキャニオン 2007-01-10

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「結婚なんて感情の牢獄よ」
哲学者ニーチェとその友人パウルとの“三位一体”生活を望んだ実在の女傑ルー・サロメ。
その古い慣習に捉われない自由な感性と美貌に男たちはひれ伏す。

さて。
このルーという女性がただのヤリ○ンに見え、かつニーチェの妹のストレスに共感してしまったわたしは頭が古いのかもしれない。
そんなわけで、ファム・ファタール呼ばわりされているヒロインが魅力的に思えず脱力。
性愛を中心に描いているから仕方ないんだろうけど、どうも彼女が知的には見えなくてねえ…。ドミニク・サンダの冷たい美貌と痩せた肢体は好みなんだけど。

その中で目をひいたのが、ところどころでの同性愛描写。

パウルにその傾向は顕著であり、なんだかすぐに泣いたり傷ついたりと男っぽくないキャラクターだなと思っている内に、本人がどんどん深みに入っていってしまって笑った。
ルーと男たちの乱交を広場で見たシーンが何度か繰り返される。
その昂ぶりが何なのか、パウル本人も判っていないようだ。
けれど娼婦と性交の最中の男の男性器に手を伸ばしたり、ニーチェの股間に頭を埋める女性がいつしか男性(しかもそれがパウル自身?)に取って代わったり、果ては妄想なのか現実なのか、粗野な男たちに次々と性的にいたぶられるまでになってしまう。
これは想いの成就しなかった彼の代償行為なのか。
それとももともと持っていた性癖なのか。
どちらにせよ、ルーときちんとした形で結ばれていたら起こりえなかったことだと思う。

それはニーチェも同じ。
彼も精神に異常を来たし、ルーと暮らすことで自由になれた筈の家族の元に縛りつけられるようになる。
そして彼の見る幻影がまた凄い。
ほぼ全裸の男性二人の舞踏シーン。

こういう倒錯した場面があるから映画は好き。
この唐突さ、異様さ、そしていつしかそれに合わせて軽くステップを踏んでいるようなニーチェの可笑しさが総て好み。

こういった精神錯乱した男たちの妄想(現実でもあるかもしれない)シーンが目にやきついていて、やっぱり肝心のルーの存在が心に残らない。

今こうしてノーカット版で見られる作品だけれど、公開当時は40箇所もカットされて上映されたとか。そちらの方も観てみたくなった。きっと物足りなく感じるに間違いない。


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2007年07月04日

溺れゆく女

B00005UJL8溺れゆく女
ジュリエット・ビノシュ アレックス・ロレ カルメン・マウラ
ジェネオン エンタテインメント 2002-02-02

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アンドレ・テシネ作品を久しぶりに見た。
エモーショナルでアンニュイで、ちょっとだけ退屈。
でも悪くない。

父親を殺してしまった青年マルタン。
彼は三週間放浪し、パリの義兄バンジャマンの元へたどり着く。
義兄はゲイで、バイオリニストのアリスという女性と肉体関係のない同居をしていた。アリスと心を通わせるマルタンだったが……

脆いガラス細工のようなマルタン。
それを包み込むアリス。
この邦題をつけた人間はこの映画を見ていないとしか思えない。
アリスは決して彼に溺れていない。彼女の献身をそうした言葉で捉えてしまうのは、表現力があまりにも乏しい。

アリスがつれない態度をとっておきながら、次のシーンでは男を誘って着衣のままセックスになだれこむのはフランス映画っぽくて笑ってしまったけど。
地中海で寄り添う二人は、あぶなっかしい雛鳥とそれを庇護する親のようだ。
恋愛というより情愛。

それからバンジャマンとアリスの関係も見所。
ゲイと女性という組み合わせは相性がいいのか、他にも色々な映画でその絆が見られる。『ルームメイト』『サム★サフィ』『私の愛情の対象』『猫が行方不明』等。
こちらもたしかな友情を結んでいて、アリスがマルタンとできてしまうと、バルジャマンは嫉妬したような態度を取る。
それが人間くさくてとても良い。

他にも、マルタンの実母や義母、殺してしまった父親などの関係も丁寧に描かれてはいるけれど、それらは個人の思惑が散漫で、父親がマルタンを愛していたという事実も伝わりにくかった。

あとは夜の海に漂うマルタンの姿が殊に美しく、目に灼きついた。
そして半裸のバンジャマンを上から見据えたシーン。
どこか男に対する欲めいた視線を感じる。
実際テシネ作品にはゲイが登場することが多いし。

とりあえずDVD化するときに題名は変えてほしかった。今更だけど。


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2007年06月17日

アメリカン・サイコ

B0000D8RO0アメリカン・サイコ
クリスチャン・ベール ブレット・イーストン・エリス メアリー・ハロン
アミューズソフトエンタテインメント 2003-12-05

