アイのカタチ【プラトニック】

2009年09月27日

リミッツ・オブ・コントロール

B003WTHP18リミッツ・オブ・コントロール スペシャル・エディション [DVD]
2008年 アメリカ
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:イザック・ド・バンコレ
   ティルダ・スウィントン
   ガエル・ガルシア・ベルナル
   ヒアム・アッバス
   ビル・マーレイ
   工藤夕貴

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エスプレッソを2つ。2つのカップで。
仕事中のセックスはなし。
メモは口の中へ。
そして人を殺しに行く男の話。

ネタバレ有りです。

「自分を最も偉大だと思っている男を墓場に送れ」
その依頼を受けスペインの地を彷徨する名もなき男。
彼は行く先々で“仲間”らしき人物たちと接触する。
することと云えば「スペイン語を話すのか」を合言葉とし、マッチ箱を交換するのみ。
その中にはダイヤの粒が入っていたり、暗号が書かれたメモが折りたたんであったり。
そして男は最終的に、やはり名もなき「アメリカ人」抹殺に行き着く。

はっきり云ってストーリー面だけを見たら何が何だか。
それに加えて、数分ごとに強烈な睡魔に襲われ、ところどころ眠ってしまったわたしは多分この映画について語ってはいけないんだと思う。
でもこれくらいわけが判らないと、何か文字に残しておかないとくやしい気もする。

「想像力とスキルを使え。主観で構わない」
男が殺しの依頼主から言われた言葉。
この想像力の限界に挑んだのがこの作品なのか。

男が相対するコードネームを持つ“仲間”の存在は不思議だ。
常に裸で羽織るものといったら透明のレインコートくらいの女。
晴天の日に雨傘をさして歩くブロンドの女。
分子の話をする日本人の女。
誰もがどこか現実味を欠いた白昼夢のような存在。

それに加えて、男が殺すアメリカ人のいるアジト侵入も、数人の見張りの目を避けてやすやすと行われている。

そして依頼を遂行した後、いつも美術館で見ていた絵にはシーツが被せられ(あるいはあれがひとつの作品であったのか)、マッチ箱に入っていたメモは白紙になっていた。

そうすると、どこまでが現実で、どこまでが彼の想像なのか、疑いが生じてくる。

コードネームを持つ人々が吐く観念的な台詞は、あの男の心の中を吐露したものなのかもしれない。
作品の中の彼はおそろしく無口で、無表情だ。

そんな彼がふと表情を緩ませるのは、フラメンコを鑑賞した場面。
そしてベッドの上で冷たくなっていた裸の娘と邂逅を果たした時に見せる、やさしく頬を撫ぜる仕草にほんのかすかな情感が宿っていたように見えて印象深い。

現実とうたかたの間を行き来する男の姿は、非常に退屈ではあるけれど、不思議な心地よさを感じる。

人間のイマジネーションはどこまでも自由で、でも映画にすると制限が生じる。

すべてが“無”となって(絵画やメモ用紙)、きっちりとしたスーツからジャージに着替えて旅立つラストシーンで、想像世界の果てまで行き着いた男の限界の姿を見た。 ような気がする。

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2008年03月01日

ミスター・ロンリー

B0019EJWG4ミスター・ロンリー
ディエゴ・ルナ, サマンサ・モートン, ドニ・ラヴァン, ヴェルナー・ヘルツォーク, ハーモニー・コリン
ギャガ・コミュニケーションズ 2008-08-08

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僕は孤独
ミスター・ロンリー
僕のことを思ってくれる人はいない

ネタバレ有りです。

365日24時間マイケル・ジャクソンな男。
彼はそのモノマネで生計をたてている。
ある日パリの老人ホームでの営業時、マリリン・モンローの扮装をした女性と出会う。
彼女はスコットランドでモノマネ芸人たちと暮らしているという。
そこに誘われ、マイケルも同行することに。
こうして別の人生を歩む人々との生活が始まった。

こうしてプロットだけ見てみると、マイケルの見事なモノマネを散りばめて歌ったり踊ったりしたり、他のメンバーのマドンナやチャップリンやエリザベス女王等を揶揄したシーンがあったりといった娯楽要素、はたまた本当の自分を見つけられるようになるまでを感動的に描写する等いくらでもエンタテインメントや普遍的テーマを散りばめられそうだけれど、ハーモニー・コリンはそんなアプローチをはなからしようとしない。

それぞれのチャプターのようなところでマイケルの曲名はテロップとして文字で流れるものの、彼の音楽は最後まで一切かからない。

そしてスコットランドでの共同生活と平行して、パナマの神父とシスターのエピソードが織り込まれる。
ある時誤って飛行機から落下してしまった一人のシスターが空中で神に祈る。
どうか無事に着地できますようにと。
すると本当に彼女は傷ひとつ負うことなく生還する。
信仰心が奇跡を起こしたのだと、他のシスターたちも次々と飛び降りる。
彼女たちも同じように成功する。
神父はこの出来事を世界に広めた。
そのことでバチカンの法王に謁見を許され、彼らは希望に満ちて飛行機に乗った…。

