アイのカタチ【近親相姦】

2014年06月22日

サード・パーソン

B00NLW6L7Aサード・パーソン [Blu-ray]
2013年 イギリス/アメリカ/ドイツ/ベルギー
監督:ポール・ハギス
出演:リーアム・ニーソン
   ミラ・クニス
   エイドリアン・ブロディ
   オリヴィア・ワイルド
   ジェームズ・フランコ
   マリア・ベロ
   キム・ベイシンガー
   モラン・アティアス

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三人称の“彼”

ネタバレ有りです。

パリ。
作家のマイケル(リーアム・ニーソン)はホテルで新作を執筆中。そこに奔放で魅力的な愛人アンナ(オリヴィア・ワイルド)が訪ねてくる。

ローマ。
アメリカ人のスコット(エイドリアン・ブロディ)は、ひょんなことから知り合った現地の美女モニカの娘の救出を助けることとなる。

ニューヨーク。
元夫リック(ジェームズ・フランコ)と、子どもの親権問題で争うジュリア(ミラ・クニス)。彼女は生活のためにホテルの客室係として働き始める。

マイケルが三人称で小説を書いている、という時点で、ああこれはローマ編とニューヨーク編は彼の小説の中のできごとなんだなと予想はできてしまった(ドヤ顔)けれど、それでも構成の妙に唸る。

現実で起こった出来事は、マイケルが愛人からの電話にかまけたほんのわずかな時間で、目を離した幼い息子がプール(多分)で死んでしまう。そのことから立ち直れない彼と、その妻エレイン(キム・ベイシンガー)。
マイケルの日記で、自分にその死因があったことを知ってショックで去っていく愛人アンナ。彼女は実の父親と近親相姦関係にあった。

多分これが実在する人物たち。
彼らの抱えた傷、罪悪感、そして愛がその他のキャラクター(=マイケルの小説の創作人物)に投影されていく。

息子を自分の不注意(ビジネスの電話に出て子どもから目を離して死なせてしまった)スコットは、そのままマイケルと繋がる。だから彼は紆余曲折しながらも、もうひとりの子供(モニカの娘)を取り戻すことに身を挺し、有り金も全部はたく。
この娘が本当にいるのかどうか、その姿が最後まで見せない、マクガフィン手法は、とても小説的だと思う。

それからこれは公式サイトのレビューで判ったことだけれど、NYのリックとジュリアのエピソードは、アンナの両親を描いていたのではないかということ。これは目から鱗だった。
彼らの子供は息子だけれど、これはフィクションとして置き換えられた。息子なのに名前が「ジェシー」でおかしいなとは思ったけれど、この説を読んで納得。
子供を過剰に庇護するリックが、ことが過ぎて近親相姦に及んだという背景の描写。

「白。それは信頼の色」とマイケルが小説に書くと、登場人物たちはこぞって白を身に纏う。アンナの部屋に飾られた白いバラも。でもそれは同じく登場人物によって破壊され、あるいはスコットのように白いシャツを脱ぎ捨てて新しい柄ものシャツに変えられる。
それは欺瞞と韜晦であることの象徴のようでもある。


そして交わるはずのない彼らが出会い、言動がリンクしていく様子は圧巻。
ホテルのメモ、水没させた時計(子供の水の事故と帰ってこない時間の暗喩?)、トラウマを乗り越えてのプールへのダイヴ、やがて彼らはふっとその場面から姿を消す。物語の終わりを告げるように。

そうしてひとり、マイケルだけが部屋に残される。
いくら自分を“彼”と呼び、三人称に仕立て上げても。
現実は罪を背負い、激しい愛にもやぶれた作家がそこにいるだけ。


「見ていてね」
という最後の息子のつぶやきをずっと聞き続ける彼は、また作家として成功を収めるだろうけれど、罪悪感と孤独感からは決して逃れられない。

今までハズレなしのポール・ハギス。今回も素晴らしい作品を作ってくれた。


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2012年10月06日

籠の中の乙女

B00A86WKTA籠の中の乙女 [DVD]
2009年 ギリシャ
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:クリストス・ステルギオグル
   ミシェル・ヴァレイ
   アンゲリキ・パプーリァ
   マリー・ツォニ
   クリストス・パサリス
   アナ・カレジドゥ
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えん‐そく【遠足】
 [名]固い床材のこと。
 例文 「天井からシャンデリアが落ちたが、―のおかげで傷はつかなかった。」

ネタバレ有りです。

高い塀を施したプール付の豪奢な邸宅に住むひとつの家族。
父と母は、長男、長女、次女を家の中に閉じ込めている。
外は危険で決して出てはならない。
その教えに従って、外界を全く知らずに育つ子供たち。
しかしある日、長男の性欲処理のために父親が連れてきたクリスティーナという女性がその均衡を崩し始める。

「海」とは革張りの椅子のこと、「高速道路」とは強風のこと、「ゾンビ」とは黄色い小花のこと。
母親が教えるめちゃくちゃな国語。
猫とは最も恐ろしい外敵で、侵入を防ぐために犬のようにかがんで吼える練習をしなくてはならない。
パソコンはもちろん、DVDもCDも、電話でさえ子供たちの目の届くところには置かない。
外から調達してくる既製品―劇中で出てきたのはリステリンとミネラルウォーター―は全てラベルを剥がして家に持ち帰る。
躾としての何らかの課題がクリアできた者に与えられるご褒美のシール。
そして「犬歯が抜けたら外出してよい」とのお達し。

一連の父母の異常な教育と事実上の軟禁、そして何の疑問も持たず唯々諾々とそれに従っているいい歳をしたきょうだいたちの姿に、ぞっとするよりも、もう突き抜けてただただ呆れてしまう。

それは妙なシュールさと可笑しさも生み出す。

クリスティーナの教えにより、体を舐めたら欲しいものが与えられると刷り込まれた長女が、妹や父親にもそれを試してみたり。
外と中との境界線で、みんなで対猫用のバウバウ吼えをずっと実践していたり。
完全捏造の「Fly Me to the Moon 」の歌詞だったり。
最初に書いた国語教育はもとより、性教育も生物学もムチャクチャで、「母さんは今度双子を生むことになった。それと犬も」の台詞を大真面目に聞く子供たちには大笑い。
一番は、クリスティーナに借りたビデオで初めて映画を観た長女が、その『フラッシュダンス』を見よう見まねで踊るパーティーの場面。
あの凄いダンスは映画史に残りそう。

そんな妙にユーモアラスな場面はあれど、そこにはっとするほど唐突で鮮烈な暴力描写が入るのも見逃せない。
外界のものを家に持ち込み、それを子供たちに与えたクリスティーナは、父親からいきなりビデオデッキで殴られる。
その前に、ビデオを見てしまった長女も、ビデオテープをガムテープでぐるぐる巻きにした父親の手で打擲される。
ビデオ=穢れた世界の悪の象徴としての使い方にこれはぞっとする場面だった。

しかしそれで『ロッキー』 『ジョーズ』 『フラッシュダンス』を見てしまったと思われる長女は、いきなりの外部情報に瞬く間に影響されてしまう。
台詞をいちいちよく覚えており、きょうだいの前でそれを披露したりもする。
自分を「ブルース」と呼んでと妹に頼むシーンはなかなか深い場面だ。
今まで名前=自我を持たなかった彼女が、初めて世界に触れたいと願ったシーンだ。

だから彼女は自分で、抜けるはずの無い犬歯を鉄アレイで叩き割って、車のトランクに身を隠す。
唯一外に出る手段だと教えられていた車へ。

さて、この両親の異常な仕打ちの理由だけれど、これはその背景も示唆さえも一切出てこない。
そもそもこれが子供たちを穢れた外界から完全に守りたいという愛情からなのかも判らない。
なぜか彼らにはもう一人きょうだいがいることになっていて、彼は塀の外におり、そして猫に殺されたとする設定もまるで説明がない。
そもそも双子を生むと云っていた彼らは、その双子をどこから「調達」するつもりだったのか、また子供たちを増やしてどうするつもりだったのか、疑問は尽きないけれどやっぱり答えなどそこにはない。