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さて。
どう解釈すべきか。

ネタバレ有りです。

27歳の証券マン、パトリックは虚栄に塗れた生活を送っていた。
同僚たちといかにセンスの良い名刺を作ることができるか競争。
流行の店に予約を取ることにも余念がない。
ハイソな家ではトレーニングにも専念し、サロンで体を焼く。
そんな消費社会で生きるエリートは中身はからっぽだ。

事実、被害者第一号ポール殺害の動機は、彼がすばらしく趣味の良い高級な名刺を作ったことから。
この大仰なパトリックの嫉妬心を表現する映像は見事。
こちらから見たら、オフホワイトだの書体だのどれも代わり映えのしない代物なのに、本人たちは虎視眈々としている。
そのバカバカしさが痛烈な風刺。

やがて彼は娼婦やモデル、ガールフレンドといった女性たちを犠牲とし、やがてそれを止める警察官たちまでも手をかけていった。

けれど彼は捕まることがない。
そしてだんだんと明かされていく事実。

すべては彼の妄想だったんだろうか?
それからあの探偵は?あれもどこかで彼が深層で抱えていた罪悪感が作り出した産物なのか?

わたしはポールを殺したのは事実で、その後は彼の妄想なのかなと思っていた。
あの弁護士が「ポールと10日前に一緒に食事した」とは云っていたけれど、彼は顧客であるパトリックさえデイヴィスという男と勘違いしている。
だから弁護士がポールを誰かと間違えた可能性は高い。
他の殺人はあれだけ殺しておいて足がつかないのはどう考えても不自然だから、パトリックの欲望が産んだ幻と考える。
けれど現実味のあるポール殺害にしても、その死体処理の大雑把さから、こちらもまた妄想である可能性も高い。

とりあえず監督のインタビューを見てみると、その辺には一切触れていないのね。
だから事実は重要ではないんだろう。
気にはなるけれど。
やはりこれは風刺の物語。
ヤッピーと呼ばれる人間たちのいやったらしさ、空虚さが全面に押し出されている。
もう殺人マシーンと化したパトリックの姿なんてただのコメディだしね。

さて、ここに出てくるゲイは、パトリックの友人。
やはり高級感あふれる名刺を作ってきて、あわやパトリックに首をしめられるというところで、なぜかモーションをかけられたと勘違い。
彼の手にキスをして「この瞬間を待っていた」ときたもんだ。
殺伐とした中で和ませてもらいました。

しかしクリスチャン・ベールはすごいな。
どんな役でもこなすし、この作品で人も羨む完璧なボディを披露したかと思えば『マシニスト』でCGかと思うほどの痩せっぷりを見せつけ、『バットマンビギンズ』では再びマッチョに。
今目が離せない俳優の一人。


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2007年06月02日

リトル・ミス・サンシャイン

B000LXHF4Kリトル・ミス・サンシャイン
アビゲイル・ブレスリン ジョナサン・デイトン ヴァレリー・ファリス
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2007-06-02

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この一家は不幸だ。
間違いなく不幸。
なんたってパパは負け犬人生を忌み嫌って、勝ち馬にならないと意味がないと公言して憚らずにいるも、破産。
兄はニーチェを崇拝し、その沈黙の誓いを9ヶ月も続けていたのに、肝心の飛行機に乗る夢が叶わない症状を自覚し絶望。
グランパと孫に呼ばれるおじいちゃんはヘロイン吸引がやめられず、老人ホームを追放。
ママの兄である叔父さんはゲイで、失恋と失業で自殺未遂。
ママはそんな家族をまとめられない。

そんな中、幼い妹オリーヴがカリフォルニアの美少女コンテストに参加することになる。

不幸だけれど、家族はがんばる。
不幸だけれど、世間で言う負け犬だけれど、みんなが愛すべき人々だ。


会話も思いもバラバラだった一家がだんだんタッグを組んでいく。
クラッチの故障したミニバスをみんなが押すシーンがとても印象的。
それが彼らのチームワークの始まり。

唯一明るく前向きで屈託のない、それこそサンシャインのようなオリーヴのために遠路はるばる走るバスに乗る家族。
なんていい構図なんだろう。

はじめはみんな好き勝手なことを言って相手を貶めていたりしたのに、逆境に立たされた家族を前にすると、誰もがその相手を思いやる。
当たり前のことなのかもしれないけれど、それが絆ってもんだな。

けれどそんなに一生懸命参加したミスコンでオリーヴは見事に浮いてしまう。
おなかはぽっこり、髪だってセットしていない。
どの子もモデル立ちしているのに、彼女はタダの棒立ち。
とどめ、グランパが振り付けしてくれたお下品ダンスで場内を唖然とさせてしまう。
でも、このダンスシーンが最高!