このふたつの世界は最後まで交わることがない。
そして何の意味を持っているのかを考えさせられる。
それはまた後述。

チャップリンの夫とシャーリー・テンプルの娘がいるマリリンに心魅かれるマイケル。
けれど彼と彼女の間隔は最後まで狭まることはなかった。
ふっとキスしそうな雰囲気になった時でさえ、それまで食べていたイチゴがその役割を果たす。
ただ二人が食べあうイチゴのシーンはひどく官能的。
赤い果肉をうっとりと齧る男女はそこでもうくちづけしているかのような恍惚感を表している。

でもそんなおだやかな日は続かない。
飼っていた羊の内の一匹が病気に感染し、彼らの手で残りの羊も始末しなくてはならなくなった。
屠られし子羊。
そうすることで小動物は神となり、あのシスターを助け出したのか。
ひどく宗教的な感じではある。

けれどまたそうでもない展開が待っている。
人生が辛かったというマリリンは自殺し、バチカンへ旅立った神父とシスターの乗った飛行機は墜落し、海辺に彼女らの屍が無慈悲に漂っているという苦い結末。

辛いから他人になりきるはずなのに、まだそれでも苦しいという心の闇。
それを知り、愛する人を亡くしてマイケルは“マイケル”を捨てる。

自分の決めた人生(=他人の人生)は運命ではなかった。
マリリンが自殺までしてしまったように。
マイケルが「普通の人」になったように。
それと同じく、あの神父ら自らが「運命」と定めたあの奇跡が、事故であっけなく終焉を迎えることもまた別の「運命」であったのだろうか。


決め手が何もないぽっかりとした淋しさ。
総じてミスター・ロンリーは今もどこかしこにいる。

そんな儚さがひどく美しい。
最後には死ぬ運命にあるシスターたちのスカイダイヴのシーンは言葉を失うほどきれいだ。
空色の何もない空間で手に手を取り合って落下していくその画は名シーンとして自分の中にいつまでも残るだろう。

ミニバイに乗るマイケルの傍らでゆれているバブルス君らしきサルのマスコットも同じように(実際の顛末を知っているからこそ)やはり儚く、オープニングの「ミスター・ロンリー」の曲とよくマッチしている。

役者はいつも安定したうまさで見せてくれるサマンサ・モートンの他に、最後まで判らなかったドニ・ラヴァンや、映画監督のカラックスやらヘルツォークが出演していたのも見逃せない。


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2008年02月22日

エリザベス:ゴールデン・エイジ

B0019R0XIWエリザベス : ゴールデン・エイジ
ケイト・ブランシェット, ジェフリー・ラッシュ, クライヴ・オーウェン, サマンサ・モートン, シェカール・カプール
ジェネオン エンタテインメント 2008-08-06

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前作『エリザベス』ではヴァージンクイーンとしてイングランド女王に即位するまでが描かれた映画の続編。
プロテスタントの女王を虎視眈々と狙い定めるカソリック信者であるスペインのフェリペ鏡ぁ
女王の地位を奪おうとしているスコットランドのメアリー・スチュアート。
不穏分子が蠢く中で、エリザベスになかなか心が休まる時は訪れない。
彼女が心を許すのは忠臣であるウォルシンガムと同じ名を持つ次女のベス。
そして航海士のウォルターの荒々しい魅力に惹かれていく女王だったが…

ネタバレ有りです。

一作目でまだ髪をおろして軽やかに身を躍らせていた少女の頃の映像が一瞬映し出されてはっとする。
そうだ、この女王はこんな頃もあった。
恋人がいて、自然な化粧と衣服で無邪気に笑っていた時代が。
それをすべて封じ込めて彼女は国のために聖女となった。

ベスとウォルターを執拗に躍らせたエリザベスは、実は自分がその位置にいたかったろうに。

彼女はこの二人にとても焦がれていたように見える。
ベスに注ぐあたたかいまなざしと信用、時に艶かしくさえ見えるその関係は前半でその蜜月を閉じる。
ウォルターにキスを願うエリザベスはやっとその時一人の女性に還ることができた。
キスひとつだけ。
なんて慎ましやかな願いだろう。
そしてなんて哀しい運命なんだろう。
結局そのプラトニックに押しとどめた想いは、ウォルターの子を宿したベスによって引き裂かれる。

あの白塗りの鉄面皮と豪華な衣装に包まれた彼女が垣間見せる“女”の顔がとてもせつない。
キスシーンでもそうだし、ベスとウォルターに向ける激しい怒りでも彼女のフラストレーションの爆発が一介の人間なのだと気づかされる。

その反対に、毅然とした女王の顔もまた魅せてくれる。

暗殺者に手を差し向けるあの堂々とした風格。
戦士たちを鼓舞する甲冑姿での呼びかけ(ただ馬がちょっとウロウロしすぎなんだよなあ…)。
そしてスペイン無敵艦隊を打ち破った時の崖の上で微笑むその気品あふれる美しさ!