「どの家庭にも、それぞれルールがある」
という監督の言にある通り、観客は逸脱したルールを敷くひとつの家族の異常な動向を眺めるしかない。

これは凄いことだ。

クリスティーナが「解雇」され、両親は新しいセックスの相手に、何と姉妹を選ばせる。
しかもどちらが良いか、目をつぶって、胸やお尻の触感だけで長男に選ばせる異常っぷり。
長女がいなくなり、長男と次女は同じベッドに横になり、キスを交わして満足げに微笑を浮かべる。
他者を完全にシャットアウトした当然の結果の近親相姦にはもはや言葉も出ない。

ラストシーン。
車でいつものように出勤する父親。
そのトランクの中には長女が隠れている。
車を止めて建物の中に入っていく父親。
カメラはその後ずっとトランクを映し出す。
物音もしない。出る気配も無い。でも、もしかして。
そんな含みをもたせて画面はエンドロールへ。
長女は果たして外界に出ることができるのか。
このまままた父と共に家に帰るのか。
どちらにせよ、この歳まで成長してしまった長女には残酷な世界が待っている。
それでもやはり、トランクの扉が開くことを願わずにはいられない。 

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2012年04月30日

屋根裏部屋の花たち

B0052FAWF6Flowers In the Attic
1987年 アメリカ
監督:ジェフリー・ブルーム
出演:ルイーズ・フレッチャー
   ヴィクトリア・テナント
   クリスティ・スワンソン
   ジェブ・スチュアート・アダムス
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やがて萎れていく花。

ネタバレ有りです。

父親の事故死により、祖母の家に身を寄せた母親と4人の子供たち。
実は母親は17年前に駆け落ちをしており、しかも夫とは近親婚だった。
そのため祖母は子供たちを屋根裏部屋へ軟禁し、何かと辛く当たった。
莫大な財産を所有する祖父は病床で死にかけており、母親と夫との間に子供がいなければ財産を残すと言う。
子供の存在をひた隠しにし、祖父が死ぬまでここで我慢してくれと懇願する母親。
子供たちは母親を信じてずっと屋根裏部屋で待っていた。
けれど両親の愛を取り戻し、再び何不自由ないお嬢様の生活を手に入れた母の訪問は日に日に少なくなっていった。
幼い弟は病気にかかり、長男と長女はその部屋から出ようと画策する。

やりきれなさが残る家族崩壊のドラマ。
でも子供たちの結束だけはとても強くて、彼らは外に出られないストレスを抱えながら、四季の花などの折り紙を飾って日々を少しでも楽しいものにしようとしている。
食事もろくに運んできてくれなくなり、体調を壊す弟に、自らの血を与える長男。
誰よりも早く母親の裏切りに気づき、彼女を糾弾し、双子のきょうだいの安否を気遣う長女。

この10代前半とおぼしき長男と長女に近親相姦めいた情を感じた。
長女の着替え時や入浴時にもそばにいる長男。
そこでは異性を見る目つきなどないものの、結束の強さ、絆の深さが別の愛情にとって変わる。
母親が社交界に戻り、どこぞの資産家と結婚しようとしていることが判った時。
長女の胸に顔をうずめて泣く長男。それを抱きしめる長女。
ここで二人は一線を越えたように思えたのだけど、考えすぎかもしれない。

子供たちが痩せ細り、母親への不信感を露わにしていくも、互いを思いやるやさしさだけは失わなかったのが泣ける。
それどころか、肺炎で死にかけ、ようやく病院に連れて行ってもらった幼い次男が、今までやさしい言葉も態度もかけてもらわなかった使用人に、きちんと挨拶をするところでまた泣いた。
でも結局次男は病院で命を落としてしまう。
しかも、それが母親による毒殺であることが判明し、結婚式当日、子供たちは部屋を脱出して、式の最中、すべてを告白する。

結局悪事が全員に知れ渡ることとなった母親は、ウェディング姿のまま、長女と揉み合い、足を滑らせ首を吊って死んでしまう。
天網恢恢……というには、あまりにも肉体的にも精神的にも子供たちが追い詰められすぎて、後味が良いものではない。
初めは子供たちを愛し、彼らを折檻する祖母に歯向かっていた母親が、こんなに豹変してしまうのもショックだった。
母親が、長男と長女と話し合う場面がある。
そこには大きな鏡があって、カメラは鏡に映った母親と子供たちが会話するところを映し出している。
これはもう母親が真摯に子供たちに向き合っていないということを象徴した場面なんだろうか。

『カッコーの巣の上で』で強烈な印象を残したルイーズ・フレッチャーが、また悪魔のような祖母役にハマっていた。
けれどやっぱりそれ以上に、普通の女性が、慈しんできた筈の子供たちを殺そうとまでするようになった“女”に変わった母親役が印象深い。

屋根裏部屋で咲いた花は、それを無残に摘もうとした屋敷を出て行った。
彼らがどこへ行き、どうやって生きていくのか。
その花の安否が気にかかる。

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2011年01月16日

白いリボン

B004YEI67M白いリボン [DVD]
2009年 ドイツ/オーストリア/フランス/イタリア
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ウルリッヒ・トゥクール
   ブルクハルト・クラウスナー
   ヨーゼフ・ビアビヒラー
   ライナー・ボック
   スザンヌ・ロタール
   ブランコ・サマロフスキー

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白いリボンから解き放たれるには。

ネタバレ有りです。

その村はひとつの悲劇を皮きりに、歪に形を変えていった。

ドクターが落馬で重症を負った。その走路には針金が張られていた。
小作人の妻が落下事故で死んだ。その子供たちは母親の死を、管理を怠った男爵家にあると信じた。
厳格な牧師は、夜遅くまで家に帰らなかった子供たち、クララとマルティンを鞭打った。そして純粋で無垢の象徴である白いリボンを体に巻くことを命じる。
収穫祭の日、男爵家のキャベツ畑がめちゃくちゃに切り刻まれた。
その上男爵の息子ジギが何者かに逆さ吊りにされる事件が起こる。
ドクターの公私にわたるパートナーで、40代の助産婦の息子カーリが顔を傷つけられ、失明させられた。

人の憎悪と憤怒とやりきれなさが不思議と格調高く表現された傑作。
それは繰り返される暴力等のエピソードがほとんど画面にはあらわれないのがひとつの原因となっている。
マルティンたちが折檻されるシーンも、扉がきっちり閉められた奥で、鞭の音と悲鳴だけで表現される。
ジギが杭をうちこまれる凄惨な事件も語り部が読み上げるのみ。
けれどそれが“顔の見えない悪意”として不穏な空気を作り上げている。

そう、それぞれの事件は、どれもがはっきりと犯人が明示されるわけではない。
「犯人は現場に帰って来る」というジンクス通りのことを行ったクララとマルティンたちは、語り部である教師に、子供たちを傷つけた犯人だと指摘される。
けれどそれは教師視点でのあくまでひとつの可能性であり、その罪は生涯暴かれることはない。
ドクターとその14歳の娘との近親相姦も、幼い子供視点からのものであり、ここもそのものずばりとは描写されない。
ドクターに棄てられた助産婦と、ドクターの失踪に至ってはまるで説明がされていない。

でもたしかに村の空気と人の心は淀みきっている。

それが顕著にあらわれたのは牧師の子供たち。
自慰行為を責められるマルティン、騒ぎ立てていると誤解され失神するクララ、純真な象徴である筈の白いリボンは彼らには抑圧でしかなかった。
その厳しすぎる抑圧は他者への暴力に姿を変える。

この描写が見事だった。
父親が飼っている小鳥を鋏で刺し殺し、十字架の形を模してデスクの上に置くクララ。
「神は自分を殺せない」と確信し、悪事に手を染めるマルティン。
末弟のグスティだけは小動物を可愛がり、父親を気遣うも、そこにはやはり抑圧された者の怯えがそうさせているようだ。

そして物語は第一次世界大戦直前のドイツで幕を下ろす。
ファシズムに進んでいく国家の行く末を見据えるかのように。

そんな中で唯一温情があり、初々しい想いを結ぶこととなる教師とエヴァが良心の拠りどころのように描かれていた。
けれど教師はもともと隣村出身であり、エヴァもまた異なる地からやってきた「よそ者」であることが、村の異常を決定付けた。