MC・ハマーの曲にノリノリな彼女を阻止しようとする主催者。
それを体を張って止める父親。
そして彼も舞台に立って一緒に踊りだす。
兄も。
叔父も。
ママも。
グランパも当然そこにいたらそうしていただろう。
大笑いしながらボロ泣きするという、実に珍妙な体験をした。

ミスコンの虚飾も顕にしながら、家族の再生を描いた傑作。
グランパの
「負け犬とは、勝負に負けることを怖れて挑戦しない奴のことを言うんだ」
は名台詞。

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2007年04月10日

ラストデイズ

B000GPIHF4ラストデイズ
マイケル・ピット ガス・ヴァン・サント ルーカス・ハース
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ 2006-09-20

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森の中を一人の男が徘徊している。
常にうつむき、足元は覚束ない。
そこには「生」に対する意志がまるで無い。

自殺した実在のミュージシャン、カート・コバーンに着想を得たフィクション。

主人公ブレイクの存在はまるで森の屋敷を漂う亡霊のようだ。
何かに支えられないとその身を立てることもできない。
その杖となるものが猟銃と大きなスコップであることが不気味であり印象的でもある。
猟銃は言わずもがな、モデルとなったカートが自殺に用いた道具。
そしてスコップは彼の墓穴用なのか。
そういえばファーストシーンで、ブレイクはなぜか庭を一身に掘り起こしている。
その説明は何もない。

彼の周りの行き交う人々。
エージェントであったり、ミュージシャン仲間であったり、電話帳広告のセールスマンであったり、双子のモルモン教徒であったり。
でもどれもが彼にほとんど無関心で、彼自身も関わりを持とうとしていない。
彼と「普通の世界」が乖離しているかのように。
既にそこには「死」が待機している。


その息苦しさ。
そのもの哀しさ。

静かに忍び寄る死は痛烈でもなければ甘く誘惑したりもしない。
そのリアルさがとても苦痛だ。

女物の下着をつけてうなだれるブレイク。
階段の踊り場で枯れてしなだれる花とその姿が重なる。
このブレイク役のマイケル・ピットから目が離せなかった。
今まで顔にクセがあってあまり好きな役者さんではなかったけれど、こんな演技を見せられてしまうと一気にひきつけられてしまった。

映像はまた色々な視点から同じシーンが繰り返し映しだされる。
エレファント』や『去年、マリエンバートで』と同じように。
少しだけシチュエーションや台詞を変えて。
ブレイクの内面の不安定さを表すように。

さて、まるで風景のように描写される周囲の人々の中に、一組のゲイカップルらしき男たちがいる。
このうちの一人を演じたのがルーカス・ハース。
いつの間にかこんなに老けてしまったとは…
しかも男同士のベッドシーンも体当たり。
メイキングによると、このシーン(だけに限らないけれど)はアドリブだったらしく、どうやら不採用になったバージョンでは相手のパンツを引き裂くというワイルドプレイをかましてくれたらしい。これもちょっと見てみたかった。


わたしはニルヴァーナにもカート・コバーンにもまったく詳しくない。
けれど見ていていたたまれなかった。
今日はsmells like teen spiritを聴こうと思う。


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2007年04月02日

パリ、ジュテーム

B000V6F4Y0パリ、ジュテーム プレミアム・エディション
ナタリー・ポートマン;イライジャ・ウッド;ジュリエット・ビノシュ;スティーヴ・ブシェミ;ウィレム・デフォー;リュディヴィーヌ・サニエ;ファニー・アルダン;ジーナ・ローランズ;ベン・ギャザラ;ミランダ・リチャードソン トム・ティクヴァ;ガス・ヴァン・サント;ジョエル&イーサン・コーエン;アルフォンソ・キュアロン;ウォルターサレス;アレクサンダー・ペイン;イサベル・コイシェ
ジェネオン エンタテインメント 2007-10-24

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パリを舞台にした18の短編。
それぞれの監督。
それぞれの役者。
そしてそれぞれの愛の物語。


◆モンマルトル

車の中で自分の孤独に気づく男。そんな彼の目の前で倒れる女性。
オーソドックスなボーイ・ミーツ・ガールで幕が開く。

◆セーヌ河岸

道行く女性をナンパするのに暇がない友人たちから離れてアラブ系の女性に近づくフランソワ。
こういう何か直情に突き動かされて行動する“恋する人間”の姿がたまらなく愛しい。

◆マレ地区

ガス・ヴァン・サントらしく、唯一同性愛を扱った作品。
街の印刷屋で青年エリに出会う通訳のガスパール。
彼はエリに運命を感じ、ひたすら話しかけるも、相手は時々言葉を返すだけ。
電話番号を渡してそこを去るガスパール。
実はエリはフランス語がほとんど判っていなかった…。

このオチに脱力して笑う。
アンタ、今強烈に口説かれてたんだよ!
前世の片割れとか言われてたんだよ!