前作から全く衰えないケイト・ブランシェットの鳥肌のたつほどの上品さ、気高さ、少しの脆さを携えた演技が凄い。
冷淡で有能なばかりだと思っていたウォルシンガムも、裏切り者の弟を秘密裏にフランスに逃亡させてやるという意外な一面が見られ、やはり前作から続投のジェフリー・ラッシュ、上手い。

エンドロールまで気づかなかったベス役のアビー・コーニッシュは『キャンディ』とは違ったコスチュームプレイでは雰囲気がまるで変わっていてびっくり。
メアリー役のサマンサ・モートンは本当に何をやらせてもうますぎる。罠にはめられたと気づいた時の表情と叫びは絶品。

あとは…
ウォルター役のクライヴ・オーウェンがどうも個人的には苦手で。
ワイルドな魅力があるんだろうけれど、ウォルター自体が変に女王に期待させるような言動を取るイヤなヤツに見え、なおかつビジュアルもなんだかむさくるしいし…。
一作目でも相手役はジョセフファインズと、どうしてこう正統派ハンサムとは一味違う男優をキャスティングするんだろうか。
と、これは本当に個人の好みの問題だと判ってはいるんだけれど。

フェリペ鏡い量璽ぅ競戰蕕良堙┐別椋垢靴少し気になった。彼女をあれだけ意味ありげに描写するのなら、何か後日談でもほしかったところ。

と色々書いたものの、全体的には満足。
ケイト・ブランシェット、オスカーに2部門ノミネートおめでとう!


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2008年01月30日

迷子の警察音楽隊

B0016G2U6E迷子の警察音楽隊
サッソン・ガーベイ カリファ・ナトゥール ロニ・エルカベッツ
Nikkatsu =dvd= 2008-06-13

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2007年 イスラエル・フランス
監督:エラン・コリリン
出演:サッソン・ガーベイ
   ロニ・エルカベッツ
   サーレフ・バクリ


エジプトの警察音楽隊がイスラエルで迷子になった。
かつては戦争を繰り返していた両国。
でもそれは今、人間同士という一番たしかなもので交流を果たす。
音楽はそこに少ししか介在しない。
それが意外でもあり、予告編の印象から良い意味で裏切られた感じだった。

途方にくれる楽団を一晩泊めてくれる食堂の女主人ディナ。
彼らはそこで各々の過ごし方をすることになる。
気難しそうな、真面目一徹の団長トゥフィークはディナに誘われて外に食事に出かける。
なかなか打ち解けられない彼らは、ベンチに座って話をする。
音楽についてたずねられ、それを言葉にできず、自分の身振りでその時受けた感銘を表すトゥフィークのシーンが大好き。
ディナもそれに倣って手を動かす。
やさしい共鳴。
でもそれ以上近づくことのできない完璧なプラトニックな愛情すら感じる。
まあディナがトゥフィークに興味を持ってアプローチしたのは確かだけれど、ベタベタに寄り付くことのない一定の距離感が良い。

「昔はエジプト映画に夢中だったわ」
というディナの台詞は、隣国―今は争っていないとは云え、関係は良好とはいえない―に対する肯定であり、ひいては目の前の人物の肯定、もっとくだけるなら愛の告白ととってもおかしくないと思う。

ただ、そこでトゥフィークが告白する過去はあれほど重い必要はあったんだろうか?
堅苦しく愛を遠ざけている彼の姿に説得力は持つことができるものの、やっぱりあれは重い。重すぎる。
それだけがこの作品のトーンを少し暗くしてしまった。

他の団員たちのエピソードはほほえましい。
公衆電話での電話待ち合戦。
泊めてもらう家族の誕生日に折悪しく同席する団員の気まずさ。
そして女の子に免疫のない青年にアプローチの仕方をレクチャーするカーレド。
曲が始まると、カーレドの文字通り手取り足取りの指導も始まり、曲の終わりと共に青年は女の子とキスを果たす。
ここまでいっさい台詞なし。
なんてステキなシーンなんだろう。

そしてそのカーレドが「マイ・ファニー・バレンタイン」を演奏するところも見所。
何かと気が合わなかったトゥフィークがその歌が大好きだと告げる。
そこでもひとつの絆が生まれた。

なのに結局カーレドはディナとベッドインしてしまうというオマケつき。
大人のちょっと苦い展開に、それでもトゥフィークはかすかに笑う。
それが人生さ、というように。

翌朝、見送るディナに、これ以上ないというほどぎこちなく手を振るトゥフィーク。
なんてかわいらしい大人なんだろう。
そして演奏シーンでは、素晴らしい歌声を披露。
ああ、これが彼の音楽なんだなあとようやくラストにして知ることができる。

正直、観た直後はあまりの淡々とした進み方に、期待したほどではなかったな、と思っていたけれど、少し時間がたって、色々なシーンを思い返してみるとじわじわ感動が染み込んできた。
そんなちょっと不思議な作品。