人間の見たくない面を徹底的に露出させる、ラース・フォン・トリアーとハネケをわたしは時々混同してしまうのだけれど、この静かな美しささえ携えた悪意を、前者は表現できないと思う。

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2010年06月06日

エンター・ザ・ボイド

B0042XAH86エンター・ザ・ボイド ディレクターズカット完全版 [Blu-ray]
2010年 フランス
監督:ギャスパー・ノエ
出演:ナサニエル・ブラウン
   パス・デ・ラ・ウエルタ
   シリル・ロイ
   丹野雅仁
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 “死”は究極のトリップ

ネタバレ有りです

「死んだらどうするの?」
「戻ってくるよ」

トウキョウで暮らすオスカーとリンダの兄妹。
兄はドラッグのディーラーを、妹はストリップバーのポールダンサーをしている。
ある晩、オスカーは警察に追われ、隠れたトイレの個室で銃撃されてしまう。
次第に薄れていく意識は生身を離れて浮遊する。
その魂は残された人々を見つめ続けた。とりわけ最愛の妹の姿を追うオスカー。
そして彼のこれまでの人生もフラッシュバックされていく。

オープニングクレジットが最高。
スタッフやキャスト等の名前がサイケデリックな音楽とフォントによって矢継ぎ早に切り替わっていく。
日本人の名前も沢山出てきたけれど、何しろ流れが速くて読み取れない。
おそらくここが映画最大の見所。
あとは延々延々とオスカーの一人称俯瞰映像が続く。凄い。

過去のフラッシュバックではオスカーの姿は映るものの、その殆どが彼の後頭部しか捉えていない。
その視線の先にはいつもリンダがいた。
幼い頃、両親に愛されていた幸せな時代。いつもずっと妹のそばにいると誓った日々。
けれどそれは凄絶な車の事故による両親の死によって突然絶たれてしまう。
別々の養護施設で育ち、大きくなってからようやく二人は再会し、東京で一緒に暮らし始める。
親友のビクター、その彼の母親との情事、ドラッグ仲間のアレックス、彼らの思い出も交えながら、自分が死んだ後の動向も見て回るオスカー。

そうしてただ上から見つめ続けるオスカーの思考は描写されることがない。
けれど何を思うのか一言のモノローグがなくても、そのリンダに対する執拗とも言える視線は愛情に溢れている。
それは時によって、リンダとセックスしている相手に憑依することもできる。
喘ぐ妹の顔を間近に見ているオスカー。
この一風変わった近親相姦シーンがなまめかしくも、せつない。

けれどリンダはそれを感じ取ることはなく、日本人の雇い主と関係を持ちながらも、子供ができると彼に秘密でそれを堕胎する。
兄を間接的に死に追いやったビクターを罵倒し、泣き叫ぶことも。
そんな彼女は初めは嫌っていたアレックスと関係を持つ。

クライマックスは、アレックスの同居人が作っていたミニチュアの街をそのまま再現した“トウキョウ”のラブホテルの部屋ごとに繰り広げられるセックスの数々をオスカーが見つめるシーン。
男女の性器は光を放ち、やがてリンダとアレックスの情事の中にオスカーは吸い込まれていく。
それまでにも、彼は浮遊しながら、リンダの部屋や楽屋にあった照明器具の光の中に幾度も飛び込んでいた。
けれど人工的な光では現世とのつながりが持てなかった。
でも男女の性器を通してのそれの中に入ったオスカーは、そこでもう一度生を受ける。
つまり彼はリンダの子供として輪廻を果たしたこととなる。

ここに究極の愛の成就を見た。

とにかく2時間20分、トリップ感が満載。
ファーストシーンでラリったオスカーの頭の中をめぐる不可思議な映像を初めとして、まばゆい光が点滅を繰り返したり、リンダと乗るジェットコースターの如く抽象的映像が加速したり。
そこにギャスパー・ノエらしい、“感受性を傷つける”ような映像も挿入される。
両親が死ぬ車のクラッシュシーンは衝撃的で、それが一度ならず、油断している時に幾度もいきなり襲ってくる。それを見て泣き叫ぶ幼い頃のリンダも長く撮るといういやったらしさ。
そして彼女が堕胎した胎児(赤い塊)をドアップで見せ付けられたりもする。。
そんな相変わらずのノエ調が炸裂。
けれど『カノン』と同じく、美しいクラシックの曲が不思議とシーンにマッチすることもある。
ひどく退屈ながらも決して嫌いではない作品。

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2010年05月23日

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

B000PWQOYO腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
2007年 日本
監督:吉田大八
原作:本谷有希子
出演:佐藤江梨子
   佐津川愛美
   永作博美
   永瀬正敏
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 愛ってさあ……

ネタバレ有りです。

冒頭、いきなり凄惨な交通事故から物語は始まる。
死亡したのは和合家の主とその妻。
残されたのは長男の宍道、次女の清深、宍道の新妻の待子。
葬式が終わった頃、女優を志して上京していた長女の澄伽が帰ってくる。
家族の不協和音はその日を境に深まっていった。

宍道がたびたび口にする「家族」という言葉がこれほど虚しく響くことはない。
血はつながっていないものの、宍道は澄伽と関係を持っているし(清深視点で二人の脚がぴったり寄り添ってその事実が判るシーンは上手い)、待子はそんな夫と夜の生活を営んでいない。それどころか何かにつけて罵倒され、彼女だけ家族と認めていない発言までされてしまう。
内向的な清深は、姉が女優を目指すために父親に刃物を向けた事件や、上京資金を稼ぐために同級生に体を売ったことをマンガにして投稿、それが雑誌に掲載され、澄伽は田舎にいられなくなってしまう。

そんな中で一見常識人で、よく働き、よく気を配り、どんなに悲惨な目に遭わされても笑顔を忘れない待子が一番感情移入がしやすく、横暴な宍道や澄伽にふつふつと怒りが湧いた。
コインロッカーベイビーとして生まれ、ずっと一人で生きてきた彼女が「あたしも家族じゃないですか」と夫に詰め寄るところは、前述の宍道の台詞と比べるとこちらはかなり重い。

しかし、こんなアクの強い人間だらけをよくもこう巧妙に転がせたもんだと思う。
腑抜けというよりは、ロクデナシがそろいもそろった和合家の描写は容赦がない分、かえってコメディと化す。
もちろんそれは狙ったものであるんだろう。
人生に絶望してドラマティックに大雨の中を走る宍道の前に現れたのは待子。
本来なら救世主として出現する筈の彼女は、雷の光で顔をカッと照らされたホラー的な描き方をされている。
女優を目指す澄伽の本棚に並んだ「ガラスの仮面」がわずか3巻までしかないのも、彼女のいい加減さがよく出ていて笑った。

そして物語は終盤で怒涛の展開を迎える。

待子ととうとう関係をもった宍道(やった後にいつもよりかは優しくなっているところがリアル)を澄伽は責め、結果宍道は焼身自殺してしまう。
その後もいつもと変わらず家族の世話をする待子。文通していた新鋭映画監督に見初められ、主演女優の話を持ちかけられ有頂天となっていた澄伽。
そんな彼女らの前で衝撃的な告白をする清深。
実は彼女は郵便局でずっとバイトをしており、澄伽が投函していた手紙を回収し、自分が監督になりすまして返事を書いていたのだった。
その時すでに漫画家としての足がかりを得ていた彼女は、荷物をまとめて東京に行くのだと告げて、バスに乗った。

「お姉ちゃんは自分の面白さを判ってない!」
ってこの台詞、凄いな。


それまで姉の酷いいじめに耐えぬいていた妹が反旗を翻した場面。
高らかに哄笑する彼女の姿には少し溜飲が下がった。
まあこの妹もかなり屈折してはいるんだけど。

けれど澄伽は妹を追いかけ、自分をモデルにマンガを描くのならこの先を見なさいと彼女に同行する。ここら辺のしぶとさがまた凄い。
とうとう澄伽は超ワガママだけどどこか愛すべきところがある、というよくある性格づけは成されず、徹頭徹尾勘違いのいやな女として描かれたところが天晴れ。

そして待子はとうとうそんな和合家の家族にはなれず(清深も待子製作の人形を捨てていったあたり…)、最後は一人きりになってしまうオチが印象的。

俳優陣は主演4人が見事に役にはまっていてぐいぐい引き込まれた。
澄伽役の佐藤江梨子はこの上ない適役。
ずっと大人しく怯えていただけの女の子が豹変するさまを見せた清深役の佐津川愛美はラストですべてを持っていったほどのインパクト。
待子役の永作博美の従順すぎてホラーな演技も最高。
もの凄く面白かった!