そしてエリは彼を追ってパリの街をひた走る…。
好きだなあ、これは。
新ハンニバルことギャスパー・ウリエルの色っぽさは見もの!

◆チュイルリー

駅でイチャつくカップルに目を合わせてしまった男に降りかかる受難。
なんでこんなに不幸が似合う男なんだ、ブシェミ!
彼を見つめるポストカードの中のモナリザの微笑みは、憐れみなのか嘲笑なのか。

◆16区から遠く離れて

自分の赤ちゃんを託児所に預けて、豪華マンションでベビーシッターをする女。
彼女は自分の子供に歌うのと同じ歌でその赤子をあやす。
それだけなのに、なぜか心に染み入る。

そしてどこかで見た女性だと思ったら、カタリーナ・サンディノ・モレノだった。
『そして、ひと粒のひかり』のその後をいやでも想起させられる。

◆ショワジー門

意味不明。
いきなりカンフーをかますチャイナタウンの女主人。
どんな髪型も手がけられるシャンプーのセールスマンの男の超テクニック。
映像がぶっとんでいて何が何だか(笑)。

◆バスティーユ

長年連れ添った妻と別れを切り出そうとしている男。
けれど赤いトレンチコートで現れた妻は、自分があと余命いくばくもないことを告げる。
彼女のお気に入りのことをすべてしてあげる内にもう一度妻に恋をする。
彼女が死んだ後、彼は町で赤いトレンチコート姿の女性を見ると心が揺れるのだった。
まさかあの妻役がミランダ・リチャードソンだとは思わなかった。かなりの変貌に少しショック。
けれど妻への二度目の恋というファクターがとても好きな作品。

◆ヴィクトール広場

息子を亡くして抜け殻のようになってしまった母親。
けれどある夜、不思議なカウボーイに連れられもう一度息子と出会う…。
主演がジュリエット・ビノシュで監督が日本人だったので期待したものの、どうということもなく。
物語の一片だけを何の技巧も用いず見せられた感じがして残念。

◆エッフェル塔

観て思った。
誰もが自分に合った人間がどこかにいる。
パントマイムの男女が出会う刑務所のシーンでは劇場から笑い声が。
わたしも笑った。
そして微笑んでいた。

◆モンソー公園

これはうまいミスリーディング。
何かもめていそうな若い女と初老の男の関係、ギャスパーという男の存在、想定していたものがラストに見事に覆される。

◆デ・ザンファン・ルージュ地区

ドラッグの売人と、薬を買うアメリカ人の女優。
ラストの意味が判らず…。
あのナイフを持ち去った意味は?

◆お祭り広場

これが一番好き。
刺されて広場の真ん中でうずくまる男。
手当てをする女性と以前出会ったことがあることを思い出した男。
「一緒にコーヒーを飲まないか」
瀕死の中でそう誘うものの、彼は命を落とす。
彼女の血で汚れた両手には二つのコーヒーカップが所在無くのせられていた。
孤独、出会い、叶わなかったねがい。
彼女の涙が彼に届きますように。

◆ピガール

設定がよく判らなかった。
ファニー・アルダンの艶然とした微笑は健在。

◆マドレーヌ界隈

正直どうでも良いヴァンパイアもの。
ハート形に広がる血のヴィジュアルは好きだけれど。

◆ペール・ラシェーズ墓地

こういう自分押し付け女は好きじゃない。

◆フォブール・サン・ドニ

めまぐるしく移り変わる二人の男女のエピソード。
その疾走感が走馬灯を見事にあらわしている。
いきなりどこかしこで叫びだすナタリー・ポートマンがキュート!

◆カルテェラタン

それぞれに愛人のいる年老いた夫婦が離婚の話をしている。
貫禄たっぷりのジーナ・ローランズはやっぱりいい女。


◆14区

パリを旅する初老の女性。
ひとりで楽しく食事をし、墓地を歩き、フランス語で現地の人に話しかける。
けれど彼女はその楽しみを分かち合う人が傍らにいないことに気づく。
寂しさを自覚した瞬間、彼女は「パリを愛している」ことが判る。
最後のなんともいえない表情が忘れられない。


エンドロールが流れ出してからは、それぞれの登場人物がどこかで交わっていく。
夜のカフェで。
信号待ちの交差点で。
店の立ち並ぶ一角で。
オムニバスはこれがあるからうれしくなってしまう。

パリのどこかで今も誰かが誰かと出会い、別れ、慈しみあい、笑って、ないている。
当たり前の風景を切り取った断片がとても愛しい。


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2007年02月01日

ラッキーナンバー7

B000MGBS44ラッキーナンバー7 DTSコレクターズ・エディション
ジョシュ・ハートネット ポール・マクギガン ブルース・ウィリス
ハピネット・ピクチャーズ 2007-06-22

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なに、この面白さ!