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2007年04月18日

親密すぎるうちあけ話

B000I2JHTA親密すぎるうちあけ話
サンドリーヌ・ボネール パトリス・ルコント ファブリス・ルキーニ
ハピネット・ピクチャーズ 2006-11-24

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税理士ウィリアムの部屋へある日アンナという女性が訪ねてくる。
彼女は実は精神科医とウィリアムの部屋を間違えていたのだ。
その間違いを言い出せないまま、ウィリアムは彼女の打ち明け話を聞くことになる。

しゃれたシチュエーション、話し言葉ですすむエピソード、アンナに対するプラトニックなウィリアムの愛。
大人のドラマだなあ。

美しいけれどいつももの哀しそうで自分を内に秘めた感じのアンナ。
表情の変化の乏しい堅物な印象のウィリアム。
実際には何も映像として表現されていないのに、この二人の話す内容だけで色々イメージが湧いてくるのが楽しい。
長い間セックスレスだったアンナと夫の情事なんかその最たるもの。
そこでキレたウィリアムが
「どんな体位でやったんだ?前に入れたのか、それともアナルか?スカトロは?」
と限りない卑猥な言葉を乱発させるのは少し可笑しい。

二人は触れ合わない。
やっと接触を持ったと思ったら握手と頬にキスだけ。
けれどいつの間にかその距離は縮まっている。

ラストではまるで違った二人の姿が見られる。
露出が大胆なフェミニンなワンピースを纏うアンナの姿にはニヤリとしてしまった。
そうそう、ルコントは女性の美しさを見せる術をよく判っている。
まるで香るような女性に変身したアンナ。
そしてウィリアムもこのシーンでいつもきっちり締めていたネクタイを外している。

二人の解放された姿に頬がゆるんでしまう。

久しぶりのルコント作品。
ちょっとだけ退屈してしまったけれど、後味良しの良作。


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2007年04月14日

さくらん

B000FPEMYUさくらん 特別版
土屋アンナ 安野モヨコ 蜷川実花
角川エンタテインメント 2007-08-03

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吉原の遊郭を舞台に、主人公「きよ葉」と遊女たちの人生を描いた作品。

花魁そのもののような優雅できらびやかな金魚。
物語のキーワードとなる淡いピンクの桜。
窓辺であざやかに色を見せ付ける紅葉。
映像ひとつひとつは美しくて目の保養にはなるものの。
それぞれの遊女の恋模様だとか嫉妬だとかエロスだとかとにかく中途半端。

エロス関連は、菅野美穂と木村佳乃が体当たり演技でびっくりした。
胸をもまれながら喘ぐ喘ぐ。
その大胆さがなぜか主役の土屋アンナにない。

その濡れ場を除けば、誰もが大根演技。
子役は下手でも仕方ないかなと思うけれど、脚本の文字がそのまま見えてくるようなわざとらしい台詞まわしにげんなりする。

何、この豪華絢爛セットの学芸会は。

きよ葉に想いを寄せる清次のプラトニックな恋もどうして最後に成就したのか、その心理の移り変わりが判らない。

地に足がついていたのは夏木マリと、きよ葉の客の面々くらい。
肝心の花魁たちの魅力はその容姿だけしか感じ取れなかった。

ラストはあの金魚がビードロの中に戻されるのに示唆されているように、きよ葉と清次の駆け落ちは失敗するということか。
物語性の薄いものであったらその映像美だけで見ごたえがあったかもしれない。


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2007年04月03日

蟲師

B000U75C74蟲師 (通常版)
オダギリジョー.大森南朋.蒼井優.江角マキコ.他 大友克洋
video maker(VC/DAS)(D) 2007-10-26

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これは… ヒドイわ。

ここまで原作の良さを台無しにしてしまった作品も近年では珍しいんじゃないだろうか。
とは云え、わたしも原作のマンガは未読でアニメDVDだけ見ただけだけれど。

あのどこかもの哀しくもやさしい雰囲気は、ただ暗くおどろおどろしい映像に姿を変えてしまった。
ユーモアラスな箇所なんてひとつもなかった。

大体、蟲って一体何なのか、予備知識なしで観た人は判るんだろうか?

とても不親切で独りよがりなつくり。

一話完結スタイルの作品だから、その中からのエピソードチョイスはセンスが良かったけれど、これまたその見所を変な改変で粉々にしてしまった。

主人公ギンコが“ギンコ”になる過程までは何とか見られていたのに、その後重要人物ぬいの再登場でファンを悶えさせる。
要らないってば。
あんなぬいの姿見たくないんだってば。

と言うか…
独りよがりと最初に書いたけれど、全体的に原作への愛というか思い入れが全く感じられない。
監督が故意に原作を貶めているような錯覚さえ覚える。

役者もなあ…

ギンコ役のオダギリジョーは実写版ゲゲゲの鬼太郎みたいだし。
ぬい役の江角マキコはビジュアルはぴったりなのにいかんせん演技が下手すぎ。
あの叫び声なんて聞いちゃいられなかった。
蒼井優はせっかく良いキャリア積んできているのにこんなかわいいだけのお飾りの役やらなくてもいいのに。
角が生える子供ももう少しだけでも可愛らしい子だったら…(ゴメンなさい)。

そしていきなりギンコの蒼井優演じる淡幽に対しての想いを告白するところはのけぞってしまった。
ここでそんな純愛路線出してどうすんの?!