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2009年02月09日

ホテル・ニューハンプシャー

B0002V7U6Eホテル・ニューハンプシャー [DVD]
1984年 アメリカ
監督:トニー・リチャードソン
出演:ジョディ・フォスター
   ロブ・ロウ
   ポール・マクレーン
   ボー・ブリッジス
   ナスターシャ・キンスキー
   リサ・ベインズ
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「人生はおとぎ話よ」
不思議な道のりを歩んでいくホテル・ニューハンプシャーを経営するベリー一家の物語。

ネタバレ有りです。

とは言うものの、おとぎ話とはかけ離れた、驚くべき不幸に満ち溢れた家族でもある。

何しろ、長男フランクはゲイであることから同級生にイジメられ、次男ジョンは姉のフラニーに本気で恋をして悩んでいる。
そのフラニーは高校時代にレイプされ、次女リリーは作家として華々しくデビューするも、第二作目が不評で自分の才能に失望して自殺(ずっと身体的にチビなことをコンプレックスに思っていた彼女が、遺書に「大きくなれなくてごめんね」とかいていたのが可哀想で。あれは自身の作家としての飛翔のことも意味していたんだろうか)。
祖父はペットの剥製の呪い(?)で死亡し、やさしい母親もまだ小さな三男と一緒に飛行機事故で亡くなってしまう。
資本主義に反発する過激派に襲われて父親は失明。

もうどうだと言わんばかりの不幸のどん底。

なのに不思議に作品のテイストは明るい。

フラニーと一時期恋仲になる、熊の着ぐるみを出られないスージーという女性が途中から出てくるけれど、彼女は着ぐるみをきていなくても、もこもこの毛皮を手放さず、そこになんとも言えない可笑しさが生まれる。

ジョンが女性と関係を持つ場面も、盗聴というシチュエーションや、早送りといった演出を交えて楽しく描かれる。
究極は実の姉フラニーと半日に及ぶ耐久セックス。
この近親相姦シーンが実にからっと明るく、それまでの不幸を観ていた側としては、本当はタブーにいたたまれなくなる筈が、なぜかほのぼのとこの関係を見守ってしまうこととなる。

ホモにレズに近親相姦にレイプに復讐にテロに子供の自殺に、これほどエキセントリックな要素を散りばめながら、事件が起こるたびに家族は結束していく。
ヒーローとなり、資産には不自由しなくなった父親が、それでもはやらないホテルを経営し続けるのと同じように、フラニーもずっとレイプ事件から自分を見守り続けてくれていた黒人の彼と結婚する。
誰もがそうやって生きる道を見つけていく。
ジョンもきっとそうするだろう。

ホテル・ニューハンプシャーの庭に一同に会する、生きる者、死んだ者たち。
家族が再び集まったファンタジーなラストシーンは感動的。


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2008年11月09日

ブーリン家の姉妹

B001OZDZUWブーリン家の姉妹 [DVD]
ナタリー・ポートマン, スカーレット・ヨハンソン, エリック・バナ, ジム・スタージェス, ジャスティン・チャドウィック
ポニーキャニオン 2009-04-01

by G-Tools


ふたりの姉妹。
時の王に最初に愛されたのはメアリー。けれど王妃になったのは姉のアン。
選ばれなかった方は、ただのブーリン家のもうひとりの娘。

ネタバレ有りです。

ヘンリー8世の寵愛を受けたアン・ブーリンとメアリー・ブーリン。
史実として、アンが正式に王の妻となり、わずかな年月で処刑されたことは知っていたけれど。
その罪が姦淫、しかも近親相姦であったこと。妹メアリーがヘンリーの愛人であったことは知らなくてなかなか面白いドラマとなっていた。

娘や息子を出世と富の手管として扱う気弱な父親と野心家の叔父。
その駒とされた子供たちの末路がもの哀しい。
結婚したばかりだというのに王のもとに差し出され、妊娠し、安静を余儀なくされ、そのため王から飽きられ、出産と同時に城を追いやられるメアリー。
その後釜を狙って、けれどただの愛人ではなく正妻となるべく画策し、王妃の地位を手に入れるも、男児を産めずに破滅するアン。
アンの弟で、子種を提供するために姉と同衾し(ただし映画の中では未遂)、その罪で首を刎ねられるジョージ。

常時野心に燃えたぎらぎらした瞳を持つアン。
簡単にヘンリーに体を許さず、高価なプレゼントを固辞し、そのプライドを傷つける。
そんな高飛車で通してきた彼女が、まるでレイプのように後ろからヘンリーに抱かれるシーンでのぐしゃぐしゃに歪んだ彼女の表情が印象的。
アンがただの女の子なのだと判るシーン。
愛とは見せかけの、王のただの所有物として欲されていることが暗に示されている。

対して、最初に王のベッドにあがったメアリーのシーンは、やさしさに満ち溢れている。
後で飽きられたけれど、たしかに彼女はヘンリーに愛されたのだろう。

そうした愛憎の中で、二人の姉妹の間でのすれ違いや和解がすんなり成されるのが拍子抜け。

これはドラマ全体的にもいえることだけれど、時間枠が急すぎて、人の(特に王の)心変わりが激しくて、キャラクターの心情のうつろいについていけなかった。

だからあれだけ姉にひどい仕打ちをされながらも、宮廷に戻り、姉の処刑を回避するのに命がけで奔走するメアリーのいじましさに心打たれない。

と、主役級のドラマは雑ながら、出番が少ししかないにも関わらず、アンの母親と、ヘンリーの正妻キャサリン・オブ・アラゴンの存在感は大きい。
子供たちをないがしろにする夫を非難の目で見つめ、最後にはその頬を平手打ちする母親の当然の母性、いつも毅然とした態度で臨み、声高に泣き叫ぶことなく、自分を迫害する王と“娼婦姉妹”を詰る王妃のシーンは、女優さんたちの力量によるんだろうけれど、迫力があって目を奪われてしまった。

そう、やっぱりそれなりに実力があって、容姿も端麗ながら、まだまだ若いことから、アンとメアリー役のナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンはどうしても重厚なコスチューム・プレイではその名の通り、コスプレしているだけの感がぬぐえなかった。

けれどラストシーンは痺れた。
後のゴールデン・エイジを築くエリザベス―今はただ無邪気に野原を駆け巡っているだけの子供―のアップでのラストカット。
ケイト・ブランシェット主演の『エリザベス』を続けて見たくなること間違いなし。


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2008年06月20日

美しすぎる母

B001DCIVP0美しすぎる母
ジュリアン・ムーア, スティーヴン・ディレイン, エディ・レッドメイン, エレナ・アナヤ, トム・ケイリン
角川エンタテインメント 2008-10-24

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 ハハ ハ ムスコ ニ コロサレタ。

ネタバレ有りです。

大富豪と結婚したバーバラ・ベークランド。
一人息子のアントニーも授かり、自分は奔放なまま、優雅な生活を満喫していた。
けれど夫が息子のガールフレンドと浮気。
母と子は二人で世界の各地を転々とする。
そこで何が芽生えたのか。
アントニーが母を殺すまでを描く退廃的な物語は実話がもとになっている。

さて、これがよく判らない。
人物の心情と行動がつかめず、次々に起こる展開に頭の中は「?」だらけ。

バーバラ役のジュリアン・ムーアは白痴がちな女性も知的なキャラクターも何でもござれの演技派で、今回も不安定な母親役にもうってつけだったけれど、いかんせん一代で財を築き上げた男が入れ込む女性に見えなかったのが残念。
夫を振り回して、でもセックスの魅力で繋ぎとめているという関係も、端的にワンシーンで表しているのみ。
フランス語をどうせ解せないだろうと彼女に性的な台詞を吐く客人にキレるところも、庶民出のコンプレックスを彼女が強く感じているためだということなんだろうけどイマイチ気づきにくい。