ネタバレ有りです。

一人の殺し屋・グッドキャットが空港で行きずりの男に話をする。
20年前、マフィアに皆殺しにされたマックスとその妻、そして幼い息子のこと。
話が終わった後、殺し屋はその男を殺害する。

駐車場で射殺される男。
ビルの上から狙撃された男。
野球のボールを投げつけられて殺された男。

友人のニックの家を訪ねたスレヴンという青年。
彼はニックと間違われて“ボス”という男のもとに連行される。
そしてボスと敵対する“ラビ”の息子の殺害を依頼される。
家に帰ったスレヴンを待ち構えていたのは“ラビ”の手下。
スレヴンはラビからも借金を返すよう脅される。
やはりニックと人違いされたまま。

前半は怒涛のように色んなエピソードが展開される。
意味の判らないシーンも多数。
それが後半、どんどん線をつないでいく。


ああ、あのシーンはそういうことだったのか!と膝を打つ爽快感。
それで思い出されるのは『ユージュアル・サスペクツ』。
ただし、そちらがスタイリッシュにさりげなくパズルの断片を映し出すのとは違って、こちらは懇切丁寧にパズルが完成してくれるまで説明してくれる。
そこが少しスマートさに欠けるものの、やはり面白いことに違いはない。

人違いされたために受難ばかりだったスレヴンが、正体を現した時に顔つきが変わるのが良い。
あれ、この人なんでこんな飄々とした顔をしてるんだろう?
と思っているといきなり非情に殺人を犯すその豹変ぶりには肝を抜かした。
それから明かされる彼の本性。
もしかしてそうなのかな、と思わないことはなかったけれど、スレヴンのツイてない一日を映像で見せられていたので(彼の回想という形だったけれど)ミスリーディングにまんまとひっかかってしまった。

そして出番は決して多くないけれど、グッドキャット役のブルース・ウィリスがとても良い。
殺すべき少年を殺すことができず、彼の復讐を20年かけて手伝うこととなるその父性。
ラストがそのシーンで締めくくってくれたのも満足。

さて、ここで出てくるゲイはラビの息子。屈強な護衛がいるにも関わらず、スレヴンとグッドキャットの前では成す術もなくあっさり殺されてしまったかわいそうな青年。
ゲイは利用されるだけというかなしい扱われ方。

ちょっとドタバタが入ったコミカルでさえある前半と、一気に謎解きとシリアスさが加速する後半とはトーンが異なる作品。
こういう脚本が増えてくれればいいと切に願う。



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2006年11月27日

プラダを着た悪魔

B000MR9B56プラダを着た悪魔 (特別編)
メリル・ストリープ ローレン・ワイズバーガー デイビッド・フランケル
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2007-04-18

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大学を卒業し、ジャーナリストを目指すアンディが手にした職は、一流ファッション誌の編集長・ミランダのアシスタント。
でもアンディはファッションに全く興味なし。
しかも業界全体から怖れられているミランダの無茶でハードな要求が彼女を待ち受けていた…

よくある“ちょっとダサい子”(でも素地は良)がファッションや化粧で磨かれて、以前彼女をバカにしていた女性たちが目を見張るというパターンをきれいに踏襲。
そしてそのオシャレを支援する人間が現れるのもお決まりなように、ここでもゲイらしきファッションディレクターのナイジェルが登場する。

そんなお約束が詰まった映画ながら、これが楽しい。

何しろテンポが良い。
ミランダという女性が登場するまでの一連のバタバタシーンから(スタッフが靴をスリッパからパンプスに履き替えたり雑誌を急いで用意したり…)アンディとの面接、初仕事の日の業界用語満載の指示シーン等、緩む所がなく飽きさせない。

そして何と云ってもアンディが色々なブランドの服に身を包み街を闊歩するシーンはたまらない!
マドンナの「ヴォーグ」の曲に乗って彼女がファッショナブルに魅力的になっていく様子は見ていて気持ちが良い。

そうしてアンディがシンデレラと化した、仕事も上向きのサクセスストーリーになるかというと…
これが少し違う。
もしそんな結末だったらこれほど楽しめなかったかもしれない。