どうも監督の意図がつかめない。
必要なところでエピソードは省くくせに(あの虹の話、父と子に纏わるせつない過去と決着の仕方が全くなかった)余計なところで自己解釈を入れてしまう。
はっきり云って監督として最悪の仕事ぶりだと思う。

ラストも一体何がどうなったやら…

エンドロールが流れ出して呆然とし、いつもだったら最後まで見るところ早々と席を立った。

声を大にして云いたい。
蟲師はこんなんじゃない。

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2007年02月26日

バベットの晩餐会

B004B7CGUABabette's Feast (1988)
1987年 デンマーク
監督:ガブリエル・アクセル
   ステファーヌ・オードラン
   ビルギッテ・フェダースピール
   ボディル・キュア
   ビビ・アンデショーン

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なんて素敵な映画。

舞台はデンマークの海辺近くの寒村。
そこで暮らす敬虔なキリスト教徒の老姉妹。
彼女らはわずかな収入を村人への食事の施しにあてていた。
そこに、フランスから亡命してきたバベットという女性が現れる。
彼女を匿う姉妹。
バベットはそこでメイドとして働くことになった。

色を失ったような寒々とした景色の中で、ほんのりと人々の心に灯火がともる。
それは小さな村の中で繰り広げられる愛と思いやり。

大物歌手や軍人が若かりし頃の姉妹に恋をする。
それは実ることはなかったけれど、どちらもその思い出を胸にためていた。

そしてある日、バベットに1万フランもの宝くじが当たる。
バベットはそのお金を全て使って老姉妹や村人たちにフランス料理をごちそうする―。

見所はなんといっても彼女が作る料理の数々。

何せ今まで彼らが食べていたのは、パンを水と少量のビール?で煮込んだだけの質素でお世辞にもおいしそうとは云えない代物だったので、このメニューの贅沢さが引き立つ。

海ガメのスープ。
うずら肉(一度食べたことがあるけど、これは本当においしい!)とフォアグラのパイ仕立て。
高級シャンパン。
大胆にカットしたチーズ。
宝石のような光沢を放つ新鮮フルーツ。
見た目も美しいサヴァラン。

そしてそれを食す人々はある理由から無言。
けれど、顔はほころんでいく。
何も語らずとも満足感、幸福感は表情に出る。
そこがまた良い。

普段からいがみ合うようになっていた彼らも、食後はまたいつかのように抱擁を交わし、軽口をたたきながら去っていく。

バベットの晩餐は人の心までもを取り持つ特別な夜となった。

大金を私利私欲のために一切使わず、姉妹の恩義に報いたバベットの心根はなんてやさしいことだろう。

そしてその晩餐会の席には、かつて姉妹の内の一人に恋をしていた軍人(今は昇格)も出席していた。
彼女の手を取り、
「離れていても、私は毎日あなたと食事をしています」
とささやく彼のプラトニックな愛にも脱帽。

前から見たいと思っていながら何となく機会を逃していた作品。
すばらしい。
大満足。


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2006年06月22日

TRICK 劇場版2

B000HIVSM4トリック -劇場版2
仲間由紀恵 堤幸彦 阿部寛
東宝 2006-12-15

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ネタバレ有りです。

ドラマでおなじみのシリーズ劇場版第二弾。
自称天才奇術師の山田奈緒子と物理学者の上田次郎。
今回は巨大な岩石を自在に動かし、村をも消し去ってしまう力を持つという筺神佐和子との対決。

…えー。
ストーリー的には惨敗でした。
肝心のトリックは今までドラマの中のものを踏襲しているし、このシリーズのひとつの味となっている哀愁ある真実も唐突で今ひとつ。
毎回しつこいくらいヅラネタをひっぱる刑事の矢部の登場シーンが少ない(というより本編に全く関わってこない)のも痛かった。

そしてとにかく小ネタ満載!