息子のアントニーも同じ。
まだ幼い頃に友だちを家にあげて、留守にしていた両親が複雑な表情をするところが出てくるけれど、ここでああアントニーはゲイに目覚めたんだなとピンとくる。
でも次に青年に成長した彼は、気の合う友だちらしき男性といちゃいちゃしながらもスペインの美女をナンパしベッドインしている。
ん?ホモ設定だと思ったのは間違い?
と思いきや、やっぱりあの男性とセックスする場面が用意されていたり。

その後もゲイの後見人とバーバラが寝たり、そこにアントニーも参戦したりと奇妙な親子丼を見せられて性差って何だろうと軽く混乱。

妻と子を見捨てた夫はそれ以降ほぼ描かれずにフェードアウト。

人物関係の描写がひどく曖昧で薄い。
これで物語に入っていかれるはずがない。


夫を心底愛していたように見えなかったバーバラ。
だから彼女の傷が掴み取れなかった。
夫を失ってそのベクトルが息子に向かったということなんだろうけど、同じく溺愛していたようにも感じられない。

だからショッキングであるはずのラスト近くの近親相姦シーンも、淡々とした流れの中で、なるようにしてなっただけにしか見えなかった。
そして一時だけ幼児退行してしまうアントニーの傷も窺えない。

スキャンダラスな実在の事件を、自分の趣味的要素を取り込んで(トム・ケイリンだからゲイ要素は出てくるかなと思っていたけれどここまであからさまとは)上っ面だけなぞった映画にしか思えなくて残念。


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2008年02月29日

悪魔の呼ぶ海へ

B0000844LSWeight of Water
2000年 アメリカ・フランス・カナダ
監督:キャスリン・ビグロー
出演: ショーン・ペン
   エリザベス・ハーレイ
   キャサリン・マコーマック
   サラ・ポーリー
   ジョシュ・ルーカス
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キャスリン・ビグローが監督、サラ・ポーリー出演ということで見てみた作品。

ネタバレ有りです。

1873年の小さな島で起こった事件。
ノルウェー移民のアネットとカレンという若い女性二人が斧によって殺害された。
彼女らとその夜を過ごしていた生き残りのマレンの証言によって一人の男性が犯人に認定され、絞首刑に処せられる。

そして現代。その事件を探る雑誌写真家のジーン。
しっくりいっていない様子の夫トーマスと、夫の弟とその恋人も一緒だ。
ジーンは凄惨な事件を調べる内に、真犯人に近づいていく。

そのふたつの時代が交互に描かれる構成ながら、19世紀パートの圧倒的な面白さに現代パートが追いつかない。

というか、ジーンたちの複雑めいた人間関係がいまいちつかめず、男女四人がうだうだと牽制しあったり傷つけあったりしていることにイライラしてしまい、早くマレンの姿が見たくてたまらなかった。

そう、マレンの何て哀しく残酷なことだろう。
姉と兄の妻を殺したのは彼女であることはもう序盤からうすうす判るものの、その動機は中盤以降まで予想がつかない。
親が決めた年寄りの夫に嫁ぎ、一人故郷を離れ、会話もなくセックスぐらいしかコミュニケーションの取れない夫に耐える若いマレン。
彼女は実の兄と近親相姦の関係にあった。
だからそれを知った父親と姉が二人を引き離した。
けれど結局その島に親族はやってくる。
まだ慕ってやまない兄の新妻を目の当たりにしたマレンのやりきれなさは島での孤独よりも辛かっただろう。

徐々に彼女は追い詰められていく。
童子の息吹でだんだんふくらんでいく風船のように。
それが割れる寸前の痛ましさは見もの。


妊娠した喜びでいっぱいの兄嫁の邪気のなさ。
具合が悪そうな自分を心配してべたべたスキンシップをとってくる彼女に向けられない悪意。
けれどそれは姉の告発で破れてしまう。

近親相姦の罪を、殺人に手を染めたことを、無実の人を絞首台に送ったことを、すべて彼女ひとりが背負わなくてはならなかった。
表立って彼女はどの罪にも問われなかった。
けれど一生の平穏を失った。

そんな一人の女性のドラマと現代パートはリンクすることなく、最後に海の中でジーンがマレンの姿を見るという幻想的なシーンを挿入することで終わってしまい、肩透かし。
本当にジーンたちのことは何を描きたかったんだろう?

俳優に関しては、最後までぐいぐい見せてくれた哀しい瞳にいつも射抜かれてしまうマレン役のサラ・ポーリーが見事。
そして姉役の今は亡きカトリン・カートリッジの姿も拝見できてうれしかった。
あとは現代パートでのお色気姉ちゃん役を遺憾なく発揮し、美しい上半身ヌードを見せてくれたエリザベス・ハーレーは目の保養だった。

この作品、本国でも当たらず、日本でも劇場未公開。
サラ・ポーリーの魅力が活きているだけに惜しいと思う。


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2007年09月26日

ドリーマーズ

B0007710SWドリーマーズ 特別版 ~R-18ヴァージョン~
マイケル・ピット ルイ・ガレル エヴァ・グリーン
アミューズソフトエンタテインメント 2005-02-25

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フランスの五月革命を背景に、美しい双子とひとりのアメリカ人との「あまり普通でない」交流を描いた作品。

ネタバレ有りです。

ベルトルッチは割と好きな監督さんではあるけれど…
今回はちょっと。

主人公マシューは映画オタクで、パリに来て学生たちと共に映画に浸っていた。
その内イザベルとテオの双子と知り合い、彼らの家に招かれる。
そこで目にしたのは、裸で横たわる二人の姿。
やがてマシューもその性の饗宴に加わっていった。

エロスと頽廃という好みの世界に、近親相姦やそこはかとない同性愛的な要素が加わって、それでもなぜか一歩ひいてしまったのは、彼らがあまりにも幼稚に思えたから。

まだ20歳そこそこという年齢ではあるけれど、親がいなくなった途端まともな生活が営むことができず、それでいていっぱしの口をきいて父親を傷つけるとはどーいうことだ(頭固いのかなあ)。

そして映画のシーンを説明して、どのタイトルかを答えさせるゲームに負けたら罰として、目の前で自慰をしたりセックスを強要させる。

結局彼らにはすべてが“遊び”だ。

だからイザベルは、素っ裸でテオと同衾していても、最後までの行為には及んでいなかった。マシューと寝た後に彼女が処女であったことが判るシーンは衝撃的。
現実に目を向けさせようとするマシューの思いは最後まで届かない。
そして二人の間に入ることもできなかった。
お互いが真に必要とするのはきょうだいだけ。
マシューを振り切って革命の最前線に走る双子の姿は強烈に目に灼きつく。
異邦人はそうして取り残される。

セクシュアルなシーンを演じた役者さんたちは三人とも美しい。
エヴァ・グリーンは、この作品で初めて彼女を見たけれど、多くの人が絶賛するのが頷ける。
あばらが浮くほど細い肢体なのに、迫力のある胸。そのアンバランスさが絶妙にエロティック。
エロいと云えば、男なのにどうしてこんなに色っぽいのかと思わせるマイケル・ピット。象牙のような白い肌、ぽってりした赤い唇。双子に見出されたのが納得というもの。

あとは映画へのオマージュがちりばめられてあって楽しかった。
とは云え、『トップハット』『街の灯』『フリークス』『勝手にしやがれ』ぐらいしか判らなかったけれど。
中でも一番の見所は『はなればなれに』(大好き!大好き!)の名シーン、ルーヴル美術館を男女三人で駆け巡るところを再現した場面。
こちらも気分が高揚した。
チャップリンとキートンとどちらが優れているかの討論も興味深かったし、古き良き作品をもっと知っていたらもっと楽しかったかもしれない(キートン作品は観たことがない…)。

でも期待しすぎていたためか、それほどの感慨も抱かなかった作品。
ずっとレンタル店で探して見つからなかったけれど、エロコーナーで発見した時は複雑な気分だった。


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2007年08月05日

キング 罪の王

B000MRP2IQキング 罪の王
ガエル・ガルシア・ベルナル ウィリアム・ハート ペル・ジェームズ
メディアファクトリー 2007-05-02

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懺悔が最大の復讐。

ネタバレ有りです。

海軍を退役した青年エルヴィスは、まだ見たことのない父親に会いに行く。
その父は今牧師をしており、同じく信仰心の篤い妻子と共に暮らしていた。
満面の笑みで自分がもう一人の息子であることを告げるエルヴィス。
けれど父親は彼を拒絶する。