そして何と云ってもミランダ役のメリル・ストリープ。
圧巻。

実はあまり好きな女優さんではないけれど、やっぱりどの作品もうまいことには変わりない。
今回もわがままでカリスマ性たっぷりで貫禄があってそれこそ悪魔のような女性を気持ち良さそうに演じていた。

びっくりしたのは、クライマックス近くなって夫と離婚するかもしれないことをアンディに告げたミランダ、いやストリープがまさかのスッピン!!
よくぞ見せてくれました。
気丈で敵を作ってナンボ、といった風情の女性がはじめて垣間見せる脆いもうひとつの顔。
ここもベタだなと思いつつ、ミランダにちょっと心魅かれてしまう。

他の脇役たちも良い。
最初に挙げたナイジェルも、もう少しゲイらしき仕草があったら印象深かったのにと思いつつ、アンディにスパッと喝を入れたり、自分の成功をたまらず全身で喜びを表してしまったりとけっこう意外性のあるキャラが立っていた。
キャラが立つといえば、アンディの先輩のエミリーがこれまた良かった!
アンディを小馬鹿にしたりはするものの、基本的な仕事はきちんと教え、パリコレに同行する日のために絶食ダイエットに励み、パソコンに向かいながら「私は仕事が好き、私は仕事が好き…」と唱える姿は爆笑もの。

そんなこんなで十分楽しめた映画。
最後にアンディを見て、今までに見せたことのない笑みを浮かべるミランダがやっぱり全てをかっさらってしまった。


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2006年11月19日

54(フィフティ★フォー)

B00005V2NF54(フィフティ★フォー)
マーク・クリストファー ライアン・フィリップ ネーブ・キャンベル
ジェネオン エンタテインメント 2002-03-22

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70年代のNY、ディスコ“54”は栄華の象徴。
主人公シェーンはそこにやって来てバーテンダーとして働き始める。
伝説のディスコで繰り広げられる人間模様。

とにかくシェーン役のライアン・フィリップの美を愛でる映画。
締まった肉体(現に上半身裸を晒して54に入ることを許可されるシーンがある)、少年ぽさが残る狡猾ながらもあどけない美貌、踊り狂う姿も若々しくて良い!

夢を追いかける人々とバブル期に金に塗れたオーナーたち。
そのきらびやかな世界がそのままディスコの熱いステージに降り立っている。
けれどその一方で、麻薬売買に手を出すうだつのあがらないグレッグという青年や、その美しい妻のアニタがシェーンと関係を持ってしまうなどの暗部も描き出される。
もてはやされるバーテンダーとしてのぼりつめたシェーンにしても、好きになった女優に軽く遊ばれてしまったり、上流社会で笑いものになったりと現実は重くのしかかる。

その栄枯盛衰を一身に受けるかのような54のオーナー、オースティンパワーズことマイク・マイヤーズ演じるスティーヴがゲイの役。
バーテンダーになりたいグレッグに体の関係と取引をはかったシーンがあり(ちょっとうろ覚えです…)、そのいやったらしさと変な色気がとても印象的。

ほろ苦い青春ものとしてはけっこう見せてくれる作品。


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2006年11月05日

キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件

B000G03SGMキスキス バンバン -L.A.的殺人事件
シェーン・ブラック ロバート・ダウニー・Jr. ヴァル・キルマー
ワーナー・ホーム・ビデオ 2006-09-08

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キスキス…
たしかにロバート・ダウニー・Jr.とヴァル・キルマーが2回マウス・トゥ・マウスでキスしてました。
今まで何でノーチェックだったのか。
面白かった!

コソ泥のハリーはひょんなことから俳優のオーディションに合格、役をつかむため探偵でゲイのペリーに弟子入りすることとなる。
そこでハリーは幼馴染であり初恋の人でもあるハーモニーと再会する。
けれどその日からなぜかいくつもの死体とご対面する羽目となる…。

映画は最初っからハリーが映画監督よろしく、シーンの編集や人物説明などに口を挟んでストーリーが展開していく。
一通りその説明が終わるとこの手法はなりを潜めるものの、ラストで復活。
それがアイロニカルで技巧に凝っていてニヤリとさせられてしまう。

たとえばハリウッドでおなじみの「撃たれて当然死んでいるハズの人物がラストで生きていたのが判る」シーンもここできっちり再現。
それを揶揄して、今までに死んだ悪役たちをゾロゾロ出演させるシーンは笑った。

かと思えば、これも常套、「撃たれたけれどポケットに入っていたペンダントか何かに助けられて無傷」なシーンでは一瞬そう思わせておいて、実はそれ(この場合は本)を弾が貫通していてやっぱり怪我、という裏切りを見せてくれて楽しい。