筺神佐和子役の片平なぎさが白い手袋を歯で外したり、仲間由紀恵が貞子ポーズを取ったり、阿部寛が北斗の拳の台詞を言ったりとセルフパロディには大爆笑。
呪文の言葉が田原俊彦の歌詞、地図や案内板にさりげなく書かれているアトウカイに坂下千里、選挙ポスターのMr.オクレやシモダカゲキ。
ある程度歳がいってないと判らないネタがあって、若い子はどのくらい笑えるのかなあなどと呑気なことを考えながらもやっぱりクスクス笑いがこみあげてくる。

本当に小ネタだけで終わってしまった感じで、これでシリーズを締めくくるには残念な出来だと思う。

ただ、今回じれったいほどプラトニック(…なのか?)な奈緒子と上田の仲がちょいと進展があったのがうれしかった。

口が触れたか触れないか微妙すぎるキスシーンもほほえましく、ムードもへったくれもないシーンで初キスを済ませた二人がらしくってこれも笑ってしまう。

そしていつも美女が出てきては彼女にフラフラというかメロメロになってしまう上田が、今回出てくる美少女にはちゃんと節度を持って接しているのも良い。
ああ、奈緒子一筋になったのね、とにんまり。

両想いなのに憎たれ口を叩く二人のおなじみのラストシーン。
「あんな体験は初めてで」と件のキスについて語っていた上田がかわいいったらありゃしない。

それだけでもうれしかったから良しとしたいんだけど…
やっぱり全体としては失敗作にはちがいない。


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2006年02月18日

ロスト・チルドレン

B00008453Oロスト・チルドレン
ロン・パールマン ジュディット・ビッテ ドミニク・ピノン
ジェネオン エンタテインメント 2003-02-21

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夢を見ることのできない大人たちは、夢を見られる子供をさらった。


近未来のどこか。
弟を誘拐されたミエットは、サーカスの怪力男ワンと出会う。
そして共に弟がさらわれた本拠地に乗り込んでいく。
そこでは夢が見られずに老化が進むクローン人間や、特殊レンズを装着した“ひとつ目集団”などが跋扈していた…


細かなストーリーは忘れてしまったけれど、ダークなワンダーランドが繰り広げられる、大好きな作品。

凝った映像、どこかレトロチックな機械、そして知恵の足りない、でもやさしい大男(顔がまんまフランケンシュタイン・モンスター!)と、10歳にも満たない大人びた少女とのプラトニックな恋がとても魅力的。

ミエットがワンに負ぶわれて、ガラスに映った自分の髪を直すシーンは、ちょっとした陶酔感がもたらされる。

少女が一人の“女性”になる時。

このミエット役のジュディット・ビッテがすごく良い雰囲気を醸し出している。
美貌だけでなく、時々みせるこの年代特有の色気がたまらない。

さて、この世界ではクローンが造られるほどハイテクであるのに、人間らしく夢を見ることができない、というのがとても面白い。
技術が進んでも、人間の本質がやはり大切…というのは穿った見方かな。

そして個人的には、何があっても常に食べてばかりいるミエットの弟の大物ぶりがツボだった。

とにかくジャン・ピエール・ジュネ監督をこの作品で初めて知った。
アメリ』がお好きな方、こちらも是非。



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2005年10月17日

アップルシード

B0001X9BMEAPPLESEED
士郎正宗 荒牧伸志 小林愛
ジェネオン エンタテインメント 2004-11-25

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女兵士・デュナンは、戦闘の途中、オリュンポスという平和都市に連れてこられる。

そこでは人間とともに、バイオロイドと呼ばれる、欲望や怒りなどの攻撃力、そして生殖機能を持たないクローン人間たちが暮らしていた。

やがて、アップルシードと呼ばれる謎の物体をめぐって、戦いが起ころうとしていた…。

全編CGの3Dアニメ。


ん〜。
んん〜…。

これは、フルCGな故にどうしても作品にのめりこめなかった。

まず、人間の動きがどうしても違和感がある。
まるでゲームの登場人物がそのままゲーム上で動いているような感覚。

顔の造形はきれいすぎて、かえって気持ちが悪い。
いや、ヒトミという女性キャラクターなんかほんと目を奪われるような美少女なんだけど、人形を見ているような感じなので。

そんなわけで最後までキャラクターに感情移入できず、完敗。


デュナンと、サイボーグとなってしまったかつての恋人とのエピソードも薄く、その恋人が瀕死なシーンもうざったくて
「いや、さっさと死ねよ」
と思ってしまったほど。
つーか、わたしの人間性に問題アリ?


ストーリーは割りと手堅くまとまっているし、飛行シーンや、硝子に映った人や物の影のディテールなんてすばらしいけれど、技だけじゃ、人を感動に導けない。
少なくとも、わたしは。


そんな中でも、シチュエーション的に好きだったのは、愛を知らないバイオロイドたちの微妙な思慕。
究極のプラトニックって感じで、ここら辺は唯一お気に入り。

でも生殖可能になったら…
ロスト・オブ・セクシュアルイノセンスかもしれない。


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2005年09月08日

容疑者 室井慎次

B0007D3NJA容疑者 室井慎次
柳葉敏郎 君塚良一 田中麗奈
ポニーキャニオン 2006-04-19

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…えーと。

ご存知『踊る大捜査線』シリーズのサブキャラが主役になった第二弾。


…えーと。
困ったな。

あの室井さんが、ある捜査の指揮をとったことで窮地に立たされる。
でもそこには、自分たちの出世を目論む警察上部の抗争と暗躍が隠されていた。

って、タイトルだけが先行しちゃった感がある。

たしかにしょっぱなから室井さんは逮捕されるんだけど、割と早い内に釈放されてしまうからだ。

この「容疑者」のタイトルをどうしても遵守したかったのか、困ったことに、いきなり室井さんの大学時代の過去が持ち出されてしまうのだ。

しかもそれが、当時つきあっていた女性が室井さんに棄てられて自殺したというスキャンダル。
もちろん真相はそんなこっちゃないんだけど。

…このエピソードって必要あったの?