そこでエルヴィスの中に冥い影が生まれたのか。
それからの彼はこの家族を散々な目に遭わせる事になる。

腹違いの妹マレリーを誘惑し、妊娠させる。
もう一人の“弟”ポールを刺殺する。
娘の妊娠を知った母親と当人のマレリーを殺害する。

近親相姦、衝動殺人といった悪の道をひた走る彼を、時折馬が見つめているシーンが印象的。
まだ“事件”を起こす前、起こした後、懺悔の時、そこにいる馬は“神”であるかのようだ。
罪を見ながら何もしない神。
その神に祈りを捧げる家族が罪の王に崩壊させられていく悲哀。

けれど被害者家族も潔癖というわけではない。
昔金で女を買って妊娠させ、その後のケアを行わなかった父親はもとより、実の兄が恋人に殺されたことを知っても祈りで済ませるマレリーも、信仰熱心な故に少々やるすぎな行動に出るポールも、皆どこかで人間的な欠点がある。
息子を失った家族の前に出てきて、そのポジションを乗っ取ってしまうエルヴィスも異常だけれど、それを受け入れてしまう父の姿も首を傾げてしまう。

そこかしこで誰もがどこか“変”であることが、エルヴィスをただのサイコ野郎に仕立てなかった気がする。
それから自分に手の届かなかったもの、憧れていたもの(この場合は家族愛?)を人を殺してまで手に入れるエルヴィスは、『太陽がいっぱい』のトムと同様、ピカレスク的な魅力がある。

好みのシーンもいくつか。
前述した馬の登場の他に、一人称カメラでゆっくり邸宅の外から中へ入っていく映像、そこに映し出される黒猫(凶事の象徴)、奥の部屋で射抜かれて息絶えている二人の女性、とここまでの流れはぞくっとした。
その前まで教会で「家族認定」されて心からうれしそうに笑っていたエルヴィスのシーンがあったから尚更。

エルヴィス役のガエル・ガルシア・ベルナルは、今回の女性とのラブシーンにしても、他の作品での男性との絡みにしても、匂いたつようにエロティックで良い。
唯一まともな役柄のローラ・ハリングは、こんな普通の主婦もできたのかとびっくり。ウィリアム・ハートはちょっと存在感が薄かったような。

暗澹とした気分にさせられるラストカットも良。
好みの割とど真ん中にきた作品。


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2007年05月23日

明日、君がいない

B000ZH1BIS明日、君がいない
テレサ・パルマー ジョエル・マッケンジー クレメンティーヌ・メラー
アット エンタテインメント 2008-01-25

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2:37。
高校のトイレの扉の向こうで誰かが手首を切って自殺している。
物語はその日の朝から遡って始まる。
そこに出てくる高校生の誰かが午後には死んでしまう…。

ネタバレ有りです。

メロディ:子供と動物を愛するやさしい少女。けれど彼女はその朝激しく泣いていた。

マーカス:メロディの兄。両親からの期待も大きいエリート。父親から失望されることを恐れている。

ルーク:ハンサムで肉体自慢のスポーツマン。彼には誰にもいえない秘密があった。

ショーン:ゲイをカミングアウトして家族からも級友からも理解を得られていない。

スティーヴン:生まれつき尿道がふたつあり、コントロールできずに度々漏らしてしまう。そのことでいじめられている。

サラ:ルークの恋人。彼の姿を見るといちゃずかずにはいられない。

10代の子供たちの悩み。
性格が悪くてもルックスがよければモテるし、生まれつきの体のつくりの違いでいじめられるし、異端は排斥される。
どの国でもどの時代でも同じだ。
わたしもそれを経験してきた。
だから誰でもこの世界に入ることができると思う。
その中の誰かが死んでしまうという事実。
一人一人の事情が判るにつれ、その後に必ず来る“死”がずしんと重くなる。

ストーリー的には、実はルークが隠れゲイでありショーンとひそかにできていること、マーカスとメロディが近親相姦の関係にある(というと誤謬がある。あれはマーカスのレイプだから)ということが早くから察せられる。
だからそれぞれの苦しみはダイレクトに伝わってくる。
いや、マーカスだけは地獄の業火に焼かれるべきだけれど。

何の悩みもない、イヤな女というだけだと思ったサラにしても、彼女はルークに抱かれていないことでその愛に不安を感じていることがのちのちわかってくる。
追い討ちをかけるように、ルークと親しくしているメロディの妊娠を知ってしまい、その相手が彼氏であると思い込んでしまう。

つまり、誰もが自殺をするのに十分な理由をもっている。

ところが、実はその命を絶つ者は主要人物の6人の誰でもなく、ほぼ遠景として描かれていたケリーという女の子であることが判ったときの衝撃といったら。

ケリーはマーカスを気遣ったり、みんなからバカにされているスティーヴンに唯一やさしく声をかけるといった描写しかなされていない。
彼女の事情、悩みなどはいっさい描かれていないのだ。
なのに死んでしまう。
これは実際に友人を自殺でなくした監督の経験がリアルに表現されている。
そのショックを観客に分かち合うように。
最後にケリーのインタビューが流れた時は涙が出た。
インタビューシーンでは、6人の誰もが思い出などを語りながら、自分の苦しみも吐露していたのに、彼女は最後まで幸せなエピソードしか話さない。
しかも彼女が鋏で手首を切ってこときれるまでをやたらと長く撮っていてやりきれない。

と、見所は多々あるものの、やはりどうしても『エレファント』と酷似しているところが気になってしまった。

同じシーンが、登場人物の視点を変えて繰り返されるところ。
クラシック音楽の使い方。
シーンのつなぎ目にたびたび現れる空。
男性同士のキスシーン。
トイレで食べたものを吐く女の子。

ああ、あれもこれも見たことあるな…と。
前例がなかったら手放しで褒め称えられたんだけど。
19歳でこの映画を撮ったのは驚異ではある。
でもオマージュであってもこの“二番煎じ”な感じは払拭できない。

まあそれでも『エレファント』と違って空虚な気分にならなかったのは良。
悩み多き6人は何も解決していないけれど、とにかく彼らは生きている。
生きている。
それが大切。



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2006年07月21日

ギミーヘブン

B000EPFDNKギミー・ヘブン スタンダード・エディション [DVD]
2004年 日本
監督:松浦徹
出演: 江口洋介
   安藤政信
   宮崎あおい
   小島聖
   鳥肌実
   松田龍平
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ネタバレ有りです。

共感覚。
ひとつの感覚が刺激されると、それに伴って異なった感覚が引き起こされること。
数字の1はレンガ色。
銀のカップは夜。
大きな雨はガーベラ。

そんな感覚を持つ者は非常に珍しく、主人公新介も自分の共感覚を誰にも理解されずにいた。
ある日彼は相棒の貴志と、倒れている少女を見つける。
少女の名は麻里。
彼女の周りでは怪死が相次いでいた。
そして彼女もまた新介と全く同じ共感覚を持つ人間だった…

うーん…
イマイチよくストーリーが判らなかったのですが…。

途中から“死の商人”という「ピカソ」なる男の存在が明らかになり、彼と新介がチャットのようなもので会話するシーンはこれからがなかなか期待できたんだけど…。
結局このピカソが麻里の実の兄で、麻里の犯す殺人の尻拭い(のようなこと)をしていたというオチ。

兄の妹に対する異常な愛情。
幼い妹に触れようとして、母親に糾弾され、その母親を殺してしまった兄。「兄ちゃんが守ってやる」
その言葉がトラウマになったかのように、麻里は同じ台詞を言った貴志も殺してしまう。

ここらへんの心の動きを全部「サイコサスペンスだから」と無理やり納得させてしまわないとついていけない。
というより、そう思った時点でアウト。
つまり完全な失敗作。

重要なテーマであるはずの共感覚も、それを持つ二人のふれあいが異常に短くて、ボーイ・ミーツ・ガールに説得力がない。
しかもハイライトであろうガーベラの雨のシーンにしても、ここだけファンタスティックで変に浮いてしまっている。

浮いているといえば、何か不自然なせりふがどうもいただけない。
貴志が麻里に
「あんたの目ってビー玉みたいだな」
と云うシーン。
それに纏わる台詞もその後出てくるんだけど、脚本の文字が見えてくるようなわざとらしさ。

それから警部役の石田ゆり子(キャリアに見えない)、要らないでしょう。
ラストもどうして三人死んでるの?
それから麻里をおぶっている新介のシーンの意味は?