そしてハリーとハーモニーとの掛け合いがとても良い。
お色気もアクションもキュートなハーモニー役のミシェル・モナハンがとにかく魅力的。『M:I−3』のあの彼女とはなかなか気づかなかった。この作品での彼女の方が断然素敵!
何かと抜けているハリーといい雰囲気になった途端、昔のしがらみで大喧嘩したり、そのドタバタぶりがなかなか楽しめた。

けれど肝心のペリーとのエピソードが少なくて、バディ・ムービーとしては失敗だと思う。
最初に書いたキスシーンにしても…
一回目は警察の目をごまかすために咄嗟にホモカップルを演じたため。
そこで思いっきり不快感を表していたハリー(それにしては思わず相手の髪に手をやろうとしていたりする…)が、二回目、撃たれたペリーを救うため躊躇せず人工呼吸するまでの心の動きがあまりにも雑すぎて、いつこの二人は仲良くなったのか当惑してしまった。

ハリー役のロバート・ダウニー・Jr.は芸達者。
虚勢ばかりで弱気ででも憎めない男にはぴったり。
どちらかというとヴァル・キルマーより彼の方がホモに見えるんだけど…。
一時期逮捕ばかりされていたけれど、更正したんだろうか?
いい役者さんなので何気に彼が出ているとワクワクしてしまう。

ストーリーの謎とき部分はさほど興味をひかれるものではなかったけれど、全体的には満足な出来。
こういうのは大好き!


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2006年08月09日

愛についてのキンゼイ・レポート

B000AR94EG愛についてのキンゼイ・レポート
ビル・コンドン リーアム・ニーソン ローラ・リニー
松竹 2006-03-30

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ひらたく言うと、セックスについて調査しまくったキンゼイというおっさん(実在)の生涯を描いた作品。

学生に性についてアンケートを取り、学内で男性器も女性器も顕なスライドを映して授業をし、自らゲイバーにさえ出向いて行きその性遍歴を聞く。
それがただの好色さから来るものではなく、あくまで研究熱心な学者としての姿勢として描かれているから面白い。

そして色んな人から話を聞くシーンがあるのだけど、わたしが気に入ったのは、ロリコン男の件。
思春期前の少女や少年何百人と関係を持ったと自慢する最悪の男に、キンゼイは
「人を傷つけるセックスは良くない」
といった意味合いのことを告げる。
ただ面白半分にセックスのことを調べているわけではないこと、そしてきちんとした倫理観を持っているキンゼイに好感が持てる。

そして彼は同性愛も差別したりはしない。
どころか自身も身をもってそれを体験するシーンは驚いた。

目をかけていた弟子とホテルで二人きりになり、何気に誘惑されて激しく唇を重ねる二人。
この弟子役のピーター・サースガード(『フライトプラン』の人だよね)のやけに色っぽい目つきがたまりません。
眠たそうな悪人面、良。

キンゼイの妻役のローラ・リニーは今回もやっぱりうまい。
派手な役でも演技でもないのに、ともすると変人扱いされるキンゼイの傍らに寄り添う理解者としての存在感があった。

ただ二時間ちょいかそれを切るくらいの上映時間なのに、やけに長く感じてしまった映画でもある。
わたしには少し冗長気味に感じた。
キンゼイが少し落ちぶれていくあたりからもう少し削ってもよかったのに。


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2006年07月07日

サラ、いつわりの祈り

B000CFWR36サラ、いつわりの祈り
アーシア・アルジェント ジミー・ベネット ピーター・フォンダ
ジェネオン エンタテインメント 2006-01-27

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やさしい里親のもとで暮らしていたジェレマイアは、ある日実母のサラに引き取られる。
サラはまだ若く奔放で、男を渡り歩き、ドラッグにも身を沈めていた。
少年ジェレマイアもいつしかそんな生活に染まっていく。

不吉な鳥の幻惑。涙を流す石。
不安な心情の表現とドラッグのトリップ感はそれほどでないのに、現実に行われていることの目をそむけたくなるほどのやりきれさはどうだろう。
サラの愛人に犯されるジェレマイア。
羽を毟られた描写で幾分緩和しているものの、その後の病院のシーンでの少年の絶叫と表情には痛ましさ以外の何も感じられない。

母親に捨てられ、また引き戻され、ドラッグを吸わされ、身も心もボロボロとなっていく少年に差し伸べられる手はない。
厳格な祖父の家も彼の居場所とはならなかった。

何がこの母と子を結びつけているのか?