そして必要あったかと言えば、わたしにはどうしてもそうは思えない、田中麗奈演じる若手の弁護士の存在。

暗い話を明るくする役割ならまだ頷けるものの、彼女も以前ストーカーに切りつけられたという禍々しい過去を持っている。
それに対するトラウマを表す場面も異常に長い。

ほんとに、困ったなあ。

一番途方に暮れてしまったのは、いろんなキャラが出てくるんだけど、みんなここぞというところでなーんにもしないこと

あ、ここですかっとする反論がくるな?
ここで何か行動起こすな?
と、ちょっと期待してみていると、それがきれいに外される。
クライマックスの、証人尋問シーンで、それは顕著に。

弁護士、何かしろよ。

というくらい、ほんとになーんにもしてくれないのだ。
相手がボロを出すまでは。

で、その悪役の金儲け専門の弁護士がとてもいい具合にワルで、こっちの方がすこぶる魅力的なのも困ってしまう。
そんな中で、室井さんと田中麗奈扮する弁護士が変に恋が芽生えるようなことがなくて何より。

つーか、わたしは室井さんと青島刑事が精神的同性愛だと思ってるクチなので。

その青島刑事は出てこなかったけれど、湾岸署のスリーアミーゴズが出てきたのはうれしかったなあ。
それから、真下さんとゆきのさん、結婚するのねー。
交渉人 真下正義』を観ていなかったけど、あの作品内でくっついたのかな?

何はともあれ、テレビシリーズや映画篇が大好きだったわたしにとって、トホホな作品でありました。合掌。


cocoroblue at 22:25|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2005年07月29日

愛のめぐりあい

B0002N2IO6愛のめぐりあい
ジョン・マルコヴィッチ ミケランジェロ・アントニオーニ ヴィム・ヴェンダース ソフィ・マルソー
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン 2004-09-17

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映画監督が出会う(イメージする?)4つの愛の物語。

●第一話『ありえない恋の物語』

出会った男と女。
彼らは裸でベッドに入る。

男は美しい相手の裸体すれすれに手をかざす。
首、胸、腰、脚。
でも決してその手は体に触れることなく、男はそこを去る。

●第二話『女と犯罪』

「私」はブティックで働く女性と出会う。
彼女は父親を12回も刺して殺した過去があるという。

二人はベッドインする。

その後、「私」は、12回という数字に取りつかれる。
なぜならそれがたとえば3回という数字よりもずっと真実味があるからだ。

●第三話『私を探さないで』

夫に浮気をされて出て行った女。
家に帰ってきたら妻が出て行ってしまった男。

そんな境遇の似た二人が出会う。

女はその見知らぬ男の頬に手をかざす。

●第四話『死んだ瞬間』

美しい女性に一目ぼれした青年。

一夜をかけて彼女を口説く。

「明日も会える?」
と訊くと彼女は
「明日修道院に入るの」
と答える。


どの話もとても印象的で、静かでどこかもの哀しい雰囲気が漂う、すごく好みの映画。

一話のプラトニックな関係をばっさり「ありえない恋」とタイトルにしたのも面白い。
監督はそこに“虚構”を敷いたのだろうか。

第二話の12回という真実の数字を3回にしたようなものなのかもしれない。
そのジョン・マルコヴィッチとソフィー・マルソーのラブシーンは、たしか当時かなり問題視されたと記憶しているけれど、あれだけきれいなマルソーの全裸だから、いやらしさはあまり感じられなかった。

それから第三話で登場するファニー・アルダンに吸い込まれてしまった。
この作品で彼女をはじめて知った。
なんて素敵に年齢を重ねた女優さんなんだろう、と思う。
複雑な女性の心理を表情で見事に表していた。

第四話のあざやかな幕切れも忘れがたい。


なかなか見所のあるオムニバス。
おすすめ。


cocoroblue at 22:41|PermalinkComments(9)TrackBack(0)