唯一、ヤクザ役の鳥肌実が異様な雰囲気を醸し出していて良。
他に見所はなし。


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2006年02月06日

CODE46

B0002IVURCCODE46 スペシャル・エディション
ティム・ロビンス マイケル・ウィンターボトム サマンサ・モートン
ハピネット・ピクチャーズ 2005-03-04

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同一の遺伝子を持つ者同士の生殖を禁止する

そんな法規、「CODE46」を掲げた近未来。
ウィリアムとマリアという二人の男女が出会い、恋に落ちる。

けれどマリアの遺伝子はウィリアムの母親のそれと同一だった…。


法規をおかしたため、愛した人の記憶を剥奪される不条理。

けれどそれでもなお、また二人は惹かれあう。

まあぶっちゃけ、不倫だし(ウィリアムが既婚者なんだよなあ…)一種の近親相姦めいた恋愛なんだけど、これがまたせつない。

人工的でスタイリッシュなセットの中で、ベッドシーンは肌のぬくもりが感じられるようなやさしい営みとして描かれる。
瞼へのキス。
高まる体温が感じられるような吐息。

だからこそ引き裂かれる二人の末路、
「あなたに会いたい」
とつぶやくマリアのなんとも言えず淋しそうな表情がぐっとくる。

マリアは夢の中で運命の人と出会っていた。
彼女のこれからの誕生日の夢は、またひとつめの駅から始まるのだろうか。


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2005年12月10日

アブノーマル

アブノーマル

1994年 オーストラリア・イタリア
監督:ロルフ・デ・ヒーア
出演:ニック・ホープ
クレア・ベニート
ラルフ・コッテリル



…えっと、かなり前に見た作品なので、細部が思い出せないからうろ覚え書きになることを最初にお詫びします。


さて。詰め込んだ映画である。

主人公バビーは、35年間家から外に出たことのない男。
彼の母親が「外の世界は毒ガスだらけでマスクをしないと出ることができない」と教えて軟禁しているためだ。

二人だけの世界。

そして母親と息子の近親相姦が日常化している。


けれど、あることからバビーは一人で外界に出ることとなる。


無垢な彼は外の世界に翻弄されていく。

何も判らず、巻き込まれで刑務所に入れられれば、そこで男に犯される。

どこかのライブハウスでいつの間にかカリスマシンガーに仕立てあげられる。

頭が禿げかかった30を過ぎた“子供”の姿はあまりにも痛々しい。

だから、彼を愛しみ、最後に彼の子供を生む女性との晴れ晴れとしたラストは、すとーんと心地よく着地する。

けれど、そこまで行き着くまではかなり見るのがしんどい映画。

前半の寒々した隔離されたコンクリートの家と、ラストの澄み切った空の中で子供を抱くバビーのすがすがしさの対比は見事。


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2005年07月03日

箪笥

B0001X9D7W箪笥
イム・スジョン キム・ジウン ムン・グニョン ヨム・ジョンア
アミューズソフトエンタテインメント 2004-12-24

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これは凄い。よくできている。
父親の再婚相手と暮らすために、姉妹二人がやって来る。

姉スミは継母を毛嫌いし、継母自身も彼女に冷たい感情を抱いていた。
おとなしい妹スヨンは、何かと継母にいじめられる。

父親はそんな関係に心を痛めながらも、特に何もしようとはしなかった。

やがて、不気味な事件がその館で起こり始める…


台所の下で蠢く“何か”。

いなくなった妹。

血だらけの麻袋。

このぞわぞわ戦慄を覚えさせられる演出もさることながら、
見事などんでん返し、
そしてなんとも言えない悲哀

これがとても効果的。


が、一度見て、ああそうだったんだ、と思っても、レビューを見るとかなり解釈が分かれていて混乱することすること。

この作品を見てからちょっと日が経つので、はっきりしないこともあるけれど、以下こういう解釈もあるということで。

続きを読む

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2005年06月24日

ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間

B00005R22Qツインピークス : ローラ・パーマー最後の7日間
シェリル・リー レイ・ワイズ カイル・マクラクラン デヴィッド・ボウイ
日本ヘラルド映画 2002-09-26

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わたしの流行は10年遅れて来る。

一世を風靡したテレビドラマ「ツイン・ピークス」も、流行から10年経ってハマった。

ドラクエの1を今頃プレイしている。

なので、「冬のソナタ」もあと9年したらもしかしたらハマるかもしれない。
それ以前に全く見る気がおこらないのだが。


それはともかく。

そのドラマの映画版。
まあ、テレビの方を見ていなければ意味不明…というか、見ていても意味不明。
前半に出てきた刑事がいきなり消えちゃうし。
リンチ節、爆発。

ドラマではローラ・パーマーという美しい高校生が死体で発見されるところから始まる。
映画では、タイトルロール通り、この少女がなぜ殺されたのかを、ローラの視点から描かれる。

誰からも好かれる美少女の、裏の顔。

ドラッグを吸い、男たちと乱交。

ドラマでは描かれなかったその裏事情が、ハッキリとここでは映像となって表れる。

彼女を襲う謎の男、ボブ。
それが実の父親であったことの悲劇。

近親相姦と、暴力と、薬と、殺人。

アングラな映像に纏わる倒錯。ドラマではユーモアラスな部分があって救われたけど、こちらはひたすらエロティックで、暗く、淀んでいる。

ローラ役のシェリル・リーはきれいだけれど、表面上の清楚な設定の少女にはとても見えなくてちょい残念(ドラマではほとんど写真と死体だけだったからよかったのにな)。
彼女は『ハード・テクニック』というしょーもない映画でも、過去に父親との性的関係に苦しむ女性を演じた。

ところでツイン・ピークス後日談が出る、出ない、とのうわさが絶えなかったけど…
やっぱ、出ないのか。

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2005年06月05日

サイダーハウス・ルール

B00005HRB7サイダーハウス・ルール DTS特別版
トビー・マグワイア ラッセ・ハルストレム
ジェネオン エンタテインメント 2000-12-22

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孤児のホーマーは、孤児院院長であるラーチ医師に愛されて育った。

けれど実はラーチ先生は、極秘で堕胎手術を行っており、ホーマーもそれを手伝わされていたが、心では反発していた。

ある日、堕胎に訪れたキャンディという美しい女性と知り合い、ホーマーは孤児院を出て、りんご園で働くようになる…


孤児院描写にありがちな、いじめや子供同士の諍いは、ここには描かれない。
みんなすごく“いい人たち”であり“いい子”だ。

でも、実はラーチ先生はエーテルを嗅いでラリっていたりするし、
りんご園ではキャンディの不貞(相手は誰でもない、ホーマー自身であるが)、近親相姦で身ごもった少女などが描かれている。

声をはりあげて糾弾できるような“悪人”がいない。

ラーチ先生にしても、キャンディにしても、近親相姦を行う父親にしても、みんなそれぞれに“ルール”があり、それに則っているからだ。

「人の役に立て」と教えるラーチ先生が堕胎を行うのも、
ホーマーと浮気しながら、婚約者が下半身不随で戦地から戻ると、何のためらいもなく彼のもとへ戻るキャンディも、
あの父親でさえ、娘を愛するがあまりの「意味」がある。

それをすべて見つめ、または身をもって体験するホーマーは、最終的にある選択をすることになる。

青年の成長譚をみずみずしく描いた秀作。


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2005年05月31日

ルナティック・ラブ

6304303971Cement Garden
1992年 イギリス/フランス/ドイツ
監督:アンドリュー・バーキン
出演:シャルロット・ゲンズブール
   シニード・キューザック
   アンドリュー・ロバートソン
   ハンス・ツィッシュラー
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おそろしいドラマだ。