それが多分ネックとなるのだろうけど、わたしにはそれが何なのか判らなくて完敗。
なのでただただ見ているのが辛い映画だった。

少年は母親を求めつづける。

だからなのか、サラの下着を身に着けて彼女の愛人を誘惑してしまったりする。
そのかなしいまでの依存と執着は最後までつづく。

サラと車で去っていく彼の行き先はどこなのか。


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2006年05月01日

美しき運命の傷痕

B000H307EE美しき運命の傷痕
ダニス・タノヴィッチ エマニュエル・ベアール カリン・ヴィアール
ハピネット・ピクチャーズ 2006-09-29

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ファーストシーン、母親に連れられた少女がどこか構内のドアを開け放つ。
そこには全裸の少年と向かい合った中年男性の姿があった。

少女が誰なのか、少年と男は何をしていたのか、これがどんな伏線となっているのか…それは映画の終盤近くまで明かされることはない。
主となるのは三人の姉妹の生き方。

長女ソフィ。
夫と二人の子供のいる主婦。けれど旦那の浮気に気づき始めて心を痛めている。
次女セリーヌ。
養護施設に暮らす口のきけない母親を見舞う女性。いつも不眠症のため、列車の中で眠っている。そんな彼女をいつもあたたかいまなざしで見つめる車掌の好意に気づいていない。
三女アンヌ。
聡明な美女であるのに師である大学教授と不倫。別れを告げられるも、彼のことが忘れられず縋り付いている。

そんな行き詰った彼女たちの生活を交互に描きながら、ある重大な告白を機に三人が母親のもとへ集うところとなる。
そこに行き着くまでがけっこうダラダラとしてむやみにアンニュイなんだけど、何となくそれがフランス映画っぽくてわたしは嫌いじゃない。

そしてセリーヌの前に姿を現す謎の青年の正体が明らかになってから、冒頭に書いたシーンの意味やこれまで疑問符のついたことが一気に判明し、俄然と面白くなる。

この三姉妹は笑顔を見せることが少ない。
傷つき、叫び、縋り、蹲る。
そんな彼女らがラストシーン近くになってようやく一同に集まり、笑顔を見せ合うのは家族の絆を感じさせて良い。ほっとできる数少ないあたたかなシーンだ。

彼女たちは母親と相対する。
これまで母親によって刷り込まれていたかもしれない父親像が覆ったからだ。
でも母親は一言紙に書く。
「それでも私は何も後悔していない」

すべては運命だったのだろうか。偶然ではなく。
そして人生の選択を成した三姉妹の決断もまた。
男と女、妻と夫、不倫相手、同性愛者。
まるでルイという男が眺めていた万華鏡のように姿を変え、人生を彩る人々。
キェシロフスキの遺稿というのが納得の作品。


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2006年04月19日

ふたりの5つの分かれ路

B000CEGVIYふたりの5つの分かれ路
ヴァレリア・ブルーニ・デデスキ フランソワ・オゾン ステファン・フレイス
メディアファクトリー 2006-02-24

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一組の夫婦。マリオンとジル。
彼らが離婚するシーンで映画ははじまる。
そしてそれに至るまでのできごとが遡って語られていく。

愛が終わることから始まり、愛が始まることで映画は終わる。

だから殊更、出会ったばかりの二人が心を弾ませ、互いに魅かれあうラストのチャプターは胸が詰まる。
夕日に彩られた海に入り、ふたつの頭がぽっかりと浮かんでいるラストシーンは言いようもなく美しい。よく考えると皮肉な作りであるのに、このシーンはそんなことを考えられないくらいただ心に浸透した。

夫婦の間の亀裂、家族のまなざし、性の営みのやるせなさ。
そんなものが織り込まれた数々のエピソード。
ひどい難産だったことを知りながらその日妻のもとへ行かなかった夫。
乱交パーティーで妻の前で何人もの女性と、そして男性と交わった夫。
結婚初夜に外国人に誘惑される妻。
夫婦の生活に破綻を及ぼすできごとの積み重ね。

やっぱり時系列が遡っていくから、前述したようにただやるせなさが見れば見るだけ増していく。

あんなに、愛し合っていたのに。

そんなことに思いを馳せずにはいられない。

あの輝きは何だったのか?どうして傷つけてしまうんだろう?どうして傷ついてしまうんだろう?
その叫びがファーストシーンの離婚直後のセックスに収斂されているような気がする。

さて、妻のマリオン役のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。
嘘の心』で彼女を初めて見て、なんかクネクネした変な女優さんだな〜と思いつつ、『愛する者よ、列車に乗れ』『ネネットとボニ』など好みの作品に出演していて気にはなっていたんだけど、この作品で生気を失った中年女と恋の始まりに顔を輝かせる少女の顔を演じ分けていたので、何となく見直してしまいました。

フランソワ・オゾンの次の作品は『ぼくを葬る』。
できれば映画館で観たいなあ。


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