2005年07月17日

ストレンジ・デイズ

B00005FPMIストレンジ・デイズ
アンジェラ・バセット マイケル・ウィンコット キャスリン・ビグロー
ポニーキャニオン 1999-04-21

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その日、何を見るのか。


2000年を目前に、人々が狂喜狂乱する中、事件は起こる。

他人の体験を感じ取れるディスクを売る主人公レニー。
ある日、元恋人・フェイスの友人が殺されるディスクを見て、レニーは彼女を守ろうとするが、突っぱねられる。

やがてレニーはその事件に巻き込まれる。
そんな彼を護衛するのは、ひそかに彼に想いを寄せているメイス。

女性が男性を守る、めずらしいタイプの映画。

メイス役のアンジェラ・バセットはハマリ役で、そのしなやかな身のこなし、時々見せる想い人へのせつないまなざしが見事だった。

一方、どうにもヘタレで(喧嘩相手に「殴るんなら軽く。軽くな!」とか言っちゃう)生活にもだらしないレニー。


彼はフェイスとのかつての愛の日々を映し出したディスクでいつも過去の幸せに浸っているような男だ。


近未来社会(公開当時)で何もかもが新しくなっていく中、人間は過去という遺物に拘泥している、というギャップが面白い。


そしてそんな主人公が、いかに過去を(=ディスク=フェイス)を捨て、いかに成長するかを見るのがこの映画のカタルシスにつながる。

ラスト近く、彼が虚栄の象徴のような金の腕時計をはずすシーンがとても印象的だ。

そして彼はフェイスの前から姿を消し、メイスの元へと急ぐ。

二人がどうなるか… ラストシーンはいわずもがな、じんわり感動。
プラトニックなメイスの想いが報われた大好きなシーン。


さて、もうひとつ見所は、大晦日に湧き上がるロスの街の風景。

華やかで、にぎやかで、プラカードひとつにしても凝っている。
きらびやかな電飾・紙ふぶき。
ちょっとした陶酔に浸れるクライマックスを見逃すな!


cocoroblue at 00:07|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2005年07月07日

シベールの日曜日

B0014F3FCUSundays & Cybele
シベールの日曜日
1963年 フランス
監督:セルジュ・ブールギニョン
出演:ハーディ・クリューガー
   パトリシア・ゴッジ
  ニコール・クールセル
  ダニエル・イヴェルネル
  アンドレ・オウマンスキー
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戦争で心に傷を負い、記憶をなくしたピエール。

そんな彼が、父親に捨てられた12歳の少女と出会う。

日曜日ごとの逢瀬。
二人は湖を歩いたり、人気のない喫茶店でしゃべったり、お互いの孤独を埋めていく。
というより、唯一のやすらぎであり、二人の空間は誰にも侵しがたいサンクチュアリだったんだと思う。

ピエールを献身的に世話をし、愛情を注ぐ女性もいたけれど、その彼女さえも
彼らに介入はできなかった。

大人の外の世界に出されても、ピエールはうまく振舞えない。

だから彼は“異端”だ。

少女と遊び、少女と心を通わせる。
それが魂の交流だったとしても、“普通”の人々はそれを享受しない。

でも若年層が犠牲になっている現代社会から見ると、ピエールの振る舞いは、たしかに微妙であることもたしか。
それは傍から見た場合に限られはするけれど。

視点は孤独なピエールと、無垢な少女であるがため、二人のプラトニックな愛情が心をしめつける。

少女は宗教的な理由から、実の名前で呼ばれていない。
その真実の名をクリスマスにピエールに告げるシーンは感動的だ。

けれどピエールは変質者と勘違いされて、警官に射殺されてしまう。

それを目の当たりにした少女。
警官に名前を聞かれ、
「もうわたしには名前なんかないの。誰でもなくなったの!」
と叫ぶ。

あまりにも哀しすぎる終焉。

少女・シベールの大きな瞳がとても印象的な作品。


cocoroblue at 23:25|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2005年06月24日

橋の上の娘

B00005H3IM橋の上の娘
ヴァネッサ・パラディ ダニエル・オートゥイユ パトリス・ルコント
アミューズソフトエンタテインメント 2000-07-07

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橋の上で今にも身を投げようとしている娘、アデル。

彼女に目をかけ、自分のナイフ投げの的として雇う中年男ガホール。

二人はサーカス団などを転々として芸を見せていくが…


くちづけさえも交わさない男と女の愛の交わし方。

男はナイフを投げ、女はそれに酔い痴れる。
それが非常にエロティック。
ナイフが体のラインすれすれに突き刺さるときにもれるアデルの吐息。
それを真摯に見つめるガホールの目力。

アデルは自分を好きだと言ってくれる男と簡単に関係を持ってしまう。
なのに、手さえ握らないガホールとの間には肉体を介在しない絆がある。

それは行きずりの男についていってしまい、アデルとガホールが離れ離れになっても尚、なぜか二人の会話が続く奇妙な場面で窺い知れることができる。

もうとにかくアデル役のヴァネッサ・パラディの妖精のようなかわいらしさに尽きる映画。
折れそうな細い肢体、ぱっちりとした双眸、甘い声、もう女性から見てもかわいいったらありゃしない。

でもアイドル的な映画に成り下がらないのが監督の成せる技。

古めかしいナイフ投げという職業、女性を失ってからの男の凋落ぶり、なぜかツボにハマります。


ただ、ハッピーエンドではあるんだけど、このラスト、わたしにはどうも男の妄想オチのような気がしてならない。


cocoroblue at 21:43|PermalinkComments(2)TrackBack(0)