父親が死に、母親も衰弱死してしまった家庭。

残された三人の姉弟は、母親の死骸をセメントで塗り固める。

荒れ放題になる家。
漂う悪臭。

美しい姉の恋人なのかパトロンなのか、そんな男も不審がるも、その中に入っていけない。

そして彼は、姉と弟が極めて親密に触れ合っているところを目撃してしまう。

罵られても、悪びれるところのない二人。
彼女らには、何も禁忌などないように思える。
そういった感覚が麻痺してしまったのか…
それともほのかな幸福感をそこで求めていたのか。

とにかく背景が背景なだけに、ぞっとする近親相姦のシーンだった。

姉役のシャルロット・ゲンズブールの透明感のある美しさは健在。


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2005年05月24日

ブラックムーン

B00005FPT3ブラックムーン
1990年 フランス・西ドイツ
監督:ルイ・マル
出演: キャスリン・ハリソン
   ジョー・ダレッサンドロ
   アレクサンドラ・スチュワルト
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カルト臭の強い、シュールなお伽話。

「不思議の国のアリス」がどうもベースにあるらしい。

リリーという少女が車を走らせていると、いつの間にか戦場に迷い込んでしまう。

そこから逃れて見つけた館には、ねずみと会話する奇妙な老女がベッドに臥していた。

外では裸の子供たちが豚を追い回している。

美しい姉弟は、リリーの存在をほぼ無視。

姉は老女になぜかおっぱいを吸わせている。

そして一角獣が現れたり消えたり…


ムカデや蛇といった不快な映像を大写ししたり、耳をつんざくような人の悲鳴や目覚まし時計のアラームが聞こえたり、不思議世界がダークに表現されている。

とにかくワケが判らないこと満載。

リリーが何かあるごとに全速力で走るシーンが随所にある。
何が起こったのか。
これから何が起こるのか。

そんな彼女のフラストレーションと興味の深さが表れているようで印象深い。


映画は最後まで道理の通った説明を成さない。
そういう作品なのだと思うほかない。


さて、ここに出てくる姉弟、近親相姦の関係にあるらしい。
そこら辺の描写はちょっと伝わり辛い。
わたしには、母(老女)と子(姉)の関係の方がちょっと異常な感じに思えた。


こういう雰囲気を楽しむ作品、かなり好みだなあ…


cocoroblue at 19:08|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年05月09日

カノン

B00005L8UNカノン
フィリップ・ナオン ブランダン・ルノワール フランキー・パン マルチン・オードラン
日活 2001-06-22

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カルネ』の続編。

娘と離れ離れに暮らす父親は、仕事が見つからず、毎日荒んだ生活をしていた。

愛想のないことで手に職があった肉屋も採用を断られる。
家に帰れば身重の妻に罵られる。


世間を呪詛し続ける父親。
ずっと続く道路に沿って歩きながら、ずっとずっと憤懣を頭の中で繰り返す。

普段寡黙であるのに、心の中ではどす暗い感情でいっぱいだ。

ある日、妻とその母親に暴力をふるって居場所をなくした男は、病院にいる娘に会いに(実は拉致しに)行く。


男の最後の砦。


彼女に対する感情は何なのか。
限りなく肉欲的であり、慈悲を請うものであり、情欲と対極にあるはずなのに純粋であり。


彼が娘を抱きしめて嗚咽するシーンは、不覚にもボロボロ泣いてしまった。

到底感情移入なんてできやしない、不潔な妄想ばかり抱いている鬱屈したこの親父の姿に。


「だが 真実はたったひとつ
愛してる
それだけだ」



最後のモノローグの通り、父親は娘を愛するだろう。

それがもしかしたら肉体関係を示すものかもしれない。
彼の手が娘の胸を触っていたことがその暗示かもしれない。

そんな歪んだ愛さえ、二人が求めていたのだとしたら。


cocoroblue at 20:38|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年05月06日

スウィート ヒア アフター

スウィート ヒアアフター デラックス版
1998年 カナダ
監督:アトム・エゴヤン
原作:ラッセル・バンクス
出演: イアン・ホルム
   カーザン・バンクス
   サラ・ポーリー
   トム・マッカムス
   ガブリエル・ローズ
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解釈が難しい映画。

雪に包まれた小さな町。
子供たちを乗せたスクールバスが転落、唯一生き残った少女二コール。

彼女は父親と近親相姦関係にあった。

そこに、バス会社を訴えるべきだと村の人に吹聴してまわる弁護士がやってくる。
彼には、エイズで余命いくばくもないと思われる家出した娘がいる。

子供を失くした家族、
町に波紋を来たすことを快く思わない住人。

さまざまな人間模様を混ぜ込みながら、何かがすとん、と落ちたようなラストへ。


さて、この話のモチーフとされているのは、ハメルンの笛吹きの物語。
以下、個人的解釈。
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cocoroblue at 19:06|PermalinkComments(2)TrackBack(1)

2005年05月05日

カルネ

カルネ
フィリップ・ナオン ブランディーヌ・ルノワール フランキー・パン ギャスパー・ノエ
日活 2000-08-25


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口をきかない娘。
それを寡黙に育てる馬肉店の父親。

ある日、娘が初潮を迎える。
それをレイプと勘違いした父親は、暴漢と決め付けた男を殺してしまう…


殺し方がエグい。
口にナイフを突き立てるんだったかな。
そういうシーンがまるでダメなわたしは目を閉じてたので定かじゃないけど(笑)。


全体的に毒々しい赤色に散りばめられた映画。
娘から流れ出る経血も、画面前面に映し出される馬肉も。
父親の理不尽な怒りの象徴のようでもある。

すでに娘を女として見ていた男のねっとりとした執着の視線。

彼にとって、娘以外は自分が扱う肉と同様に写っていたのかもしれない。


cocoroblue at 23:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年05月04日

素肌の涙

素肌の涙
1998年 イギリス
監督:ティム・ロス
出演:レイ・ウィンストン
   ララ・ベルモント
   フレディ・カンリフ
   ティルダ・スウィントン
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「人生は甘くやさしいと思う?ちがうのよ」


父親との近親相姦を続ける娘、ジェシー。
それに気づきはじめたジェシーの弟のトム。

画面は終始暗く、陽の光がさすことはない。
青白くうかびあがるジェシー役のララ・ベルモントのかなしいまでの美しさ。

父親は娘を犯すとき、後ろしか使わない。

「ママと同じように愛して」
と切願するジェシーの痛々しさ、
家族にバレても、シラをきり通す父親の厚顔無恥さ。

ものすごく見ていてずきんと痛む映画。

ラスト、ようやく外への扉は開いても、やはり光に包まれることはない。

その閉塞した中で、姉と弟は佇むしかない。
彼らにはもう行き場などないのだ。


cocoroblue at 17:18|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2005年04月23日

ポーラX

ポーラX
カテリーナ・ゴルベワ レオス・カラックス
アミューズソフトエンタテインメント 2000-05-05


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何の不自由もなく暮らしていたブルジョワの青年が、ある日自分の姉と名乗る女性と出会い、彼女と家を出る…

リアルな近親相姦シーン(実際に役者がセックスしていたと言われる)で有名な映画。

でもそんな扇情的なことよりも、破滅へ向かって突き進んでいく主人公の生き様が強烈な映画。


美しい母、若くみずみずしい体と容姿の婚約者。どちらも金髪。
対して長く黒い髪で、おどろおどろしい喋り方の実姉。

陽と陰の対比が著しい。
前半は豪邸での生活。日の光に包まれて、婚約者は薄いヴェールを風になびかせて微笑む。
後半は姉と町を彷徨い、地下組織と知り合い、近親相姦も漆黒の闇の中行われる。


 僕たちは、深く、もっと深く、降りてゆかなくてはならない。


姉と出会うことによって、持ち得るものすべてを棄てて自分を見つめなおす主人公。見ながら自分まで堕ちてゆくような感覚に浸れるダークさがたまらない。


さて、主人公の従兄弟が一人ここに出てくるわけだが。
その初登場シーン。
主人公と従兄弟の頭がすりあわされる。
「会いたかった」
ただの抱擁にしてはかなり淫靡なシーン。
ここで二人の関係を深読みすると、後半なぜあんなに従兄弟が彼に執拗に怒りをぶつけるか納得できるかな…と。

カラックスの魂のメッセージ。
浸るべし。

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cocoroblue at 16:03|PermalinkComments(2)TrackBack(0)